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■ パナソニック「RP-HC500」
まず外見だが、“92%”というほどの仰々しさはなく、むしろヘッドフォンとしては小さな部類といってもいいだろう。イヤーパッドも、ぎりぎりで耳を覆う程度の大きさになっている。デザインも黒とシルバーで地味にまとめられている。オーバーイヤータイプのヘッドフォンを外で使うことに抵抗がなければ、何ら気にすることのないデザインだろう。 では肝心のNC性能を見ていこう。電車の中で使用したところ、NC OFFの状態でもオーバーイヤータイプだけあってそれなりに音を遮断しているが、NC ONにしたとたんに、電車が走るゴーッという低音が綺麗に消える。高音部分はそれなりに聞こえてくるものの、ゲームを始めてしまえばほとんど気にならない。電車内のアナウンスも少し聞き取りにくくなるほどなので、逆に注意が必要だろう。 オフィスで使ってみると、元々さほどうるさくないと思っていたものが、NC ONにすると、エアコンやPC動作音などの低音が綺麗に消えるのがわかる。聞こえてくるのは、話し声とキーボードを叩く音くらいだ。小さめの音でも音楽をかければ、近くで声をかけられても、声が小さいと何を言われているのかわからないほどになる。92%という数字も納得の性能だ。 音質は、特に高音をシャープに出しているように感じた。外部の音をキャンセルできる低音部分を小さめにして、バランスを取っているのかもしれないが、低音部分が聞こえにくいというほどではない。実際、電車内でゲームをする際には、高音がよく聞こえたほうが具合がいい。携帯ゲーム機で極端な低音を出すものも少ないので、そういった意味でもゲーム向きといえる。 NCを切っていても音は出るが、少しこもったような音質になる。低音が弱めなバランスも変わらないので、基本的にはNCをオンにして使うことを前提に考えたほうがいいだろう。 着け心地は、きちんと耳を覆うようにフィットし、NC性能を高めていると感じられる。ただ2~3時間と長時間使用していると、圧迫感が気になってきた。このあたりは個人差もあると思うが、力のかかる部分をずらして使えば一応は対応できる。 携帯性の面では、ヘッドフォンの耳当て部分が横向きになり、スリムな形で収納できる。作りもさほど弱そうには見えないので、そのままかばんに入れても大丈夫だとは思うが、専用のキャリングケースが付属しているので、これに収納しておくのがベストだ。予備の電池や変換プラグも一緒に入れておける。重量は約170g(乾電池、ケーブルを除く)で、つけていても重さを感じるほどではない。 電池は単四電池を1本使用し、左のハウジング部分に挿入する。NCのON/OFFを行なうスイッチや、オーディーケーブルをつなぐコネクタも左にある。しかし外見的には左右対称になっており、重量差もつけているときには感じない。
本製品はとにかくNC性能の高さが光る。音質の面から考えても、電車などでとにかく快適に携帯ゲームをプレイしたいという人には、うってつけの製品といえるだろう。
□パナソニックのホームページ http://panasonic.jp/ □製品情報 http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=RP-HC500 ■ ボーズ「QuietComfort2」
オーバーイヤータイプのヘッドフォンで、大きさは「RP-HC500」と同じくらい。こちらも外見的に気になるかどうかが第1のチェックポイントとなる。もう1つ本製品で気をつけたいのは、NCがOFFの時には音がでないということ。電池が切れると全く音が出なくなるので、心配な人はケースに予備の電池を入れるなどしておくほうがいいだろう。 NC性能については、オーバーイヤーということで、耳にかぶせただけでもそれなりに騒音を塞ぐのかと思ったが、さほど効果は感じない。そこでNCをONにすると、低音部分が綺麗に消える。それに対して、人間の声よりも高い部分はほとんどカットされておらず、アナウンスが元より聞き取りやすいのでは? と思ったほど。電車の中で大声で話し続ける人もそういないので、NC性能としては申し分なく、ゲームに集中しつつも外の音もそれなりに聞こえるという、いいバランスになっている。 オフィスで使うと、やはりエアコンやPCのファンなどの低音が綺麗に消えている。話し声やキーを叩く音は聞こえるが、男性が小声で喋ると聞こえにくく、つけたまま話をしようという気にはならない。ちょっと電車の中との印象が違うものの、これはこれで仕事に集中でき、満足のいく結果が得られた。 音質については、前述の通りNCがOFFの時には音が出ないので、ONにしたときだけの感触となる。低音がしっかり出ている印象で、高音も耳障りに響くことなく、“聴き心地のいい音”がする。今まで使っていたヘッドフォンでは聞こえなかったような小さな音もしっかり拾ってくれているようで、ゲームにせよ音楽にせよ、「こんな音だったっけ?」と違う印象を持たせてくれる。これが正しい音なのか、“作られた音”なのかは判断しかねるが、わずかな音も聞き漏らしたくないというシビアなゲームでは、意外と役立つかもしれない。 付け心地の点では、イヤーパッドが非常に柔らかく、着けた瞬間も肌触りがよく心地いい。耳を押さえる圧力もさほど強くなく、長時間着けていても疲れが少ない。それでいて、耳とイヤーパッドの隙間もない。ヘッドフォンとして満点の着け心地といっていいだろう。 電池は単四電池を1本使用。持ち運びには専用のケースが付属し、綺麗に収納できる。以前は一部の接点が弱く、破損しやすいというトラブルがあったそうだが、今はその問題も改善されており、堅牢性も問題なさそうだ。丁寧に使いたいのであれば、予備電池入れも兼ねて、きちんとケースに入れて使うといいだろう。
NC性能は特別に高いとはいえないものの、聞き疲れしない音質や付け心地のよさなど、ヘッドフォンとしての質はかなり高い。値段分の価値を感じるとともに、ロングヒットする意味も理解できる。ゲーマー向けとしては、電車などの移動中だけでなく、自宅でゲームに集中したい時、特に長時間連続で使いたい場合にはベストな製品だ。
□ボーズのホームページ http://www.bose.co.jp/ □製品情報 http://www.bose.co.jp/jp_jp?url=/consumer_audio/headphones/quiet_comfort/quiet_comfort2/qc2.jsp ■ ボーズ「QuietComfort3」
外見は「QuietComfort2」と並べて比較してみると、一回りコンパクトになったのがわかる。ただ銀色のハウジングは存在感があり、コンパクトなヘッドフォンというにはまだ大きい。 NC性能については、オンイヤータイプになって遮音性が下がったのでは? という心配もあると思うが、その分アクティブキャンセル(NCのこと)能力を向上させたことで、同等のNC性能を確保したという。なお、こちらもNCがOFFの状態では音が出ない。 ヘッドフォンを着けてみると、クッションが非常に柔らかく厚いので、思った以上に耳にぴったりフィットし、これだけで耳栓的な効果も少しは感じる。NCをONにすると、アクティブキャンセル能力が向上したというだけあって、「QuietComfort2」よりも音の変化が大きい。結果的なNC性能としては「QuietComfort2」と変わらないといえるレベルで、低音を綺麗に消しつつ人の声は割と通るというバランスも非常に似ている。 音質は「QuietComfort2」よりも、さらに低音が強くなったと感じる。いくつかのヘッドフォンを試していく中でこれを着けると、ちょっと低音が強調されすぎなのではないかと思うほど。ゲームをやっていても、かなり違った音に聞こえるものもあるほどだ。ただ高音が出ていないわけではなく、小さな音もきちんと拾うというバランスは「QuietComfort2」と同じ。トータルでは他の製品とは一線を画した、ボーズらしい心地よさを持った音が聴ける。 耳に吸い付くようなイヤーパッドの感触がとても心地よく、短時間の使用では何の問題も感じない。しかし2、3時間と長時間着けていると、イヤーパッドがぴったりくっついた耳にやや不快感が出てくる。さほど圧力が強いわけではないので、少し外せばすぐ取れる違和感ではある。 収納の面では、こちらも専用ケースが付属する。小型にはなったが、折りたためるなどの機構は備えていないため、「QuietComfort2」よりちょっと小さなケースになった、という程度。相対的にアームが細くなっており、強度的な不安もあるので、なるべくケースに収納して使うほうがいいだろう。 電池は専用のリチウムイオン電池を使用。充電器も同梱されており、約2時間の充電で、約20時間使用できるとしている。
「QuietComfort2」は気に入ったが、もう少しでも小さなものを、というニーズに答える製品にはなっている。移動時に使うことが多いならば、「QuietComfort2」と比較してのメリットは感じられるはずだ。価格が上がったことを考えれば、アドバンテージがもう一息欲しいところではあるが、外見や着け心地が気に入ったなら、こちらを選ぶという選択肢も十分ありえる。
□ボーズのホームページ http://www.bose.co.jp/ □製品情報 http://www.bose.co.jp/jp_jp?url=/consumer_audio/headphones/quiet_comfort/quiet_comfort3/qc3.jsp ■ ゼンハイザー「PXC 300」
オンイヤー型というくくりでは「QuietComfort3」と同じだが、ヘッドフォンのサイズはかなりコンパクトになっている。外から見た仰々しさもなく、耳かけタイプのヘッドフォンにアームが付いた程度という印象だ。これなら外でヘッドフォンを使うのに抵抗がある人も、ある程度は我慢できるのではないだろうか。 オンイヤータイプということで、クッションが耳に乗る形になる。クッションはそれほど厚いわけでもなく、一見するときちんと耳を塞げるのか心配になるものの、着けてみると意外とぴったりとフィットしてくれる。 NCをONにすると、かなり強力に低音をカットする。オンイヤー型ながら公称85%のNC性能をうたうだけあって、OFFとONでの差は非常に大きく感じられる。電車内では線路を走る際の低音はほぼ消えるし、オフィスでもエアコンなどの風音は綺麗に消えている。反面、人の声などの高音はかなり通って聞こえるので、電車内のアナウンスも(ゲームの音が小さければ)つけたままでも聞ける。 音質は音域を問わず素直に出ているという印象を受ける。高音は耳障りにならない範囲で、低音も強調しすぎることなく、きちんと出ている。ゲームで本来出ている音はちゃんと聞けているし、長時間聞いても疲れるような音質ではない。NCを通しても、原音が忠実に出ていると感じられる特徴のなさが、本製品の特徴といったところだろうか。 NCがOFFの状態でも問題なく音は出るので、普通のヘッドフォンとして使用できる。ただ音質的には、高音が物足りない感じで、ちょっとこもったような音に感じられる。またNC ONの時よりもかなり音が小さく聞こえる。NCをONで使ったほうが、気持ちのいい音が聞ける。 付け心地については、ヘッドフォン自体はかなり軽量なので、ほとんど負担はない。ただ耳にイヤーパッドをきちんとくっつけるため、左右の圧力が少しあるので、人によっては長時間の使用で疲れを感じるかもしれない。また両耳からケーブルが出ているので、そこも若干気になるかもしれない。 本製品において最も大きな問題は、NCユニットにある。単四電池を2個収納するNCユニットが、長さ約14cmのスティックになっているため、かなりかさばる。そこからヘッドフォンとステレオミニプラグが出てくる形になる。ケーブルは長めに取ってあるので、手提げカバンにNCユニットを入れても何とか届く。ゲーム機を持ち歩くことを考えればそれほど邪魔にはならないが、電池が1個になってNCユニットがもう少し小さくなれば……と思わずにはいられない。 収納に関しては、ヘッドフォン部分はコンパクトに折りたためる。NCユニットと一緒にまとめてもさほど場所をとらないので、カバンのポケットに入れるなりすれば問題ないだろう。
NCユニットの大きさは気になるが、ゲームユーザーにとってはそれほど大きなデメリットにはならないはず。なるべくコンパクトで、かつ満足のいくサウンドを出せるNCヘッドフォンが欲しいという人には、十分に検討する価値のある製品といえる。
□ゼンハイザーのホームページ http://www.sennheiser.com/ □ゼネラル通商のホームページ http://www.gentrade.co.jp/ □製品情報 http://www.gentrade.co.jp/sennheiser/headphone/pxc300.html ■ ソニー「MDR-NC32NX」
このタイプの製品はソニーを始め、各社が従来から発売はしているのだが、イヤフォンのほかにNC処理や電池を収めるユニットが別途必要になるという弱点があった。最近はユニットも小型になったが、それでもイヤフォンとオーディオ機器の間に1つ異物が挟まるという状態からは脱せない。 そこで本製品は、「iPod」などのオーディオプレーヤーを首にかけて使うスタイルに着目。オーディオプレーヤーと一緒に、NC用のユニットも首から提げてしまえばいいという発想だ。首からNCユニットとスイッチをぶら下げ、そこにオーディオケーブルとポータブルオーディオプレーヤーを引っ掛けるヒモを用意した。これがあれば、NCユニットという“邪魔もの”を気にすることなく利用できる。これをあえて携帯ゲーム用として使うとどうか、という視点で話を進めていきたい。 外見的には、カナル型のイヤフォンは最近は珍しくないものの、外部の音を集音するマイクがくっついている。さほど大きくはなく、うまくケーブルと一体にしたデザインになっているので、極端に目立つということはない。どちらかというと、首の後ろにある電池入れの出っ張りが気になる。素直にNCユニットと一緒に首から提げる形でもよかったのかもしれないが、重量バランスを考えると、着け心地としてはこちらのほうがいいのだろう。 NC性能については、NC機能の付いていないカナル型のイヤフォンを“簡易NCイヤフォン”として使っている人もいるくらいなので、着けるだけである程度遮音される。電車の中でもNCをONにすることなく、ある程度は騒音を塞ぐ状態にはなる。ただイヤーピースがきちんと耳を塞いでいないと満足な遮音性が得られないので、同梱されている3つのサイズのイヤーピースを付け替えて、自分に合うものを試しておくといい。ちなみに筆者は標準のMサイズでぴったりだった。 NCをONにすると、ぐっと低音が減る。サイズは小さいが、カナル型であることもあいまってか、今回紹介したNCヘッドフォンと同等かそれ以上のNC効果が得られていると感じた。電車の中でも十分にゲームの音に集中できるし、オフィスで使えば騒音も消えて快適だ。人の声はそれなりには聞こえるが、カナル型という物理的効果もあるためか、そこそこカットされている。 1点気になるのは、「サー」という高い音のホワイトノイズが少し聞こえること。実は筆者は、本機の旧型となるNCイヤフォン「MDR-NC10」を10年以上前に買って持っており、そのときにもこの音が聞こえた。これは本製品だからというわけではなく、NCイヤフォンでは共通の問題である。「MDR-NC10」から比べると、ホワイトノイズも低減されてはいるが、まだ聞こえるレベルに留まっている。ただ、ゲームや音楽を流してしまえば、まず気にならない程度の大きさだ。周囲の騒音が減るメリットを考えれば、我慢というほどでもない音といえる。 音質は高音、低音とも派手さはなく、無難に出ているという感じ。高級ヘッドフォンと比較できる質ではないが、NCのせいで音質が落ちていると感じるようなことはなく、騒音下で使うことを考えれば十分なもの。特に高音で尖った音がするわけではないので、聴き疲れすることはないだろう。NCのON/OFFで、音質はあまり変わらず、OFFでも普通のイヤフォンとして問題なく聴ける。 イヤーピースは前述の通り3種類あるので、合うものを使えばいい。シリコン素材で柔らかく、ぴったりとフィットしてくれる。慣れないうちは内側からの圧力が不快に感じるかもしれないが、使っているうちにあまり気にならなくなるはず。ただ長時間使っていると、耳が痛くなってくることがある。ちなみにイヤーピースは単品販売もされているので、取れてなくなった場合も補充はできる。 首周りもシリコン素材を使っており、見た目の割には着け心地がよく、直接肌に当たっても気持ち悪さはほとんどない。首の後ろの部分にある電池が重く、後ろにずれていってしまうので、いっそネックレスのように服の下でかけてしまってもいい。 さて、肝心のゲームを接続してみると、面白いことに、NCユニットの位置がちょうどゲーム機を持つ高さになる。そこからオーディオケーブルが出てくるので、ユニットが邪魔にならず、重さも感じることもなく、驚くほどゲームのスタイルにフィットする。見た目にはちょっと短く、延長ケーブルが必要かとも思っていたが、全くの杞憂だった。オーディオケーブルは巻き取り式で15cm程度伸ばせるので、体格やゲーム機に合わせて調整できる。 携帯性という面では、首の部分がシリコン素材で若干曲がりにくいものの、かなり曲げても問題はなく、コンパクトに収納することは可能。特にケースなどは付属していないので、かばんのポケットに入れるなり、小さなケースを用意するなりするといいだろう。衝撃に対してもかなり強そうで、乱雑に扱っても問題はなさそうだが、首周りの輪と耳へのケーブルがあるため絡まりやすい。あとはイヤーパッドが取れてなくならないように注意したい。 電池は単四電池を1本使用し、前述の通り首の後ろにあたる部分に入れて使う。
NCイヤフォンで問題になるNCユニットが邪魔にならず、またゲームプレイ中にイヤフォンケーブルが画面などにかかる心配がないというのが、意外と快適な環境を作ってくれる。もしネックストラップタイプは嫌であれば、普通のイヤフォンタイプの「MDR-NC22」という製品もある。NC性能やイヤフォンの形状は変わらないので、好みに合わせて選ぶといい。
□ソニーのホームページ http://www.sony.co.jp/ □製品情報 http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=25965 http://www.ecat.sony.co.jp/avacc/headphone/acc/index.cfm?PD=25449 NC効果を考えれば、オーバーイヤータイプがいいのではないかと思っている人も多いと思う。しかし実際に試してみると、それほど大きな差はないし、何よりそれほど強いNC効果がなくても、電車内などの騒音下でのプレイ環境は劇的に改善する。「モンスターハンターポータブル 2nd」などのゲームをプレイしていて、音がきちんと聞こえないために普段の調子がでず、ミスをしてしまってストレスを感じたことがある人は、購入を検討する価値があるはず。
なおNCヘッドフォンを電車内で使用した場合、多かれ少なかれアナウンスも聞こえにくくはなる。特にゲームを大きな音でプレイし、かつ熱中していると、目的の駅を通り過ぎてしまうこともあるかもしれない。快適だからといっても肝心なことは忘れないように、楽しくゲームをプレイしていただきたい。
(2007年12月11日) [Reported by 石田賀津男]
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