★PCゲームレビュー★
「Half-Life 2: The Orange Box」を100%楽しもう
長時間のやり込みに耐える傑作2作品を一挙紹介
「Team Fortress 2」 & 「Portal」 |
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- ジャンル:FPS
- 開発元:Valve
- 発売元:Valve、サイバーフロント
- 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
- 価格:49.90ドル(英語版Orange Box)、8,925円(日本語版Orange Box)、6,825円(日本語優待版Orange Box)
- レーティング:ESRB:Mature(17歳以上)
- 発売日:10月9日(発売中)
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「Half Life 2: Episode Two」に引き続き、「The Orange Box」同梱タイトルのレビューをお届けしよう。今回紹介するのは「Team Fortress 2(TF2)」と「Portal」の2作品。どちらもリリース前から評判の高かった作品で、これらのタイトルのために「The Orange Box」のリリースを待ちわびたユーザーも多いことだろう。
実際に箱を開けてみれば、どちらも期待にそぐわぬ傑作だった。往年の「Quake」MOD「Team Fortress」のリバイヴとなった「TF2」は、イラスト風の斬新なグラフィックスの目新しさだけでなく、ゲーム性もしっかり作りこまれて長時間のプレイでも飽きが来ない面白さ。一方、「Portal」にいたっては基本のゲームのアーキテクチャ自体が完全な新機軸。パズル的に計算され尽くされたマップデザインが無数の攻略方法を生み出し、近年まれに見るほどやり込み甲斐のあるゲームに仕上がっている。
■ 往年のチーム戦FPSが再来! 古くてシンプルなのにとっても新しい、やり込む程に深まる面白さ!! ~「Team Fortress 2」
「Team Fortress 2」は、マルチプレーヤー専用のチーム戦FPSだ。その名の通り、この作品のルーツは初代「Quake」の人気MOD「Team Fortress(TF)」で、派生バージョンを除いた正当な後継作とすれば実に前作から10年ぶりの登場である。この「TF2」の存在がはじめて公表されたのは'98年頃で、開発期間はなんと足掛け9年ということになる。これほどファンを待たせたゲームも珍しい。
ちなみに最初に公開された「TF2」は海兵隊ライクな兵士たちが戦うリアル系FPSのイメージだった。だが実際に世に出た製品は、意外にも、イラスト風のレンダリングが印象的なコミカル系FPSとなった。この路線変更は、初代「Quake」時代を知っているプレーヤーにしてみると「『Quake』特有のバカっぽさを再現していて素晴らしい」ということになるようで、評判はすこぶる良い。この部分、ニュアンスが伝わりにくいので若干補足しておくと、初代「TF」では「Quake」のキャラクタモデルがそのまま使いまわされていて、メディックは斧を振り回して味方を回復していたのだ。今見ても異様すぎて笑える。
そんな古いゲームのDNAを継承して装い新たに作り起こされた本作は、昨今の複雑なチーム戦FPSと比べると感動的なまでにシンプルだ。基本ルールは陣地を正面にした押し合いで、とにかく敵を倒しまくるだけでもチームへの最大限の貢献となる。また初代「TF」から継承されたプレーヤークラスはそれぞれの得意分野が明確で、違いは敵をどのように倒すかというスタイルの部分に集約されている。難しいことを考えずにお祭り気分でプレイできてしまうのだ。それでいて大味さとは無縁の精妙なゲームバランスであり、ストイックなスポーツ系FPSの基本である「照準の速さ巧さ」を追求するプレイにもしっかりと応えてくれる。
【Team Fortress 2】 |
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「BLU」、「RED」の2チームに色分けされたマップで、コントロールポイントを巡って争うのが基本的なルールだ
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イラスト風のグラフィックスに加えて手狭なマップで戦うこともあり、ゲームの雰囲気はとても賑やか。お祭り騒ぎの気分だ
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最近のゲームでは珍しい徹底したゴア表現も、コミカルな表現だからグロテスクさよりも可笑しさがこみ上げてくる。デスカムではどれが自分のパーツかを教えてくれる新設設計
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・初代「Team Fortress」から継承されたゲームシステムを現代風にアレンジ
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コントロールポイントルールでは、敵陣の最終ポイントを抑えればラウンドに勝利できる。チームと協力しながら隙を突こう
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初代「TF」でおなじみの伝説的マップ「2fort」。CTFルールで戦う
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プレーヤークラスの選択は、ゲーム中いつでも行なえる。戦況に合わせてチームに必要なクラスを考えよう
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グラフィックスの面白さについてはスクリーンショットを見ていただくとして、まずは基本的なゲームシステムの紹介をしよう。基本路線は初代「TF」をそのまま受け継ぎ、2チームでマップ目標を争う対戦形式だ。1ゲームの標準的な参加プレーヤー数は20~32人程度で、現在国内でも多数見かける標準的なサーバーでは22人または24人制を採用しているところが多い。
マップによって変わるゲームルールは大別すると2種類。ひとつはマップ中に2~5個配置された拠点を占領していく「コントロールポイント」ルールだ。拠点は「RED」と「BLU」の2チームに分かれた両陣地の間に連続的に配置されており、相手陣地に向かって順番に攻略しなければならない。このあたりは以前紹介した「Enemy Territory: Quake Wars」に似ていて、いちどに1箇所の陣地が争奪対象となるため戦闘の集中度が極めて高く、ゲーム時間を通じて常に激しい争いになるのが利点だ。拠点を奪取するには範囲内に一定時間立つだけでよく、これもまたシンプル。
もうひとつのルールは、初代「TF」で初めてFPS界に導入されたともいわれるキャプチャー・ザ・フラッグ(CTF)ルール。相手陣地に侵入し、最深部にある機密情報の入ったスーツケースを奪い、味方陣地に運び込まなければならないというものだ。こ
のルールが楽しめるのは初代「TF」から再登場となる「ctf_2Fort」マップ。往年の名プレーヤーならば懐かしい気持ちにならざるを得ないだろう。
プレーヤークラス制も初代から継承されており、「スカウト」、「ソルジャー」、「パイロ」、「デモマン」、「ヘビーガイ」、「エンジニア」、「メディック」、「スナイパー」、「スパイ」の9種類。筆者のお気に入りは足の速い「スカウト」。高速で回り込みながら武器のダブルバレルショットガンを次々にヒットさせていくプレイは、初代「Quake」を彷彿とさせるスピード感があって心地いい。ゲーム開始直後、スピードを生かして最初に敵と接触するという大役もある。
ちなみにゲーム中のクラスチェンジはいつでも可能で、その場合いったん死亡してから再出撃という方式になっている。チームとして攻撃や防御が必要な各局面で最適なクラス構成は異なってくるので、戦況を読みながら必要なクラスへチェンジしていくという戦略性も必要だ。以下、簡単に各クラスの特徴を紹介しよう。
【クラス紹介】 |
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ゲーム中最速のスピードを誇るスカウト。接近戦が得意で、陣地を2倍の速度で占領できる
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4連発のロケットランチャーを装備したソルジャーは、攻防両面で活躍できる万能選手
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火炎放射器を装備するパイロは狭い通路に殺到した敵を一度に焼き尽くせる接近戦クラスだ
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デモマンのグレネードランチャーは唯一の間接攻撃兵器。敵を死角から攻撃できるのが強み
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ヘビーは持ち前のタフさとガトリングガンで前線の押し上げに最適。メディックと一緒に行動しよう
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エンジニアが設置するセントリーガンなど各種設備はチームを強力にサポート。上級者向けのクラスだ
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メディックは回復光線を出すメディガンを使って味方を回復。チーム全体の底力をアップする
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スナイパーは防御的なサポートクラス。敵の攻撃戦力を遠くから削るのが主任務だ。やや上級者向けかも
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敵の防御線を崩壊させるのに欠かせないのがスパイ。変装して敵の背後に侵入、効率的な破壊工作をしよう
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・同梱マップは厳選6種類。マップ毎に異なるルールで変化のあるプレイを楽しめる
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ゲーム開始時には、マップルールの簡単な説明を見ることができる。慣れないうちはここで概要を把握してゲームに入ろう
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マップの最初は1分間のセットアップタイム。攻撃側のゲートが開く前に、防御側は必要な準備を整えよう
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チーム戦のFPSでは、繰り返しプレイするマップの良し悪しも重要なポイントとなる。本作に同梱される公式のマップは全部で6種類と、数はそれほど多くない。これについてはインゲームの「開発者による解説」モードで事情が明らかにされており、それによると特定のマップを繰り返しプレイするというプレーヤーの特性を重視し、調整に調整を重ねたマップを厳選するという明確なポリシーがあったようだ。
実際のマップの出来としては、筆者なりに長時間プレイして判断するところではどれも秀逸。なかでも戦闘が集中して面白いのは、5つの拠点を取り合う「cp_granary」と「cp_well」の2マップ。これらのマップは両チームが正面から押し合う形式の正対象ルールで、マップ中央の拠点を取ったチームはリスポーンポイントが前進するため、ゲーム開始直後の押し合いに勝ったチームが有利な状況となる。他方のチームがいかに劣勢を覆すか、プレーヤーの射撃や戦いの組み立てなど実力が問われるマップなのだ。
ルール的に面白い試みがされているのが「tc_hydro」マップ。このマップは全体が6つのテリトリーに分割されていて、初期状態では両チームが3つのテリトリーを保有している。コントロールポイントルールで複数ラウンドを戦い、最終的に全てのテリトリーを占領したチームがゲームに勝利するというルールだ。
各テリトリー内にはRED、BLU両陣営に各1個の拠点しかないので、最初の押し合いで圧倒すればわずか数十秒で勝負がつくこともあるが、全テリトリーを獲得しない限り別のテリトリーでラウンドが繰り返される。ラウンド毎に戦場構成が変化するので、毎回の戦略に変化が出て非常に面白いマップとなっている。
いずれのルールでも共通しているのが、両チームが粘って全拠点を確保できないままタイムリミットを過ぎてしまうと復活無しの「サドンデス」になるということ。これはいったん全員がリスポーンして開始される数分のラウンドで、相手を全員倒すか、逆に倒されるかという、純粋にFPSプレーヤーの腕が問われる戦いだ。自分が味方チームの最後の生き残りになってしまったときに、敵を複数倒して逆転!なんていう展開になれば熱いことこの上ない。
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プレイするたびにマップの構成が変わる「hydro」マップ。全テリトリーを制圧するまでゲームが続く
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「dustbowl」マップはBLUチームが攻撃、REDチームが防御という明確な区別があるマップだ。BLUチームが勝利するためには3分割されたステージを全て勝ち進む必要がある
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・チーム戦FPSとして出色の出来。「The Orange Box」で一番遊べるタイトルになるかも?
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メディックで味方を回復し続けていると「ウーバーチャージ」が溜まっていく。100%になれば10秒間の無敵が発動!敵陣に突っ込もう
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強敵出現! 同じ相手に何度もやられるとは情けない、次の出撃でしっかりリベンジしてやろう
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本作のプレイにおいて実際にやることは、ゲームスタートするなり敵陣に向かってひた走り、出会った敵とやりあって陣地を確保、回復アイテムを拾ったり、メディックに回復してもらいながら戦闘を継続してひたすら前進していくということだけだ。直接戦闘が主任務でないクラスでも、メディックならメディガンで味方の体力をひたすら回復、エンジニアならたった3種類の設置物(セントリーガン、ディスペンサー、ポータル)を設置して、あとはセントリーガンをレンチでガンガン殴り続けるだけ。シンプルすぎるほどシンプル、だけど面白い。
面白さのワケは、やはりマップの出来のよさもさることながら、アクションゲームとしてFPSの基本に忠実に作られていることだ。移動・射撃ともにプレーヤー操作に全く忠実な動作特性だから、一瞬の判断や正確さがプレーヤーの戦績を決めていく。他のゲームに比べると決して広大といえない手狭なマップの中で、しかも戦況によって限定された戦場で、接近戦でライバルとウデを競い合う。射撃・回避・巧妙さといったFPSのプレイに重要なスキルが丸裸になることで、ウデをいくら磨いても追求の意欲が途切れることはない。これこそ本作が初代「Quake」のMOD時代から受け継いだFPSの本質的な楽しさだ。
このあたりのプレイ意欲を刺激する演出にも注目しよう。敵に倒され、再出撃してみたらまた同じ敵にやられてしまったときには「新たな強敵出現!」と相手キャラクターの頭上にアイコンが表示される。逆に自分を倒した相手を次の出撃ですぐに倒せれば「リベンジ!」となって実績解除にも貢献するという按配だ。連続して相手を倒していくと当然自分に対して「強敵」の意識を持つプレーヤーが増えてくるので、ますます気が抜けない戦いになる。「Team Fortress 2」は、楽しみながら腕を磨いていきたい、そんなゲームに仕上がっているのだ。
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素早いスカウトで敵の背後から金属バットで奇襲!ほぼ一撃で倒せる
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エンジニアとして適切な位置にセントリーガンを設置、皆で殴って素早くアップグレード
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パイロの火炎放射は設置物に近づく敵スパイを燻り出すのに最適だ
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敵に変装したスパイは味方にはお面をかぶっているだけに見えるので、誤射せずに済むのだ
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■ これが新機軸のファースト・パーソン・サイエンス!? ~「Portal」
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設置したふたつのポータルの間を、ひとつの箱が延々と落下し続ける。現実にはありえない、けれども物理法則には従っている不思議な光景
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ジャンルはFPSでも“シューター”ではなく“サイエンス”。そんな表現をしたくなるのが「Portal」という作品だ。ゲームの基本メカニクスは単純明快、「入り口と出口のポータルを作って、歩いては到達できないポイントへ進んでいく」というもの。プレーヤーに与えられた唯一の武器(?)である「ポータルデバイス」を使い、空間を科学してパズル的謎解きを解決していくというゲームなのである。
ちなみに「Portal」の舞台となっているのは「Half-Life」の世界だ。ここはBlack Mesa研究所とはライバル関係にあるAperture Scienceの訓練施設。マッドサイエンティストの巣窟である当研究所では、空間と空間を結ぶという怪しげなデバイスの研究が進められていた……。そんな中で訓練生の一人となってしまったのがプレーヤーの立場で、なにやら不安げなムードが漂うナビゲーションコンピューター「GLaDoS」の指示に従いつつ、訓練コースのクリアを目指していくというお話だ。
ポータルの基本的な働きは、ブルーとオレンジの2つのポータルで空間が繋がり、その間の距離や障害物を完全に無視して行き来できるということだ。壁や床や天井などコンクリート製に見える表面ならどこにでも、ポータルデバイスからポータルを射出して設置することができ、そのポータル間を行き来するときのプレーヤーの速度や角度はそのまま保持される。この辺りの「ポータル」の特性は、序盤の簡単なステージで学ぶことができ、「ポータルデバイス」の完全版を手に入れる頃にはほぼ理解できることだろう。
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ゲームは被験者ルームからスタート。状況を把握できないまま、音声ガイダンスが流れる
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部屋に閉じ込められたと思いきや、部屋の側面に最初のポータルが開く。空間を通して自分の姿が……
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箱をスイッチに載せれば扉が開き、次の空間へ進める。もう試験は始まっているのだ
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GLaDoSは何かにつけて表現が正確で大仰だ。落ちてる箱は「Aperture Science 加重格納キューブ」、ボタンは「1500メガワット Aperture Science 強化超衝突スーパーボタン」というらしい。ただのボタンなのに
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パズルを解いて先に進んでいくと、ナビゲーションコンピューターおかしさに気がついてくる。無機質で神経質でサディスティックなだけならいいが、肝心なことに被験者の情報が入力されていない
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・ふたつのポータルを使って空中を舞う! 空間を支配する者は物理法則も支配する
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ポータル間で運動量が保持される事実については、音声ガイダンスによっても解説される。高いところからジャンプして、壁から飛び出そう
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世にも奇妙な無限落下ループ。天井から落ちて、床からまた天井に落ちて、永久に落ち続ける
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人っ子ひとり居ない施設の中で唯一の話し相手となるののは、肝心なことはノイズになって聞こえないというバグ持ちの疑いのあるナビゲーションコンピューターGLaDoS。彼女の無機質で皮肉たっぷりなガイダンスに導かれてステージを進んでいくと、ゲーム内容はだんだんと難しくなっていく。単純にポータル間を行き来するだけでは解けなくなってくるのだ。中盤以降のステージで必要になるポータルへの理解として、通り抜けるときに「物理的な運動量が保持されたままになる」ということを覚えておこう。
これを応用すると、高い壁にポータルを開き、地面にもうひとつポータルを開いて飛び込み、壁から飛び出したらすぐさま着地点に新たなポータルを開いて落下速度を維持したまま再び壁から飛び出すことで、高い障害物を飛び越えることができる。このテクニックは「ダブルフリング」と呼ばれるもので、プレーヤーがこのワザに気付くことでステージの攻略法が一気に広がってくる。パズルゲームとは思えない非常にダイナミックな動きで、ポータルの仕組みをよく理解していない人が傍目から見ると「何をやっているか全くわからない」という愉快な代物でもある。
ステージの解法とはあまり関係ないが、天井と床にポータルを開いて無限に落下していくこともできる。対面する二つの面にポータルを開くと合わせ鏡のような状態となるが、決して空間が増えたのではなく、ひとつの空間が別の方向で繋がっているだけ。摩訶不思議すぎる光景である。ともかくこの仕組みを使って、「遠隔地にある箱を取り出す」、「床から天井に飛び降りる」、「壁に飛び込んで床から飛び出す」といった現実には絶対不可能な動きも、ポータルという空間を結ぶ装置の自然な帰結として使いこなせるようになるだろう。ちょっとした超能力者気分を味わえるというわけだ。
ゲーム後半になるとちょっとした戦闘も味わえる。敵、というわけではないが、プレーヤーの行く手を阻むのは設置型の自動タレットたちだ。タレットはつるっとした質感で、「Half-Life」本編の雰囲気とは全く違ったかわいらしい雰囲気。プレーヤーが正面に立つと容赦なく撃ち込んでくる冷血さと、プレーヤーによって持ち上げられると「おろして!いたい!」とわめくキュートさが同居。もちろんパズルのギミックとしては手応えのある相手だ。持ち上げてブン投げたり、設置面にポータルを設置して、別の空間に落っことしてやろう。このあたりは「Portal」開発チームのセンス爆発といった感じで、ゲームの摩訶不思議な雰囲気も相まってとても楽しめる。
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「ダブルフリング」テクニックの例。壁の高い位置にポータルを置き、他方を床に開く。床に飛び込むと壁から出てくるので、すばやく位置を調整して再び床のポータルに落ち込む。すると物凄い勢いで壁から飛び出して、障害物を乗り越えられるという寸法だ
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本作でトップを争う「萌えキャラ」であるタレット。上から物を落としてぶつけたり、地面に穴をあけて転がしたりと、いろんな方法で遊んであげよう
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・やり込み甲斐のありすぎるボーナスマップモード。記録を目指して繰り返し挑戦しよう
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本編をクリア後挑戦できるようになるボーナスマップはやり込み甲斐あり。いちどは全部自力で攻略してみたいところだ
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本作の「実績」はいろいろあるが、全てを解除するためにはチャレンジモードの完全クリアが必須。本編クリアよりも長い時間がかかるかもしれない
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Aperture Scienceの残した狂気の訓練施設を乗り越える通常のゲームモードをやり終えても「Portal」は終わらない。クリア後アンロックされるふたつのボーナスマップモードが待ち構えているのだ。ボーナスのひとつ「Advanced Chamber」モードは、それまでプレーヤーがクリアしてきたいくつかのステージをさらに難しくしたもの。簡単にクリアできたステージも、天井や壁の大部分がポータル設置不可となったり、床が毒液に満たされていたりと、一筋縄の攻略法ではクリアできない代物になっている。ポータルの高度な活用を試されることになるだろう。
他方の「Challenge Map」モードは、通常難易度のステージをいかに効率よくクリアするかを目指すゲームモードだ。各ステージには「最小ポータル」、「最短時間」、「最小歩数」の3種類のチャレンジが用意されていて、クリア成績に応じてブロンズ・シルバー・ゴールドと3種類のメダルを獲得できる。全ての実績を解除するには、全マップ・全チャレンジでゴールドメダルでのクリアが必要なのだが、これが本当に難しい。
筆者は「Challenge Map」モードにすっかりはまってしまって、全マップでのゴールドメダル獲得を目指して相当やり込んだ次第だ。比較的、筆者としてはラクに達成できたのは「最小ポータル」のチャレンジ。これは開いたポータルを再利用する計画と、マップ内でポータルが開ける場所、開けない場所の特性をしっかりと把握すれば達成できるので、比較的すぐに攻略法を発見することができた。
他方、繰り返しの凄まじいやり込みを求めるのが「最短時間」のチャレンジである。初回のプレイで軽く30分はクリア方法を模索したようなステージを、わずか1分足らず、ものによっては10秒でクリアせよという怒涛の条件。これを満たすためには3つのスキルを磨く必要がある。
ひとつは、ポータルの使い方としてプレーヤー自ら出入りするだけでなく、箱などのオブジェクトだけを行き来させることもできるという使い方を理解すること。2つめは、移動中の運動量を無駄にしないような位置にポータルを開く正確さの体得。3つめは、一番大事なことだが全ての操作を最高速で行なうということ。ダブルフリング、トリプルフリングは当たり前、スタート地点でジャンプしてから一度も着地せずにゴールへ到達するステージすらある。何度でもやりこんで、最善のプレイを模索しよう。このプロセスが最高に楽しいのが本作の魅力なのだ。
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スピードチャレンジモードの「Chamber 13」攻略例。ゴールドメダルを獲得するためには19秒以下でクリアする必要がある。まずは移動量を最小限に抑えるため、足元に開いたポータル越しに箱を引っこ抜いて横のスイッチに設置する
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次に、開いた扉越しに次の部屋の天井を撃ってポータルを開き、足元のポータルを再利用して箱を持ちながら飛び込んで次のスイッチに箱を置く
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次のスイッチへジャンプで飛び移り、ゴールへの扉が開いた瞬間に壁面を撃ってゴール側にポータルを開く。地面に飛び降りながら入り口のポータルを開いて、そのままの勢いでゴール。これで目標の19秒以下を達成できたが、世界には最短7秒という記録があるようだ……筆者はまだまだ修行が足りない
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■ 2本の傑作「Team Fortress 2」と「Portal」を楽しめる「The Orange Box」。FPSファンなら迷わず買い!
以上、前回の「Half-Life 2: Episode Two」レビューから引き続き、「The Orange Box」を構成するふたつの新作タイトルをご紹介してきた。パッケージ全体を評価するとすれば、「The Orange Box」は非常にお買い得なパッケージだ。「Episode Two」についてはやや物足りなさもあったが、「Team Fortress 2」および「Portal」はどちらも新鮮な楽しみに溢れており、FPSファンならずともPCゲーマーならば安心してお勧めできるクオリティを持っている。
それぞれを単体で購入すると、Steam直販価格で合計およそ80ドル、日本円では軽く1万円を越す価格になってしまうところ、サイバーフロントから提供されている「Half-Life 2」所有者向けの優待パッケージなら税込み6,825円で購入できる。これは単体のソフトとしてみればチープでもないが、リッチな内容を考えるとお得感も出てくるという心憎い価格設定。「Half-Life 2」本編も付属する通常版は、これからPCゲームを楽しもうと考える方にもお勧めできる。
さらに「Team Fortress 2」に関して言うと、最近のFPSとしては珍しくユーザーメードのマップも順次リリースされている状況だ。「Portal」についても、開発元からボーナスマップが今後追加されていくという情報もあり、どちらも箱出しの状態から変化を加えつつ、長く楽しめることになりそう。これらの追加マップのリリース状況を見てからでも遅くはないので、この秋最大の目玉パッケージといえる「Orange Box」の購入を検討されてはいかがだろう。間違いなくイチオシである。
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【Half-Life 2: Episode Two】
- CPU:Pentium 4 1.7GHz以上
- メインメモリ:512MB以上
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□「Half-Life 2: The Orange Box」の公式ページ
http://www.cyberfront.co.jp/title/hl2_orange/
□関連情報
【10月25日】PCゲームレビュー「Half-Life 2: Episode Two」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071025/hl2ep2.htm
(2007年10月26日)
[Reported by 佐藤“KAF”耕司]
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