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★PCゲームレビュー★

相棒アリックスに不慮の事態が!?
科学者ゴードン・フリーマンの物語は続く

Half-Life 2: Episode Two

  • ジャンル:シングルプレイFPS
  • 開発元:Valve
  • 発売元:Valveサイバーフロント
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • 価格:29.95ドル(英語単体版)、49.90ドル(英語版Orange Box)、8,925円(日本語版Orange Box))、6,825円(日本語優待版Orange Box)
  • レーティング:ESRB:Mature(17歳以上)
  • 発売日:10月9日(発売中)



 10月9日、Valveの新作が一度に楽しめるというパッケージ「Half-Life 2: The Orange Box」が発売された。このパッケージに含まれる新作は、「Half-Life 2: Episode Two」、「Team Fortress」、そして続編でない完全新作の「Potal」の3本。パッケージには旧作「Half-Life 2」および同「Episode One」も含まれており、一種の抱き合わせ商法であるもののお得感はある。

 今回のレビューでは、「The Orange Box」のフラッグシップタイトルである「Half-Life 2: Episode Two」のプレイ内容をご紹介しよう。本作では、前作「Episode One」のラストでゴードン・フリーマンの乗り込んだ列車が要塞の爆発に巻き込まれ破壊されてしまった、その直後のシーンから始まる。


■ 山林を駆け抜け、ホワイト・フォレストへデータパケットを届けろ。「Episode One」から続くアリックスとの共闘が描かれる

本作は「The Orange Box」に同梱。パッケージには、2本の旧作と3本の新作の計5本のタイトルが含まれている
今回は車で広大な山野を駆け巡る。コンバインの意図を挫くため、相棒アリックスの持つ「データパケット」をホワイト・フォレストへ届けねばならない
 「Half-Life 2: Episode Two」は、シングルプレイ専用のアクションアドベンチャーだ。ストーリーは「Half-Life 2」本編から続く一連の流れに沿っており、複雑な世界設定などを充分に理解するためには本編および「Episode One」のプレイがほぼ必須となっている。これは続きモノの苦しいところではあるが、今回発売された「The Orange Box」には「Half-Life 2」、「Episode One」と関連する全作が含まれているので、新しく「Half-Life 2」シリーズをプレイしようと考えるプレーヤーは「Half-Life 2」本編から順番にプレイしていくことをオススメしておきたい。

 さて、今回も「Episode One」をプレイした読者にはおなじみの展開で、アリックスとの二人三脚の戦いが中心となる。序盤、爆風で全壊した列車からアリックスに助け出されたゴードンは、破壊された要塞からのエネルギーが開こうとしている「超次元扉」を目にする。これが完全に開いてしまえば、侵略者であるコンバインの軍勢が大挙侵入することになり、世界の命運は尽きる。ゴードンは、そこでかつてアリックスが要塞から奪った「データパケット」のもつ重大な意味について知ることになるのだ。

 このような展開で、本作ではレジスタンスの基地「ホワイト・フォレスト」に「データパケット」を届けるため、アリックスと共闘しながらダンジョンや山野を駆け巡る構成となっている。ゲーム上の基本システムは従来の「Half-Life 2」から変わらず、グラビティガンを使ったパズル的な謎解きが随所に登場する。本編のバギーに変わる名称不明の新しい乗り物は操作しやすくスピードも速いが、突飛な能力はなくオーソドックスな代物だ。全体的なプレイ感覚は「Half-Life 2」そのものといったところだろう。従来からのファンであれば非常にスムーズにプレイできる。

ゲーム開始直後はムービーで前作のおさらいをする。ゴードンとアリックスは崩壊を始めたコンバインの要塞から重要なデータを回収し、脱出。最後に列車に乗り込んだ後、基地が爆発。巨大な爆風に飲み込まれた列車は吹き飛ばされ……

続きとなる「Episode Two」は、鉄橋にぶら下がって半壊した列車の中からスタート。相変わらず武器の類はすべて吹き飛ばされ、あるのはアリックスが見つけたグラビティガンのみ

要塞上空に開いた「次元扉」は、コンバインの軍勢にとって地球侵略の通路となる。食い止めるための鍵となるのは、アリックスが手にする「データパケット」だ

序盤。まずは小手調べとばかりに、グラビティガンを使ったゾンビとの戦闘から始まる。気の利いたやりかたで敵を倒すと、アリックスがいちいち褒めてくれるという演出が心憎い

・アリックス死亡? 新登場の強敵、「ハンター」との激しい戦い

アリックスの持つデータが重要な意味を持つことを告げるマグヌッセン博士。傍らにはおなじみのイーライ博士とクライナー博士の姿がある
 本作のストーリー上の転機は、「Episode One」リリース後に公開されていたプロモーションムービーでも明かされていたことで、アリックスの存在が鍵となっている。ある時点でプレーヤーは瀕死の彼女を救う為に戦うことになるわけだが、ストーリー展開上の節目となる部分になるだけに、ここでは詳しい説明は控えておこう。ただ言えるのは、この展開がゴードンとアリックスの絆を、単なる戦友以上のものに深めていくということだ。

 この展開の中でキーになるのが、仲間となるボーティガンツの群れと、新たな強敵「ハンター」だ。ハンターは生物とも機械ともとれない奇妙なクリーチャーで、コンバインの勢力に属するキャラクタである。非常にタフで、動きは素早く、レールガンのような強力な武器でゴードンを狙ってくる。

 こういった敵には複雑な地形で煙に巻きながら戦う、というのがシングルプレイFPSの常道とはいうものの、キャラクタのAIがなかなか秀逸で、プレーヤーがラクな戦いをさせてもらえることはそうそう無い。もうひとつの新しい敵である新種の「アントライオン」は、攻撃力の高い毒液を吐きかけてくる上に昆虫のような素早い横移動をするため、こちらもやっかいな相手だ。

 戦闘全般については、オーソドックスに銃で撃つか、それとも手近な物体をグラビティガンで投げつけるか、プレーヤーの判断次第でどのようにも戦える。このあたりの魅力は本作でも継承されていて、今回はさらにボーティガンツとの共闘も組み込まれている。ボーティガンツは敵を麻痺させる光線を放つので、タイミングよく止めを刺し、チームプレイで敵を倒そう。

「Half-Life 2」節が炸裂のパズル的仕掛けその1。坑道の出口が板で塞がれているので、まず目に付くトロッコをどうにかして稼動させ、出口を破壊。アリックスがいちいち褒めてくれる

パズル的仕掛けその2。目の前の装置に明らかに何か足りていないので、どうにかして足りないものを調達。仕掛けをクリアすると今度はボーティガンツが褒めてくれる。これが本作のプレーヤーのモチベーションを高める褒め殺しシステム

強敵「ハンター」。速い、強い、硬いと三拍子が揃った本作で一番やっかいな敵だ こちらもやっかいな「アントライオン」の幼生らしきクリーチャー。速くて痛い毒液を吹きかけてくる アントライオンの巣ではボーティガンツと共闘。敵をマヒさせてくれるので、その隙にグレネードを投げ込むなどして止めを刺そう



■ 前作から“微妙”に向上したグラフィックス。モーションブラー効果は演出シーンで効果的に使用

アウトドア表現に磨きがかかったのが本作で目に付く特徴のひとつ。旅の舞台は森林や山岳地帯がメインだ
ボーティガンツの皮膚表現は、細かい凹凸だけでなくしっとりとした質感もよく表現されている
 さて本作では、「Episode One」に続いてグラフィック上の表現が強化されている。プレイ上の印象としては、まずゲームの舞台が森林を含む広大な野外になり、フィールド全体が拡大したことが大きい。目新しいところでは序盤の舞台となるアントライオンの巣の洞窟で、幼虫を踏み潰したときの「プチュッ」という効果がキモチワルイながらも強く印象に残る。

 またテクスチャワークも向上している。フィールド表現はもちろんのこと、キャラクタの質感表現が微妙に変化したことにも注目しておきたい。特にボーティガンツの皮膚の質感が秀逸で、しっとりとした皮膚表面の表現が向上している。アリックスの髪など細かいところでも映像表現の向上が見られる。

 技術上の新しい映像表現としては、今回モーションブラー効果がゲームエンジンに追加された。ただしこれは「ロストプラネット」のようにゲーム全体の印象を決めてしまうほどには多用されておらず、ごく控えめな表現に抑えられており、手法としてもシーン全体に限定される方法のようだ。一見して気付くところとしては、プレーヤー操作が禁止される演出的なシーンで効果的に使われている。全体としてグラフィックス面をみると、全作から「微妙に」向上した、というところが妥当な評価になるだろう。

 このあたり、シングルプレイFPSの旗手として技術や演出の面で業界の最先端にあった「Half-Life 2」に続くタイトルとしては、ちょっと押しが弱い印象だ。確かにベースの「Source」エンジンの動作は軽く、カスタム設定により数世代前のマシンでもストレス無くプレイできる点には高い評価をしたい。しかし映像表現の面で、全く新しい技術や、「Half-Life 2」で受けたような衝撃的な新機軸は見当たらず、シリーズを長くプレイしている筆者としては少々寂しいところだ。

 ただ、あくまでもストーリーを楽しむメディアとしてFPSというジャンルを捉えれば、本作の持つ動作の軽さなどは大きなメリットといえるだろう。どんなに優れた映像やすばらしい演出があったとしても、動作が重く特定のハイエンドPCでしか楽しめないのであれば、そのタイトルの価値は低下してしまう。だから、単純に本作の方向性が間違っているとは言えない。

作で「Source」エンジンにモーションブラー効果が導入された。使い方としては極めて控えめで、普通にプレイしているとまず気がつかない。演出シーンで効果的に使われているようだ

どうしても印象に残ってしまうのが、アントライオンの巣で見かける幼虫。近づくと「プチュッ」と音たてて潰れる……。気持ちが悪いが、体液でヘルスがちょっとだけ回復してしまうので、みかけたら必ず踏み潰してしまうクセがついてしまった


■ シナリオは盛り上がりに欠け、「Half-Life」シリーズのファンにも今ひとつの内容か

今回も行く先々でレジスタンスメンバーと共に戦うことになる。このあたりもシリーズ共通の流れだ
初代「Half-Life」から長らく謎のままの男「G-Man」は、本作でもやはり謎のまま、正体が明かされることはない
今回のストーリーを急展開させるコンバインの切り札「アドバイザー」。次回作「Episode Three」で、この謎が解かれることになるのだろうか……
 今回Valveが「The Orange Box」として、本作「Episode Two」をパッケージ版としては単体発売せず、同梱タイトルの中の1作品という位置づけにした判断について考えてみたい。例えば「Episode Two」だけをプレイしたいユーザーにとってパッケージ版は、Steam直販価格で19.95ドルで購入できた「Episode One」と違い、全く関係ないタイトルも収録された49.90ドル(日本版は税込8,925円、『HL2』所有者向けの優待版で税込6,825円)のパッケージを購入しなければならないわけで負担が大きい。

 だがValveからは、Steam上で「Episode Two」単体版(29.95ドル)を含む、多様なバリエーションのソフトウェアパックがリリースされている。その中で代表的な新作の組み合わせとして「The Orange Box」が国内版も含め流通パッケージとなった理由は、「Episode Two」が続きモノであり、前作のプレイがほぼ必須で、技術的な目新しさはなく、単体のプレイ自体は5、6時間程度で終わってしまうという、単体のソフトとしては若干魅力に欠けるといった判断だろう。単体では押しが弱いので、それぞれに固有のファン層をもつ「Team Fortress 2」、「Portal」など他の注目作品と合わせてお得感のある価格帯で提供すれば、メーカー、ユーザーともに利益となる、という戦略に見える。

 このように考えると見え隠れする事実は、Valveが「Half-Life」シリーズだけで戦っている企業ではもはやないということになるだろう。現在、Valveが独自のゲーム戦略を展開する中で要となっているのが「Source」エンジンである。この柔軟性が凄い。まず「Team Fortress 2」や「Portal」は全く異なるタイプのゲームであるし、以前は「Lag Doll Kung-Fu」や「darwinia」といった、FPS以外のジャンルにも応用例があった。そうやってValveお抱えのデベロッパーたちは、「Source」エンジンを使って全く新しいゲームを作り続けている。

 これを考えるにつけ、Valveのゲームメーカーとしての強みは、もはや「Half-Life」シリーズというコンテンツだけにあるわけではない、と考えるのが妥当だろう。「Source」という様々なゲームを生み出せるエンジンに加えてSteamという強力な流通チャネルを持ったという強みもあり、ひょっとすると現物のパッケージ販売は余技のようなものになってきているのかもしれない。

 筆者は、上記のような企業としての体質の変化が、「Half-Life」シリーズに対するValve自身がもつ情熱の低下、ひいてはクオリティの低下というものに繋がらなければ良いが、などと考えている。今回「Episode Two」をプレイしてみて感じた、ボリュームの少なさ、インパクトの弱さという部分が、次なる「Episode Three」で全て覆されてしまうことを願いたい。

レジスタンスと共にアントライオンの群れを撃退する。本作で熱くなるシーンのひとつ 細かいところではアントライオンが泳げないことが発覚。ひとしきりもがいて動かなくなる 北へ向かうコンバイン軍の隊列。これからの戦いを予感させる演出で、続きが楽しみになる


ゾンビとの戦いのシーンでは、遠くにいるアリックスからの援護射撃が。これは「Episode One」でもあった展開なので、同じことを2回やったことについては賛否両論あるだろう

新型の車には隠しアイテムのありかを示すレーダーが搭載される。アイテムを見つけると「実績」が解除されるので、くまなく探してみよう


 以上、「The Orange Box」パッケージの一角をなす「Half-Life 2: Episode Two」の紹介を行なってきた。そしてパッケージを100%楽しむためには、同梱された残る2本の新作を味わいきってこそ、ゲーマー冥利に尽きるというものである。そこで次回レビューでは別稿として、本作に続いて「The Orange Box」を構成する期待のチーム戦FPS「Team Fortress 2」と、完全新機軸の期待作「Portal」のレビューをお届けしたい。

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    【Half-Life 2: Episode Two】
  • CPU:Pentium 4 1.7GHz以上
  • メインメモリ:512MB以上


□「Half-Life 2: The Orange Box」の公式ページ
http://www.cyberfront.co.jp/title/hl2_orange/

(2007年10月25日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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