|
株式会社ブログウォッチャーは10月5日、Wii用プロファイル入手ゲーム「チアフルタウン・オンラインゲーム(仮称、以下チアフルタウン)」の発表会を開催した。
同社は株式会社リクルートの子会社で、経済産業省が進めている「情報大航海プロジェクト」にて、「モデルサービスの開発と検証」を受諾。「プロファイルパスポート事業」を立ち上げ、その実証サービスの開発を行なっている。今回発表された「チアフルタウン」は、その第1段階となるもの。同社代表取締役社長の羽野仁彦氏が、その仕組みを説明した。
■ 「プロファイルパスポート」の橋頭堡となる「チアフルタウン」
そのユーザーの行動履歴を取る手段として、ゲームである「チアフルタウン」が使われる。ゲームからデータを取得するということについて羽野氏は、「リラックスした状態で情報を取得できる。現実の行動がゲームで示唆される」と説明した。 「チアフルタウン」は、WiiとPCで動作する俯瞰視点のゲーム。架空の街でプレーヤーキャラクタを操作し、街中に用意されているミッションやクエストをクリアしていく。クエストの中で選んだ選択肢や、NPCの毎日異なる質問に答えることで、ユーザーのプロファイルを収集、「プロファイルパスポート」のデータとして蓄積していく。 またゲームの中だけで閉じないことも特徴としており、実際にある場所に行って携帯電話のカメラで撮影し、指定されたメールアドレスに送信することで、ゲームのイベントが進む、といった仕掛けも考えているという。羽野氏は「ゲームというより、ユーザー参加型のイベントに近い」と語っていた。 このほか、NPCから「お菓子作りのうまい人を探している」というクエスト依頼を受けて、実際にお菓子作りのうまい友人をNPCに紹介するという仕組みも考えているという。これはSNSとデータを連携させ、ユーザーの中からお菓子作りの得意な人を探り出すための仕掛けになっている。これももちろん、「プロファイルパスポート」のデータとして扱われる。 現時点ではデータを蓄積することを主目的としており、その後はPCや携帯電話で実際に使えるクーポンを取得できるといった、「プロファイルパスポート」のデータを生かしたサービスも考えられている。ただ「チアフルタウン」としてはあくまでゲームとしてアプローチし、クーポンによる金銭的インセンティブではなく、クエストやミッション達成によるキャラクタの成長など、ゲーム的なモチベーション付けでゲームを続けてもらう仕組みを考えているという。 現時点では、Operaブラウザ上で動作するFlashとして開発されており、2月下旬から3月初旬にかけての2週間程度、数十人のモニターを募ってテストを実施予定としている。製品としての発売は2008年以降。価格は未定だが、Wii用のゲームソフトに近い値段にしたいとしている。
「チアフルタウン」のゲーム部分の開発は、株式会社トーセが担当。トーセは一般のゲームユーザーにはほとんど知られていないが、古くからゲーム開発を下請け専門の形で手がけている企業。日本のあらゆるゲーム会社とつながりがあるといわれるほど大規模に展開しており、最近では、数社のオンラインゲーム開発にも携わっている。
■ 「プロファイルパスポート」によるビジネスモデルと問題点 集めた情報を分析してできあがった「プロファイルパスポート」は、生産者に対してそのインフラを提供するという形でインセンティブを取る。またユーザーに対しては、「遠隔地で暮らす息子の生活のデータを受け取る」というようなサービスを提供することで課金する。また「チアフルタウン」などのゲームにおいても、ソフトの販売などによる収入を得る。 ビジネスの成功の鍵となるのは、どうやってユーザー情報を獲得するかにある。同社もこれを問題点としてとらえており、その1つの解となるのが「チアフルタウン」である。他にもFlashゲームを提供し、データを集めたいという。 ただ正直なところ、「チアフルタウン」自体に、現時点ではゲームとしての真新しさは感じられない。ビジネスの鍵を握る部分だけに、これには不安が残る。ほかには、既にサービスを行なっている他社のオンラインゲームに、「プロファイルパスポート」を適応するという方法も考えられるが、これについて羽野氏は、「そういったことができるかどうかは、一度このシステムを作ってから各社にお話をしたい」としている。まずはモデルケースとして、「チアフルタウン」で1つの形を整えるのが目標ということのようだ。
ゲームを入り口にするというアプローチは面白いとは思うが、ユーザーとしてはそれ自体に面白さがあってこそ遊ぶもの。遊んでもらえないことにはデータが取れないのだから、ここで転んでいては話が進まない。今後はゲームとしての作りこみがプロジェクトにおける最初の課題となるだろう。
また情報自体も、ユーザー自身が想像もできないところで趣味趣向を含む情報を収集するという企画に、果たしてユーザーの賛同が得られるのか。また情報を生産者の手に渡す際、どこを開示し、どこを伏せて渡すのか。デリケートな情報だけに、ポリシーのさじ加減が難しそうだ。
ただうまくバランスが取れれば、ゲームで集めた情報をゲームにフィードバックすることも可能だ。数あるゲームの中からユーザーに合った面白いゲームを紹介するのはもちろん、新たに始めたゲームの中で、プレイスタイルや性格に合った装備品を薦めたり、気の合いそうなプレーヤーを紹介するといったことも可能になるだろう。現在はまだプロジェクトの初年度ということで形ははっきりとしないが、今後の展開によっては、ゲームの面からも面白いものが見えてくるのかもしれない。
(2007年10月5日) [Reported by 石田賀津男]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|