|
23日に閉幕した「東京ゲームショウ2007」アークシステムワークスのブースレポートにて触れたとおり、同社のXbox 360最新作「GUILTY GEAR 2 -OVERTURE-」ゼネラルディレクターを務める石渡太輔氏のインタビュー記事をお届けする。 実は筆者、石渡氏と直接お会いするのは今回が初めて。ゲーム制作だけでなく、イラストレーション、作曲などマルチな才能の持ち主だけに「気難しい芸術家肌の人だったりするのかなぁ」と若干の不安を抱きつつ待ち合わせ場所のホテル内ラウンジにうかがったところ、そこにはお茶の水の楽器店、もしくはライブハウスやリハーサルスタジオの受付にいそうな、とても気さくなバンドマン系のお兄さんが広報氏と笑顔で迎えてくれた。
「あんまりかしこまったのは苦手なんで、お友だち感覚でお話しましょう」という石渡氏のお言葉に甘えつつ、インタビューはマッタリとした雑談から本題へと一気に流れ込んでいった……。
■ とりあえず作っちゃえ ~新作を生み出すには“勢い”が大事!?~
石渡太輔氏(以下:石渡) あのときは、3Dをやる気はさらさら無かったんですけどね(笑) あ、そうだ。甘いものとかどうですか? ボク、実はあのケーキが昨日から気になってて(前述のとおり、本インタビューはTGS会場近くのホテル内ラウンジで実施)。TGS取材も立ちっぱなしで疲れてるでしょ? 折角なんで、遠慮しないでください。食べながら本題に入っちゃいましょう。 ―― うわー、なんか気を遣っていただいてすいません。では……(後日談:取材に訪れた複数媒体のうち、薦められて本当にケーキを頼んだのは筆者だけ)って、こんな形でマッタリしちゃってて本当にいいんでしょうか……。 石渡 こうなった以上、ボクも遠慮なく食べますんで。インタビュー記事中の文章に、普通に「美味い」とか「モグモグ」とか、(笑)じゃなくて(食)とか出てくるの。新しい!(一同笑)。 ―― こういう流れで始めるのも大変アレですが……まずは全体的なところから質問させていただきます。まず最初に「3Dで行く」と決めたとき、社内的な反応はどうだったんでしょうか? 石渡 うちの会社は、かなりフランクですから。言い出しっぺが勝つ、みたいなところがありまして。「なんだ、作りたいんだ。じゃぁやれば?」みたいな感じで。 ―― 3Dで行くと決めたときは、どのような形で社内に通達するんですか? トップダウン的に知らせるんですか? それとも社内プレゼン資料を作って? 石渡 とりあえず企画書を作って「こんな感じでやろうと思うんだけど」という話をしたら、うちの社長の木戸岡が「へー、やれば?」って、そんなノリで始まりました。 ―― 新企画を通すときの手法は、メーカーさんによって色々ありますよね。上の人間の嗜好、社内政治、あるいはTVCMのコンテに細部まで口を出すクライアント的な厄介ごとが存在したり。そういうことはない? 石渡 うちの会社は、たとえば「企画がどこの部署を通って、6個目に到達すると動く」とか、そういう形ではないので。もちろん、ある程度のコンセンサスではありませんが、社員評価みたいなものはあります。今回の話に関しては、比較的最初のほうで結構決まってて。「そういうの作るんだったら、作りなさい」という“投げっぱなしジャーマン”なので(笑) 作り始めたら、相応の苦労はあるんですけど。うちの会社の“社風の良い部分”として、いきなりスタートしたという感じです。 ―― そこから開発メンバーの募集をかけるわけですか? それとも既存のチームに通達する? 石渡 企画がスタートしているときから色々なところに声をかけていて、専門学校にいって、ちょっと生徒を見繕ってきたりして。 ―― ……いきなり一本釣り!? 石渡 社内でも、社外でも。
石渡 ず~っとそういう形でやってきてたもんで。逆にいえばですね……モグモグ、美味い!(先ほどの“お約束”を履行して細かいギャグを交えてくる。ここで「あぁ、さっきのはタテマエではなく、石渡さんは本当にこういう人なんだ」と判明して安心する)。 あのですね。うちは社風がフランクなところもあるがゆえに、今回の「GG2」に関しましても、メインプログラマ以外はほとんど“ド新人なんですよ。いってみれば、フルスクラッチのプラモデルみたいなもんで「買ってきた製品を組み立ててヤスリをかけて塗る」というよりは「箱の絵を見て粘土で作る」みたいな感覚。3Dエンジンから何から、完璧に手作りなんです。 ―― アプローチとしては、相当な不安が……。 石渡 ありますよ、もちろん! 先ほどのフランクが、今度は裏目に出て「こんなに大変だとは思わなかった!」みたいなところもあったりします。 ―― そういう手法だと、最終的に出来上がるものが石渡さんのイメージと微妙に違ってくるケースもあると思うのですが? 石渡 正直、そういうところもあります。 ―― ある程度まではトレードオフの関係だと? 石渡 変な話、クリエイターにとってみれば、作れるっていうだけでありがたい話ですから。あとはもう「やれるところまでやるしかない」みたいな感じですね。 ―― 制作に参加される方は、みなさん「ギルティギア」シリーズのファンが多い? 石渡 そうとも限らないですね。そういって来られる方は、どちらかというと「2Dが作りたい」、「絵が描きたい」という子の方が多いです。 ―― では「GG2」で声をかけた際は「新作は3Dです」と切り出した時点で「え、2Dじゃないの!? じゃぁボクは違いますから」と断る人もいたり? 石渡 さすがにそこまで態度がでかい奴はいないですけど(笑) でもまぁ、人口としてはそっち(2D志向)のほうが多いですね。今回は主にプログラマに重点を置いて「どういうやる気のある子がいるだろうか」と。 ―― 3D作品ですから、当然3Dエンジンをしっかり作らないといけないわけですが。 石渡 本来はそうですね。本来は(笑)。 ―― 本来は、って!!(汗) 石渡 ボクらのビジョンとしても、もちろん「3Dエンジンを作る」ことが基盤にあるわけですが、やっぱりスタッフも新人とか集めていますから、試行錯誤の連続で、今の形になんとかたどり着いたという感じです。 ―― 途中で「これはもうやばいから、どこかから3Dエンジンを買っちゃおうか」みたいな話は出なかったんでしょうか? 石渡 そういうのも視野にはあったんですが、他所で3Dエンジンを買って作られた方の話をきいていたら、結局それを使いこなすためには「ある程度知ってる人間じゃないとダメだな」というところがあったんで。メインプログラマは、2Dから引き続きやってくれている鈴木という者なんですけど、彼が比較的色々なものに手を伸ばせるクチ。彼自身、3Dはほとんど経験がないんですけれど、非常に視野が広くて、色々なことにチャレンジして、すぐにできちゃうような才能を持っているんです。ボクらは海外のゲームを結構やるクチなんで、そのあたりから知識を手に入れて「こういう形で作ってみよう」と。 ―― ……いきなりゼロから3Dエンジン制作ですか。ある意味“見切り発車”ですよね? 石渡 いや、ある意味ではなくて、そのもの!(一同笑) 普通に考えたら無謀ですよね。ロケットスタートみたいなの。 ―― とはいえ、石渡さんの脳内で最終的な3Dエンジンのイメージはできあがっていたんですよね? 現時点の仕上がりは最終形に近いのでしょうか? 実は微妙に違っていたりとか……。 石渡 ん~~、そういう部分もありますね。表現のほうで、当初予定していたものより「もうちょっとここを伸ばしてみよう」みたいなところが途中で出てきましたから。当初だったら、スペキュラーマップ(光源に対するハイライト処理)というよりは「もう1枚レイヤーを重ねて従来型の光沢っぽくしよう」みたいな感じで作っていたものが、技術的な発見で「これ、今ならやれる」と増やしていったり。バンプマップ(凹凸効果)も、当初はやらないといっていたんですけど、やったり。時代も……作ってる期間中に結構変わってきて。(3D技術的に)これが主流だなぁ、とか。
石渡 企画から考えると、結構長いんですよ。4~5年。 ―― 2D作品と平行してやっていた? 石渡 はい。ボク自身「ギルティギア XX #RELOAD」かな? そのあとに「GG2」を考え始めていて「こういうのを動かそうと思う」と、機種選定などの準備期間を経て……実際にXbox 360で作り始めたのが、2年ちょっとかなぁ。 ―― プラットフォームにXbox 360を選んだ理由は? 石渡 時期的に見て、単純に次世代ハードっていうのが……モグモグ、ケーキ美味い(一同笑)。 えー、まじめな話をすると、ですね。試作段階の3Dエンジンは、もうちょっと前から動いていたんですけど。「GG2」は「サーバント」と呼ばれる配下のキャラクタを含めると、全部で50体以上が出てしまうんですけど、それぞれボーン構成をあえて違う形で作っているので、流用がほとんどされていない。 そういったものを、モデリングデータ、テクスチャデータなどを揃えると、少なくとも旧世代機では作りきれない。PCみたいな視野もあるんですけど、丁度いい時期にXbox 360があって、なおかつXbox LIVEに対するマイクロソフトさんの対応、ケアが手厚く「あぁ、これはもうベストなパートナーじゃないのかな」という形でして。 ―― パフォーマンスが開発要求を満たす反面、マーケティングの視点で不安を抱くことはなかったのでしょうか? 石渡 そうですね、今にして思えばたくさんあったはずなんですけれど、先ほども申し上げたとおり、ボクらはロケットスタートの人間なんで「できるところからやっちまおう!」みたいな雰囲気がありました。 ―― 先ほど会場でお話をうかがったんですが、当初はPS2で作っておられたとか? 石渡 試作みたいな形で動いていたんです。その当時のムービーは紛失してしまったんですけど。プリプロダクションみたいな形で動いて、上位更新していったような感じです。 ―― プリプロの時点で、今の形に相当近いものだった? 石渡 近いというか、コンセプト自体は同じなんですけど、今のものと比較すると、もっとシンプルですね。 ―― 社内はそういった過程を見てるから(3Dに)自然に慣れていくと思うんですけど、ファンの方々は相当驚かれたと思います。 石渡 そうですねぇ。某有名な掲示板とか(笑) 逐一確認してたりして。発表した瞬間は「なんで2Dじゃないんだ!!」みたな声が凄く多かったんですね。その気持ちも重々理解してますし、できればそちらもフォローしたいんですけど。しばらくそういう声が多かったんですけど、徐々に誌面などで情報が明かされていくうちに「これはこれで面白いんじゃないか?」って話が増えてきて、今は逆に肯定派のほうが多い感じになってくれましたね。 ―― 3Dアクションは、静止画だけ見るとイメージが伝わりにくい部分がありますからね。そういう意味では、オフィシャルサイトなどでムービーを配信する手法が有効なのでは?
石渡 9月25日から、Xbox LIVE マーケットプレースでプロモーションムービーが公開されています。その後もテーマアイコン、さらには10月30日に体験版を配信予定です。
■ デフォルトキャラクタは5人 ~一般的なRTSでいえば5種族に相当~
石渡 いえ、まったく同じです。あの世界観のなかで、主人公である「ソル=バッドガイ」が、よりストーリー面でクローズアップされていくという感じです。 ―― 時間軸的には? 石渡 「ゼクス」、「イグゼクス」以降の話になります。「ギルティギア」でジャスティスを倒すじゃないですか。そのあとに「ゼクス」、「イグゼクス」があって、さらにその数年後という感じです。同じ場所というと御幣がありますが、同じ時系列のなかにあります。 ―― 今発表されているキャラクタは5人ですが、これで全員ということになるのでしょうか? 石渡 そうですね。“デフォルト”で、5人です。 ―― 従来シリーズの感覚で入ると「あれ、少ない?」と感じられる人が少なくないと思います。 石渡 そういうふうに見られる方もいると思うんですけど、あくまでも「GG2」は「RTS要素のあるアクションゲーム」ではなく「アクション性の強いRTS」なんですね。そういう視点で見たとき「War Craft」シリーズと比較してもらえれば、5体もいれば十分なのではないかと思います。 ―― 格闘ゲームの視点で入ると少ないけど、実際にはそうではない? 石渡 そうですね。サーヴァントを含めると、結局50体以上になりますので。格闘ゲームの単位とはちょっと違って、RTSはキャラクタではなく“軍勢の種類”、“種族”が5つあるよ、と。RTSというジャンルのなかでは、頑張ってるほうじゃないのかなぁと思います。軍勢間でコンパチがないので、むしろ大変なことになってます。 ―― 今現在、公式サイトでは主人公「ソル」の情報しかありません。差し支えなければ、残りのデフォルト4キャラクタについて、簡単にご説明いただけますでしょうか? 石渡 わかりました。まずは主人公の「ソル」。RTSの部隊にあたる「サーヴァント」には“兵種”というものがあります。いわゆる機動兵、近接兵、重装兵みたいなジャンケンができる兵隊がいるんですけど、ソルは標準召喚できるサーヴァントに“機動兵”がいないんですよ。主人公なのに、結構バランスが偏っている。 ―― 機動兵が居ないということは、ソルはジックリ攻めていくタイプ? 石渡 というわけではなく、一番の特徴は“マスター自身の戦闘能力が高い”つまり、プレーヤーキャラクタの戦闘能力が高いので、小難しいことは考えずに自分でとにかく暴れ回りたいって人は、ソルを使っていただければ。 準主役的な存在の「シン」は、兵種がすべて揃っていて、サーヴァントの力が安定しているバランス型ですね。ただ、マスター自身の能力に特徴があって、ミドルレンジに長けている。ミドルレンジでチクチクやるには非常にいやらしい戦い方ができるんですけど、近接攻撃、アウトレンジだと苦手になってしまう。 「Dr.パラダイム」に関しては、プレーヤーキャラクタが直接戦闘に弱くて、一騎討ちをすると確実に死ぬくらいの勢いなんですよ。そのかわりサーヴァントが強力で、兵種も全部揃っている。かつマスター自身の能力が、遠くからチクチク爆弾を投げたり、もしくは味方のサーヴァントをパワーアップさせたりガードしたりという能力に長けている。本人は姿を現わさず、チラチラと出てきて戦う。細かいところだと走るのが苦手で、空中ダッシュが無いから、見つかって追い掛け回されると大変なことになる。 「イズナ」は、もっともバランスが取れていて使いやすいタイプ。サーヴァントの方向性は「シン」に近く、すべての兵種が使える。マスター自身の能力も扱いやすい連続コンボが揃っている。ただし、すべてにおいて決定打に欠ける。クセとしては、スキル……他のマスターがパワーアップや強い爆弾を持っているのに対して、イズナは「姿を消す」など奇襲に長けている。 最後の「ヴァレンタイン」はちょっと変わっていて、クセがある。兵種が全部揃っていないので、サーヴァントを送り込む配分は相手をよく見ないといけない。マスター自身の能力は、アウトレンジからの攻撃が得意。飛び道具がメインで、いくつも持っている。これらをうまく使いわけて遠くからチマチマやる。サーヴァントもいやらしくて、いわゆるファンタジーでいう“アンデッド”みたいな感覚のキャラクタ。死んだ敵を食べてサーヴァントを召喚したり、敵のサーヴァントに呪いをかけて味方にしたりとか、そういうことができるタイプ。ちょっとトリッキーな感じです。 ―― お話をうかがっていると、「GG2」を初めてプレイするなら、馴染みのあるソルやバランス型がオススメ?
石渡 ソルはプレーヤーキャラクタとしてもっとも強いタイプで、そういう意味では扱いやすのですが、「GG2」は格闘アクションではないので、サーヴァントをどうやって動かすかを視野に入れないといけませんね。
■ 「GG2」は「アクション寄りのRTS」
早めに気付くと「あぁ、そうか」となるんですが、気付かないと「ずっと戦ってるけど、何も変化がないぞ? これ何をどうすればいいの?」となりかねない。そこに至るまでの時間で、本作に対する印象が変わってくるように思えます。 石渡 そうですねぇ。「とっつきにくくて、なんか難しいアクションゲームだな」という印象は、正直ぬぐえない気がするのですが、このバランス調整は「アクション寄りのRTS」とするために必要な内容だったんです。 ―― 基本の流れとしては、各ゴースト(中立拠点)を落としつつ、敵本拠地(マスターゴースト)に近づく、というイメージでよろしいのでしょうか? 石渡 それが正攻法です。それ以外に、たとえば奇襲みたいなものが存在して、アイテムスロットみたいなところにサーヴァントを格納して本拠地に突っ込み、ガッと攻撃を仕掛けることも、可能といえば可能です。 ―― まだチュートリアルをやっただけなんですが、ゲーム開始直後、他プレーヤーやCPUの位置はわかるのでしょうか? 石渡 自分のユニットに関してはわかるのですが、相手のユニットに関しては、サーヴァントが見たものでないとマップに映らないようになっています。彼らが確認したものは、映る。 ―― 先頭を走っているサーヴァントは、斥候の役目も兼ねている? 石渡 そうですね。だから、ひょっとしたら安いユニットを早めに買って斥候のように動かしたほうが、後手だけれどもいい試合をできる可能性がある。 ―― 斥候が潰されると、最初の敵を確認しただけで終わり? 石渡 はい。ただ、そこに死んだマークが出ますので「あぁ、あそこに敵がいたんだ」ということがわかります。
石渡 マップのレイアウトもいくつか用意させてもらっているんですけど、かなりストイックにRTSの要素を考えているんです。今までもRTSとアクションの融合を謳っているゲームはあったと思うんですけど、どれを見てもたいていの場合「RTS要素のあるアクションゲーム」という印象が強い。 「GG2」は「RTS」が最後にくる形。アクション要素をないがしろにするのではなく、独特のスタンスでいきたいというのがあった。アイテムを使うタイミングも、アクションに組み込まれているんですよね。アイテムにクールダウンが設けられている要素ってRTSではよくあるんですけど、アクションではあまりない。たとえば、蹴りを1発入れておいてキャンセルしてアイテムを使うことで安全を保つみたいなこととか、そういうのは“新しい手触り”なんじゃないかと。あんまり表に出てこない、華やかではない内容なので、伝わりづらいというのはあると思います。 ―― 試遊台で確認できなかったのですが、アイテムは何種類くらい用意されているのでしょうか? 石渡 何種類くらいかなぁ……う~ん……30前後くらいあると思います。 ―― ものによっては、たとえば敵のサーヴァントを一掃するとか、劇的な効果が得られたり? 石渡 そこまで激しいものは用意されていないですね。どちらかといえば、こまごまと。ただ、いやらしいアイテムは結構ありますね。 「GG2」はアクション要素が強いんですけど、非常に重要なのが“時間の概念”。時間がリソースになっているので、マスターが動けない時間は結構致命的だったりするんですよ。そこにきて、たとえば「バナナ」というアイテムがあるんですけど、すべってダウンしている時間が長いのは、非常にいやらしかったりする。 ―― 「バナナ」という語感で、あまり使ってくれなさそうな予感がしますが……何の役に立つねん、と。 石渡 「バナナ」は、やられ専門ボイスがあるんですよ。滑ると「バナナかぁ!」とか各キャラクタの個性でしゃべったり。あと、その場で自分が生き返るアイテムもありますし、敵の死体をお金(ゲーム内ではマナと呼ばれる)に換算するアイテムもあります。これは結構クリティカルかな? ―― ここでちょっと整理しておきたいんですけど「GG2」の基本ルールは、本拠地(マスターゴースト)を倒されなければ大丈夫ということなんですが、プレーヤーが操作する“マスター”とは完全に別の存在なわけですよね? 石渡 簡単にいってしまうと、マスターの魂が“マスターゴースト”なんです。 ―― マスターがやられると? 石渡 マスターゴーストが、ちょっとダメージを受ける。レギュレーションによって差が出るんですけど、何回もマスターを殺すと、やがてマスターゴーストが倒される。TGS出展バージョンでは、マスターを2回殺せばマスターゴーストも倒れます。設定によっては、3回、5回となる。 ―― そのあたりは、対戦のレギュレーションとして変更可能になるのでしょうか? 石渡 一応視野に入れているのですが、現状まだ調整段階なので、あまり明言はできない形になっております。 ―― もうひとつ、ややわかりにくい要素として、サーヴァント、キャプチャー、ミニオンがあります。これらを普遍的なイメージで平易に説明していただくことは可能でしょうか? たとえば、サーヴァントはただ攻撃する戦闘員とか。 石渡 サーヴァントはそんな感じですね。RTSでいうと、マスターがマウスポインタなんですけど(笑) 要するに、現地にいかせるみたいな。マスターはやはり“現場監督”というか。もっとも重要な部分に常に目を向けて、そこに行く、行かないはプレーヤーの判断。基本的には、もっとも戦闘力が高いユニットと認識していただいて結構だと思います。Dr.パラダイムみたいなのもいますけど。 サーヴァントは、基本的には戦闘員なんですが“マスターゴーストのバリアを剥がす”能力に長けているんです。これまた複雑なシステムで申し訳ないんですけど、マスターゴーストは、マスターが直接殴っても全然ダメージが与えられないんですよ。 ―― ……これはまた、えらく重要なシステムがわかりにくくなってますねぇ。 石渡 サーヴァントがそこにたどり着くシチュエーションが揃うと、はじめてマスターが直接ダメージを与えることができるという形になっています。細かいですが、相当大きい役割を持っています。 ―― キャプチャーは、占領したゴーストから順次発生して近くを攻めにいく? 石渡 キャプチャーは、基本的に近くにいる味方の“体力を回復”してくれるんですよ。つまり、近くにゴーストがあるということは、そこから出てくるキャプチャーによって、周囲の味方の体力が安定するという形になっています。 ―― 兵站を兼ねている? 石渡 勢力図が広がっていく、といったイメージになるんじゃないかと思います。どこにいても、自分たちは安定した戦力だっていう。 ―― 時間が経つにつれ、どんどん厚みが増していく。ただ、キャプチャー自身は弱いから、接敵するとプチプチ殺されていく。そのかわり、どんどんゴーストから沸いてくる? 石渡 もう無限に沸いてきます。 ―― キャプチャーはどれくらいの周期で発生するんでしょうか? 石渡 それも設定によりけりという感じです。今はポコポコと……2~3秒間隔くらいでしょうか。 ―― 頻繁に発生するから、放っておくとマスターの近くでカルガモの親子みたいに連なってますよね。 石渡 あれちょっと厄介でですね、マスターの近くにいると、彼ら(キャプチャー)は殺されるために、ちょっとゆっくり移動することになっているんです(笑)。 ―― ……そんな細かいけど大事なことが、なぜわかりにくいままに(泣) 石渡 うちのスタッフもマニアックなものですから「わかりにくいかもしれないけど、これは最終的にうまく働くはずなんだ!」っていう確信をもって作ってくれていますので。 ―― それに対して、ミニオンは即効性のある“助っ人”、“用心棒”みたいなイメージでよろしいのでしょうか? 石渡 そうですね。一番大きな違いは、一度購入すると以降お金(マナ)を払わなくていいんですよ。何度でも呼べる。あと、彼らには寿命が設定されていて、一定時間で死んでしまうんです。 ―― 今は1ラウンド5分間ですが、どれくらい生きているんでしょう? 石渡 キャラクタによりけりなんですけど。ミニオンの種類によっては長く生きていられる奴もいれば、凄く短いものもいる。 ―― イメージ的には、太く短い(強い)、細く長い(弱い)といった感じなんでしょうか? 石渡 そうですね。そう考えてもいいと思いますけど「Dr.パラダイム」が持ってるミニオンは、かなり長いこと生きているうえに、固定砲台でいくつも呼べたりする。 ―― 「Dr.パラダイム」は安倍晴明みたいなイメージですねぇ。一方で、ソルでプレイしていると、マスターの操作が忙しくてなかなかサーヴァントたちに指示が出せない。このあたりは、狙ってそのように作られているのでしょうか? 石渡 ある程度、想定しうるプレイスタイルにあわせた種類をご用意しようという形ですね。ソルに関しては、あくまでもアクションが得意な人に。今の段階ではアクションゲームっぽく単純に触れてしまうゆえに、それだけやってダメになってしまうみたいなことがあるんですけど。また、ソルがいくら強いといっても、やはりマスターだけで勝てるようでは、バランスがまるで取れていないことになってしまうので。ソルは戦闘力があるので、現地にいたら、敵の立場としたら「あの戦場はヤバイ」という認識になればいいかな、っていうくらいなんです。 ―― ソルを発見したら、やばいから別ルートを探っていくのが正統手?
石渡 ソルが敵マスターを発見したら「よし、殺そう!」という感じになるんですけど(笑) 他のマスターだったら、ソルを見た場合「よし、仲間を撤収させよう!」とやったほうがいいでしょうね。
■ 簡単なシステムで初心者が遊べる格闘ゲームは面白くない
石渡 こんなことをいうと反感を受けるかもしれないんですけど……(笑) たとえば企画なんかを持ち込む子で「初心者向けに面白い格闘ゲームを作りたい」というような方とか、よくいますね。 ボクの持論なんですけど「簡単なシステムで初心者が遊べる格闘ゲームは面白くない」と、絶対的な自信を持って言えるんですよ。やりこむ要素がないってことですし、初心者と上級者の差がない状態でツールとして奥が深いのか? という部分がありますよね。そういうスタンスで作ってきてしまっていますので。そういう頭なんですよ、ボクらは。 ―― 社内的なコンセンサスとしては、いかがでしょう? 石渡 無きにしもあらず、です。「もう少し簡単にしてあげないと、触ってくれることもないんじゃないか」というのは懸念材料としてあるんですけど、どうしても作りこんでいくうえで「そんな中途半端なことをして面白いゲームができるのか!」っていうのがあるんで。 ―― 作り手側のモチベーションにも影響するでしょうし。 石渡 正直な話、これでもまだ全然マニアック度が足りないというか。本当はもうちょっと組み込みたいシステムが……なかなか。 ―― 差し支えなければ、それはどういったものでしょうか? 石渡 アイテムの種類であったり、アクションの種類、命令系統の内容とか、まだ色々あるんですけど。たとえば、簡単なところでは、RTSではひとつの特殊なユニットを作るために、木を伐採して材料を元に家を建て、そこからユニットを産むみたいな工程があるじゃないですか。これをさせてしまうと、ちょっと難しいかな? みたいなところがあって、「GG2」の場合は作ってから単純に生まれるまで時間がかかるという形。ただ、同じだけの時間の管理の仕方は必要。 RTSの醍醐味みたいなものを「パッドの操作で伝えよう」というのもひとつのコンセプトなんで、そういった意味でもユーザー寄りになっています。 ―― 細かい質問で恐縮なんですが、ガードシステムはどのようになっているんでしょう? 試遊台のインストに書かれていなくて、でも時々防御できているようで、ちょっと混乱してしまったのですが……。 石渡 敵と正対(正面を向いている)し、何もしていなければオートガードになります。ロックオンをすると敵の正面を必ず向くので、とても重要なテクニックになっています。 ―― 一般的な3Dアクションで、防御ボタンが無い場合はポジション取りで勝つみたいなところがあると思うのですが、本作はそうではない? 石渡 細かい話になってしまうんですが、「GG2」はフリーコンボといって、ただ歩きながら出せる攻撃と、ロックオンしないと出せない攻撃があるんですね。ロックオン最中の攻撃は比較的攻撃力が高く、キャンセルができるとか、そういう利便性がある。 格闘ゲームで歩きながら出す攻撃は小パンチみたいなもんで、決定打には欠けるんですけど、ただし広範囲を攻撃することができる。囲まれたときはそれで暴れて「コイツを殺したい」というときはロックオンで仕掛けないと効率が悪くなってしまう、という形になっています。 ―― それ、普通に触っただけではなかなか気付かないですよ。気付かないまま悪口を言う人だっているでしょうし。 石渡 どうしても……なんでしょうね。日本の対戦モノというか団体戦ゲームってものは、対人戦でも“各々の競い合い”になっちゃうんですよね。自分が何体倒したか、みたいな。ちゃんと相手の思考と戦わせたい、というのがあって。各々が好きなように好きなだけ敵を狩って、あとで集計して勝利みたいなのは詰まんないなっていうのがあるんで。 ―― そこで気になるのが、アクションスキルと思考的な戦略性のバランスです。アクション要素が強いぶん、コンボなどでダメージを最大効率まで突き詰められる人と、そうでない人はどうしてもでてくる。一定時間内のダメージが多ければ、それだけ攻めるスピードが速くなる。 一方で、土台はRTSだから、アクションスキルの差を思考でカバーしたい、できるはずと思う人もいるでしょう。本作はRTSの部分にプライオリティがありますが、そういう意味ではバランスは後者寄りと考えていいんでしょうか? アクションは、突き詰めるとそこまで重要ではない? 石渡 いや、やはりアクションを融合している以上オマケではないので、それはそれで突き詰める価値があるものを用意しないといけない。ただ、サーヴァントのなかに「上級兵」がおりまして、こういう連中はたいてい決戦兵器だったりするんですよ。そういうものが送られているルートは、基本的にマスター自身がいかなくても長時間持ちこたえてくれたり、あるいはマスターを殺してしまうくらいの性能を持っている。 ―― 試遊台では、そこまで強烈なサーヴァントにはお目にかかれなかったのですが……そんなに凄い代物が存在するんですか! 石渡 凄く大きい奴とか、厄介なのではダウンするたびに子供を産む奴とか(笑) ―― それって、必殺技で転ばすたびにポコポコ増える? 石渡 どんどん増えてっちゃう(笑) それとは違うんですけど「Dr.パラダイム」のサーヴァントに、攻撃はできないけど、敵と出会うたびに小さい犬を産んでいく家とかがあるんですよ。すっごいいやらしいのがいます。 ―― 今回、種族となる基本キャラクタに対するユーザーの志向がハッキリとわかれそうですね。 石渡 そうですね。そこに、どれくらい違うかをご理解いただくまで、少々お時間をいただいちゃうかな、って感じはしますね。「Dr.パラダイム」本人で暴れようとして、すぐ死んじゃったりとか。
石渡 マルチプレイは最大4人まで。よって、いちマップに出てくるマスターも4人までです。ただ、各マスターが呼べるサーヴァント、キャプチャー、ミニオンは各20で上限が決まっていて、4人対戦になったら、たぶん各16になる可能性はある。 ―― それはバランスというよりも、同時表示できるハード的な仕様の限界? 石渡 そうですね。あれだけの人数が出てしまうと……みんなエフェクトをガンガン出しちゃいますから。 ―― エフェクトといえば、オブジェクトを回り込んで戦闘を始めたりすると、ゴチャゴチャして状況が把握しづらくなりますね。エフェクトを控えめにすれば戦いやすくなるだろうけど、見た目に寂しくなる。 石渡 その折衷案としてとったのが、ロックオンを外した状態で上から見る視点。その状態でカメラを動かして上から見ると、PCのRTSのような視点で遊べます。ただ、当然この状態だと敵をロックオンして攻撃できない。状況を把握したいときは、ロックオンを外して上から見るといった感じですね。 ―― そうなると、両視点の使いわけが重要になってきそうですね。ちなみにマップの広さ、種類はどれくらい用意されるのでしょうか? 石渡 マップの種類みたいなものは、大きくわけて5~6つくらいあるんですけど、そのなかで区分けがされていて、最初で9個ゴーストがあるものから、最大で16個とか。結構大きいのもありますよ。これがRPGのマップだったらゲンナリするなぁ、みたいなところとか(笑) まぁ、うちのゲームは「ブラストドライブ」があるので、ダッシュ移動できるんですけど。 ―― 「ブラストドライブ」って、走ってる最中に地形にぶつかるとコケるんですよね。ちゃんと転ぶモーションが用意されていて、芸の細かさが面白かったです(笑) 石渡 コケるっていうのは、先ほどいったとおり結構なペナルティなんですね。時間のリスクみたいなものがあるんで。ドライブテクニックも、アクション的に上手くなったほうが有利ですね。 ―― レースゲーム的でもありますよね。
石渡 一応、加速、減速、あとドリフトとか。実はレースをして遊ぶこともできるんですよ(笑)
■ ストーリーモードはおまけ
石渡 そうですね。ストーリーモードっていうと「ストーリーのためにある」みたいに考えられると思うんですけど、ぶっちゃけてしまうと今回はオマケみたいなものなんですね。世界を広げるって意味では重要なんですけど、「GG2」のストーリーモードは、基本的に“全編通してチュートリアル”だと考えてもらえればいいと思います。 ―― あくまでも対戦にいくためのステップ? 石渡 最初から最後まで遊んでもらったら、恐らくある程度のことはできるだろうから、そうしたらもうXbox LIVEにつなごうよ、というスタンスで。あくまで「GG2」はネットワーク対戦ツールとして考えています。 ―― そういった意味では、従来シリーズの「ギルティギア」と「GG2」で、どちらが石渡さんが考える“理想の対戦ツール”に近いのでしょうか? 石渡 別、ですね。2Dは2Dで完成された対戦ルールがありますし。今まで「ストリートファイター2」シリーズで刺激を受け「なんて高い競技性があるんだろう」と2Dを磨いてきたわけですが、RTS、FPSが海外にあることを知ってから「こんなに盛り上がれるものが他にもあるんだったら、自分たちでも新しいジャンルを作ろう」というのが、今回の企画です。 あっ、そうだ。実はですね、TGS出展バージョンってレギュレーション的に簡単にしてあるんですよ。サーヴァントの硬さとか。とりあえず触って最後まで感触を掴んでもらうための設定になってて。マップもメチャメチャ狭いですし。本来用意されているチュートリアルは、もっと丁寧に最初から追っていくように作られています。最終的には、もっと骨太なアクションになってしまいます! ―― TGSで少し触ったくらいで「GG2」を理解したつもりになってはダメ、ということですね。では最後に、本作に期待しているファンの方々、先々体験版をプレイするであろう潜在的ユーザーのみなさんにメッセージをお願いします。 石渡 どうしようかなぁ、これいつも迷うんですよね……。たとえば、ぶちゃけですね、このゲームが当初は評価されなくても「対戦ツールとしての分岐点は、このゲームが作った」って思われるくらいの質を目指して作っております。なにとぞ応援のほどを、よろしくお願いいたします。
―― 私も応援しております。本日はありがとうございました!
(C) ARC SYSTEM WORKS
□アークシステムワークスのホームページ (2007年9月25日) [Reported by 豊臣和孝]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|