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会場:幕張メッセ 拡張ディスク第1弾「ザ ウォーチーフ」では、先住民族の文化を色濃く再現するために族長(ウォーチーフ)とファイアピットなどの要素を盛り込み、一方、ヨーロッパ勢にも革命や酒場といった新要素を追加、キャンペーンは本編の外伝ストーリーが盛り込まれ、「Age of Empires III」は「ザ ウォーチーフ」を持って一応の完成を見た。 「アジアの覇王」は、Microsoft側の要請で、Big Huge Gamesの協力により、まったく一から企画された拡張ディスクとなっている。そのため、舞台はアジアへと移され、キャンペーンも既存のブラック一家ではなく、日本、中国、インド各国の興隆を描いている。マップやオブジェクトはもちろんのこと、各国の建物やユニットまで新規で描き起こされており、スクリーンショットを見るとあたかも“「Age of Empires III」外伝”のような雰囲気すら漂わせる。実際にはマルチプレイを通じて、既存のヨーロッパ勢や先住民族勢と激しく鎬を削ることになるが、いずれにしても同作をやり尽くしたユーザーを再び振り向かせるインパクトを備えた拡張ディスクに仕上がっているといえる。 今回は、同作の開発に際し、アドバイザー的なポジションで開発に携わってきた「AoE」シリーズの広報担当、Ensemble StudiosのBruce Shelley氏に「アジアの覇王」の魅力について話を伺った。正直なところ、インタビュー時間が限られていたため、十分な情報は得られなかった。不足分については東京ゲームショウでの取材で得た情報で補足しながら、「アジアの覇王」の魅力に迫ってみたい。 なお、「Age of Empires III: アジアの覇王」の発売時期は今冬を予定し、価格は未定。動作には「Age of Empires III」本編が別途必要となる。なお、「ザ ウォーチーフ」は必須ではないが、マルチプレイに参加することを考えた場合は、事実上必須となると考えておいていい。現時点では、すべてをセットにしたオールインワンパッケージの発売は考えていないとのことだが、新規ユーザーへの利便性をふまえ、わかりやすい売り方を望みたいところだ。
■ Microsoftの提案と、Big Huge Gamesの企画によって生まれた「アジアの覇王」
Bruce Shelley氏: マイクロソフトから「Age of Empires III」の新しい拡張パックを作りませんかという話があったのが2006年の秋のことです。ただ、その話があった時点では、こちらでは人材を割ける状況ではありませんでした。そのような状況についてマイクロソフトに説明をしたところ、RTSの制作経験が豊かなBig Huge Gamesに開発をお願いしたらどうかという提案がありました。 Big Huge Gamesは尊敬するスタジオですし、友人もいます。一緒に仕事をした経験もあります。ですから、それならBig Huge Gamesに「AoE III」の拡張パックを作ってもらうという試みをやってみようじゃないかという結論に達しました。 そこで私共が彼らに基本的なアイディアを話したところ、Big Huge Gamesからも拡張パックの内容について提案がありました。ですから私達はステップ・バイ・ステップで共に色々な検証をしたり、むこうにどういったプランがあるのか、あるいはデザイナーの人材はどうか、というのを全て見届けつつ共同開発という形でプロジェクトを進めてきました。 基本的にはむこうが提示してきたものを私共が全て気に入り、色々と長いミーティングを重ねてアートワークやゲームデザインを一緒に進めつつ、完成しました。テストも全て我々が参加してその都度フィードバックを行ないました。向こうの責任者も私共と一緒にやってきたということです。 編: つまり、Ensemble Studiosとしては、「アジアの覇王」は全く想定していなかった製品ということになるのでしょうか。 Shelley氏: このような拡張パックを我々が手がけたことはありませんでしたが、その一方で「AoE II」で拡張ディスクを出さなかったことはミスだと考え、反省しています。 編: ミスとは? Shelley氏: 拡張パックを出すことでゲームのブランドを長寿化させることができるということに気がつかなかったということです。拡張パックはユーザーにとっても新鮮な楽しみを与えられます。人によっては「AoE」からそういった拡張パックを考えるべきだったと言う人もいますが、10年前のことですし、投資をしても見あわないという判断だったと思います。 しかし、実際に拡張パックが有効であるということは「AoE」の拡張ディスク「Rise of Rome」で証明されていました。しかし第2弾を出すということは当時は考え付かなかったのです。今回、ようやくトライすることができたわけです。 編: 基本的な企画はBig Huge Gamesが考えたのでしょうか? Shelley氏: そうです。私達が色々な提案を出しましたし、監督のようなこともやりました。それは、「AoE」ファミリーとして整合性のとれた拡張パックにしたかったためです。あまり抜本的に変化は望みませんでした。その一方では全て細かいところまで一々指示したくはなく、他の形で他のアイディアを他社にやってもらうということにトライする段階に来ていたんじゃないかと思います。 編: Shelleyさんは今回のプロダクトでどのような提案を行ないましたか? Shelley氏: 全てのドキュメントに目を通し、ミーティングにも参加して、シングルプレーヤーゲームもやりました。自分自身ですべて体験した結果、彼らの仕事を気に入りました。我々だったらやらないようなこともできたと思います。 例えばグラフィックについて、全ての建物を3つの文明にそれぞれ用意するようなことです。文明の雰囲気に合った建物を、日本風、中国風、インド風と。我々だったらそれは非常に高価なやり方だと判断して、実装を断念したかもしれません。ですが、彼らは「絶対にこれをやりたい」と熱心に取り組んでくれました。 それから我々が「AoE」シリーズの中でやめてしまったようなアイディアも復活しました。ゲームの勝利条件に、「レジサイド(Kill King)」スタイルのルール、「King of the Hill」ルール、「Wonders Victory」ルールを復活させたのです。我々としてはやめておいたアイディアですが、彼らの提案でまたこれらのゲームルールを再利用することになりました。 編: なるほど。RTSの歴史をひもとくと、Ensamble StudiosとBig Huge Gamesは、互いにライバル的な存在だったと認識しています。実はBig Huge Gamesは「AoE」シリーズに大きなリスペクトをしてきたということなのでしょうか。 Shelley氏: そうだと思います。彼らは過去に「AoE」を見て「Rise of Nations」のインスピレーションを得たという経緯がありますし、彼らは「Civilization」シリーズの開発にも携わっていました。彼らには「Civilization III」をベースにして「AoE」ライクなゲームを作りたいという思いがありました。彼らも「AoE」シリーズの大ファンであることは間違いないと思います。 それとタイミング的に「Rise of Legends」の開発が完了して、新しいものを手がけ始めたけれども、まだそれほど多くの人員を必要としない段階で、人材を出せるという状況が今回の開発につながったわけです。ですから両社にとってタイミングがよく、良い結果に結びついたと思います。私達は拡張パックを完成さえることができ、彼らは人材を投入できるということです。 編: ちなみに「AoE III」本編を作った開発スタッフは現在何をやっているんですか? Shelley氏: 「Halo Wars」に携わっている人もいますし、他の未発表の新作に取り組んでいる人もいます。今現在は2つのプロジェクトが進行中です。拡張パックに人を割くよりもクリエイティブな新作に投入するほうが生産的であるという判断です。
■ 領事館と民族の象徴にフォーカスしたアジア諸国の魅力
Shelley氏: 世界史における大航海時代において一番興味深いストーリーを描けるのがこれらの文明であるいうBig Huge Gamesの判断です。欧州の人たちにとってはアジアを発見し、交流を開始したという背景がありました。 前回の拡張パック「ザ ウォーチーフ」では、アメリカ大陸を「発見」した西洋人を、先住民の視点から見るという試みでした。今回は同じようにアジア側からアジアを発見した西洋人を見るという視点になります。 この時代の歴史の中でインドは植民地にされましたが、日本は欧州の接触を避け鎖国の道を選びました。中国はその中間くらいという位置づけです。こうした歴史背景を再現するために3つの文明にはそれぞれシングルプレーヤーキャンペーンを用意してあります。 日本のキャンペーンは徳川幕府です。まず大阪城の包囲、関が原などの戦い、徳川による天下統一といったシナリオを用意しています。主人公は将軍です。武器は西洋風の火気も使っています。刀剣が“刀狩”によって排除された後という設定です。 中国のキャンペーンは、1400年代初頭に、鄭和が世界を大航海して新大陸に到達したという仮説に基づいたものになっています。アメリカ先住民と中国人がそこで接触していたと。まあそれが本当かどうかはちょっとわからないんですけども(笑)、そういう本があるので面白いストーリーになるのではないかと思いました。 インドのキャンペーンは、1857年のイギリスに対する反乱「セポイの反乱」をベースにしたストーリーになっています。 編: それではさっそくデモを見せて貰えますか。 Shelley氏: これが日本の本州マップです。中央にいろんな島があって、周辺に小さい島があります。南側には大陸があって、朝鮮半島を経由して交易を行なっています。 ひとつ新しいのは、時代がひとつ進む毎にWonder(民族の象徴)を作れます。それぞれ特別なパワーを提供します。例えば大仏は敵の状況が見えます。鳥居は12人の侍を手に入れられ、さらに獲得できるEXPを1.5倍にすることができます。幕府はユニット訓練コストを軽減します。Wonderの扱いがこれまでと違うところです。 そして日本でユニークなのは、建物のヤシロです。家に相当する建物ですが、ヤシロはそれだけでなく色々な資源を生みます。ヤシロがあるだけで金、食料といったリソースが増えていくわけです。また、水田でも食料もしくは金が作れます。どちらでも切り替えることができます。 編: 民族の象徴が、「ザ ウォーチーフ」におけるファイアピットに相当する機能なのでしょうか。 Shelley氏: そうです。同じように能力を与えられるものです。その代わり、それなりの対価を払う必要があります。そのためにより多くのお金を稼ぐ必要があります。 編: Wonderのない序盤の時代は他の文明とどのように戦うのでしょうか。 Shelley氏: 序盤はあまり戦いがありません。いずれにしても時代を重ねていくたびに、資源を溜めてWonderを建設し、それを軸に戦略を立てるというのがアジア諸国の基本設計になっています。 編: 日本には資源を自動的に生み出す施設が複数あって、非常に有利に思えますが。 Shelley氏: はい、日本はある意味うまくできていて、そのような利点が確かにあります。しかし、バランステスターがきちんと調整してまして、他の文明に比べてズバ抜けて有利になっているということはありません。またヨーロッパで使用可能な、大砲などの特殊なユニットがアジアにはないなど、全体的な部分でバランスを取っています。 編: 新しいリソース項目がひとつ増えていますが、これは何ですか? Shelley氏: 今回、新しい輸出ポイントというリソースがあります。町の人々が少しづつ輸出ポイントを生み出したりと、色々な形で獲得できます。この輸出ポイントは新しい施設である領事館で使えます。領事館では、ヨーロッパ勢力と同盟を結ぶことができます。たとえば、ポルトガルと同盟を結ぶことで、輸出ポイントを消費して、ポルトガルの能力を使うことができるわけです。 また、日本限定ですが、領事館では、同盟を組むだけでなく、「鎖国する」という選択肢もあります。これはこれで特別なメリットがあるわけです。ですからプレーヤーの判断によって欧州勢力と同盟を結ぶか、鎖国するかという選択ができます。ちなみにこの判断はいつでも変えられます。最初は欧州勢と手を組んで、あとから鎖国するといったことも可能です。 鎖国すると使えるようになるユニット「旗本」は輸出ポイントが290ポイントかかります。生産活動で稼いだ分の10%くらいが輸出ポイントになります。それを考えると非常に高価なのですが、それだけ役に立つユニットでもあります。経済的に発展させていけば、自然と輸出ポイントも多くなるので、いかに発展させていくかが重要になりますね。 編: マルチプレイについてですが、今回新しい機能はありますか。 Shelley氏: レジサイド、キングオブヒルゲームなどの複数のルールが追加になります。 編: Games for Windows - LIVEには対応していますか。 Shelley氏: いいえ。「AoE III」はかねてからESOという我々独自のオンラインサービスを運営していますので、そちらでの対応になります。 編: 「AoE IV」が出るとすれば、そのときは「LIVE」に対応するのでしょうか。 Shelley氏: 「AoE IV」はいまは全く考えていません。というのは、今現在全ての人材が活動していてとても手が回らないからです。今やっているものが終わった段階で次の候補として検討することがあるかもしれませんが、まだわかりません。 LIVEへの対応については、ESOと同じような形でマッチメイクをすることが我々にとって非常に重要なことです。LIVEがこのようなマッチメイクに対応できないというのであれば、それは我々にとっては障害になるかもしれません。ただ、次のPCゲームはLIVE対応になるのではないかとも思います。今のところ具体的なプランはありませんが、「AoE IV」を作るならLIVEへの対応を検討するかもしれませんね。 編: 最後に日本のユーザーにメッセージをお願いします。 Shelley氏: 日本ユーザーの方々は長年にわたって本当にファンが多くて、お蔭様で日本は我々にとってベストマーケットのひとつであるという地位を確立したわけです。Big Huge Studioが非常にカッコイイ日本文明を作ってくれましたので、ぜひ皆様方にエンジョイしていただきたいですし、なるべく多くの方にプレイしていただきたいと思います。 編: ありがとうございました。
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□マイクロソフトのホームページ (2007年9月22日) [Reported by 中村聖司]
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