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東京ゲームショウ2007現地レポート

「TGSフォーラム2007 オンラインゲームセッション」レポート
ガンホーが「グランディア ゼロ」、「北斗の拳 Online」の最新情報を公開

9月20日開催

会場:幕張メッセ・国際会議場



 東京ゲームショウの初日に開催された「TGSフォーラム2007」では、今年も例年通りオンラインゲームビジネスをテーマにした「オンラインゲームセッション」が開催された。進行はTGSフォーラム特有のリレートーク形式で行なわれ、講師はテクモ執行役員Lievo事業統括 佐々木憲太郎氏、ガンホーオンラインエンターテイメント代表取締役社長森下一喜氏、マイクロソフトホーム&エンターテインメント事業本部Xboxマーケティング本部長坂口城治の3名。3者からは自社のサービスを軸に、オンラインゲームビジネスの未来が活写された。

 今年は、三者三様の取り組み方で、一種のプラットフォーマーとしての立場から、オンラインゲーム市場の覇権を狙う構図が描かれて興味深いセッションとなったが、話の切り口、ネタの鮮度で、軍配をあげたいのは、メーカーとしては3年連続、自身としても2年連続となるガンホー森下社長の講演だ。本稿ではガンホー森下氏の講演をピックアップしてお伝えしたい。


■ アイテム課金からの決別を表明したガンホー。新たなビジネスモデルの模索を提案

ガンホー代表取締役社長森下一喜氏。ラフな格好で、くだけた口調で参加者に語りかけた
「“基本無料! 永久無料! ず~っと無料!”といったキーワードが非常に目に付く今日この頃」と切り出した森下氏
アイテム課金を成功させるためには、「実際はお金を払わなければ楽しめない設計でなければならない」と結論づけた。オンラインゲーム市場的には極めて大胆な発言だ
 今年のオンラインゲームセッションのタイトルは「全プラットフォームがネット接続可能に! 新たなフェーズに入ったオンラインゲームビジネス」。ガンホー、コーエー、NHN Japanとオンラインゲーム大手が顔を揃えた昨年に比べ、今年はオンラインゲームパブリッシャーを代表してガンホー、コンシューマ市場で培ってきた開発力を軸に独自のPC向けオンラインゲームポータルビジネスを展開するテクモ、そして現状コンシューマ市場でもっとも秀れたオンラインサービスを提供しているマイクロソフトというバラエティ色のあるメーカーが顔を揃えた。

 リレートーク形式で展開し、最後にパネルディスカッションでしめるというTGSフォーラムならではの進行スタイルが採用され、1社あたり30分という短い時間ながら、めいっぱい自社アピールをするために、未発表情報も公開されるケースが多く、毎年募集開始から早々に受付が閉め切られる人気セッションとなっている。

 講演の前半ではオンラインゲーム市場のトレンドから、自社の課題、ひいてはオンラインゲーム市場全体の課題を浮き彫りにし、後半では同社の自社開発タイトル「北斗の拳 Online」と「グランディア ゼロ(旧題:「グランディアオンライン」)」の最新情報が発表された。

 トレンドの紹介では、「定額課金か、アイテム課金か?」と題し、それらに変わる新たなビジネスモデルの創出の必然性を訴えた。まず、森下氏は、同社が「ラグナロクオンライン」のサービスを開始した2002年に比べて、現在は圧倒的にアイテム課金制のオンラインゲームが増えていることを指摘した。

 2002年当時のトレンドだった定額制は、固定費を上回る売り上げを出すために、多くのユーザーを集める必要がある一方で、ユーザーの増加に伴い、ランニングコストが上積みされ、構造的に利益率が低くなる傾向がある。一方、アイテム課金制は少数のユニークユーザーを相手に、高い顧客単価を要求するビジネスモデルであるため、ランニングコストが定額制より低く抑えられ、しかも利益率の高いビジネスモデルであるとした。

 「しかしながら」と森下氏は続け、実際にアイテム課金制のビジネスを成功させるためには、企画時点から徹底して、緻密に設計されたアイテム課金システムの構築が必要不可欠であり、表向きの「無料で遊べます」といううたい文句とは裏腹に、「実際にはお金を払わなければ楽しめない設計でなければならない」と告白。つまり、アイテム課金でビジネスを成功させるためには、ユーザーに嘘を付き続ける必要があるというわけだ。こうした見解は、実際にプレイしているユーザーレベル、メディアレベルでは常識の範囲内だが、オンラインゲームパブリッシャーから、それもトップが口にしたところが衝撃的である。

 森下氏の意図は明確で、講演中の「はっきりいって(ガンホーは)、アイテム課金は強くないです」、「この(アイテム課金の)ロジックが正しいと思っているわけではない」という発言からも伺えるように、アイテム課金からの明確な決別と、新たなビジネスモデルの模索を意味している。

 実際、ガンホーは「サバイバルプロジェクト」、「ゲットアンプド」、「A3」と、過去に終了したオンラインゲームはすべてアイテム課金制であり、「タントラ」を除いて商業的に苦戦が続いている。また、同社の最新作である「ラグナロクオンライン II」では、月額課金制で大きな成功を収めた「ラグナロクオンライン」と同様に月額課金制が採用された。

 森下氏は結論として「正しい回答はない」としながらも、最終的に決定するのはユーザーであり、ユーザーが「アイテム課金はけしからん」と言うのであれば、「(我々は)新しいビジネスモデルを考えていかなければならない」と結論づけた。現在開発中の自社開発タイトル「北斗の拳 ONLINE」と「グランディア ゼロ」のビジネスモデルがどうなるのか、今から楽しみだ。

【ガンホーの取り組み】
ガンホーは、もうひとつのトレンドとして海外展開を取り上げたが、パートナー企業とのやりとりなどの部分にまだまだ課題があることを報告。ガンホーでは海外展開先進国である韓国に子会社を置き、そこに優秀なスタッフを集めることで対応しているという。さらに森下氏はコンシューマ市場への展開もアピール。次世代機向けへのオンラインゲーム開発、および受託についても言及し、新たな時代への取り組みを進めていることをアピールした


■ “劇画”シェーダーで生まれ変わった「北斗の拳 ONLINE」と、新要素満載の「グランディア ゼロ」は、2007年サービスインを予定

劇画シェーダー、別名“原シェーダー”を新たに搭載した「北斗の拳 ONLINE」。カードバトルも全廃という思い切った決断を行なっている
「GO」は「グランディア ゼロ」へ。イメージイラストも完成し、こちらも始動間近といった印象だ
 講演後半では、「北斗の拳 ONLINE」と「グランディア ゼロ(旧題:「グランディア オンライン」)」の最新情報が披露された。時間にしてわずか10分ほどの短い紹介に留まったが、初出情報満載の濃い内容だった。

 「北斗の拳 ONLINE」は、度重なるβテストの延期の間に行なわれていた再開発の内容が披露された。まず初めに驚かされたのは、グラフィックスの変化だ。以前のバージョンでは、低スペックPCでも動作可能なように、低ポリゴンの3Dグラフィックスでゲーム世界を構築していたが、低スペックPCでも動作可能という路線はそのままに、キャラクタのレンダリングに「劇画シェーダー」を新規採用し、原作漫画っぽさを演出していた。

 またバトルシステムは、カードバトルを思い切って全廃し、「北斗の拳」らしいリアルタイムバトルに変更されていた。リアルタイムバトルにも一工夫があり、マウスを動かして攻撃を繰り出すというマウスアクションを採用。実際にプレイしていないで、詳細は不明だが、WASDキーで移動、マウスをスライドさせて攻撃といった、キーボード/マウス操作によるリアルタイムアクションを実現しているようだ。

 その他の追加要素としては、原作キャラクタとのストーリー要素の追加やサーバーの安定性などが紹介された。サービススケジュールについては依然として2007年度中ということだが、プロモーションムービーを見た限りでは、リファイン作業も大詰めを迎え、今秋中にも何らかの動きがありそう。「北斗」ファンはいよいよ期待して良さそうだ。

 「グランディア ゼロ」は、正式サービスに備えてゲームタイトルが変更されたのが大きい。「グランディア」シリーズで語られる“少し前の物語”として、外伝的扱いではなく、正式にナンバリングタイトルのひとつに位置づけた。

 残念ながらゲームのウリとなる具体的な機能についての説明はなかったが、「グランディア ゼロ」の特徴として「冒険活劇の体感」、「ゲームの安定運営を見越したスケーラビリティの高い設計」、「ロースペック環境への対応」の3点を挙げ、ユーザービリティの高いMMORPGであることをアピールした。

 その後、イメージイラストや、キャラクタのモデルデータ、モンスターや街のイメージスケッチを紹介。「グランディア ゼロ」もまた低スペックPCでも動作することをウリにしているが、キャラクタのクオリティは高く、アニメーションライクな特殊な描画エンジンが使われているようだ。

 またこれらが、ガンホーが現在開発している開発期間システム「Rondo-Framework」のグラフィックスエンジン“Sphere & N2”なのかどうかも不明だが、いずれにしても低スペックPCで綺麗に見せるという、低スペックPC向けの代表作である「ラグナロクオンライン」ユーザーの横滑りさせるための施策に、大きな力を注いでいることを伺わせる。

 「グランディア ゼロ」のサービススケジュールは2007年中であることを改めて強調。同作については、森下氏が実質陣頭指揮を執っており、経営判断による努力目標ではなく、それなりの裏付けがあってのものだと思われる。予定通りにいくなら、ガンホーは、現在オープンβテストを実施している「ラグナロクオンライン II」のローンチに加え、上記2本の大型MMORPG、そしてニンテンドーDSタイトルのローンチと、非常に慌ただしい展開になることが予想される。同社の今後の展開をじっくり見守っていきたいところだ。

【北斗の拳 ONLINE】
ブラッシュアップを終えて後はβテストスケジュールの再告知を待つだけとなった「北斗の拳 ONLINE」。劇画シェーダーだけでなく、フィールドのクオリティも高まっている

【グランディア ゼロ】
「グランディア ゼロ」へとタイトルを一新。スクリーンショットやイメージイラストが公開されたほか、バックグラウンドのシステム構築にも自信を覗かせた。キャラクタの表現に注目したい


【テクモ佐々木氏】
テクモ佐々木氏は、オンラインゲームプラットフォームLievoの戦略を紹介。「DOA ONLINE」、「モンスターファームオンライン」、「Gallop Racer Online」といったコンシューマゲームをベースにした独自の取り組みを紹介。Lievoは、ゲームポータルでありながら、自社では運営しないという、珍しいビジネスモデルを採用しているが、その理由として佐々木氏は、スピーディーな展開と、ビジネスリスク、投資ロストの分散を挙げた。「夢見るところ、やんちゃなところがテクモにはあり、その存在を世界に知らしめるのがLievoの夢」と壮大な目標を語ってくれた

【マイクロソフト坂口氏】
マイクロソフト坂口氏は、Xbox LIVEの実事例をもとに、コンシューマオンラインサービスの豊かな可能性を提示してくれた。基本的な内容はGamefestで語られたものばかりだったが、29億時間(Xbox LIVEの総利用時間)、24億クレジット(「Forza2」での最高取引価格)、2兆クレジット(「Forza2」での仮想通貨総流通量)、世界3位(「アイドルマスター」の利用回数)といった具合に、データの抜き出し方がうまく、楽しく聴講することができた。課題はワールドワイドのオンライン展開における著作権保護と、文化的レーティング的な問題をどう解決するか。これらの問題さえ解決できれば、「日本は極めてオンライン接続率が高い国であり、オンラインビジネスに大きなチャンスが望める」と期待を寄せた

□「東京ゲームショウ2007」のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/
□関連情報
【2006年9月22日】TGSフォーラム オンラインゲームセッションレポート
ガンホーが「北斗の拳 Online」の画面を初公開。年内サービスインを改めて強調
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070224/aogc_hs.htm
【9月20日】「東京ゲームショウ」基調講演。SCE・平井一夫社長兼CEO
PS3新コントローラ「DUALSHOCK 3」など発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070920/hirai.htm
【2月24日】ガンホー堀氏、開発基幹システム「Rondo-Framework」を正式発表
アニメGM橘紀菜から始まった4年越しのプロジェクトの歴史と展望
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070224/aogc_hs.htm

(2007年9月20日)

[Reported by 中村聖司]



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