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★PCゲームレビュー★

モダン芸術の様式美で描かれる美しきSci-Fiホラー
秀逸な世界観と多彩なアクションを楽しむ傑作FPS!

BIOSHOCK

  • ジャンル:3Dアクションアドベンチャー
  • 開発元:2K Boston & 2K Australia
  • 発売元:Take-Two Interactive
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 価格:49.90ドル(英語版)
  • レーティング:Mature(17歳以上)
  • 発売日:8月21日(発売中)



 ゲーム界の一大ジャンルを構成するFPS(一人称視点シューター)には、大別すると対戦志向のスポーツ系FPSと、ストーリー志向のアドベンチャー系FPSがある。前者の代表は「Quake」、「Battlefield」シリーズなど、後者としては「Deus-Ex」、「Half-Life」シリーズのシングルプレーヤーモードがそうだろう。現在では演出技術が向上したこともあって、両者の境界はますます曖昧になってきているのも確かだ。

 アドベンチャー系FPSの源流として忘れられないのは'94年にThe Looking Glass Studiosが世に出した名作「SYSTEM SHOCK」と'99年の「SYSTEM SHOCK 2」だろう。このシリーズは、当時はガンシューティング一色であったFPSの世界に、ハッキングや超能力の仕掛けを導入することで幅広いプレイを可能にし、ストーリー志向のアドベンチャー系FPSの流れを生み出した伝説的な作品である。

 今回紹介する「BIOSHOCK」は、この流れを受け継いだ正当な続編だ。全体を支配するのはアール・デコ風の様式美、濃厚な演出、グロテスクな敵、ハッキング、そして環境に応じて様々な応用が可能なプレーヤー自身の超能力が、FPSというジャンルに囚われないプレイ感覚をこのゲームにもたらしているのだ。

 なお、本作は、非常にグロテスクな表現が含まれているので、掲載スクリーンショットをクリックする際は、くれぐれも注意して貰いたい。


■ 遺伝子改造と超能力に支配された自由の海底都市「Rapture」

ようこそ「Rapture」へ。偶然命を取り留めたプレーヤーは、潜水球に乗って都市内部へと導かれていく
到着した先にはいきなり異形の化け物が。潜水球を破壊しようと試みるがあきらめて去っていく
 「私はアンドリュー・ライアン。ここに私は問います。
 人が額に汗するのは自分自身のためか?
 否、ワシントンで曰く、それは貧者のために。
 否、ヴァチカンで曰く、それは神のために。
 否、モスクワで曰く、それは皆のために」

 「私は違う。私が選んだのは、異なるものであり、不可能だったもの。
 そう、私は“Rapture”を選択したのです。
 ここは芸術家が検閲を恐れずに済む都市。科学者がくだらないモラルに縛られず、大事が小事にとらわれない場所。
 そして“Rapture”は、あなたの努力次第であなた自身の都市になることでしょう」

 これは、プレーヤーがゲーム開始後すぐに聞くことになる、人工都市「Rapture」のウェルカム・メッセージだ。海底に建設され各分野の天才たちを集めたこの理想都市は、地上の国家と違い、芸術家や科学者が世間の小うるさいルールに縛られずに創造性を余すことなく発揮できる、ということになっていた。ところが、プレーヤーが偶然やってきたときにはもう、何かが狂ってしまった後だったのだ。

 本作は'60年、この海底都市Raptureへプレーヤーが漂着するところから始まる。大西洋上で旅客機事故に遭いながらも奇跡的に一命を取り留めたプレーヤーは、この都市では完全な異分子だ。ここは遺伝子改造物質「Plasmid」を使って人間を進化させるというテクノロジーが全てを支配しており、誰もが超能力者となれる場所。しかし、過度の遺伝子操作は人間から理性を奪い去り、もともと閉鎖環境であったこの都市は、元は人間であったはずの醜いクリーチャーが徘徊する世界へと変貌している。プレーヤーはそんな特殊な環境に突然放り込まれた格好だが、ともかく生き残らなければならない。

潜水球内にすえつけられていたラジオを手にして足を踏み出す。アトラスなる人物曰く、「飛行機事故をどうやって生き延びたかは聞かない。私はアトラス、君には生き延びてほしい。まずは動くんだ……君には上層階へ向かってもらう必要がある。さっきのヤツを隠れ家から引きずり出す必要があるが、まずは私を信用してくれ」。

・銃、超能力、ハッキング

初めからレンチ一本で敵と戦わされる。ともかく生き延びることが先決だ
Plasmidの力を己に注入する主人公。しばしの昏倒のあと、手から電撃を発する能力に気がつく
 全く未知のこの世界でプレーヤーの導き手となるのは、この都市で離れ離れになった家族と再開を果たしたいという人物「アトラス」だ。プレーヤーは、アトラスからのラジオ・メッセージを通じてゲームのヒントを得ながら、生きて地上へ戻るための探索を続けることになる。当初手に入る武器はレンチ1本に過ぎない。徐々にピストルやサブマシンガンなどの銃器も手に入るが、現れる敵は素早くて手ごわく、肉弾戦に挑んでも徐々に体力が削られてしまい形勢不利だ。

 しかし、主人公は冒頭で自らの手から電撃を放つという能力を手に入れる。しょっぱなに出会う故障した電動ドアは、この能力で無理矢理通電させることで、開けて先に進むことができる。現われる敵は電撃で痺れさせて動きをとめ、即座にレンチを振り下ろして殴りつければ簡単に倒すことができる。水場にいる複数の敵に対しては電撃を通電させて一気に全滅させることもできる。

 この能力は、この世界を支配する遺伝子改造技術の結晶「Plasmid」によるものだ。Plasmidには電撃、炎、テレキネシスなど様々な種類があり、それぞれを人体に「インストール」して能力を獲得する。プレーヤーは、行く先々で新たなPlasmidを手に入れて敵と戦う力を得ると同時に、先へ進むための新たな解法を獲得する。そして、そのPlasmidこそ都市Raptureを化け物の巣窟に変えてしまった元凶でもあるのだ。現われる敵はすべて元・人間。それはPlasmidの副作用で理性を失った者達「Splicer(ツギハギの者)」に過ぎず、彼らもまたPlasmidによる超能力でプレーヤーを追い詰めようとする。

 そんな世界を生き延びるため、プレーヤーにはもうひとつの力がある。マップ上の所々に設置された侵入者排除用の自動砲台をハッキングで味方につけるスキルだ。監視カメラや警備ロボット、自動砲台などのマシンは当初すべてプレーヤーがターゲットになっている。まともに立ち向かえば強力な火力で非常に厄介だ。しかし、これらは電撃で一時的に機能停止させ、そのスキにハッキングを行なって動作モードを敵に仕向けることができるのだ。そうすれば強力な火力が心強い味方となる。

 本作は銃を使って「撃ちまくり系」のプレイをすることも可能ならば、Plasmidによる超能力を駆使して賢く敵を追い詰め戦うこともでき、ハッキングによって自分に有利な空間を作り出すこともできる。このようにプレイ全体を通じて、局面を打開する方法を複数考えることができるというのが本作の本質的なダイナミクスである。このプレイ感覚は楽しく、FPS的なシューティングの爽快さと、あらたなPlasmidの応用を考え付く知的な面白さが高い次元で融合している。

電撃のPlasmidで敵を硬直させ、レンチで一撃すれば簡単に倒せる。水場にいる敵に対しては電流を流して一気に壊滅させることも可能だ

・能力の源泉「Plasmid」と「ADAM」を巡って機能する、奇妙な生態系

Little Sisterは常にBig Daddyの護衛を伴って行動している。強烈な戦闘力の前に通常の戦い方は無力だ
 都市Raptureに存在するのは生身の人間に敵対するSplicerだけではない。彼らの力であるPlasmidは、その力を発揮するために特殊な物質「ADAM」を必要とする。ADAMは、Splicer自身が生成することはできず、この世界のもうひとつの存在である「Little Sister」だけが、さまざまな死体から抽出することが可能な物質なのだ。

 Little Sisterは少女の姿をしたクリーチャーであり、それ自身の戦闘能力は皆無で無力な存在だ。ゆえに、常にSplicer達に付け狙われている。その代わりに、彼女達には強烈な戦闘能力を誇るボディーガード「Big Daddy」が常時寄り添っている。Big DaddyはLittle Sisterを外敵から守る代わりに、ADAMの分け前を与えてもらうという一種の共生関係にあるのだ。ADAMというRaptureの全てにおいて基本となる物質を巡り、この世界にはSplicer、Little Sister、Big Daddyという三者による生態系が構築されているわけだ。

 プレーヤーもまた、自己のPlasmidを強化するためにADAMを必要とする。そのためにはLittle Sisterを見つけだしてADAMを抽出・回収する必要があるが、その前にボディガードのBig Daddyを倒さなければならない。全身をプロテクターで包んだこのクリーチャーは、Splicerとは比べ物にならない戦闘マシンだ。標準難易度以上では、正面から殴り合って勝てる見込みはゼロ。勝利するためには、Plasmidの応用やハッキングを駆使した総合的な戦略が必要となる。思いつく限りのトラップを張って倒そう。

 Big Daddyを排除できたら、怯えるLittle Sisterを前にある選択をしなければならない。「Harvest(摘み取る)」か、「Rescue(助ける)」か。Harvestすれば最大限のADAMをいちどに回収できるが、Little Sisterはそのプロセスに耐えられず消滅してしまう。Rescueすれば半分のADAMしか回収できないが、Little Sisterは生き延び、Raptureの生態系は維持される。この判断によって当面のPlasmid強化によるプレイ内容が変わるだけでなく、世界の結末も変わってしまうだろう。少女の姿をした生き物を前にどうするかは、完全にプレーヤーの選択次第だ。

死体からADAMを抽出するLittle Sisterと、それを付け狙うSplicer。そこにBig Daddyが現われ、Splicerを一撃で排除してしまう。この三者によってRaptureの生態系は維持されているのだ

固定砲台や監視カメラなどのマシンはハッキングで味方にできる。手順は回路のパズルを解いて正しい出口へ水流を導くというものだ

マップ各所に落ちているレコーダーは世界背景を理解する為に役立つ 通常のFPSと同じく、ヘッドショットは大ダメージだ。積極的に狙おう 死体からは様々なアイテムを回収できる。回復アイテムは必須だ


■ 醜くも美しい独特のセンスが光る世界。秀逸なプレイ感覚に引き込まれる

Raptureの都市内部はモダン風の美術で統一され、独特の雰囲気を醸している
マップ画面ではステージ内の構成と攻略のヒントを確認できる。迷ったら開いてみよう
 映像表現に眼を向けてみよう。アール・デコ風のモダン芸術様式で構成された世界は文句なく美しく、これが作品を構成する遺伝子工学やハッキングといったSF的な題材とのミスマッチも相まってどこかシュールさすら感じられる。そんなグラフィックスの表現はUnreal Engine 3.0の技術に支えられており、シェーダー3.0対応の3Dレンダリングは非常に生々しい。

 同エンジンは特にヌルヌルテカテカとした質感表現が得意なようで、焼け焦げの表現などは一見の価値がある。敵として登場するクリーチャーはグロテスクで、奇妙なファッションセンスが印象深い。ただ怖いというよりは、気味が悪いといった表現がより正確だろう。そうした全体的な世界観はとにかく他のゲームでは全くみられない、ユニークな雰囲気を醸し出している。

 そして作品全体を通して水の表現が秀逸だ。舞台が海底都市ゆえ、窓を通して見る海底、水溜り、流れ落ちる水など多様な形で表現されている。これは開発元が「水の表現のためだけに専属スタッフを用意した」とまでこだわったものだという。スクリーンショットを是非見ていただきたい。水の流れや飛沫にシェーダー技術の粋を凝らしたレンダリング結果は、これまでコンピューターゲームで見ることのなかったレベルまで押し上げられているのは一目瞭然だろう。

 ゲームの流れそのものは、ステージクリア式で展開するリニアなシングルプレイ方式だ。マルチプレイモードは無い。カットシーン等の演出が要所要所に組み込まれているほか、プレーヤーが行く先々で見つけることのできる音声レコーダーの再生という方法で世界の状況やいきさつが理解できるようになっている。

 このあたりのストーリー演出の手法は「DOOM3」などに近いものがある。それもそのはず、この手法は初代「SYSTEM SHOCK」にて既に取り入れられたものであり、「SYSTEM SHOCK 2」で継承され、後発のタイトルで模倣されたものだからだ。そして本作においては、その物量や演出の姿勢がますます徹底されており、ゲーム全体を通じて世界観を語ることに注力している。

 このためストーリーの理解のためには大量の音声をヒアリングするか、字幕を読みこなす必要がある。まだ日本語版のない本作では、筆者の場合は長文読解に時間がかかるため、プレイ中はテキストの半分も理解できないまま進めてしまった。あとから読み返してなんとか理解を進めたものの、対応言語をネイティブに読める人に比べればずいぶん損をしてしまった感じだ。ゆえに日本語版の登場が待ち遠しいところだが、美しいアートワークや機知に富んだゲームプレイのダイナミクスは言葉がわからなくても充分に楽しむことができ、それだけでも本作の面白さは極めて高い水準にあると感じる。

随所で眼にする水の表現はこれまでにないクオリティにある。流れ、飛沫を上げる動きが美しく描画され、今夏の暑さを一時忘れさせてくれる

マップ中のオブジェは総じて高いクオリティで描かれており、ハイデフ時代の映像美を存分に楽しむことができる


■ Raptureを支配するアンドリュー・ライアンは、侵入者の動きを見逃さない

「我々はお前の所有物ではない!」放置されたプラカードが、ここで起こった出来事を物語る
 さて、ここからは、序盤の展開をテキストの邦訳を交えながら紹介して、ゲームの魅力をお伝えしていこう。

 プレーヤーは最初のフロアを脱出する中で、この世界で起こったことを多少ながら雰囲気を掴み取ることができるだろう。都市の入り口に散乱したプラカードには「我々はお前の所有物ではない!」、「こんなことは終りにして、地上に戻してくれ!」、「我々をライアンの好きにはさせない!」などの文字がある。どうやらこの場所で、「ライアン」なる人物への抗議活動が行なわれたのだろう。

 Raptureに放り込まれたプレーヤーは、「アトラス」と名乗る人物の導きにしたがって電撃のPlasmidを手にし、探索を進めていく。彼はRaptureの主ライアンとは敵対しているようだ。アトラスは、隔離された家族を救い出すため、Raptureの上層に向かえという。言葉に従って電撃とレンチ攻撃を駆使しながらSplicerを排除し進んででいくと、突然、閉所に閉じ込められてしまう。現われたのは黒幕アンドリュー・ライアンの映像だ。

 「それで、お前はどのメス犬から送り込まれたのかね? KGBの狼か、CIAのジャッカルか?
 そんなお友達にお知らせだ。ここRaptureは宝探しの沈没船じゃあない。
 ついでに、アンドリュー・ライアンは政府の権力で思い通りになるようなマヌケの紳士でもない。
 ではさようなら、あるいはソビエト風に“ダスヴァディニャ”がいいかね」

 通信が終わるといきなり3体のSplicerが現われ、窓をガンガン叩きつけて入ってこようとする。ここはアトラスの機転でセキュリティシステムを上書きし、間一髪で脱出することができた。作品全体を通じてこのようなホラー風の演出が随所に登場し、怖いのが苦手な人にとってはハラハラドキドキの連続になるだろう。

沢山のSplicerをむこうに回して戦うことに。ダメージを受けると派手なエフェクトがかかる 密室に閉じ込められ、プレーヤーがライアンの監視のもとにあることを知る 通信が終わるや否や3体のSplicerが窓を破壊しようと暴れまわる。いきなりの演出で結構怖い

・遺伝子改造技術と、マッドな整形外科医シュタインマンの憂鬱

整形手術に失敗したらしい患者の霊が恨めしくシュタインマンを呪っている……
シュタインマン医師の仕事振りは、机の血糊がべったりとついた手術用器具を見ればよくわかる。とても腕のいい医師とはいえなさそうだ
各所で見かける警備システムはハッキングで味方につけておきたい
 次なる場面では、目的地にいたる潜水球を使うため緊急アクセスシステムを駆動させる必要がある。そのキーを握っているのは医療棟に潜むシュタインマン医師だ。このステージでは、満たされぬ思いを整形外科手術と遺伝子改造にぶつけるシュタインマン医師の狂気の痕跡を追いかけながら、新たなPlasmidを手に入れつつ、奇妙な空間を探索することになる。

 「綺麗にしてくれるって約束したじゃない、シュタインマン先生、
 綺麗にしてくれるって……その私を見てよ……見なさいよ!!」

 閉ざされたドアにぶつかっていく幽霊の悲痛な叫びが痛々しい。「ADAM」の力により人体を文字通り彫刻のように切り刻む喜びに目覚めたシュタインマン医師は、壮絶な悲劇をこのフロアで起こしてしまった。音声レコーダーには、シュタインマンの言葉が残っている。「ADAMにより肉は粘土となり、新たな術式が可能になったのだ……。仕事が完成するまで切り刻み、切り刻み、切り刻み続けるのに何の遠慮が必要なのか?」──しかし、手術は全く成功しなかったようだ。

 このステージからは各所に自動砲台や自動販売機が登場する。自動砲台は素早く電撃で無力化し、すかさずハッキングして味方につけよう。たいていの敵は砲台の近くに誘い込むだけで片付けることが可能だ。自動販売機は各所で手に入るドル紙幣を投入することで弾薬や回復キットなど消耗品を補充することができる。これをハッキングすれば価格が安くなり、特別なアイテムが購入可能になるという按配だ。ハッキングは水流回路をうまく接合して、定められたゴールへ水の流れを導くことでおこなう。ちょっとしたパズルゲームというわけで、慣れればどんどん解いていける。

 歩みを進めていくと、プレーヤーは“発火”と“テレキネシス”のPlasmidを入手する。発火のPlasmidはちょっとしたショックだ。敵Splicerに火をつけると燃え盛りながら走り回り、やがて倒れて中途半端に炭化してしまう。Unreal Engine 3の特徴であるノーマルマッピングによる凹凸表現が生々しすぎ、スクリーンショット掲載をためらったほどだ。このPlasmidは凍りついた通路を解凍して道を開く用途にも使う。普通にゲームを進めていれば必ずぶつかる障害となっているので、この応用にすぐに気付くことができるだろう。

着火能力のPlasmidを入手。新しい能力を手に入れると効果を説明するシュールな紙芝居が再生される。ここでは部屋の周囲を敵に囲まれるので、早速実践するチャンスだ

良く見ると足元に石油がこぼれ、部屋の外へ繋がっている。着火すると火が回り、部屋を囲んでいたSplicerが全員火達磨に。十数秒で黒コゲの焼死体が完成するが、この映像は生々しすぎる

サイコ医師シュタインマンの登場。整形術というよりは解体に近そうなのだが……
 テレキネシスのPlasmidを手に入れると、火炎瓶を投げつけてくるタイプのSplicerは簡単に排除できるようになる。投げつけてきたモノを念力で捉え、投げ返してやればいいのだ。相手は炎に巻かれて簡単に力尽きる。この能力を使って障害物を排除しながら進んでいくと、ついにシュタインマン医師の手術室に到達する。当のシュタインマンは哀れな犠牲者を前に手術中だった。

 「美の女神アフロディテよ、私はコレに何ができるだろう。
 動くなよ! 私は皆を美しくしたいのに、いつも違ってしまうんだ!
 これは……太すぎる! これも……高すぎる! これは……左右対称過ぎる!
 (体を滅茶苦茶に切り刻む) よし、女神よ、コレでどうかね? 
 (プレーヤーに気がつく) 侵入者か! 醜悪なツラだ! 醜い、醜い、醜いぞ!」

 ここでシュタインマンが襲い掛かってくる。手術の腕は哀れなほどだが、ボスキャラだけに、少々ショットガンを打ち込んだ程度ではビクともしない、かなりタフなやつだ。直接撃ちあい、殴り合っても分が悪い。電撃もほとんど通じない。

 周囲をよく見るとガスボンベが転がっている。テレキネシスでつまみ上げ、投げつけてやろう。爆発で火達磨になった医師は水場を求めて走り回る。そこで、相手が水面に立ち消火したところで電撃をお見舞いする。通電して大ダメージだ。こうして瀕死になったところを銃撃で止めを刺すもよし、ガスボンベを再びぶつけて爆風で倒すもよし。好みの結末をプレゼントしてやろう。

ショットガンで撃っても大したダメージにならないので、ガスボンベをぶつけて爆発炎上させる。水場を求めて走り回るのでそのスキにダメージを与え続けよう

シュタインマンに対し、ハッキングしたセキュリティボットをけしかけてみた。プレーヤーが一発も撃つことなく、固定砲台と戦い続けたシュタインマンは勝手に力尽きて昇天。これには笑ったが、こういう戦い方もアリなのが本作の醍醐味なのだ


■ 結末はマルチエンディング。ソロプレイのみながらリプレイ性は極めて高い

大きな分岐点となるLittle Sisterの処理。怯える少女を「摘み取る」か「助ける」か。プレーヤーの意思はゲームの結末も変えてしまうものになるだろう
 シュタインマン医師を片付けると、Little SisterとBig Daddyのコンビがお目見えする。最初の出会いではBig Daddyが吹き飛ばされ討ち死にしているので、「無料で」Little SisterからADAMを回収することができる。ここでLittle Sisterを「Harvest」するか、あるいは「Rescue」するか、選ぶ。回収したADAMは、ステージ内で時折見かけるPlasmid自動販売機「Gatherer's Garden」にて新たなPlasmidと交換することができる。

 Little Sisterはこの世界の生態系に必要な物質を唯一生み出せる存在だ。つまり、プレーヤーの選択がRaptureの運命をも左右することになることを意識しておきたい。2度目以降にLittle Sisterと出会うとき、Big Daddyを排除しなければADAMを回収することはできないが、それをするかどうかもプレーヤーの意志次第だ。

 筆者は、最初のプレイでLittle Sisterを片っ端からRescueするという道を選んだ。助けてくれたことを感謝するLittle Sister達は時折、お礼と称してGatherer's Gardenの前にアイテム入りのテディベアを置いてくれる。これには追加のADAMと、無料のPlasmid、特殊な弾薬などが入っている。単純な勘定としてはLittle Sisterを全てHarvestしてしまったほうが、入手できるADAMの絶対量は大きく、プレーヤーをより強く強化できるかもしれない。しかし、あるいは、ADAMを使ったプレーヤー自身のPlasmid強化は、Splicerのような非人間化の結末をもたらすのかもしれない。

 本作はマルチエンディングの結末が用意されている。これは上記のようなプレーヤーの選択によって変化する。大量のADAMを回収し、徹底的にPlasmidを入手して能力を強化して進むか。あるいは、ADAMに頼らず最低限の能力だけで火力を中心に切り抜けていくか。いずれのプレイスタイルも本作では許容され、それに応じた結末へプレーヤーを導く。このため一度クリアしても、プレイ中に得た気付きをもとに再度別の視点でプレイすることができるのだ。このため、シングルプレイ専用のゲームとは言えどもリプレイ性は非常に高いといえるだろう。

怒りのPlasmidを使い、Big Daddyを錯乱させてそこらじゅうの敵をけしかける。ある程度体力が減らされたところで止めをさしてやろう

残されたLittle SisterからADAMを回収すれば、Gatherer's Gardenにて新たなPlasmidを入手することができる。方向性を考えつつプレーヤー自身を改造していこう


■ 近年まれに見る傑作FPS。完全理解には英語力必須のため、日本語版の登場に期待

 本作は、テキストを丁寧に読み進めながら世界観を理解し、Raptureに何が起こったのか、プレーヤーの周りで何が起こりつつあるのかなど、作品のディテールを味わいながらプレイできれば楽しみはさらに増していくことだろう。残念ながら筆者は英語力の不足により全てを理解することができなかったが、理解を深めるためにもさらにプレイを継続したいという衝動に駆られている。

 このような手応えのあるFPSタイトルは、近年まれに見るものだ。リリース間もない新作だが、間違いなく名作に数えられることになるだろう。ただし、知的な工夫の必要なプレイ内容、大量のテキストに支えられたシナリオ展開は、カジュアルなゲームへの取り組みでは充分に楽しめないことも考えられる。大作であるがゆえに、プレイする人間にもそれ相応の姿勢、スキルを求めてしまうのだ。

 それだけのパワーを持つ人気作だけに、発売直後はオンラインライセンス認証システムの混雑によるプレイ不可問題や、Steam配信版のダウンロードがあまりに低速になるなどでなかなかプレイできないという状況が続いた。これらの件でゲーム外のフラストレーションを溜め込んだプレーヤーも多いことかと思うが、現在は割合沈静化しているので、これからプレイしようという方は大きな心配をする必要はないと思う。

 なお、本作は、Xbox 360にも同時展開が予定されており、それだけにPCの要求スペックも高めだ。筆者の環境(Core2Duo E6420、Geforce 8800GTX)ではほぼ全てのシーンで60fps以上のパフォーマンスで快適にプレイできた。

 この夏の終わりには本作を手にして、Plasmidの様々な使用方法による知的な戦闘の展開、美しくユニークなアートワーク、完成度の高い謎解きとゲームプレイを是非楽しんでいただきたいと思う。いまだPC版、Xbox 360版とも発表はないものの、日本語版の登場が待ち遠しい限りだ。

中盤以降になると「写真撮影」により敵をリサーチし、自身の能力を高めていく遊びも追加される。Plasmidによる強化も自由度が高く、FPSとアドベンチャーゲームの楽しみを全部味わえる本作のボリュームは価格以上の価値があるだろう。是非プレイしてもらいたいタイトルだ

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    【BIOSHOCK】
  • CPU:Pentium 4 2.5GHz以上
  • HDD:7GB以上
  • メモリ:1GB以上
  • ビデオカード:シェーダ3.0以上、ビデオメモリ128MB以上


□Take-Two Interactiveのページ
http://www.take2games.com/
□「BIOSHOCK」のページ
http://www.2kgames.com/bioshock/enter.html

(2007年8月29日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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