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★PC/Xbox 360ゲームレビュー★

PC版とXbox 360版とで異なるゲームデザインを実現
特殊部隊リーダーとして隊員を指揮しつつ戦え!

ゴーストリコン
アドバンス ウォーファイター 2

  • ジャンル:タクティカルアクションシューティング
  • 開発元:Grin
  • 発売元:ユービーアイソフト / イーフロンティア
  • 対応プラットフォーム:Xbox 360、PC
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 価格:Xbox 360版7,140円 / PC版6,090円
  • レーティング:C(15歳以上)
  • 発売日:Xbox 360版7月12日(発売中) / PC版7月27日(発売中)



 今回ご紹介する「ゴーストリコン アドバンス ウォーファイター2」は、リアルな戦場表現で長く人気を誇る「Tom Clancy's Ghost Recon」シリーズの最新作だ。本作は7月にXbox 360で日本語版が発売され、続けて同月にPC版(日本語マニュアル付き英語版)も登場した。Xbox 360版とPC版の間には多くの違いがあり、それぞれ別のゲームとして楽しめる内容になっている。本稿では、本格的タクティカルFPSとしてマルチプラットフォームで展開する本作の醍醐味をご紹介していこう。なお、掲載スクリーンショットは、PC版で統一している。


■ 隊員や支援兵器を駆使しながら戦うタクティカルFPS。PC版は全体的に高難易度、Xbox 360版は補正あり

中米・メキシコを舞台に展開する隠密作戦。少人数のチームでどれだけのことができるのか
主人公の操作はFPSスタイル。銃の特性はリアル志向で、正確な射撃が効果的だ
 2014年、メキシコ。中米の政情不安はついに爆発し、大規模な反乱軍が出現した。事態を重く見たアメリカ政府は、最精鋭の特殊部隊「ゴースト」へ出動命令を下す。ロシアから密かに運び込まれた核兵器を手にする反乱軍の意図を挫くべく、公式には存在しないことになっている「ゴースト」が困難なミッションへ立ち向かう……。

 主人公「サミュエル・ミッチェル」が隊長を務める「ゴースト」部隊は、最新鋭の情報装置を搭載するコンバットギアで身を固めた最精鋭の兵士達だ。ゲーム画面に表示されるHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)は、実際にゴースト隊員が見ている映像と同じものという設定。隊員が発見した敵には追跡アイコンが表示され、それは部隊内全員で共有される。戦闘中の各局面では、映像通信により新たな指令が下される。

 基本的なプレーヤー操作は、オーソドックスなFPSスタイルだ。ゲームバランスとしてはリアル寄りで武器の威力が強く、まともに攻撃を受ければ主人公といえども簡単に死んでしまう。このため一方的な形で敵に発見されると極めて不利だ。ゆえに基本的な移動操作に加えて姿勢制御の操作が重要となる。通常姿勢では移動が素早いものの敵に発見される確率が高いため、「姿勢を低く」した状態で移動して敵から発見されるのを避ける。敵の多い場所では「伏せる」操作も必要になってくる。影のように行動し、敵に悟られないうちに射撃を加えて倒す。こうしてノーダメージで戦闘をこなしていくというのが本作の基本的なゲーム展開だ。

 Xbox 360版は、主人公の肩越しの視点で進行する3人称視点を採用しており、上記の要素に加えて、遮蔽物を利用したゲームプレイが可能だ。主人公は壁や塀などに接近すると、自動的に壁面に背中を寄せて張り付く。この状態で遮蔽物が切れる方向にアナログスティックを倒せば身を乗り出して向こう側を伺うような動きになり、この状態で射撃することも可能。照準は大体合っていればある程度の補正が働くが、正確に当てるためには主人公の姿勢が安定するまでややタイミングを測る必要がある。敵の攻撃を遮蔽物で防御しつつ、タイミングを見て一方的に射撃を加えるのが主人公の基本アクションになるわけだ。Yボタンを押せば背の低い障害物を乗り越えることも可能だ。このあたりの操作性は「Gears of War」に近い。

 一方、PC版ではこれらのアクションはバッサリカットされており、カメラも通常の1人称視点でオーソドックスな形態。壁に張り付く代わりに左右に傾くアクションを使って同様の状況を処理することになる。

 しかしプレーヤーひとりでは打開が難しい状況に度々遭遇するのがこのゲーム。そんな時に上策となるのが味方部隊の活用だ。本作ではほとんどのステージで「ゴースト」隊員や現地兵が主人公と行動を共にし、彼らをうまく操ることでゲームを有利に展開できるようになっている。

・的確な指示で隊員を操り、戦闘を有利に展開する

ゴースト隊員は簡単な命令インターフェイスで操作できる
 命令可能な隊員がいるときは、画面左上の「CrossCom」パネルに必要なインターフェイスが表示される。Xbox 360版では十字ボタンの上方向で前進または攻撃、下方向で合流を指示する。基本的に隊員全体が指示対象となるXbox 360版とは異なり、PC版では各部隊と各隊員に数字が振られ、これがキーボードの数字キーに対応しており、個別に指示を出すことができる。キーボードの“1”キーを押せば「ゴースト」チームの全員を選択したことになるため、1キーを多用することになるが、厳しいステージでは各隊員を個別に操る場面も多くなるだろう。PC版ではこの状態でマウスホイールボタンを押すと画面上に命令メニューが表示される。

 「ゴースト」に下せる基本命令は、「FOLLOW(隊長に追従)」、「MOVE(移動)」、「ATTACK(攻撃)」、「COVER THAT(対象に制圧射撃)」、「STOP(停止)」。多くの場面で「FOLLOW」を指示することになると同時に、敵がいる場所では「MOVE」コマンドを使い隊員に遮蔽物を移動させたり、「COVER THAT」で敵を足止めさせておき、主人公が別働して側面を突くような動きで難しい局面も打開できることだろう。さらにXbox 360版では、十字キーの上方向を押したときに画面が地形をポイントしていれば移動、敵をポイントしていれば攻撃という、よりシンプルな形になっている。

 「RECON」、「ASSAULT」というふたつの行動モードの選択も重要な要素だ。Xbox 360版ではLBを押すことで両モードの切り替えが可能で、PC版では命令メニューから選択する形になっている。「RECON」を指示した隊員は可能な限り隠密行動を取る。このモードで隊員が攻撃を行なうのは、攻撃を受けて反撃する場面だけに限られるため、偵察に使うと良いだろう。「ASSAULT」モードでは、隊員は眼に入る敵に対して積極的に攻撃を加える。基本的には、「RECON」モードで悟られることなく敵の陣容を把握し、配置についたら「ASSAULT」モードで一網打尽にするという流れになるわけだ。

 ただし、隊員の戦闘能力は、主人公に比べて非常に限られている(プレーヤー自身がFPS猛者ならば尚更だ)。あまり敵に向けて突出するような動きをさせたり、「FOLLOW」状態のまま放置して勝手に進んでいくと、バタバタと倒されてしまう。そうならないためには慎重さが要求されるのだ。Xbox 360版ではRB、PC版では“G”キーを押すことで、「CrossCom」ネットワークに繋がっている「ゴースト」隊員の見ている映像をそのまま見ることができるので、的確に状況を判断しながら命令を下していこう。

 隊員には装備する武装により複数のクラスがあり、出撃前の画面で選択可能だ。クラスタイプは万能タイプの「RIFLEMAN」、対車両特化の「DEMOLITION」、重装備の「SUPPORT」そしてお約束の「SNIPER」。Xbox 360版では隊員の体力回復をおこなえる「衛生兵」クラスもある。各隊員の装備はクラスで使用可能なものに限定され、主人公だけは全種類の装備を携帯することができる。

「ASSAULT」モードに設定した隊員が敵に対して攻撃を加える 難しいシーンでは隊員に先行させ、反応した敵を別の位置から仕留める作戦が効く Gキーを押すと隊員視点の映像を見ることができる。細かい制御はこの画面で行なう

・PC版とXbox 360版とでかなり異なるコマンドインターフェイスとタクティカルマップ

タクティカルマップ。ここではRTSスタイルの操作で隊員に行動を指示できる
 ゲームが進行すると、「ゴースト」隊員のほかに、小型偵察機「Drone」や自律移動型車両「Mule」などの戦術マシンも利用可能になる。これらのマシンも「CrossCom」を通じて主人公にネットワーク接続されており、命令インターフェイスを通じて移動などの指示を出すことが可能だ。

 Xbox 360版ではRBを押している間、これらのマシンを主観視点で直接操作することが可能であり、簡単に制御することができる。逆にPC版ではこれが不可能になっていて、その代わりに“TAB”キーを押すことでアクティブになる全画面のタクティカルマップを搭載している。これはXbox 360版には無いインターフェイスで、マウス操作を前提とするRTSスタイルの操作が可能だ。タクティカルマップでは一定範囲内の精密なマップ状況を確認できると同時に、各部隊・隊員に対してウェイポイントを設置したり、攻撃などの指令を下すことができるのだ。ウェイポイントの指定は、複雑な構造を持つマップでの展開では非常に重宝する。

 「Drone」に移動命令を出すと、到達地点付近の敵を上空から次々に発見してくれる。Xbox 360とPC版共通で、発見した敵の情報は主人公をはじめとする「ゴースト」隊員のHUDにも表示されるため、安全な位置から死角に居る敵の位置を完全に把握することが可能なのだ。これを使って戦況を把握しつつ、上手に隊員を動かして一方的に戦闘を展開するのが本作の醍醐味といえよう。

 このタクティカルスクリーンに代表されるように、PC版とXbox 360版は全体的に違ったインターフェイスになっているため、プレイ感覚もかなり異なる。PC版はゲームバランス的にもマウスを利用できる環境にしっかりと合わせた作りになっており、照準操作が的確にできるぶん、敵の反応や出現数がグレードアップしており手ごわい内容だ。Xbox 360版は逆にシンプルさに重点を置いた格好で、遮蔽物を使ったアクションが大きな特徴。Xbox 360、PC版の両方をまとめてプレイしても、それぞれに違った「ゴーストリコン」の世界を発見できることだろう。

これは「Drone」の視点。直接操作が可能なXbox 360版とは異なり、PC版ではタクティカルマップ上で指示を出す形になる 「Mule」は武器庫として弾薬の補給を可能にしてくれる。移動させて前線での武器交換に活用しよう 味方戦車にも「CrossCom」システムが搭載。視点を得た状態で対象に攻撃命令を下す

敵戦車には「AIR STRIKE(航空支援)」を呼び出そう。対象に命令を出すと数秒で攻撃が行なわれる 味方が捕捉している敵は自分の画面にもアイコンとして表示される ミッション経過はタクティカルマップスクリーンで確認できる


■ ストーリーとゲームの流れは共通、マップ構造やミッション内容は全くの別物

最初のステージでは、洞窟に隠された敵自走砲をC4爆薬で破壊する
 本作の主要パートはシングルプレイモードだ。メキシコ国境地帯で起こった大規模な紛争を舞台に、アメリカ合衆国の威信をかけて活躍する「ゴースト」の視点でキャンペーンが展開していく。

 ファーストステージは訓練ミッションだ。Xbox 360版ではゲームスタート後にカットシーンが入り、ジープに乗って基地へ向かいながら中米地域で反乱軍が蜂起したというニュースを見ることになる。そして音声ガイダンスの指示に従いながら移動方法や武器の扱いを学ぶチュートリアルミッションだ。

 PC版ではこのようなカットシーンの演出は無く、いきなり実戦仕立て。ここでの練習ミッションは基地に立てこもる反乱軍を鎮圧し、野砲陣地を破壊して、最後に橋を爆破するという内容。Xbox 360版とPC版とでは練習ミッションのマップも全然異なるもので、筆者は当初、ちがうゲームを買ってしまったのではないかと思ったほどである。PC版は最初から沢山の敵が激しい攻撃を加えてくるため、筆者は3、4回ほど死んでしまった。

 PC版は最初から難しくて面食らう部分もありながら、テキストで示されるヒントを頼りに、ここで基本的な操作と指令方法について把握できる。最初のステージにはいくつかの爆破ミッションも含まれているため、学習内容としてはXbox 360版よりも充実。このように、PC版では全体的な難易度が向上しているほか、マップ内容も大幅に、というよりは全く違うものに変貌しているのだ。

PC版練習ミッションは当初目標を達成すると、敵が増援をよこしてくる。これを排除し、橋下駄にC4爆薬を仕掛けてこれを破壊。これでミッションクリア。難易度的には最初から重めの印象

PC版固有のブリーフィング画面では全体マップと作戦の背景・目標を確認できる
PC版の武器のカスタマイズはミッションに合わせて行なおう。フロントグリップを装着すると照準精度がアップする
第2ステージから早速立体的な地形を使った頑強な抵抗に遭う。無難にこなすにはFPSスキルが必要だ
 最初のステージをクリアするといよいよ本番となる。Xbox 360版ではカットシーンで「ゴースト」が戦場へ派遣される模様が演出され、ブリーフィング画面に切り替わってゲームへ突入する。これがPC版ではより詳細な画面に変更され、ステージ開始時には全体マップを使ったミッション説明が表示される。PC版は英文なので日本語ユーザーにはちょっと辛い部分でもあるが、マップ中の目標はゲーム進行中にアイコンの形で表示されるため、仮にここの説明が理解できなくても実際のプレイにあまり支障はないだろう。ここではマップの構造とミッションの目標地点を把握すればOKだ。

 次は部隊の編成と装備の選定画面だ。画面構成としてはXbox 360版はシンプルに、PC版ではより情報量の多い構成となっている。ここではゴーストチームに組み入れるメンバーを選定し、戦場へ持っていく武器を選択する。両者で異なるのは、PC版では隊員に持たせる武器を個別に選択できる点と、武器のカスタマイズを自分で選択できる点だ。

 本作における主人公の武器はメインウェポンとしてライフル系が1種、サブウェポンとしてサブマシンガン系が1種、サイドアームとしてピストルが1種、補助装備として手榴弾または携帯ミサイルという構成。カスタマイズが可能なPC版の中でもM416といったライフル銃はオプションが豊富で、「コンバットサイト」、「フロントグリップ」、「グレネードランチャー」、「サプレッサー」のようなパーツを加えることができる。ただし、武器や各オプションパーツには重量があり、全体の制限重量を越えると装備できなくなる。筆者の場合はメインウェポンを充実させた上でピストルを捨てるなどのトレードオフを行なう場面が多かった。メインにスナイパーライフルを選択した場合は、サブウェポンとしてサブマシンガンが必ず必要になる。ここは慎重に選択したい。

 Xbox 360版、PC版ともに、第2ステージは砂漠質の山岳地帯を舞台とするマップだ。ここでは狭隘な盆地に作られた基地へ侵入し、反乱軍の抵抗を排除しながら2台の自走砲を破壊する。マップの形状はXbox 360版とPC版で全く異なり、PC版は序盤のステージとはいえ、崖に添って作られた構造物などに多くの敵が潜み、非常に立体的な戦闘が展開する。バランス的にはXbox 360版の最高難易度よりも難しく感じるほどだ。そのXbox 360版では2つの自走砲を破壊した後、橋を爆破する工兵を援護するため敵兵を排除するミッションがある。

 ここで与えられるゴーストチームの隊員は、Xbox 360版では3名、PC版では2名。PC版の敵はスナイパーライフルなどで装備しているほか、自走砲も稼動状態にあるため、メンバーを軽率に開けた場所へ歩かせると、十字砲火を食らって簡単に全滅してしまう。遮蔽物をうまく使いながら、射線に入る敵を丁寧に遠距離で仕留めていく技術が問われるだろう。このような展開になると味方があまりアテにならなくなるため、プレーヤー自身が個人行動で敵を片付けながら進んでいくことにもなりがち。筆者の場合は敵の7割以上を一人で倒すような結果になっしまった。このあたり、ゴースト隊員がもう少し優秀ならば良かったのだが。

 第3ステージは市街戦。そしてここでは敵として戦車が登場する。ここもまたXbox 360版とPC版とでマップ構造は全然違うが、市街戦で戦車が出てくるのはと同じ展開だ。広場に陣取った戦車は主砲だけでなく上部銃座からも射撃を加えてくるため、死角が少ない。こういうときにこそゴースト隊員を遮蔽物を使って近寄らせ、敵の射線を混乱させる役割を負わせよう。自分は別方面から接近し、タイミングよく遮蔽物から顔を出してあらかじめ装備しておいた熱源探知型携帯ミサイルでトドメをさす。こういったチームプレイが決まったときこそ、このゲームならではの痛快さを感じるところだ。

スナイパーライフルを使い、発見される前に遠方から敵を片付けてしまう。一度見つかってしまうと動き回られて手に負えなくなるので、1発でしとめよう

敵を排除したら自走砲にC4爆薬を仕掛け、ひと思いに爆破。2両の自走砲を破壊すれば、PC版ではヘリコプターに乗り込み脱出してクリアとなる

・プレイ特性の異なるXbox 360版とPC版。シングルプレイモードの完成度はPC版に軍配

 これ以降のステージでは、込み入った住宅街での銃撃戦や、延々と増援を続ける敵を少人数で食い止め続ける戦い、そしてナイトビジョンが活躍する夜戦、重要人物を救出する潜入ミッションなどバリエーション豊富に展開する。これまで解説してきたとおりステージとストーリーの展開としてはXbox 360版とPC版ともに共通の流れを踏襲しながら、どれもマップ構造は全く異なっており、Xbox 360版をプレイしてからPC版をプレイすると、まるで拡張パックをプレイしているような感覚に襲われる。

 入力デバイスが異なるXbox 360版とは単純に比較できないものの、PC版ではまず間違いなく敵の攻撃はハードになっているし、マップ構造も立体的で全方位に注意が必要な度合いが増している。結果として非常に手応えのあるゲームバランスに構成されているのがPC版の特徴だ。ゆえに、PC版で導入されたタクティカルマップの活用や武器のカスタマイズなど、固有の機能を駆使して攻略を進めていきたいところだ。単なる移植作に終わらず、感触の異なるゲームとして仕上げてきたユービーアイソフトと開発会社Grinの姿勢を高く評価したい。

 逆にXbox 360版では、比較で言うならば敵の数は控えめで、攻撃の精度も高くはない。これはアナログスティックによる照準操作というバランスを考慮してのことだろう。しかしながら、ステージが進む毎に難しさが増し、隊員をうまく使ってプレイすることが求められる点では変わりない。しかし、ここでXbox 360版で見られた問題について報告しておかなければならない。

 Xbox 360版では、隊員に移動や合流の命令を出した際、移動先との間に少しでも遮蔽物があると「移動できません!」といって命令を履行してくれなくなるという不具合がある。ステージが進むほどにこれが頻発するので、結果として隊員が全く使えず、主人公一人だけでクリアしなければならないという事態に陥ってしまっているのだ。

 これについて筆者がユービーアイソフトのユーザーサポートに問い合わせてみたところ、「基本的にそういう仕様である。隊員は障害物の一切無いごく短い距離であれば反応する。また、一人でもクリアできる」と返されてしまった。しかし、これはXbox 360の英語版では見られない挙動であり、しかも本作の「タクティカルな」ゲーム性を完全に破壊しており、比較的致命的な不具合だと筆者は断ずる。

 だが、ユービーアイソフトでは、この件についてパッチでの改善も予定していないとのことだ。明らかな不具合を「仕様」として対応を行なわないユービーアイソフトの姿勢には強い疑問と失望を感じる。Xbox 360版はこうした問題を抱えているため、現在完成度の面でPC版が圧倒的に優れるといわざるを得ない。

第3ステージ以降は敵がいよいよ多くなる。側面から一方的に片付けていきたい この面から登場する敵戦車は携帯ミサイルで攻撃。熱源を探知できたら発射する 命中すれば一発で木っ端微塵に。周辺に残った敵兵士にも注意して次に進もう

敵の多くなる中盤以降は横に傾ぎながらの索敵や狙撃が多くなるだろう トラックに山盛りの敵兵士。位置を気付かれないよう一発づつ確実に当てて片付ける 夜戦ではナイトビジョンを使用。被発見されにくい環境だがいったん見つかるとやっかいだ


■ 予想以上に面白いマルチプレイ。チームデスマッチはサバイバルゲームの興奮が楽しめる

FPSユーザーにはおなじみのサーバーブラウザ。付属の実行ファイルで専用サーバーも立てられる
 本作のマルチプレイモードは、筆者の感触として予想以上に面白いものだった。

 まず、マッチング方式としては、Xbox版は自動的にホストを探して接続するクイックマッチと手動のホスト検索によるもの、PC版はFPSタイトルでは一般的なサーバーブラウザモードからのゲーム選択となる。PC版はサーバーリストの更新時にやや無応答となる妙な間があるものの、これはGamespyのマッチングシステム側の問題なので、あまり気にする必要はない。

 マルチプレイゲームにはXbox 360版は最大16人、PC版は最大32人が同時参加可能で、ゲームデザイン的にネットワークラグの影響が少ないゲームなので海外サーバーでも気分よく参加できるのが素晴らしいところだ。ただし、現在Xbox 360版は日本国内でしか対戦できない仕様になっている。これについては、ユービーアイソフトが国際対戦を可能にするパッチを作成中であるとのことだ。

 マルチプレイのゲームモードは、基本的には以下の5種類だ。

・Recon vs Assault mode (リコン対アサルト)

 これはPC版オリジナルのゲームモードで、シングルプレイモードのゲーム内容をマルチプレイモードに持ち込んだ形式だ。参加プレーヤーはゴーストチームと反乱軍チームとに分かれ、ゴーストチームはシングルプレイと同じくミッションのクリアを目指し、対する反乱軍チームは実力でゴーストチームの阻止をおこなう。ゴーストチームが全滅するか、全てのミッション目標をクリアすると決着する。

・Cooperative mode (協力モード)

 シングルプレイモードと同じゲーム内容を、参加プレーヤーが協力して達成するゲームモード。シングルプレイモードと異なるのは、時間とともに敵が再出現することと、主人公がやけに打たれ弱くなっていることだ。シングルと同じ感覚でプレイしていると、死んでばかりで全く活躍できないまま終わってしまう。仲間と共同歩調をとり、タイミングよく進撃していくのがプレイのコツだ。Xbox 360バージョンでは、本体に複数のコントローラーを接続して1台で最大4人の同時プレイが楽しめる。

・Deathmatch (デスマッチ)

 比較的狭いマップで、己以外は全員が敵というオーソドックスなデスマッチモード。本作ではあまり人気がないようだ。少人数向けのゲームモードなので、LANなどで身内だけでプレイするには丁度よさそうではある。

・Team Deathmatch (チームデスマッチ)

 シンプルなチーム対チームの集団戦モード。実は本作で一番面白いのはこのモードかもしれない。ルールは単純、より多くの敵を倒したチームが勝利する。プレーヤーは死んでも復活するが、復活回数が限られているため、緊張感のあるゲームプレイが楽しめる。

・Humburger Hill (ハンバーガーヒル)

 同名のベトナム戦争映画で描写されている通り、拠点確保を目指すゲームモードだ。プレーヤーはチームに分かれ、マップ内に配置された拠点を奪い合って勝敗を競う。このゲームモードにはいくつかのサブルールがあり、それぞれ「占拠時間に応じたポイントを競う」「時間終了時に占拠していたチームの勝ち」、「スコア目標に最初に到達したチームの勝ち」、「相手チームのポイントを全て奪えば勝ち」、「攻守に分かれ、攻撃側が5秒以上占拠すれば勝ち」となっている。

「Cooperative」のプレイ風景より。これだけの人数のゴーストがいても、達成には十数分かかってしまう難しさ 難易度が高い理由は、敵が強力になうえに、時間が経過するとどこからともなく敵が再出現するせいで攻略に手間取るためだ ミッションクリア後は各自の貢献度に応じてランキングが表示される。敵を倒すだけで上位入賞は難しい

「Team Deathmatch」の風景。サバイバルゲーム経験者にはわかる、このムードがたまらない
 筆者はおもにPC版でマルチプレイゲームを楽しんだ。サーバーブラウザで各サーバーの参加人数を眺めてみると、各ゲームモードの中で人気があるのは「Cooperative」と「Team Deathmatch」のようだ。「Cooperative」に関しては、シングルプレイモードが面白い本作のこと、協力してミッションを進めるのが楽しいのは当然のことだろう。筆者も数ゲームほど参加してみたところ、主人公が打たれ弱いぶん慎重なプレイが必要なため緊張感のあるゲームを楽しめた。ただ、プレーヤー間の意思疎通がうまく行かないと、むしろ個人の力でミッション達成を競う“競争モード”になってしまうのが難点か。

 しかし、なんといっても筆者が最も楽しめたのは後者の「Team Deathmatch」モードである。本作のデスマッチは一般的なFPSタイトルとは異なり、先に射撃したほうが一方的に打ち勝ちやすい。これは射程距離が長いことと、武器の攻撃力が極めて高く、ほぼ一撃で勝負がついてしまうためだ。さらにこのゲームモードではプレーヤーの復活回数が限られており、復活ポイントがなくなるとゲームに参加できなくなる。結果的に全プレーヤーが命を大事にするプレイに走ることになり、建物や植物などの遮蔽物を使ってのキャンピングがプレイの基調となる。

 エアーソフトガンを使ったサバイバルゲームをリアルで趣向したことのある筆者にとっては、本作の感覚はまさにそのもの。藪の中に潜み、敵の動き出しをじっと待つジリジリとした感覚は、コンピューターゲームではなかなか味わえないものだ。全員が命を大事にするといっても、勝負を決めるために動を起こすタイミングが必ずやってくる。そこをいち早く捉え、こちらの位置を悟られるまでもなく仕留めてチームスコアに貢献していく。飛び出した味方が目の前で倒されても、全く動じることなく索敵を続けるのが長く生き残るコツだ。それと同時に、安全を確認すれば有利な位置へ移動する勝負強さも持ち合わせたい。シンプルだが奥深く楽しめるのが本作のチームデスマッチモードなのだ。

出撃時に自分のクラスを選択してゲームへ参加。筆者は「Rifleman」一択というスタイル じっと潜んで敵が飛び出した瞬間を逃さず射撃。当たりさえすればほぼ一撃でしとめられる ラウンド終了後にスコア発表。独特のセンスが求められるゲーム性だけに、上位入賞はなかなか難しそうだ


■ PC版を単なる移植に終わらせなかった姿勢は高評価。Xbox 360版は致命的な不具合を修正すべき

 筆者は今回のレビューにあたってXbox 360版とPC版の両方をプレイしたところ、Xbox 360版はいくつかの不具合により、ゲームを存分に楽しむことができなかった。それは本稿で既に説明した、隊員が移動命令に従わない不具合や、時折発生する異常なほどのフレームレート低下である。不可解なのは、これらはXbox 360日本語版でのみ発生する不具合であることだ。

 現状では、序盤以降は不具合が頻発するため、ストレスがたまってゲームにならない。パッチなどで状況が改善が施されない限り、Xbox 360版についてはプレイに耐えない状態が続いてしまうだろう。しかし、ユービーアイソフトのコメントでは、パッチで改善されるのはマルチプレイの国際対応のみ。PC版が不具合も無く非常に優秀なゲームに仕上がっているだけに、これは返す返すも残念だ。

 すでにXbox 360版を購入してしまったユーザーのためにも、また、今後発売を予定しているプレイステーション 3版を狙っているユーザーのためにも、パッチ等を配布し、英語版同等の水準までパフォーマンスを引き上げる努力が必要不可欠だろう。

 最後に、異なるプラットフォームで異なるゲームとなった本作の姿勢について考えてみよう。プラットフォーム移植作品を異なるゲーム内容に仕上げる手法は、従来はストラテジー系のゲームでは見られた方法である。これはPCではマウスという入力デバイスが使える一方で、ゲーム機では操作をゲームパッドに依存するという差異に起因するところが大きい。

 これは筆者の持論になるが、ゲームにおけるゲームデザインの半ば以上は、利用可能な入力デバイスによって規定される。つまり、グラフィックス機能が同水準の高性能PCとXbox 360は全く違うプラットフォームであり、入力デバイスのタイプが似通っているXbox 360とプレイステーション 3はおよそ同じプラットフォームである、という考え方だ。極論すれば「入力デバイス=プラットフォーム」というくくり方になる。

 そういったゲーム機とPCの間でのマルチプラットフォーム展開で、FPSやアクション系のゲームはベタ移植になるケースがほとんどであったなか、本作では、Xbox 360版はシンプルな操作と多彩なアクションをベースに3人称視点のゲームとなり、PC版ではRTS的なインターフェイスを導入したり、ゲーム内容を大きく調整したりといった試みが行なわれている。この試みは大きく成功していると言えるだろう。結果として両者で手応えのあるゲームを楽しめるし、一方のプラットフォームでプレイしたユーザーでも別のプラットフォームでもう一度プレイする強力な動機が生まれるというわけだ。

 こういった違いにより両プラットフォームのバージョンにはゲーム性の違いが生まれ、Xbox 360とPCという二つのゲーム環境を所有しているユーザーにとっては2度おいしく、販売元にしてみても単なる移植作以上のセールスを見込んでの戦略になるはずで、こちらも2度おいしいというわけだ。

 ともあれ、異なるプラットフォームにあわせて適切なゲーム性を提供するというこの手法は、上記の理由できわめて優れていると筆者は評価したい。今後、この動きが他のタイトルにも波及していき、ゲーム機とPCというふたつのゲーム環境がより豊かなものになっていくことを期待したい。

(C) 2007 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved. Ghost Recon, Ghost Recon Advanced Warfighter, the Soldier Icon, Ubisoft, Ubi.com and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the US and/or other countries.


    【ゴーストリコン アドバンス ウォーファイター 2】
  • CPU:Pentium 4またはAMD Athlon 2.0GHz以上(同 2.8GHz以上を推奨)
  • HDD:5GB以上
  • メモリ:1GB以上
  • ビデオカード:ATI RADEON 9700~9800/X700~X1950、NVIDIA GeForce 6/7/8 シリーズ


□ユービーアイソフトのページ
http://www.ubisoft.co.jp/
□イーフロンティアのページ
http://www.e-frontier.co.jp/
□「ゴーストリコン アドバンス ウォーファイター 2」のページ
http://www.ubisoft.co.jp/graw2/

(2007年8月17日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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