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中でも同社でもっとも長い運営実績を持つタイトルが「エターナルカオス」である。2002年10月より正式サービスを開始し、今年で運営5周年を迎える。ビジネスモデルは月額980円の定額課金からスタートし、何度かの微調整を経て、現在は基本プレイ無料のアイテム課金制によって運営されている。 また、ユニークな特徴としてゲームタイトルがコロコロ変わるタイトルとしても知られている。発表当初は、韓国版と同じ「ラグハイム」と呼ばれていたが、その後、「エターナルカオス」、「エターナルカオス2003」と変わっていった。そして今回、8月8日に「エターナルカオスNEO」として再出発を遂げた。 「エターナルカオスNEO」とは何なのか。今回は、同作のプロジェクトマネージャーを務める任明勲氏と、ディレクターの平岡功臣氏のおふたりに、新タイトルの企画経緯とその内容について話を伺った。
■ レベル上げを短縮して既存ユーザーと新規ユーザーの距離を縮めるユニークなアップデート
任氏: 韓国では「エターナルカオス」がサービスされて7年になります。2000年に発表されて2001年からオープンβテストが始まりました。日本では10月で丸4年になり、そろそろイメージを変えていく必要があると考えていました。また、新規コンテンツが日本にも数多く入ってきている中で、4年もの間、愛されている「エターナルカオス」の素晴らしさをもう一度日本のユーザーにアピールする狙いがあります。 そこで我々は、古いMMORPGにありがちな新規ユーザーに対する障壁を取り払うことにも注力しました。韓国産のゲームといえばキャラクタを育てるのに長い長いレベル上げが必要です。「エターナルカオス」でも新規ユーザーにも既存ユーザーのレベルに追いつくのには随分時間がかかります。 新規ユーザーに対して運営側で何ができるのかをつきつめて考え、現状追加されているコンテンツは、高レベルユーザーに向けたものが充実していることもあるので、早い段階でその楽しいところまでユーザーを引き上げていくことを基本コンセプトにしました。 編: 低レベル帯の要素を拡張して全体をならしていくのではなく、低レベル帯そのものを圧縮してしまうわけですか。まさに逆転の発想ですね。 任氏: そうですね。逆転の発想です。MMORPGは長く遊んでいる人が多くいらっしゃいますが、ゲームがライフサイクルの中の楽しみとして存在するのであれば、1日30分や1時間程度で楽しみを感じられることがポイントになるのではないかと思うのです。今の「エターナルカオス」は、結構な時間を使わなければなかなか楽しいところまでいきません。 編: 頂いた資料によれば「業界ナンバーワンのレベルアップスピード」と謳われています。実際にこれまでの何倍になるのでしょうか。 平岡功臣氏: 今までの「エターナルカオス」に比べると4倍のスピードになります。2倍の攻撃力があって、2倍の獲得経験値があるので単純計算で4倍になります。 編: これは、日本独自の企画なのですか? 任氏: そうですね。韓国では現在実装を検討中です。 編: これは一時的なキャンペーンではなく、永続的なものですか。 任氏: 今回は期間を限定したキャンペーンではなく、メインシステムとして導入しましたので、ずっと継続します。 編: 経験値と攻撃力が倍増するアイテムを100個付与するということですが、これはどのくらい持つのですか。 平岡氏: 1つあたり30分持ちます。1時間に2つ使用してレベルが30近くまで上がります。そこから先は獲得経験値が増えていきますのでアイテムの消費量は多くなりますが、いずれにしてもそのアイテムはレベル100までしか使うことができません。弊社の予想では余ると予想しています。余った分は第2第3のキャラクタを作った際に使ってもらうみたいな感じで、新規ユーザーがトータルで「エターナルカオス」を楽しんでもらえるようにします。 編: なるほど、新規キャラクタではなく新規アカウントに対して付与されるのですね。 平岡氏: はい。あくまで新規でアカウントを作られたユーザーに対して付与するサービスとなります。コンセプトはレベルが高い方とこれから始める方との差を縮めることで中間レベルでゲームを盛り上げることにあります。最初に入ってくれたお客様がこれを使ってレベルを上げて、真ん中くらいまでレベルが上がれば高レベル帯の人とも一緒に遊ぶことが可能になります。そこから先は皆さんで遊び方を考えてくださいねということを意図しています。 編: 現在のコアユーザーのレベル帯はどのくらいなのでしょうか。 任氏: だいたい250前後です。実装コンテンツの中にはレベル275以上のダンジョンなども追加されていますので、コアユーザーだと280~300くらいになります。 編: それではレベル100になったところで既存ユーザーとの差は大きいままですが、250まではどうするつもりですか? 任氏: ええ。ですので、詳細についてはこれから詰めていきますが、100から150、200、250といった具合に何段階かにわけて新しい施策を導入していくつもりです。年内には発表できると思います。 編: 「エターナルカオス NEO」のアップデートは今回で完成ではないと? 任氏: そうです。今回のアップデートには「レベルアップエクスタシー!」という、レベルアップに快感を得て欲しいというストレートな表現を使いました。
■ プライベートダンジョンが新たな狩り場
平岡氏: デカレンダンジョンがインスタンスダンジョンの形に変わりました。ダンジョンそのものは2層しかなく、マップも固定ですが、ロビーで組んだパーティーだけでダンジョンを冒険して、ボスを倒す形になります。制限時間は60分で第1層で回り道をするか近道をするかを選びながら敵を倒し、ボスを倒します。 編: 既存のダンジョンをインスタンスに変えた理由は何ですか? 平岡氏: ソロでもパーティーでも均等に楽しめるというコンセプトが韓国にあったようです。あとは狩場の奪い合いという問題があります。高レベルになればなるほど狩場の奪い合いがコミュニティの論点になってしまいます。そこをなんとかシステム側から平等なチャンスを与えて場を納められないかという試みです。 編: つまり、今回の企画はインスタンスを狩場として使うということなのですね。 平岡氏: そうです。 編: インスタンスといえば、クエストやミッションといったシリアスなコンテンツを、他人に邪魔されないように進める目的で使うケースが一般的ですが、狩場として使うというのはなかなか割り切った考え方ですね。 平岡氏: そうですね。需要としては高いのではないかと思っています。 編: ゲームにインスタンスを導入することは、ゲーム開発はもちろんですが、サーバー構成の変更なども必要で、経済的な側面から考えると狩り場だけに使うのはもったいないですよね。それ以外の活用は考えていないのでしょうか。 任氏: 今後考えていくべき部分ですね。日本側からもインスタンスのバリエーションに幅を持たせるよう提案していくつもりです。 編: 今回のインスタンスには入場制限はないのですか? 平岡氏: デカレンまで辿り着ければ誰でも入れます。といっても、デカレンダンジョンはレベル61以上なら移動アイテムを使って簡単に移動できてしまいますが(笑)。あとは、中のモンスターはキャラクタレベルに応じて変化するようになっていて、たとえば、レベル20のキャラクタとレベル200のキャラクタがいた場合、その平均値のレベルのモンスターが配置されます。ですので、比較的レベルが低い人でも遊べるのかなと思います。しかし、モンスターの基本レベルは変動しないので、レベルが低い人達だとクリアするのは難しいでしょうね。 編: ボス撃破まで含めると、だいたいどれぐらいのレベル帯を対象にしているんですか? 平岡氏: 大体想定しているのはレベル150以上です。ボスの撃破まで含めますと200くらいはあったほうがいいのではないかと思います。レベルがすでに高くなっているユーザーに向けたアップデートになります。 編: デカレンダンジョンに登場するモンスターには何か変わった特徴はありますか。 平岡氏: 特定の攻撃でなければ壊せないというモンスターがいます。「エイディア」が「召喚」というスキルを使うことができるのですが、その召喚されたモンスターでなければ倒せないという特徴をもったモンスターがいます。ボス級以外にスキルについて特殊なものを使うものはいないと思います。
■ 開発元がNAKO InteractiveからT-Entertainmentに変わったことの影響
任氏: 良い形にはなっていると思います。韓国にも2007バージョンのパッチが当たり、ホームページががらりと変わりました。向こうも同じ悩みを抱えているところはあります。新規ユーザーと既存ユーザーとの差が激しくこれらをどのように埋めるかということです。韓国側では思い切ったことができなかったので、こちらからアイデアを出しました。インターフェイスへの変更も検討中で、来年あたりにまた変わるかもしれません。 編: 開発元がNAKO InteractiveからT-Entertainmentに変わっていますよね。 任氏: 基本的にはT-Entertainmentが、NAKO Interactiveを買収した形になります。T-Entertainmentがエンタテインメントの業界からゲーム分野に進出したいという思いが強くてNAKO Interactiveを買収しました。社名は換わりましたが、開発スタッフはほぼ同じ人が引き継いでいます。 編: 開発元の経営者が変わったことで、当然今後のマネジメントに変化が出てくる可能性がありますが、日本側ではどういった変化を期待していますか。 任氏: そうですね。たとえばT-Entertainmentのメインタイトルは「ラグハイム」ですが、T-Entertainmentに変わったことで開発スタッフが補充されている状況なのです。先週も韓国に行ってきたのですが、まだ、ユーザーに対するサポートが遅いということが多く、バグの処理などの部分で韓国側でも充実していないと感じているところがあって、その点を改善していきたいということです。私としてもそれを希望しています。 それから、「ラグハイム」は、韓国では“元祖フル3D”を謳っているタイトルですが、インターフェイス自体は7年前のもので、現在のユーザーの好みにも合わないのではないかと考えています。ある程度インターフェイスを新しいものに変えていくことも考えています。システムについても、単純にレベル上限を上げていくのではなく、ある程度のレベルに制限しておいて、下のレベルを引き上げていこうという方針に変わりつつあります。基本的なシステム自体を見直すところまで来ています。完全に新しく変えてしまうと「エターナルカオス」の面白さがなくなってしまうので、それを残しつつどう変えていくかですね。 編: 任さんとしては、今後「エターナルカオスNEO」をどのように変えたいですか? 任氏: オンラインゲームは時間が経つにつれてパワーアップし、アップデートされていきますので、ゲーム性が衰えていくことはないと思うのです。問題はどう見せていくかだと考えています。古いコンテンツをいかに新しいものであるか、いかに新しい要素が入っているかを見せていくのがポイントになると思います。 日本のユーザーと日本のマーケットにあったものを開発とどのように連携を組んで作ってもらうかということがポイントになると思います。これには新規ユーザーが入りやすいということと、既存ユーザーにやることがないと言われる部分をなくしていくことが基本方針になると思います。 頑張ってレベルを1つ上げたり、ダンジョンにいって敵を倒してアイテムを獲得することだけでもストレス解消になると思うのですが、僕としてはゲームを1つの自己顕示欲を満たすためのものではなく、楽しむものとしての位置づけでオンラインゲームが生き続けていればいいなと思いますし、「エターナルカオス」でそれができればいいなと思います。
■ 日本での運営状況と今後の目標について
任氏: 会員数は登録ベースで23万人です。同接数は未公表です。 編: 5年目を迎えたアイテム課金ベースのタイトルとしては結構厳しい数字ですが、今後どう変えていくのでしょうか。 任氏: まずは、同時接続数を高めていきます。ユーザーがいないと過疎感が出てきます。ソロをメインにしているユーザーにとってはあまり関係ないかも知れませんが、コミュニケーションや楽しさの追求を考えた際に、まだまだ時間やレベル、人数が必要です。我々の考えでは今の1.5倍から2倍程度にまで人数が上がらないと僕がやりたいところまではもっていけないのです。 編: 現在、コアなユーザーさんはどういった遊びをしているのですか。 任氏: 高レベルユーザーの基本的な遊び方は、レベルアップや武器の強化がメインになっています。 編: それは他のMMORPGと比較して手段が目的になってしまっている印象がありますが。 任氏: 韓国での月額課金を長年継続していますが、どんどんレベル上限を上げていくことによってゲームの中心がレベル上げになっていきました。この流れを止めるとユーザーが離れてしまう。そういうことが基本としてあったと思います。日本でもその流れを受け継いでいます。 ただ、強くなることだけがメインになってしまうと、ダンジョンやスキルの追加といったものばかりがアップデートの方向性として企画されることになってしまい、ゲームの中をみんなで一緒に楽しむようなシステムに目が向けられなくなってしまいます。日本ではこうしたシステムを今後追加できればいいなと思います。また、韓国も日本はソロプレイがいいのだという思い込みがあったと思いますので、今はその思い込みを払拭していかなければなりません。 編: 任さん自身はどのように感じていますか。 任氏: 「エターナルカオス」は基本的なシステムは揃っていると思うのです。あとは、ユーザーさんが自由に設計できるようなインスタンスダンジョンが提供できればいいなと思います。そうしたシステムがあれば新規ユーザーと既存ユーザーが一緒に遊べるきっかけになると思うのです。 レベル1から2にいくときのような快感がレベルあげの楽しさだと思うのですが、「エターナルカオス」はものすごいレベルまで存在するので、レベル上げに掛かる時間を半分にまで縮めます。それはレベルが上がる楽しさではなくて、弊社が遊んで貰いたいと思うようなゲームシステムがプレイできるところにまで早く来てもらって、そこで楽しんでもらいたいのです。 編: ちょっとよくわからないのですが、このゲームはレベルアップそのものも目的であり楽しみだということですが、それを縮める、半分にするというのは、ゲームの魅力の減退に繋がりませんか? 任氏: もちろんそれはあると思います。月額課金ではレールに沿ってレベルを上げるしかなくなるのですが、アイテム課金なら使い方によってはいくらでも楽しむことができます。そうした点でユーザーさんのプレイスタイルに合わせていくらでも楽しめます。たとえば、ユーザー自身でアイテムを使わずにプレイすることもできます。そうした部分において、運営側でサポートしていければと思います。 編: 任さんの「エターナルカオス」の目標を教えてください。 任氏: 第2の最盛期を迎えることです。1回目は、「ハンターチャンス」が入ったときです。当時は月額課金からアイテム課金という試みをしましたが、今回もレベル差を縮めるという新しい試みをしていますので、ぜひユーザーさんに遊んでいただいてもらってその上で判断していただければなと思います。 編: つまり、第2の最盛期の核となるコンテンツは“レベルアップスピード”の向上ということでしょうか。 任氏: そうです。これはユーザーがレベルの壁が高くて遊べなかったところを払拭し、ゲームの良さを早く知ってもらうための試みです。もちろん、それだけではありません。たとえば、今夏のイベントで花火を定時に打ち上げています。ユーザーさんが来ても来なくてもその時間に打ち上げています。それを1つのきっかけとしてユーザーさん同士の待ち合わせなどに使っていただいています。花火のイベントは夕方に行なっているのですが、夜にはユーザーさん自身で花火のイベントを行なっていただくなど、何かのきっかけ作りを運営側から出して、ユーザーさんのほうで盛り上げてもらえばいいなと思います。 レベリングだけだと、どこかで限界が来てしまいます。その間でソロでも楽しめる環境が「エターナルカオス」では続けられ構築されています。ユーザー間でのコミュニティの活性化ができればいいかなと思います。また装備アイテムもたくさんありますしね。 編: 最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。 任氏: 今年に入って「エターナルカオス」が終わるといううわさ話が流れたりしました。ハンターチャンスの更新が早くなったことによってユーザーさんの中では終わるのではないかといったことが言われていました。しかし、終わることはありません。韓国で開発が終了するという宣言がされるまで続けるつもりでいます。「エターナルカオス」の魅力は7年間の運営を凝縮させたものなのです。既存のユーザーさんには新たな気持ちでゲームに触れて欲しいと思いますし、新規のユーザーさんには初期のMMORPGの良さを知ってもらいたいです。 平岡氏: 新しくこのゲームを触れる人には、こんなにレベルが上がるゲームがあるのだと思っていただければいいなと思いますし、コアな層でプレイしてこられた方には今後のガマニアの展開に期待していただきつつ、もう一度ゲームを盛り上げるために協力していただけたらなと思います。 編: 「エターナルカオス」が終わる噂は初めて知りました。そんな噂が流れたんですか。 任氏: 私もまったく気にしていなかったのですが、結構、掲示板等に書かれていたのです。運営方針を変えて、ハンターチャンスで時間制アイテムを出してユーザーさんがどういう反応を示すのか試したことがきっかけになりました。それまでは2週に1回がハンターチャンスの更新サイクルだったのですが、それを1週に1回くらい更新してしまったのです。しかも2、3コースをいっぺんに入れてしまったのです。 それでユーザーさんにハンターチャンスでお金を取るだけ取って終了ではないかと思われてしまったんです。2、3か月前までですね。それでどうお答えしたら良いか本当に迷っていて、「エタカGMブログ」でも新しいバージョンが入りますよ、これからの開発状況はこうですよという報告はしていたのですが、あまりいい反応ではありませんでした。なかなか言葉通りに受け取ってもらえませんでした。情報をうまく伝えていくのも課題のひとつかなと思います。 編: これからもがんばってください。ありがとうございました。
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□ガマニアデジタルエンターテインメントのホームページ (2007年8月17日) [Reported by 中村聖司]
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