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具体的な内容については、同日掲載した記事で紹介したとおりだが、企画経緯やその後の展開について、「トリックスターラブ」のプロデューサーを務めるジークレストパブリッシング事業部シニアグループマネージャーの岩澤泰洋氏に話を伺った。 ■ 「トリックスターラブ」の企画経緯と開発体制について
岩澤氏: 「トリックスター」はお蔭様で沢山のユーザーの皆様に遊んでいただいて、6月に登録ユーザー数が100万人を突破したんです。ユーザー数はだんだんと積み上がっていくものですから、いつぐらいに100万人を達成するのかはなんとなく予想しながら企画を進めてきました。 「トリックスター」では、2006年の秋くらいからそれほど大規模なアップデートをしてこなかったということもありまして。なんかせにゃなあと考えていたことと、ユーザー数が節目になったことと、タイミングが重なったわけです。開発にも相当に相談をさせていただきながら、大規模なバージョンアップをしたい、ということで話を進めてきたんです。 コンテンツを新しくする上でどういうやり方があるかというと、通常は続編という形で全く別のタイトルにするとか、ユーザーを引き継ぐような形でアップデートを行なったり、どちらにしても一回でドーンと変えてしまうというやり方も多いと思います。しかし我々は、ユーザーさんの反応を見ながら多少柔軟にやっていきたいと考えていました。既に2年以上遊んでらっしゃるユーザーさんもかなりいらっしゃるということもあって、連続的にどんどんバージョンアップしていきたいというわけです。実はあまり明確にゴールは決めていないんですが、半年かもう少しぐらい続けて全体を変えていこうと考えています。 編: 「ラブ」という新タイトルの由来を教えてください。 岩澤氏: これについては、ユーザーさんのご想像におまかせしたいな、というのがあります(笑)。「ラブ」といってもですね、ロゴにはいくつかのバリエーションがあるんですけれども、「ラブ」とカタカナで書くのではなく、「0(ゼロ)」と書いてラブと読ませてるんですよ。テニスとかバトミントンなどではフィフティーン・ラブなんてコールしますが、そのラブから取ってるんですね。ここまでお話するといろいろな想像がつくと思うのですが、いろんな想像が成立しやすいねというところが、ひとつメッセージとしてはあります。 編: ゼロからやり直しましょうと。 岩澤氏: という側面ももしかしたらあるかもしれません。ユーザーさんそれぞれに受け止め方が違うと思います。ラブという音感から来るイメージというものもあると思いますし、それからユーザーさんにも想像を膨らましていただければと思います。 編: 現在の「トリックスター」の開発体制はどのようになっているのでしょうか? 岩澤氏: 基本的に「スカッとゴルフ パンヤ」を作っている韓国のNtreevという会社で引き続き作っておりまして、開発の人数については、ざっくりとした数字としては50人くらいです。 編: 50人と言えば韓国でも大規模ですよね。 岩澤氏: 1ゲームタイトルとしては大きいほうでしょうね。もちろん新規タイトルでエンジンから作っている物を含めれば他にもあるかもしれませんけれども。同社は開発会社ですから基本的に開発スタッフ全員が社員で、外注さんなどに頼ることなく社内でそのような体制で作っている状況です。 編: 韓国内でのサービス状況を見ると、ランキング的にはかなり下の方ですが、それについてはどのように見ていますか。 岩澤氏: Ntreevはもともと開発会社で自社でパブリッシングをやることは今まで なかったんですね。ただ、今回の新しいものはNtreevでも積極的に展開していこうということで、自社でもサービスを提供していく、パブリッシングしていくという形に切り替えたそうです。 という訳で、韓国では「トリックスター」という名前で実は2つのゲームが運営されているようです。既存のトリックスターは、今までと同じくCJインターネットが提供していますが、日本でも提供される新しいトリックスターは、Ntreevが自社でサービスを提供しているようです。両社の間では全く関係がなく、開発元と基本的な世界観が一緒というだけで、中のゲーム内容そのものは違うものですし、同一のIDでお互いを行き来するようなこともできません。 編: 韓国だけ見ると、開発スタッフ50人を常駐させるのは必然性として薄いですよね。 岩澤氏: もちろん韓国国内だけに目をむけて50人の体制を維持しているというわけではありません。実はこのタイトルは海外にどんどん出て行ってまして、今6カ国でサービスが提供されています。その中で一番古くて、会員が多いというのは日本になるわけなんですが、日本と韓国以外では、アメリカを始めとした4カ国でサービスが始まっているところなんです。 編: ワールドワイドで日本が占める割合というのはどれくらいですか。 岩澤氏: 具体的なところはあまり教えてくれないのですが、ざっくりとしたところでは半分以上が日本のユーザーさんということになるでしょうね。もっと大きいかもしれません。 編: いわばGravityの「ラグナロクオンライン」のような状況になっているわけですか。 岩澤氏: そうですね、日本のユーザーを見ながら、新しい企画を考えていっている、といって良いかもしれません。 編: 例えば「ラグナロクオンライン」ですと、日本版と韓国版とでゲーム内容に大きな違いはないですが、「トリックスター」の場合、イラストからして違いますよね。各国で雰囲気が違うというのが大きな特色ですよね。 岩澤氏: そういう部分というのは実際にありまして、逆に最近では各国バージョンを一本化しましょうという動きもあるんです。要するに各国毎にバージョン管理をすると効率が悪いですし、仕様アップをするときにそれなりの手間がかかってしまいます。結果として、思ったとおりに開発スケジュールが進まないということになってしまいますよね。 その辺をうまくやるには、いいとこ取りをすればいい、という話になると思うんですけれども、今やっているのはイラストやイベント内容に関して、日本主導ではないですけれども、結果的には日本からずいぶん多くの提案を出しているんですよね。 そういった新しい仕様については一旦、全世界、グローバルでやるかどうかという検討を開発スタッフでするんですよ。それで、それをやるやらないの判断や、ワールドワイドでやらない場合は、日本だけでやることを了承するかしないか、という話になるんですけれど、これまでの実績で言えば、かなりの部分で日本の意見がグローバルで採用されるという状況になってきています。 編: それは、今回のアップデートにおいてもそうなんですか? 岩澤氏: 今回のアップデートからそうなると言う話ではなく、ここ最近そういう傾向が強いということですね。一番のきっかけになったのは、おそらく台湾でサービスを始めたときではないかと思います。台湾というのはご存知の通り、割と日本のエンターテイメントに対して、アジア圏で一番人気が高い国だと思うんですけれども、そこで韓国風のものと、日本風のものと並べたときに、台湾のパブリッシャーさんが日本風のものがいい、という判断をされたんだと思うんですね。
■ 「トリックスター」日本運営の現状について
岩澤氏: 紆余曲折はいろいろとあったし、今もあるんですが、ひとつはすごくイージーなゲームだということではないでしょうか。簡単に始められて、そんなに小難しいことがあるわけでもなく、長く続けててもシンプルなだけにそんなに飽きが来ない、というところがひとつあるかと思います。 あとは全体の雰囲気ですよね。キャラクタであるとか、グラフィックスであるとか、ざっくりとした世界観みたいなものが。日本の少女コミックとか、子供用のコミックとか、そのような雰囲気に近いのかもしれませんね。 編: 会員は100万人を突破したということですが。ユーザー数はどのぐらいですか? 岩澤氏: 毎日、数万単位で遊んでいただいてますね。サーバーは表向きは2個で、チャンネルはもっとあります。チャンネルキャパシティに関しては、かなり機能の分散化により冗長化されていますので、サーバー全体でいうとウン十台になりますね。 編: 実際にプレイしてみるとよくわかりますが、女性を意識しているという感じが強いですよね。実際に女性ユーザーは多いのですか? 岩澤氏: そうですね。正確なところは実はよくわからないのですけど(笑)。いろいろな情報ソースをもとに類推すると、全体の3割くらいは女性だと見ています。 編: それは逆に言うと7割は男性ということですが、男性ユーザーについてはどのような人たちがプレイされているんでしょうか? 岩澤氏: コアゲーマーとカジュアルゲーマーという両方が混在しているようです。コアゲーマーの人たちはいろんなゲームをやっていますよね。これだけと限定することなく。カジュアルゲーマーの人たちは「トリックスター」と、あとひとつくらいやっているかどうかというところ。またはコンシューマーのゲーム、例えばニンテンドーDSをやっているようなユーザーですね。 編: つまり、「トリックスター」に対してカジュアルゲームっぽい付き合い方をしているユーザーが多いということですか。 岩澤氏: ある程度レベルという概念がある以上、ユーザーの底を上げましょうということではやっていますけれども、遊び方としてはそういうふうにだんだん上り詰めていくという志向をもったグループと、そこまでやっきになるつもりもなくて、友達同士でなんとなくまったりコミュニケーションできればいいね、というグループと、明確にふたつの方向性がありますね。 基本的にはモンスターがガシガシ襲ってくるようなゲームではありませんから、後者の目的の人たちは安全なゾーンに集まって、なんとなくおしゃべりをしているとか。あるいはパーティを組んで出かけてみてとこかに集合して、スクリーンショットを取ってみたり、ちょっとモンスターを狩りに行ってみたり。といった形で、わりとゲームの中でコミュニケーションをしているという。そのためのツールかもしれませんね。 編: 「トリックスター」の特徴として、アイテム課金で成功したMMORPGということが言えると思いますが、客単価についてはいかがですか。 岩澤氏: そこは公表してないんですけれど(笑)、おそらくいくつかの団体が発表しているアイテム課金型の平均の月単価よりは高いと思います。 編: 結構統計もバラバラですけど、平均はだいたい4,000円から6,000円といったところだと思いますが、それよりも高いと? 岩澤氏: 高めですね。入会・引退が凄く早いサイクルで行なわれるというタイプではなさそうですね。わりと長いことプレイしていただいているようです。先日もWeb上でアンケートをとってみたんですけれども、2年以上継続していますという人が、半分くらいいたように思います。 編: もうひとつ、ランダムでレアアイテムが当たる有料コンテンツ「ガチャドリル」が特徴としてありますが、利用率というのはどれくらいなのでしょうか? 岩澤氏: おそらく、アイテムを買われる方はほとんど利用されているようですね。アイテムはガチャを通して買うものだ、というふうに思っている人も少なくないと思います。 編: とすると、ガチャが売り上げ全体に占める割合もかなり高い? 岩澤氏: まあ月によって波はありますし、キャラクタ性というところで、例えば同じ機能でもキャラクタが可愛ければ売れるし、そうでなければあまり、というところもありますので、一概にはいえませんが、かなり高いというところではあります。
■ 9月に「ゴーストブルー」を削除!? 「トリックスターラブ」の今後の展開について
岩澤氏: 結果的にある程度日本の意向が占めていますけど、役割分担は開発元とパブリッシャーという関係ですから、開発元が作ったもの提供を受けて、日本風にローカライズ、カスタマイズをするという流れはもちろん基本原則としてあります。 ただ、イラストやイベントの話についても、アイデアを日本側から出しているというのが多いと思います。それを韓国側が結構取り入れてくれるというところは、コンセンサスとしてはできています。まあ、いいとこどりをしているということでしょうね。 編: いずれにしても、すべてのアップデートが実装されれば、MMORPGとしては日本人にずいぶん親しみやすいものになりそうですよね。 岩澤氏: ええ、ちょっと日本のコンシューマゲームの匂いを、多少感じられるものになるでしょうね。 編: 「ラブ」において、レベルを上げたあとのユーザーの目的はどのようなものを用意するつもりですか? 岩澤氏: 現状のトリックスターで言うとですね、転職というものが2次までになりますので、2次転職が可能になるレベル120というのがひとつの目標になっているわけです。それをクリアしちゃうと、延々とクエストをやり続けてモンスターと戦いまくるとか、対人戦をやる方向に流れていく人もいますが、割合としてはそんなに多くないですね。 一番多いのはまったりとしちゃう(笑)。たとえばギルドで、初心者を呼び込んでみたりして、ギルドとしての活動に力をいれるであるとか。現実世界でいうと、ビジネスで成功した人が財団活動に力をいれたりといった、そんな気配が少しありますね(笑)。 編: 例えば韓国では、PvPですとかPKですとか、攻城戦といったPvPコンテンツが、永久機関的なコンテンツとして提示されたりしますが、「トリックスター」ではそういった流れではないんですね。 岩澤氏: 今でもあるにはあるんですよ。そういう遊び方をしている方もいるんですけど、マップも限定したものになっていますし、今後もまったりする流れは変わらないと思います。基本的にはやさしい、かわいい、というのがコンセプトのゲームですから、あまり殺し合いというものを奨励するような類のものではないですからね。 編: 今後の計画としては、毎月アップデートを行なう形になりますか。 岩澤氏:はい、毎月10日前後くらいにバージョンアップを行なう形になりますね。 編: アップデートの内容としては、既存エリアの拡張やリファインがメインになってくるのでしょうか。 岩澤氏:そうですね。そういったリニューアルを繰り返していくという形になります。 編: 完全に新規マップの実装もあるんでしょうか。 岩澤氏: それも予定しています。おそらく3回目、4回目のアップデートあたりになると思います。時期的には、まだはっきりはしないのですが、今年の暮れから年明けくらいになるかと思います。 編: 次回アップデートの9月についてはどういった内容を予定されていますか? 深井氏: 9月でアップデートになるマップは、今のトリックスターで言う一番大きな街である「メガロポリス」という地域になります。その部分を中心にシナリオやクエストの追加やアイテムの入れ替え、もしくは新規NPCの設置などを行なっていきます。「メガロポリス」には1次転職に関わる要素が多くありまして、その1次転職に必要なアイテムの変更もこのアップデートに入ってきます。既存のアイテムが無くなって新規のアイテムが入ってくることによって、クエストの内容も変化するわけです。 編: 難易度も変わりますか。 深井氏: 今までより難しくなることはないです。アイテムの入手経緯なども変更になりまして、プロセスが変化するということです。 編: その他に大きな変化はありますか。 深井氏: これは追加ではありませんが、今まで存在していたマップである「アクアリース」という街と「ゴーストブルー」という地域が削除になります。 編: ほう、削除ですか? 深井氏: これは全体的なゲームバランスに関することもあるのですが、深海の町である「ゴーストブルー」に今まで存在していた製錬関係のNPCなどの場所を変更したことによって、「ゴーストブルー」が通過点という認識になってしまったので、今回は第2の町「マリンデザート」から一気に「メガロポリス」に繋げようということで。 編: それはおもしろい。思い切った決断ですね。 岩澤氏: 無くなると言ってもですね、要するにゲームバランスを整理する過程で、ゴーストブルー地域が宙に浮いてしまうような状況になっているものですから、一回それを取って整理しようと。絵的には大変人気のある場所ですので、位置づけを変えた上でもう一度どこかで出していこうと考えております。 どちらかというと整理整頓をしてゲームバランスを整えていきましょう、というところに重心を置いていますので、その妨げになる要素については基本的には取り去っていこうという姿勢です。マップとしてはそれなりに人気のあるところですので、再利用はしていくつもりです。 編: ゲーム全体を再構成する上で、街をひとつなくしましょうというのは、本気で再構成しようという熱意が感じられますね。 岩澤氏: そうですね。場当たり的に考えれば、今あるものを生かして、ということに当然なりますから。まあ本当に、一から作り直していこうという方向なんですよね。 編: 最後に、ユーザーさんたちへ向けてのメッセージをお願いします。 岩澤氏: 難しいですね(笑)。この前ちょっとバージョンアップがなかなか思うように進まなくて、ご迷惑をおかけした部分が非常にユーザーさんに対してあります。その分を全部お返しをするというつもりで、開発と協力しながら継続的なバージョンアップをしていくことを決めましたので、ぜひ期待していてください。と言うことで、これからもどんどん遊んでいただいて、気になることも含めて何かありましたら、ぜひ私どもの方にご意見をいただきたいと思っております。 編: ありがとうございました。
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□ジークレストのホームページ (2007年8月11日) [Reported by 中村聖司]
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