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本稿では、新サービスのスタートに先立ち、ジークレスト本社にて新バージョンの取材を行なってきたので、「トリックスターラブ」のアップデート計画と、その内容について紹介したい。なお、アップデートの企画経緯や、運営側の狙い、今後の開発構想については、同社パブリッシング事業部シニアグループマネージャーの岩澤泰洋氏にインタビューも行なってきたので、別稿にて紹介したい。
■ 運営3年目にして初のフルモデルチェンジアップデート「トリックスターラブ」
オンラインゲームのアップデートは、既存の要素に、新たな要素を継ぎ足す形で肥大化を続けるのが通例となっている。それ自体は至極正常なアクションだが、新要素の拡充は、常に現役ユーザーのニーズの最大公約数を満たすアプローチで行なわれるため、数年の運営を経てユーザーのレベルが上がってくると、それに伴う形で新要素の拡充が高レベル帯に移行し、ユーザーの少ない低レベル帯の要素の拡充がなおざりになりがちになる。結果として、運営側としては一番欲しい新規ユーザーがいよいよ寄りつかなくなるというジレンマを抱えることになる。 韓国産のMMORPGで、時折、思いだしたようにチュートリアル機能や初心者エリアの拡充が行なわれるのは、その危機感の表れだが、その先にある中レベル帯はそのままだったりして、抜本的な問題の解決には結びつかないケースも多い。新規ユーザーを増やし、現役ユーザーの顧客満足度を高めるというゲーム全体の底上げを果たすためには、理論上、全レベル帯に向けた全方位的なアップデートしか方法がないということになる。 まさにそれやろうというのが、「トリックスターラブ」の試みだ。基本的な計画としては、1カ月に1度のサイクルで毎月大型アップデートを実施し、来春のアップデート完了時には、ゲーム内容が頭からお尻まで全部一新されるというものだ。 アップデートの方向性は、全部入れ替えて別のゲームにするというわけではなく、RPGという観点からゲーム全体の流れを見直して、不足している部分、わかりにくい部分、バランスの悪い部分などを丁寧に直していく形となる。“みみとしっぽの大冒険”という萌え路線のキャッチコピーもそのままだし、女性や子供にも親しみやすいグラフィックスやマウスひとつで手軽に楽しめるイージーなプレイスタイルも変わらない。良い部分はそのまま活かし、悪い部分を全面的に是正していくというのが基本的な考え方となる。 具体的には、キャラクタを育てる上で大きなモチベーションとなるストーリー要素を充実させ、既存の「2度の転職」という大きな節目に加えて、ペットの機能追加や、VIPショップの入場権といった新たな目的を提示していく。言葉にするとこれだけだが、実際にはこれらを実現するために、エリアデザインの再調整や、新クエストやシナリオクエストの実装、モンスター配置やAIの改良、新アイテムの追加など、あらゆる部分を変えていく。これを半年以上かけて毎月実装していくというのだから大変な作業である。 もっとも、こうした大胆な試みは、基本プレイ無料のアイテム課金制のオンラインゲームでは、今後、当たり前のことになっていくのかもしれない。なぜなら、アイテム課金制のゲームは無料でプレイできるため、月額制以上に他のゲームへ移ることにためらいがない。他のゲームと比べて、相対的に「魅力がない」と感じられてしまわないためにも、常に進化を続ける必要があるからだ。それを逐次的、部分的にやるか、全面的にやるか、それだけの違いである。
また、全面的なアップデートは、新規ユーザーに加えて、既存ユーザーの新規キャラクタ育成をも促し、必然的に有料アイテムの新たな使用機会の提供にも繋がるため、実は運営側にとっても大きなメリットがある。「トリックスターラブ」が、アイテム課金制MMORPGのアップデートのモデルケースとなるかどうか、今後の実装動向に注目していきたいところである。
■ 8月はレベル1から30に向けたアップデート。3つのチャプターで構成された「エピソード0」を実装
・キャラクタ作成画面の変更 順番に紹介していこう。まず、キャラクタ作成画面は、デザインを大きく変更し、キャラクタを大きく見せ、各職業の特徴がわかりやすいように改良された。変化したのは見せ方だけで、新職業や新しい髪型といった新要素は加えられていない。 チュートリアルは、既存のチュートリアルをすべて削除し、完全に新規のものに差し替えとなる。「トリックスターラブ」では、新規キャラクタは、ゲームの舞台であるカバリア島に向かう船上からスタートするようになる。船上では島内にいるNPCや新規NPCがユーザーの新たな門出を迎えてくれ、会話を終えると島へ移動となる。 島にたどり着くとコーラルビーチ地域の砂浜から始まり、ここが実質的な新チュートリアルエリアとなる。砂浜エリアは1マップで構成され、新たな冒険者を歓待するように、プレーヤーキャラクタのまわりをレクチャーNPCが取り囲んでいる。しかも番号まで付いていて、番号の順番に話しかけていくことで、ゲームの基本要素を習得することができるようになっている。 基本的な内容は、従来のチュートリアルと同じだが、エリア切り替えをなくして単一のマップにまとめたことで探索の手間を省き、より簡単に、わかりやすく、迷わないように工夫が凝らされている。チュートリアルクエストの内容も若干変化し、買い物を行なうクエストや、モンスターを倒してドロップアイテムを持ってくるといった実践型のクエストが増えている。また、同作の大きなウリである“ドリル”は、チュートリアルで教えるには若干内容が難しいため、新チュートリアルではカットされ、後述するシナリオクエスト「エピソード0」の中で習得するようになっている。 チュートリアルを終えると、コーラルビーチの街に出る。街のエリアは、個人ショップ等の出店による混雑を解消するためにマップを縦に拡張。また、この街からシナリオクエストがスタートする。メインストーリーが展開されるシナリオクエストは「エピソード0」と名付けられ、1から3までの3つのチャプターで構成されている。コーラルビーチ地域ではチャプター1が、マリンデザート地域ではチャプター2、次回アップデートの中心エリアとなるメガロポリス地域でチャプター3がそれぞれ展開される。 これまでは、ある程度ゲームを進めないとシナリオクエストが発生しなかったが、「トリックスターラブ」では、チュートリアル終了直後からシナリオクエストが始まり、低レベルからストーリーが楽しめるということになる。また、これに合わせ、コーラルビーチ地域とマリンデザート地域の既存クエストをすべて削除し、40弱のクエストを新たに導入している。クエストの内容だけでなく、報酬もすべて変更され、新クエストだけで手に入る新たなアイテムもあるという。 2つの地域のその他の変更点としては、エリア間の移動経路、ワープポータルの位置、モンスター配置、強さなどを調整し、初級エリアとして冒険がスムーズに進むように最適化が計られている。モンスターAIにも調整が加えられ、ワープや自爆、逃亡といった新しいアクションを行なうモンスターもいるようだ。 また、マリンデザート地域では、ドリルを使ったクエストや合成を行なうクエストも導入された。これに合わせ、地域内に新たに鉱山が追加されている。マリンデザート地域の最終目的地となる「ピラミッドダンジョン」は、レベルの低いユーザーが間違って入らないように、入り口を3カ所から1カ所に減らし、地域の最奥に配置。エリア構造も一部変更し、最奥にいるボスモンスター「ツタンカーメン」も強化している。
9月以降についてはまだ非公開ということで、今回は紹介できないが、既存ユーザーでも驚くようなドラスティックな地域再生計画の実行が予定されている。これらについては機会を改めて紹介するつもりだ。 以上が「トリックスターラブ」の8月分のアップデートとなる。上記の一連の改良により、チュートリアルからツタンカーメンの撃破までの初心者エリアの冒険にスムーズな動線が引かれ、初心者ユーザーでも迷わずゲームを楽しむことができるようになった。同作はもともとカジュアルゲーマーをメインターゲットとしたオンラインゲームだが、今回の改良で、いわゆる非ゲーマー層もカバーしたいという熱意が伺える。
今回導入されるきめ細やかな遊び手に対する配慮は、日本のRPGではすべて常識範囲内といっていい内容ばかりだが、韓国産MMORPGではほとんど為されていないのが実情だ。これは作り手の怠慢というより、単純にゲーム開発に対する文化の違いだが、これこそが韓国産オンラインゲームが日本のコンシューマユーザーに受け入れられない一因ともなっている。今回、そうした下地がしっかり作られたことは非常に歓迎すべきで、9月以降のアップデートもこのポリシーが維持されていることを期待したい。
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□ジークレストのホームページ (2007年8月7日) [Reported by 中村聖司]
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