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会場:Shanghai New International Expo Center
昨年お伝えした上海ゲームショップ、ゲームセンター、ネットカフェレポートでは、新規店舗の出店のみならず、新規筐体の入荷までも展開がグレーゾーンであり、筐体のコンディションも粗があるなどカオスな実態をお伝えした。 ところが昨年9月以降からゲームセンターへの筐体の入荷など、一部の規制が緩和されたという。そこで今回は南京西路の伊勢丹の近くにあるゲームセンター「烈火」を訪問し、アーケード業界のビジネスモデルも含めてどのようにゲームセンターが運営されているのか、実態を尋ねた。 週末の夜に訪れたが、「頭文字D ARCADE STAGE 4」などの最新筐体が並ぶ中、120台以上のビデオゲーム筐体を中心に200人以上のユーザーが集い活況を呈していた。当日はエコールソフトウェアの2D格闘「MELTY BLOOD Act Cadenza」の大会が開催されており、対戦台の周りにユーザーが群がる光景はあたかも10年前の格闘ゲーム全盛時代の日本のゲームセンターかと錯覚してしまう。 「烈火」は、'99年からこの場所で営業しており、日本で行なわれている格闘ゲームの対戦イベント「闘劇」にも上海代表としてトーナメントを勝ち抜いた選手を送り込んでいるほどの上海アーケード界のメッカ的ゲームセンターだ。 同店のオーナーは20年以上にわたり上海でゲームセンターを経営してきたという。「上海のアミューズメント業界はこれから日が昇るところだ」と言うオーナーに、「烈火」のビジネスモデルや海賊版の変遷などQ&Aを収録しているので、最後までごらんいただきたい。
■ ビデオゲームの稼動台だけで120台以上!店舗によるコミュニティ作りにも注目
「烈火」のプレイの課金方法はメダル制で、1元(約16円)でメダル2枚と交換できる。ビデオゲームはメダル1枚、レースゲームやガンシューティング、音楽筐体のような大型筐体はメダル2枚でプレイできる。枚数に応じてボーナスがもらえ、1度に100元(約1,600円)を支払うとメダル300枚と交換してもらえる。 ビデオゲームとスロットなどのメダルゲームは共通のメダルを使用でき、100元単位で交換するユーザーはほとんどメダルゲームをプレイするユーザーとのことだ。 ビデオゲームコーナーで最も台数が多かったのは「King of Fighters」シリーズ。このシリーズだけで20台の島ができており、シューティング、レースゲームでは最新筐体「頭文字D ARCADE STAGE 4」の8台稼動を中心に、それぞれの島でコアなファンがついていたのが印象的だった。 また、撮影不可であったがメダルコーナーも非常に盛況で、スロットゲームが20台以上の他、コナミのメダル落としの大型筐体「ドラゴンパレス」も稼動しており、メダルを大量に抱えてプレイに興じているユーザーも多く、客単価の高さを伺わせる。
セガ・プレイヤーズアリーナなどに置かれている、メダルを入れてゲームの結果によってクーポンが排出されるリデンプションゲームはこの店舗には置かれていない。代わりにクレーンゲームで獲得したぬいぐるみをいくつか景品交換所に持ち込むと、個数に応じて大きなぬいぐるみと交換してもらえるようになっていた。リデンプションゲームによくあるケースであるクーポン数千枚といった札のついた携帯電話や電化製品などの高額商品は一切置かれておらず、健全な印象を受けた。
■ 店舗がイベント専門の人材を雇用し大会運営をサポート。ユーザーの活性化を狙う 週末の「烈火」では、毎週土日に開催されるという格闘ゲームの大会イベントが行なわれていた。この日トーナメントが行なわれていたのはエコールソフトウェア「MELTY BLOOD Act Cadenza」のVer B2。 夏休み期間ということもあってかイベントに登録したユーザーは36人で、これまでのイベントの中では最高人数とのことだ。4台の対戦台の周りには2重3重に気迫に満ちた人だかりができていた。優勝者にはメダル100枚が店舗から贈呈される。登録費は無料で、対戦時に投入するコインはユーザー持ちという運営スタイルだ。 同店ではビデオゲームの中でシューティングやアクションに比べて回転率の高い格闘ゲームに特に力を入れており、ビデオゲーム筐体のうちの4割は格闘ゲームで占められている。土日などには定期的に各タイトルでイベントが行なわれ、専門のスタッフを雇用するなど店舗に集うユーザーコミュニティに対しても積極的に投資が行なわれている。
また、店内のユーザー層は20代の男性が圧倒的で、大学生や会社員やフリーターといった若者が多い。店舗は24時間営業で、土日祝祭日を除く平日は、18歳未満のユーザーは利用禁止。ネットカフェと同じく入場制限は厳密に守られている。セガ・プレイヤーズアリーナなどデパートと一体で経営されている店舗は建物全体の営業時間に左右されてしまうが、こうした独立系のゲームセンターは24時間フル稼働が原則のようだ。
■ 「烈火」オーナーに聞く上海ゲーセン事情。「日本のメーカーは日本市場以外にも目を向けて欲しい」
編: 「烈火」は1プレイ5角といった格安のプレイ料金で運営されていますが、利益はあがっているのでしょうか。 オーナー: はい。ジャンル別に収益に幅がありますが、ゲームセンター全体として収益が上がっていればいいのです。 編: 来店するユーザー数はどのくらいいるのでしょうか。 オーナー: 週末の夜で200人~300人ほどのお客さんがいます。日本人を含む外国人のユーザーも多いです。 編: 稼ぎ頭となっているのはメダルゲームでしょうか。 オーナー: はい。メダルゲームです。ビデオゲームでは、格闘ゲームは回転が速いです。 編: 「頭文字D 4」をはじめ、最新筐体が多数並んでいます。買い付けにもかなり高額な資金が必要ですが、赤字にならないのでしょうか。 オーナー: 「烈火」の経営自体は黒字で、問題なくランニングできています。 編: ゲームセンターでの賭博行為についてはいかがでしょうか。 オーナー: 「烈火」で賭博行為は行なっていませんが、ユーザーで獲得したメダルのやり取りのような細かい部分までは踏み込むことはできません。店舗で行なっているところもあると聞いていますが、そうした行為をしてまでゲームセンターを経営することについて、羨ましいなどと考えたことはありません。 編: ビデオゲームに力を入れている理由を教えてください。 オーナー: 大事なことはゲームセンターとしてのバランスです。メダルゲームの収益があがるからといってそれだけを置くつもりはありません。 編: 筐体や基板の買い付けはどこで行なっているのでしょうか。 オーナー: 広州です。最新基板も広州の代理店からで、日本の稼動開始とほとんど同じタイミングで「烈火」に入荷しています。 編: 上海のゲームショップはコンシューマ機の海賊版が溢れています。アーケード筐体でも海賊版の基板が用いられているのでしょうか。 オーナー: 店によってはそうした筐体を使っているところがあるかもしれません。「烈火」では正規版を使っていますので、日本の最新筐体はすぐに遊ぶことができます。もっとも最近の基板では海賊版対策がしっかりしてきたので、海賊基板が出回ったとしても出回るまでに時間がかかるか、模造品のでき上がりを待たなければならないでしょう。 編: 中国ではオンラインゲームが流行っていますが、そちらのビジネスには興味は無いのでしょうか。 オーナー: まったく興味はありませんし、そもそも業界が違います。また、上海にはまだまだゲームセンターは少なく、アミューズメント業界そのものがありません。 編: 日本のゲームメーカーに伝えたいことはありますか。 オーナー: もっと寛大な気持ちを持って欲しいし、日本市場以外にも目を向けて欲しいです。 編: それはなぜでしょうか。 オーナー: 上海のゲームセンターに未入荷の筐体で「バーチャファイター 5」があります。セガが筐体をレンタルする方式を取っているため、買い取って設置することができません。今後こうした傾向が続くことを懸念しています。 編: アミューズメント業界やメダルゲームを取り巻く法規制についてどうお考えですか。 オーナー: 法律自体が未完成な部分も多いです。メダルゲームもグレーゾーンといえると思いますし、規制についても程度の問題だと思います。'99年以前にこことは違う場所で「烈火」を経営していた際は、メダルゲームの類は一切置かれていませんでした。 編: ビデオゲームに特に力を入れる理由を教えて下さい。 オーナー: この店舗に対してコミュニティができているので、これらに対する投資は必要です。日本の格闘ゲームイベント「闘劇」にも選手を派遣していますし、昨年4月には日本の有名プレーヤーを「烈火」に招きました。 編: 物価などを考えると、「烈火」にとって大きな負担ではありませんか。 オーナー: 強い選手が育ち、ユーザーのコミュニティが成長しますので、ゲームセンターの生き残りのためにも必要だと思います。 編: 「烈火」以外のゲームセンターはライバルなのでしょうか。 オーナー: ゲームセンターのビジネス業態そのものがまだまだ若いですので、ライバル視することはありませんし、共存できると思います。 編: 今後もゲームセンターのビジネスを続けていかれるつもりでしょうか。 オーナー: 続けていきたいと思います。
編: ありがとうございました。
(2007年7月17日) [Reported by 三浦尋一]
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