【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

China Digital Entertainment Expo 2007現地レポート

SCE Asia、SQUARE ENIX Chinaブースレポート
コンシューマとPCオンライン。それぞれ異なる中国展開戦略

7月12~15日開催

会場:Shanghai New International Expo Center

入場料:50元(約800円)

 今年のChinaJoyの日本メーカーの出展は、SCE AsiaとSQUARE ENIX Chinaの2社のみと、数だけで見れば過去最低の状況だった。両社に共通しているのは、中国展開でよく見られる合弁会社ではなく、それぞれ100%の子会社であり、また、多少の投資ではビクともしない強い財務体質を持つ大手メーカーであることである。

 この両社の出展は、現在の中国ゲーム市場では合弁会社ではなかなかうまくいかないこと、そして長期戦略に耐えられる資金を保有するメーカーでなければ事業の継続が難しいことを何よりも雄弁に語っているように見える。

 ところで両社は、日本では、SCEがスクウェア・エニックスの株を約9%保有し、共にコンシューマ市場の担い手として親密度の高い関係として知られているが、中国市場ではお互いにまったく異なる道を歩みつつある。本稿では両社の展開模様から、日本メーカーの展開状況を紹介したい。


■ 全アジアを視野に入れて出展を行なうSCE Asia。PS3時代を迎え、新しい可能性と課題が顕在化

中国ユーザーに人気のコンシューマゲームは、アーケード出身のタイトルであること、内容がわかりやすいこと、操作が簡単であること、この3つが必須条件のようだ
BRAVIAとPS3をセットで紹介するコンパニオン。アジアでは、親会社のソニーと、日本以上に深いパートナーシップで結ばれている
SCE Asiaの公式サイト。アジアの各支部へのリンクが張られているサイトだが、簡体字にもしっかり対応しているところがポイントだ
 まず、SCE Asiaから見ていくと、今年SCE Asiaは、大規模なクローズドブース内にプレイステーション 3の試遊台を40台以上設置し、11タイトルものPS3タイトルを出展。モニタはソニーのBRAVIAのフルHD液晶で統一され、機材はすべて、SCE Asiaの本拠があるSCE Hong Kongから借りたという。先日のレポートでもお伝えしたように、中国ではコンシューマゲームの販売が認められていないため、ハード、ソフトすべて参考出展だ。有力メーカーだけに出展に際して、相当のディスカウントは行なわれたものと見られるが、それ以外にブースの設置、機材の搬入などに手間がかかることを考えると、“先行投資”としてはかなり大がかりだ。

 出展タイトルは以下の通り。

・GRAN TURISMO HD Concept (繁体中文版、SCEJ)
・みんなのゴルフ 5 (日文版、SCEJ)
・Folklore (簡体中文版、SCEJ)
・Super Rub a Dub (英文版、SCEE)
・鉄拳 5 Dark Resurrection (日文版、バンダイナムコゲームス)
・リッジレーサー7 (日文版、バンダイナムコゲームス)
・Lair (簡体中文版、SCEA)
・Railfan (日文版、音楽館)
・Motor Storm (英文版、SCEE)
・NBA07 (英文版、SCEA)
・home (映像出展、SCEE)

 見ての通り、言語は日本語、英語、繁体字、簡体字と実にバラバラだが、中国国内で使われている簡体字に対応したタイトルが複数含まれていることに注目したい。PS3のシステムOSは、すでに簡体字表記に対応しているため、PS3の「クロスメディアバー」レベルでは、完全に簡体字表記のインターフェイスを使って、ネットワークサービスやデジたるメディアにアクセスできることになる。ちなみにPS2は繁体字のみで簡体字には未対応。PSPは繁体字、簡体字とも対応済みだという。

 ソフト側の対応については、メーカーレベルの話になってくるため、海賊版が横行するアジア市場での特殊性から、一律、簡体字対応という流れにはならないようだが、アジア諸国には中国以外にも簡体字を使う人は多いため、今後徐々に増えていくものと思われる。

 こうしたSCE Asiaの方向性の一端が伺えるのがSCE Asiaの公式サイト
だ。アジアのリージョンを示す、日本から西アジアまでを含めた世界地図の隣に、香港、韓国、マレーシア、シンガポール、台湾、タイといった各国ユーザー向けのサイトのリンクが並んでいる。中国市場は正式展開していないため、その他に分類されているが、しっかり簡体字で情報を参照することができる。

 SCE Asiaの基本戦略としては、各国ごとの法規制や関税などの問題から、香港、台湾、シンガポールと展開初期のように、アジアに点在する国々にひとつずつ進出していくという展開戦略から、「各国の電脳街にいけば並行品がある」という現実を直視し、そうした並行品を購入したオーナーに対するサポートを、SCE Asiaの公式サイトのような形で、一括して行なっていくという方針に転換しつつある。

 しかし、こうした考え方は一見合理的なようだが、地道な宣伝活動や営業活動で少しずつ販路を広げ、海賊版を駆逐してきたSCE Asiaの従来のアプローチとは大きな隔たりがあり、また、初日のレポートでも触れたように、並行輸入品では、故障時やトラブル時の正式サポートが受けられないため、根本的な解決とはならない。ひとつ解決するとまた新たな問題が浮き上がるような形だが、いずれ解決しなければならない課題だろう。ネットワーク時代のアジアの展開はどうあるべきなのか。PS3時代を迎え、SCE Asiaはまたひとつ大きな岐路にさしかかっている。

【SCE Asiaブース】
クローズドブースに入るまでに30分から1時間程度待たされるため、ユーザーはしっかり元を取ろうと丁寧にプレイしていたが、それでも人気の差はハッキリとしていた。日本では評価の高い「みんなのゴルフ 5」は、ゴルフというスポーツそのものの人気が低いため、反応はいまひとつ。むしろコントローラを傾けるだけで遊べる「Super Rub a Dub(ぽちゃぽちゃあひるちゃん)」のようなカジュアルゲームのほうが人気が高かった


■ オンラインゲームのみの展開で中国と同化を果たすSQUARE ENIX China

スクウェア・エニックスらしい白を基調としたデザインのSQUARE ENIX Chinaブース
4月から正式サービスがスタートした「ファンタジーアース ゼロ」の反応は良好。中国ユーザーはやはりPvPが大好きだ
SQUARE ENIX Chinaの公式サイト。サイトデザインは日本と同じだが、扱っているタイトルはオンラインゲームのみだ
 一方、スクウェア・エニックスの中国子会社SQUARE ENIX Chinaは、「ファンタジーアース ゼロ」と「コンチェルトゲート」の2本の新作MMORPGを出展。中規模のブースの中央にイベントステージを設置し、その両側に10台以上の試遊台を設置して「ファンタジーアース ゼロ」のフリープレイが可能だった。

 SQUARE ENIX Chinaは、それまでの台湾Softstarとの合弁関係を解消して2005年に100%子会社として北京に設立された。SQUARE ENIX Chinaの代表は、スクウェア・エニックス代表取締役副社長の本多氏圭司氏が務めている。

 今回ブースを周って驚いたのは、1人も日本人スタッフがいなかったことだ、日本人は本多氏のようなトップレベルに限られ、現場は現地のスタッフに任せるという体制になっている。なにぶん日本人担当者がいなかったため、これがどのような方針で日本人スタッフが皆無なのかはわからなかったが、スクウェア・エニックスの子会社でありながら、中身は完全に中国のメーカーといった雰囲気だ。

 現在のラインナップは、「クロスゲート」、「クロスゲートカードゲーム」、「ファンタジーアース ゼロ」の3タイトル。「クロスゲート」のビジネスモデルは、プリペイドカードによる従量制とアイテム販売のハイブリッド課金を採用している。「クロスゲートカードゲーム」は現在βテスト中で、正式サービス開始時期は未定。

 「クロスゲート」といえば、先週9月30日を持って日本でのサービスが終了することが発表されたばかりだが、中国では、Softstarとの合弁時代に爆発的な人気を集めたことで知られる。公式発表によれば、累計会員数は2,300万人、最高同時接続者数は117,100人。現在は、会員数は未公表、同時接続者数は1万人前後と、かなり下がってきているようだ。

 「ファンタジーアース ゼロ」は、今年4月より中国で正式サービスがスタートし、ビジネスモデルは日本と同じアイテム課金制を採用。当然のことながらすべて簡体字にローカライズされている。現在の会員数は、同時接続者数で5,000人程度ということだが、ブースでは常時試遊台が埋まるほどの人気だった。現在もっともプロモーションに力を入れているタイトルのようだ。

 「コンチェルトゲート」は、残念ながらメインステージでのオープニングムービーの公開に留まっていた。サービス開始時期は今秋を予定し、ビジネスモデルはアイテム課金制を採用する見込み。

 中国では、「クロスゲート」の中国タイトル「魔力宝貝」の続編「魔力宝貝 II」として展開するところが大きな違いだろうか。中国で一時代を築いたシリーズの最新作だけに、再び大きなビジネスになる可能性はありそうだが、あまり目立ったプロモーションを行なっていなかったのが惜しい感じがした。ともあれ、今後の展開に注目したいところだ。

【プロモーション】
SE Chinaブースでは、「コンチェルトゲート」の発表と、「ファンタジーアース ゼロ」のクライアントCDの配布を行なっていたが、中国のメーカーのように派手なマイクパフォーマンスやステージイベントは行なわなかったため、注目度はいまひとつだった。ちょっと勿体ない印象だ

【ファンタジーアース ゼロ】
「ファンタジーアース ゼロ」は、タイトルロゴやメニューまでしっかり簡体字にローカライズされ、違和感なく簡体字がゲーム内にとけ込んでいた

□China Digital Entertainment Expoのホームページ
http://www.chinajoy.net/
□Sony Computer Entertainment Asiaのホームページ
http://asia.playstation.com/
□SQUARE ENIX Chinaのホームページ
http://www.square-enix.net.cn/
□関連情報
【2007年7月13日】第5回China Digital Entertainment Expoが中国上海にて開幕
コンシューマタイトルの参考出展が激増、中国勢は群雄割拠の時代に http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050729/china_01.htm

(2007年7月15日)

[Reported by 中村聖司]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.