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会場:Shanghai New International Expo Center
入場料:50元(約800円)
■ 「民族ゲーム」全盛の中国オンラインゲーム市場。「天驕3」に今後の光明を見た
ChinaJoyの会場を回ってみてすぐに気がつくのは、似たタイトルが非常に多いことだ。似たような武将キャラクタ、似たようなテクスチャ、似たようなインターフェイス、似たようなゲームデザイン。その上、ジャンルまで武侠モノ、三国志モノでほぼ固定と来れば、類似せざるをえないわけである。 武侠・三国志モノが多い理由は、武侠というモチーフが、日本や欧米におけるファンタジー世界と同様のニュアンスで自由に想像の翼を広げられる世界観であることと、武侠モノの映画や小説を見て育ってきた若い世代の中国ゲームファンに受けいれやすいこと、そしてなんといっても中国政府が「民族ゲーム」として推奨する世界観であることである。 北京完美時空の「Perfect World」や、台湾Softworldの子会社Chinese Gamerの「黄易Online」のように、3Dエンジンを一から開発し、人が空を飛び、輝く動物に載り、最愛の人を抱きかかえられる、あるいは未来人が時空を遡り、武侠の時代に生きるといったような、従来の武侠の枠をはみ出したぶっ飛んだオリジナリティを備えたゲームはごくごく一部で、ほとんどのタイトルは右に倣えで他人のアイデアを流用することに汲々としているように見える。結果として、市場規模としては、数年内にアジア圏でトップに躍り出ると言われながらも、これまでにアジア圏やワールドワイドで名を轟かせるようなメジャータイトルが1本も生まれていないわけである。 聞くところによれば、中国でゲームクリエイターを希望する人材は、上海を中心とした中国各地の欧米や日本の開発会社に流れ、コンシューマゲームの開発を行なっているという。有名なところでは、セガ、コナミ、スクウェア・エニックス、東星、Electronic Arts、Ubisoftなどがあるが、そのほかにも無数の独立系開発会社が存在している。中国ではコンシューマゲームの販売は認められていないが、輸出を前提とした開発そのものは認められており、意外にも中国はアジア有数のコンシューマゲーム生産国となりつつある。人材不足がより深刻化しつつあるようだ。 中国オンラインゲームパブリッシャーが、こうした状況をどう変えていくのかは、自身が答えを出すべき問題だが、ひとつの光明も見いだすことができた。'90年代に中国産リアルタイムストラテジー「Fate of Dragon」の開発元として名をはせたObject Software(目標軟件)の新作MMORPG「天驕 3」の存在だ。
世界観は過去のシリーズ同様、武侠世界をモチーフとしているが、MMORPGタイトルとしては新世代のグラフィックスエンジンを採用しているところが新しい。プログラマブルシェーダー採用によるメリハリの効いたグラフィックスは、現行のコンシューマゲームに勝るとも劣らないクオリティを備えている。今回出展されていたのは、かろうじて動作するテクニカルデモというレベルで、内容的な新しさ、おもしろさを備えているかどうかまでは確認できなかったが、中国ではPCゲームで豊富な開発経験を持つ同社の最新作だけに、今後の動向に注目していきたいところだ。
■ カジュアルゲームは依然「ダンスゲーム」がトレンド。アイテム課金は中国最適のビジネスモデル
このため、「Audition(勁舞団)」、「Super Dancer Online(超級舞者)」、「Burst A Fever(超級楽者)」といった数々のダンス/音楽ゲームを擁し、ダンスゲームブームの担い手である中国9YOUは、認知を計るためにプロモーションに必死だ。今年のChinaJoyでも会場までの歩道を全面9YOUの広告で埋め尽くすなど、認知そのものに莫大なコストを投じている。 一方、「World of Warcraft」の成功で勢いに乗るTHE9は、「ラグナロクオンライン II」や「Hellgate London」といったメジャータイトルを獲得する一方で、T3 Entertainmentのダンスゲームシリーズ最新作「Audition2」のライセンスを獲得し、ダンスゲームブームを根っこから掠う戦略に出た。 そのほか、中国Sunshine Interactive(頂新)は、HanbitSoftから獲得した新作ダンスゲーム「Groove Party」をブースで全面展開していたり、BtoBコーナーでも韓国GAMERUSHが「DANCE FEVER」を、同じく韓国Cycloneが「Jump for Joy」をそれぞれ参考出展するなど、底なしの需要を期待して、続々と新作タイトルが生まれつつある。 中国でダンスゲームが受けている理由は、単純に「格好いい」からである。中国のオンラインゲームユーザーは、大多数が中高生だという。彼らは1時間2~3元(32~48円)のネットカフェで腕を磨き、ネット上の友人あるいは、ネットカフェの友人に、自身のプレイシーンを見せ、カタルシスに浸る。ちょうど日本のアーケードゲーム市場における「魅せて楽しむ文化」が、オンライン上でそのまま適用されている形だ。 ビジネスモデルは、すべて基本プレイ無料のアイテム課金制を採用。日本ではアイテム課金制のタイトルは、商材となる有料アイテムの開発と内容がうまくいかないと、ゲーム内容がいかに優れていてもうまくまわらないシビアなビジネスだと捉えられているが、中国では、現地の文化にマッチした非常に優れたビジネスモデルとして理解されている。 アイテム課金制のタイトルでは、ユーザーはプリペイドカードを駅のキオスクや、露店等で購入してポイントを充当し、欲しいアイテムを手に入れる。クレジットカードや携帯決済等も対応している場合もあるが、使い逃げされるケースが多いため、実質決済手段はプリペイドカードのみだ。 決済手段を除けば、日本のアイテム課金タイトルと似たビジネスモデルだが、大きく異なるのは、先述したようにほとんどのオンラインゲーマーは、ネットカフェでプレイするため、実質的にネットカフェに対する従量課金と運営元に対するアイテム課金という二段重ねの課金体系になっていることだ。アイテムを買わないという選択を取れば、キャラクタの育成時間の短縮に繋がるアイテムを利用できないため、必然的にプレイ時間が長くなる。結果としてネットカフェに支払う料金が増え、メーカーに支払われるロイヤリティも増えるというわけだ。 従量課金全盛時代は、表向きプリペイドカードによる従量課金制を採っていたが、実態は無料のIDをネットカフェに配布し、ネットカフェ料金だけでプレイが可能だったため、特に海外からライセンスを得て展開しているタイトルは、構造的に収益が上げにくかった。現在は、従来のネットカフェからのロイヤリティ収入に加え、アイテム販売という新たな収益源を獲得したため、メーカーは以前より安定した運営を行なうことが可能になったわけだ。
中国市場でダンスゲームの人気が継続しているのも、短時間でカジュアルに遊べるゲームというユーザー側のニーズと、二重課金というメーカー側のニーズが絶妙な形でうまくマッチしたためとも考えられる。ダンスゲームのムーブメントは今後も継続すると思われるが、来年はどのような形に変容を遂げているのか。来年の様子がいまから楽しみだ。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2007年7月14日) [Reported by 中村聖司]
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