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会場:Santa Monica Civic Auditorium
Reggie Fils-Aime副社長は、このイベントを「今年のE3がターニングポイントになるだろう」とまず位置づけた。任天堂がニンテンドーDSをリリースしてから、「すべての人がーゲーマーになる可能性が拡大した」という。Reggie副社長自らが、家族がDSやWiiに触れることで、ゲームマシンでプレイする時間が増えたと語っていたように、DSが今までゲームマシンにあまり積極的に触れてこなかった層、つまり30歳オーバーの層や、女性層に向けて確実に普及したことにより、販売台数比率は2006年度で前年比北米で50%、日本で114%、イギリスでも42%の伸びを見せた。 今までにない操作形態や2画面スクリーン、Wi-FiなどDSのコンセプトが魅力的だっただけでなく、「nintendogs」や「脳トレ」など、従来のゲームの枠にとらわれないタイトルを「人工衛星のように(Reggie氏)」ラインナップできたことも大きい。これにより、コアゲーマーからメジャー層へと拡大していた従来のゲームソフトの普及モデルとは明らかに異なり、一般層から拡大させていくという任天堂の戦略は、プラットフォームとしてのDSの魅力をより拡大し、北米において携帯ゲーム機の販売台数比率を2002年度の7割対2割から、5割へと押し上げた。特にDSの購入者の3分の1は女性という。
一方、Wiiもその斬新なコントローラやWi-Fiを使ったダウンロードコンテンツ、MiiやWiiチャンネルといった新たな試み(いまやもう試みとはいえないのかもしれない)で、6歳~49歳までの年齢層で、とくに25歳~49歳までで33%が一度はWiiを遊んだことがあり、66%が定期的にゲームを遊ぶようになったという。今までゲームに触れていなかった層だけでなく、過去にゲームをプレイしていたが、しなくなった層へのアピールも、「バーチャルコンソール」をはじめとしたプランが奏功したという見解だ。この「売り込みと引き寄せ」の効果により、発売以来33週連続で売り切れを記録しているとReggie氏は力強く語った。 また、任天堂ソフトに大してサードパーティタイトルの売り上げ比率は50%を占めていることも明らかにした。従来、任天堂のハードには、例外はあるものの、「任天堂タイトルしか売れない」という声は聞こえていたが、現状はそれを越え、市場は確実に拡大しているというわけだ。 今回、Reggie氏が次のステップとして明らかにしたことは、「任天堂=未来」であること。つまり、広げたユーザー層をさらに拡大し、しかも発掘した層には定期的にプレイしてもらうことはもちろんのこと、任天堂が従来から得意としていた若年層=つまり将来の主要顧客へのアピールをも視野に入れた展開を行なうということだ。 今後、北米地域において、サードパーティを含め、Wiiへは100タイトル(現状は60タイトル)の新作を、DSには140タイトル(現状は300タイトル)を投入する。 「SUPER SMASHBROS. BRAWL」は北米で12月3日、また「マリオ64」の正統後継者とReggie氏が語った「SUPER MARIO GALAXY」は北米で11月12日発売されることが明らかにされた。 ■ FPSタイトルを遊びやすく、初心者にもコアゲーマーにもオススメの「Zapper(仮)」 今後の戦略の典型としてReggie氏がまず公開したのが、Wii発表時から公開されてきたガンコントローラ型アダプタ「Zapper(仮)」だ。ヌンチャクスタイルのヌンチャクをグリップ部に、Wiiリモコン部を銃身部にセットするアダプタで、年内に19.99ドルで販売されるが、任天堂ソフトには同梱されるという。対応タイトルとしては、任天堂の「Metroid Prime 3 Corruption」、カプコンの「resident evil THE UMBRELLA CHRONICLES(バイオハザード)」、セガの「GHOST SQUAD(ゴーストスカッド)」、「MEDAL OF HONER(メダル オブ オナー)」などが登場する。「MEDAL OF HONER」は32人マルチプレイが可能という。 今秋発売される予定の「Metroid Prime 3 Corruption」では、「-」ボタンを使ってバイザーの切り替えも楽にできるようになるほか、ショット時はポインター機能を使うことで射撃しやすくする。さらにロックオンフリーエイミング機能も搭載。これは一度「Z」ボタンでロックオンした敵を追随し続けることができるようになるということで、さらに難易度は下がるだろう。「ハイパーモード」も搭載し、「メトロイド」の世界がさらにパワーアップしている。
■ オンラインプレイにもさらなる新風を「Mario Cart Wii」 任天堂はDS、Wiiでオンライン対応に対しても着々と実績を上げている。単に対戦だけとってもDSタイトルで多数の対応タイトルを送り出してきており、「ポケモン」シリーズでのモンスター交換など、多様な使い方もすでに実績を上げてきている。Wiiでは、Wiiコネクト24を使ったWiiチャンネル、そしてブラウザによるWeb閲覧、「バーチャルコンソール」といった多様なネットワーク機能の利用法が提案されてきたが、オンライン対応ゲームがこれから、という印象であったことも事実だ。 そこで満を持してReggie氏は2008年度第1四半期に発売予定の「Mario Cart Wii」を公開。同梱されるハンドルコントローラは、Wiiリモコンを背面にはめ込む形式になっており、ストラップが付いたままでもセットできるようだ。「オンラインでのプレイで再び新鮮な感覚を取り戻す」とReggie氏は意気込んでいた。 ほかにも、Wiiチャンネルに新たなチャンネル「Miiコンテストチャンネル」が追加される。これはMiiによるコンテストが行なわれるだけでなく、気に入ったMiiを連れ帰ったりもできるそうだ。日本では明石家さんまさんや松岡修造さんのMiiが配信されたりしたが、これからこういったプロモーションにもどんどん活用されていくことになるという。 ほかにも、オンラインに対応したタイトルとして「Mario Strikers Charged」、「MADDEN 08」、「FIFA 08 SOCCER」などが紹介された。「FIFA 08 SOCCER」では、Miiを使って楽しめるパーティモードが初搭載される。
■ 「生活改善型ゲーム」の象徴となる健康をテーマにした「Wii Fit」 DSのヒットを支えているいわゆる「生活改善型ゲーム」。Wiiでは「Wii Sports」がそのコンセプトを引き継いでいるものの典型かと思われるが、以前から宮本 茂氏が主導で開発されている「ヘルスパック(仮)」が、「Wii Fit」として今回初公開された。感圧検知機能を持っていると思われる「Wiiバランスボード(仮)」をワイヤレス接続することで、フィットネス運動を行なうだけでなく、BMI値を計測し、記録できるタイトルだ。 「日ごろからいい汗かいてますか」と登場した宮本氏は、「Wiiはリビングにあって、1人でも多くの人がそれに関わる。そこから家族の間にコミュニケーションが生まれ、ビデオゲームが家族みんなに関係のあるものになる」というWiiのコンセプトにどうしても欠かせないのが「健康」というテーマ。それをWiiで実現するのが「Wii Fit」ということになる。 「Wii バランスボード」は、ワイヤレスで体を使ったゲームインターフェースになるだけでなく、載るだけでも体重が計測できる。また、重心がどうなっているかもわかる。 「Wii Fit」の内容は、3人のトレーナーによってデモンストレーションが行なわれた。「Wii Fit」は、ストレッチや有酸素運動、シェイプアップとミニゲームの4つのカテゴリ計40種類以上収録されている。 「片足ストレッチ」は「Wiiバランスボード」に片足を乗せて運動すると、足にかかる力を画面でリアルタイム表示。うまくなると一定範囲内に力のかかりどころが収まるようになり(ブレが少なくなる)、両足の筋肉をバランスよく効果的に鍛えることができるようになるというもの。 「ステップ」は有酸素運動のためのプログラム。画面に表示されるアイコンにあわせて、「バランスボード」に載ったり下りたりする。周りのMiiの動きにあわせてプレイすれば、タイミングがとりやすいということだ。
このソフトには、プレーヤー(Mii)ごとに計った体重データを記録する機能がある。ステージ上ではReggie氏の体重をBMI表示していたが、軽装かそうでないかをセットし、自分が中央だと思う場所に立つだけで、簡単に計測が行なえる。「プレッシャーだ」とドキドキの判定はちょっと太り気味? と判定され、「筋肉量はベストだ」と反論していたReggie氏だった(笑)。 このデータは家族でそれぞれ保存できる。見比べる機能も付いているが、体重そのものが表示されるわけではないところが気を使ってある。「Wii Fit」をプレイする前後に記録をとっていくなどしていけば、自分の変化が如実にわかる。そういった意味でも簡単に載るだけで計測できるこの仕組みはよく考えられているといえるだろう。また、プレイしている人同士で結果を比べあってみるなどすれば、より励みになるだろう。 宮本氏も「今スタッフは毎日このデータを見比べながら開発しているので、だいぶシェイプアップできた」と楽しそうに語っていたのが印象的だ。 最後に、ゴールキーパーとして、ヘディングでボールを跳ね返すミニゲームを宮本氏とReggie氏でプレイ。ボールの代わりにたまに靴が飛んできたりするので、よく見て体を左右に振る必要がある。このゲームはReggie氏の勝利で面目躍如(?)となった。
■ 岩田氏「ゲームはみんなのためにある」「ニューゲーマーたちよ永遠に」
岩田氏は、「これからはベテランと初心者の壁を取り払うことが大切。ゲームはみんなのためにある。そのためには、初心者向けだとかマニア向けだとか、狭い範疇で分類できないような、誰にでもとっつきやすく、かつベテランにもやり応えのあるゲームを作っていく必要がある」と述べた。今、生活改善型ゲームでゲームプレーヤーとしてデビューを果たした人もやがてはベテランになる。その間の過程で、初心者とベテランの壁を取り払っていくことが重要になってくるというわけだ。 これが実現できれば、よりいっそうのゲーム人口拡大も不可能ではない。難易度調節や操作系の見直しなど、ハードルは高いが、任天堂ではその点、ハードウェアにも手を入れていける強みがある。それが具現化しているのが「Zapper(仮)」であり、これをWii発売時にはすでに視野に入れ、Wiiリモコンやヌンチャクを設計してきたということになるわけだ。 「ニューゲーマーたちよ永遠に」と締めくくった岩田氏。「脳トレ」の開発を社内で公言した際、社内でも「社長はどうかしてしまったのでは?」と言われたことがあるとReggie氏が語っていたが、今までにないアプローチでここまで任天堂を引っ張ってきた岩田氏のこれからには目が離せない。
(2007年7月12日) [Reported by 佐伯憲司]
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