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★PCゲームレビュー★

ゲーム世界はまるで“鉄道史のおもちゃ箱”
未踏の荒野に自分だけの鉄道王国を築き上げよう

「シド・マイヤー レイルロード!」
【完全日本語版】

  • ジャンル:鉄道会社経営シミュレーション
  • 開発元:Firaxis Games
  • 発売元:サイバーフロント
  • 価格:9,240円
  • 対応OS:Windows 2000/XP/Vista
  • 発売日:4月27日(発売中)



 鉄道模型は、広い屋内スペースが必要で精密な作業も要求される敷居の高い趣味。けれどコンピュータの中でなら簡単な操作で、どこまでも続く線路を敷くことができる。けたたましく汽笛を鳴らし、蒸気機関のうなりを上げ、黒煙をもうもうと吐き出しながら猛然と荒野を走り抜ける列車。そんな鉄道の雰囲気を十二分に味わい楽しめるゲームがこの「シド・マイヤーズ レイルロード!」だ。

グラフィックは印象的でまるでおもちゃの世界。列車はディテールまでしっかり作りこまれていて美しい
 本作をデザインしたのはご存知Sid Meier氏。「Civilization」シリーズなどの名作を作り上げたことで知られる彼は、'90年、鉄道会社経営シミュレーションの元祖といえる作品「Sid Meier's Railroad Tycoon」を製作し、この新しいジャンルを切り開いた。この「Railroad Tycoon」シリーズは、以後「Sid Meier's」の冠を取り、本格的な経営シミュレーションゲームとして一定のファン層を魅了し続けている。

 ただ、「Railroad Tycoon」シリーズはコアなファンを満足させるべく経営シミュレーションとしての複雑さを増していった感があり、とっつきやすいゲームではなくなってしまったとの評価もある。そこで本作は、初代「Railroad Tycoon」の精神に立ち返り、Sid Meier's氏本人が近年重視している手法「本質的で楽しい部分をふくらませ、面倒で楽しくない部分を徹底的に削る」を大胆に発揮して、誰もが手軽に、そして楽しく鉄道経営のムードを満喫できるようデザインされたシミュレーションゲームだ。


■ 未踏の荒れ野に線路を敷いて自分だけの鉄道王国を築き上げよう!

線路は簡単なマウス操作で。地形に合わせて自動的に橋梁やトンネルが構築されるので、どんどん線路を敷いていける
 本作ではシングルプレイとマルチプレイの両方を楽しめるが、おもにシングルプレイを重視したつくりになっている。まずは基本的なゲームの流れを紹介していこう。

 プレーヤーははじめにプレイするマップを選ぶ。マップはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツの各国をモチーフにしたものから、対戦バランスを意識した純粋にゲーム的なデザインのものまで全15種類が用意されており、そのマップがどの国の文化圏に属するかによって、登場する車両もその国の鉄道史を反映したものになる。たとえばフランスであれば超高速旅客列車「TGV」が登場する、といった按配だ。残念ながら文化圏は欧米に限定されており、日本マップでプレイすることはできない。

 ゲームを開始すると、そこはまだ鉄道業界が産声を上げたばかりの19世紀初頭。マップ上に点在する町や村はまだ鉄道によって結ばれておらず、未踏の大地が広がっている。プレーヤーにはランダムに選ばれたホームタウンにターミナルが与えられているので、まずそこから、近隣の町へ線路を延ばして最初の列車を走らせ、ゲームを次の段階に進めていく。

 マップによって多少異なるが、ゲームはおよそ1820年代の鉄道黎明期から、'70年代、鉄道技術が現代の水準まで到達した時代までをカバーする。ゲーム開始時点では、まだ原始的で非力な蒸気機関車しか登場しておらず、2、3両編成の決して多くない貨物を、人が走れば追いつけるような鈍足でのそのそと運んでゆく……といった雰囲気。もちろん、時代が勧めば新型の機関車が登場するので、パワフルな電気機関車で大量の貨物をズンドコ輸送する時代もやってくる。

 そしてマップ上にはたくさんの町や、資源を算出する産業拠点が点在している。プレーヤーは、これらを軌道でむすびつけて駅舎を立て、列車を走らせて人やモノを輸送することで資金を稼ぐ。資金を稼げば新たな鉄道や駅舎を作る費用が賄えるようになるので、営業効率のよい路線を次々に開業して会社を大きくしていく、というのがこのゲームの基本的な流れだ。

特産品もマップによって様々。アメリカ西部のマップでは、金山から産出する鉱石を運び出すことで大きな収益を上げられる 発展した都市は多くの物産を必要とし、また生み出す。都市を結びつけて輸送により収益を上げるのがゲームの骨子だ

ライバルも鉄道をどんどん拡張するので、互いの路線が重なり合って複雑な鉄道網が形成される。ひときわ楽しい景色になっていく
 ゲーム内には最大3人のライバル鉄道会社が登場する。その代表はジム・ヒルやロスチャイルド、ビスマルクやナポレオン3世など鉄道王や大富豪、政治家など個性的な人物達だ。ライバル達はプレーヤーと同じようにランダムな拠点からスタートし、鉄道を延ばして町や産業拠点を結ぼうとするので、プレーヤーはそれに先んじて路線をつくり、ライバルより大きな営業利益を上げなければならない。

 しかしここでポイントになるのは、線路は既存の線路を延長する形でしか敷くことができない、という本作最大のルール。何もない土地にいきなり線路をひくことはできないので、開業済みの路線から徐々に営業範囲を広げていく形をとるのだが、同じく町や産業を結びたいライバル会社との競争によって領土争いさながらの風景を呈することになる。

 プレーヤーを含む各鉄道会社は株式を発行しており、株式の価格は鉄道会社の営業成績や営業規模によって変動していく。ゲーム開始時点では各会社とも自社株を全10単位中4単位程度しか保有しておらず、残りの株式は自由取引に供されるという設定で、各会社は自己資金を使って自社・他社の株式を1単位づつ購入・売却することができる。そしてライバルの鉄道会社の株式を100%保有するとその会社全体を「保有」したことになり、その全路線を自社にとりこむか、溶かして鉄クズに戻してしまうことが可能だ。基本的にこのゲームでは、自分の鉄道王国を侵食する邪魔なライバルは早いうちに買収し消滅させてしまうのがセオリーだ。最終的にはすべてのライバル会社を取り込むか、鉄クズにしてしまえば勝利が確定するというわけだ。

 こうして鉄道を広げ、駅を増やし、人やモノを効率よく運んで営業成績を上げながら、ライバル達に先んじて利益を確保し、自分だけの鉄道王国を築き上げていく、このゲーム展開そのものが醍醐味となっている作品なのだ。

ゲームの序盤に登場する上記機関車はごく頼りないものだが、技術は次第に進歩して、20世紀も序盤を過ぎると強力な出力を誇る電気機関車が登場。大量輸送の時代が到来する

ごく初期は数本の路線しか走っていないものが、企業倫理のパワフルな追求により複雑な鉄道網へと発展していく。電車が走るようになるころには、マップ全体が線路と車両で埋め尽くされ、とてもにぎやかな情景をかもし出すのだ

ひとつの駅には最大4本までの線路を引き込むことができる。大都市には各地で生産される工業製品や、旅客・郵便などを効率よく運び込んで利益を生み出そう 各シナリオには年代ごとにチャレンジが用意されているので、達成条件を満たしてゲームスコアを伸ばそう。単にライバルを蹴落とすだけでなく、こういったお遊びもしっかりこなしてこそ「鉄道王」だ


■ “攻めの経営”による創業から鉄道王までの濃密プレイレポート

ゲーム開始は駅ひとつ。さびしい風景だが、ここから鉄道のジャングルが生まれていくのだ
 さて、大まかな雰囲気をつかんでいただいたところで実際のプレイを通した具体的なゲームの展開をご紹介してみよう。このゲームで選んだマップはイギリス。鉄道先進国イングランドを舞台に、最初の旅客鉄道が産声をあげた時代の1829年から電気機関車全盛となる'57年までの期間をカバーしたマップだ。難易度は「大資本家」(中の上くらい)、ライバル鉄道会社は3社という設定だ。

 ゲームの開始時点でプレーヤーが持つ駅舎はたったひとつ。マップ右上に位置するノーウィックという小さな田舎町だ。まずはここから利益の出る営業路線を繋いでいかなければならない。最初に与えられている初期資金は30万ポンドで、あまり長い路線を敷くことはできない金額だ。無茶な方向へ線路を延ばしてしまえば、利益を出す前に破産してしまうだろう。

ゲーム開始は駅ひとつ。さびしい風景だが、ここから鉄道のジャングルが生まれていくのだ
・需要と供給のメカニズムを理解する

 利益を出すためには、町の持つ「需要」と「供給」をうまく組み合わせる必要がある。これは町などをクリックするとその上にオーバーラップして表示される要素で、その町が何を生み出し、何を必要としているかをあらわすものだ。

 まず、ある程度の規模を持つ町であれば、必ず「旅客」と「郵便」の供給が発生する。さらに各都市は最大3つまでの「産業」を持つことができ、これが供給を生み出す。産業は、町の外の産業拠点から運びこまれる物資を加工して別の製品にしたり、直接金銭を生み出す存在だ。たとえばワイン工場にぶどうを運び込めば、多少の時間差をおいてそこからワインの供給が生まれる。

 基本ルールとして、加工業であれば、1単位の物資は、1単位の「供給」を生み出す。発電所や病院のような最終消費地となる産業であれば、物資は消滅して会社に金銭収入を生み出す。またある種の産業が生み出す供給は、さらに別の産業で使われることがある。たとえば産業拠点のひとつである鉱山からとれる鉱石は、製鉄所のある町で鉄鋼となり、鉄鋼は、軍需工場のある町に運び込むと加工されて兵器となる。こうして生まれる高次の産業製品は高い利益を生むのでうまく活用したい。

 こういった形で生まれる「供給」は、列車に積み込んでその品目の「需要」のある別の町に運び込むことで収益を上げることができる。「需要」には、その町が持つ産業が必要とする物資に加えて、ある程度発展した町にしか発生しないものある。たとえば小さな村は「旅客」や「郵便」の需要をもたないし、中程度の町は「旅客」を受け入れるけれど、高度な加工製品(自動車など)の需要をもたない。逆に大都市であればあらゆる種類の「需要」が生まれるので、そういった大都市には自然と各方面からの線路が集中することになる。

 そして村や町は、そこで稼動する産業が生み出した製品を対応する需要のある町へ輸送し続けることで、次第に大きな町に成長し、新たな需要を要求するようになる。成長した町には合計最大3つまでの産業を誘致することができ、それによりあらたな供給を生み出すことができる。この需要と供給の拡大によって、全体の経済規模が大きくなっていく、このゲームはそういったメカニズムになっている。

 このゲームの根幹をなす「需要と供給」のシステムは文章で説明するとやや複雑なものに映るかもしれないけれど、いくつかのスクリーンショットを見ていただければ直感的に理解していただけるだろう。少しプレイするだけで基本要素は完全に把握できる程度のものだが、地理的な組み合わせも相まってパズル的おもしろさが楽しめる。プレイしていて気がつけば、各地に点在する資源生産拠点と、各都市の産業をどうやってうまく繋げていくか、ああでもないこうでもないと試行錯誤している自分に気がつくかもしれない。

この小さな町には旅客と郵便の供給がある。缶詰工場があるので、魚を運び込めば食料を供給できる これは魚を供給する漁場。ここに路線を引けば運び出すことができる。ほかにもマップ上には鉄や羊毛など多種多様な資源産出施設がある

初期資金を投じて近隣の町を大胆に接続していく。最初の一歩で挙げる収益は後々大きな影響を及ぼす
開始時点でロンドンまで接続し、各都市間を旅客列車で結ぶ。最初はこれが一番効率がいい
はじめての営業路線が産声をあげた。頼りない小さな機関車がのそのそと旅客を運んでいく
・序盤は旅客を中心に組み立てつつ、徐々に産業へシフトしていこう

 さて、最初に与えられた町ノーウィックには魚肉工場という産業がひとつあるが、近隣に魚を産出する拠点がない。この工場を稼動させたければ、相当遠距離から魚を運んでこざるをえず、初期経営は利の薄い厳しいものになってしまうだろう。といった判断から、まずは旅客を中心にビジネスを組み立てることにした。運良く近隣に位置する町は中程度の発展段階にあり、旅客と郵便の需要と供給がある。さらにその先には大都市ロンドンまで遮るものがないので、いきなり自社株を2単位ほど売却して資金を増やし、ロンドンまで一気に繋いでしまうことにした。

 旅客は、ゲーム序盤から終盤までを通じて高い輸送単価が保証されている供給物で、特に序盤は旅客に頼ることが多くなるだろう。とくに大都市はたくさんの旅客と郵便を自然に供給するので、序盤に接続することができればライバル会社に対する大きなアドバンテージになる。多少無理をしてでも接続する価値があるだろう。

 鉄道を敷き、各都市に駅舎を作ったら資金は底をついてしまったが、そこにさらに列車を配置する必要がある。列車は専用のスクリーンにて各駅を結ぶダイヤを作成することで配置できる。ちょっとした裏技的なテクニックだが、列車の配置は資金がなくても借金で賄うことができるので、資金の限られた序盤では路線と駅の配置に全資金を投入してから列車を配置するのがよい。

 こうして最初の路線が営業を開始し、旅客と郵便を隣接する町同士で運びあうことで効率よく収益を上げる状態になることができた。当面は、旅客を受け入れることのできない小さな村は無視して路線を拡張していく方針だ。各種の需要が存在しない村落を需要のある町に成長させるには産業を回転させる必要があるのだが、それにはある程度まとまった資金と時間が必要なためだ。

 旅客輸送による収益である程度資金がたまってきたら、可能な限り早く路線を延ばして新たな町に接続していきたいところだが、近隣に適度な規模の都市がない場合は産業の育成にシフトしていこう。基本は都市の一番近くにある資源生産施設から産業資源を運び込むことだが、その都市に都合よく対応した産業があるとは限らない。その場合は空き区画に適切な産業を誘致して、生産を可能にするのが常套手段だ。

 こうしてロンドンの食肉加工施設には近くの牧場から牛を、隣町のチェルムスフォードには近所の漁場から魚を輸送してくる輸送システムを整えてみた。どちらの産業も加工品として食料を供給し、いずれの町も需要として食料を必要とする発展段階にあるので、隣り合う町で食料のみを貨載して往復する利益率の高い路線を開業できる。こういった効率的な産業構成はのちのちの株式買収合戦で効いてくるので、まるでパズルを解くかのように最大の利益を上げる路線構成を構築していきたい。

 そうこうしているうちにまとまった資金を運用できるようになってきたので、一気に路線を拡張してマップ右上から上部にかけて長い路線を敷き、営業圏を拡大していく。基本的には、1つの列車は隣り合う駅を往復する形でダイヤを設定し、なるべく複雑な経路を走らせないようにする。駅や路線は複線化が可能で、すれちがい線や乗り入れ線を構築することも可能だが、分岐点での信号待ちが発生するダイヤにしてしまうと時間のロスがバカにならない。列車はただ存在するだけで定期的に維持費を必要とするので、なるべく停止せずに走り続けられるシンプルなダイヤが最終的には大きな利ざやを保証するというわけだ。

ちょっと資金が溜まったら忘れずに各駅を複線化しておこう。ホームを有効活用できる 生産用の資源はなるべく一番近い拠点から運ぶようにしたほうがよいだろう。路線が長いと効率が低下してしまうからだ

各都市を結ぶ路線と、資源を運ぶ路線は別のホームに引き込むようにするのがオススメ。バッティングをさけ、最大の輸送効率を確保しよう 新しい機関車が利用できるようになったら、「列車」スクリーンでまとめてアップグレードしておこう

機関車には旅客向けと貨物向けの2系統がある。旅客向けは高速だがパワーがない。貨物向けはパワーがあるが速度が劣るので使い分けが重要だ ときおり発生するボーナスイベント。条件を満たすと少々の資金をプレゼントしてもらえるが、無理がありそうなら無視してもかまわない

余剰の資金ができたらどんどん線路を繋げていく。放っておくとライバルが乗り込んでくるのでのんびりしてはいられない
気がつくとライバルの駅ができていて、線路が邪魔になり拡張がしづらくなってくる。早め早めの対応が肝心
・利益を賢く運用しつつライバル会社をクズ鉄に変えてしまえ!

 経済が軌道にのってくる時点で忘れてはならないのが株の購入だ。このプレイでは開始時点で自社株を2単位も売却してしまったので、早めに買い戻しておく必要がある。株の保有率が低いと株価と会社の総合的な価値が低くなってしまい、他社に買収されやすくなってしまうためだ。株の購入のための資金と、路線の拡張によってライバル会社の拡張を阻むための資金を両方確保するのは難しいが、そこはうまく折り合いをつけて計画的にやりくりしていこう。余裕があれば、他社の株を早めに安い価格で買っておくことで、後々の買収を安く上げる効果も期待できる。もちろん、株価が上がったタイミングで売り抜けて経営資金にまわしてしまうのも場合によってはうまい手だ。

 ある程度、鉄道網の拡大が進むと、ライバル鉄道会社の路線が自社の線路を乗り越える形で敷かれるような場面に多く遭遇する。おちおちしていると収益源にしている都市に別の駅を作られ、プレーヤーが育ててきた旅客や生産した製品を勝手に吸い上げられることもある。これを防ぐには、相手が路線を拡張しにくいように障害物的にこちらの線路を敷くといったテクニックを使って、ライバルの線路の延伸を妨害する必要がある。こういった対応も早いほどアドバンテージが拡大するので、余裕があればライバルの収入源になっていそうな資源を、特に使い道がなくても貨物列車で吸い取ってしまって、相手の取り分を減らしてしまうくらいの嫌がらせ精神が必要だ。こういった形でバトルが進行していく。

 さて年代も進み、鉄道の営業もこれ以上拡張や調整が不可能なほどに最適化されてきた段階において、ライバル会社のひとつであるジョージ・ハドソンが他の2つのライバル会社の買収に成功してしまい超巨大化した。営業利益も巨大な数値を計上しているようだ。各会社の売り上げと利益はF1キーで開く「財務スクリーン」で確認することができるが、そこで表示される「総利益」が自社のそれに迫る勢いであれば相当に警戒すべきだ。ライバルはこちらの株式総額を超える資金を溜め込み、一気に買収をかけてくるかもしれない。そうなれば中途半端な形で引退を余儀なくされてしまう。つまり、ゲームオーバーになる。

 このプレイでは早期にライバル会社の拡張を邪魔する形で鉄道を拡張した甲斐があってか、2つのライバルを吸収して巨大化したジョージ・ハドソンよりも大きな総利益を上げ続けることができていた。あとはいかに早く相手の株式総額を上回る資金を溜め込むかだ。ディーゼル機関車も登場してまもない'19年8月、ついにこの巨大化したライバルを一気に買収することができた。総利益では追いつかれる寸前だっただけにきわどい勝負だったといえるだろう。

 ライバル会社を買収してしまったら、その段階で相手の所有していた鉄道および駅舎を自社に統合するか、それとも清算して現金にしてしまうかを選ぶことができる。多くの場合は、清算して相手の路線をサラ地にしてしまった方が、自社の路線を戦略的に拡張する手段が広がり得策だ。このプレイでは1回の買収が全ライバル路線の買収を意味してしまったためこの時点で勝利が確定したが、他のライバルが残っている状態であれば、より効率的な鉄道網建設の契機として賢く考えることが最終的な勝利に結びつくことになる。

ときにはゲームをポーズして、Ctrl+Fでアクセスできるフリーカメラで景色を楽しんでみよう 中核となる大都市には、たくさんの機関車がひっきりなしに乗り入れて大盛況。稼ぎ頭なのでしっかり列車運用を計画したい ある程度スピードのある貨物用機関車は万能選手。大量の旅客も重量によっては旅客用機関車より高速に牽引できる

自社の株式は早めに全額取得しておきたい。放置して安値のままにしておけば、ライバルに奪われてしまうからだ 「財務」スクリーン。ここでは売り上げと経費を過去4年間まで確認できるので、どの部門に改善の余地があるかを分析して役立てたい ライバルの全株式を買収すれば、その鉄道はすべてプレーヤーのものだ。自分で使うなり溶かすなり、好きにしよう

乗っ取り後、ライバル会社の鉄道を清算してしまうと跡地はサラ地になる。あとは自由に線路をデザインできる 跡地に残された都市郡を何者にも邪魔されない効率的な鉄道網に組み込んで、莫大な収益を上げようじゃないか 高度に最適化された鉄道網は、ただそれだけで美しい


■ シンプルかつ大胆な作りこみは鉄道シムとしての奥深さを犠牲にした部分も

ゲームを終了すると、スコアに応じて引退後の人生が決められる。風来坊から果ては陸軍大将や首相まで
もうすこし複雑な線路システムがあれば、環境ソフト的な楽しみも深まったかもしれないが、望みすぎというものか
 本作は鉄道経営ゲームとして路線を拡張していく楽しさや、需要と供給の組み合わせをうまく路線の構成と組み合わせて利益を上げていくパズル的な楽しさ、そしてライバルとの競争といった、さまざまな「楽しい」ゲーム性がてんこもりだ。経営シミュレーションにありがちな複雑で面倒な要素はなく、操作性も良好。本作は厳密な意味で「鉄道経営シミュレーション」にカテゴライズされる作品ではないが、手軽に遊べる鉄道経営シミュレーションとして、申し分のない完成度にあると言っていいだろう。

 ただ、ゲームとしての娯楽性やシンプルさを追求した作品であるため、「鉄道シミュレーション」的な要素が大胆に省略されてしまっていることも否めない。たとえばダイヤの作成で細かな時間指定などをすることはできず、複数列車の関係性は優先順位程度のきわめて基本的な要素だけにとどまっているし、複線や分岐線を作ることはできるものの、分岐で列車がどの路線を選択するか、どのホームから発着するかなどの細かな制御はできず、少し込み入った路線に複数の列車を走らせると容易にお見合いをして詰まってしまう。

 また3つ以上の分岐を作ることもできないため、3複線を行き来させるには別の地点に分岐を重ならないように設置する必要がある。在来線を横目にホームを通過する特急列車のようなものも、コツを覚えてちょっとしたテクニックを駆使しないとうまく再現できないようなところもある。確かに操作は単純で理解しやすいのだが、やりこみ要素に若干欠けるところがあるというのが正直なところだ。あるいは、旅客の運ぶ距離に応じて収入がダイナミックに変化するようなシステムがあれば、もう少し深みが出てきたかもしれない。

 こうしたことから、本作に対して「Railroad Tycoon」のような本格的鉄道シミュレーションの深みを期待してしまうと、若干拍子抜けしてしまうところがあるかもしれないが、純粋に「鉄道ゲーム」としてみたならば、本作はまるで列車のおもちゃ箱のように、手軽に気楽に楽しめる作品である。1プレイもたいていは数時間で終わる程度の手軽さなので、黒煙を上げて走る蒸気機関車の趣にロマンを感じる向きにはぜひ、楽しんでいただきたい。

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【シド・マイヤー レイルロード!【完全日本語版】】
  • CPU:Pentium 4 1.2GHz以上(同 1.8GHz以上を推奨)
  • HDD:1.7GB以上
  • メモリ:512MB以上
  • ビデオメモリ:64MB以上(128MB以上以上を推奨)


□サイバーフロントのホームページ
http://www.cyberfront.co.jp/
□「シド・マイヤー レイルロード!」のページ
http://www.cyberfront.co.jp/title/railroads/
□関連情報
【2007年2月28日】サイバーフロント、「シヴィライゼーション」のシド・マイヤー氏による鉄道経営SLG
WIN「シド・マイヤー レイルロード! 【完全日本語版】」
http://www.cyberfront.co.jp/title/railroads/

(2007年6月19日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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