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この新社屋のユニークな点は、特異な外見だけではない。メーカーの新社屋というと新本社を意味することが通例だが、コーエージェミニはオンラインゲーム部門のスタッフが集結し、オンラインゲーム事業の拠点として活用されている。本誌では6月1日の業務開始に合わせて、取材のためにコーエージェミニを訪れた。
今回の取材にはオンラインゲーム開発と運営、それぞれの分野の部長を務めるソフトウェア事業部ソフトウェア4部部長藤重和博氏と、ゲームシティ事業部シティ企画部担当部長渥美貴史氏のおふたりに社内を案内していただき、さらにコーエージェミニ業務開始以降のオンラインゲーム戦略をお伺いした。 ■ ジェミニ(双子座)は、オンラインゲーム事業の開発と運営を表すキーワード
コーエージェミニの名前の由来は、もともと宇宙や星座を会社のイメージデザインとして使用している延長で、竣工・業務開始時期の5~6月の星座(ジェミニ)から取られている。もっとも、内部的には「開発と運営というオンラインゲーム事業の両輪を表している(渥美氏)」と理解されているようだ。地上4階、総面積約1,800平方メートル。ゲームメーカーのオンラインゲーム部門としては最大規模といっていいだろう。 冒頭でも触れたように、コーエージェミニは、本社と第2ビルに分散していたオンラインゲームの各部門を一箇所に集める目的で建設されている。具体的には、オンラインゲーム開発を行なっているソフトウェア4部と、オンラインゲームの運営や公式サイトの運営などを行なっているゲームシティ事業部が入っている。 コーエーには、「オンライン事業部」といった開発、運営を束ねる単一の組織は存在しない。その歴史をひもとくと、'90年代に「信長の野望 Internet」、「三國志 Internet」、「アプサラス」などの複数のオンラインゲーム開発・運営経験を経て、2001年に「信長の野望 Online」と「三國志 Battlefield」の開発部門としてソフトウェア4部がスタートした。 この時点では、ソフトウェア4部内に運営チームを置いていたが、その後、「大航海時代 Online」、「真・三國無双BB」など、複数の新タイトルが追加されていくにつれて、運営の比重も飛躍的に増大していった。そこで運営のクオリティの維持、向上を目的として、2006年10月、当時ソフトウェア4部部長だった松原健二氏が開発と運営をわけ、運営チームをゲームシティ事業部に移管させる決断を下した。 この結果、開発、運営本来の業務に集中できるようになった反面、それぞれ入居しているビルが異なることもあり、今度は縦割りの弊害が生まれ始めていた。それならばということで、すべてを一箇所にまとめるための器として用意されたのがコーエージェミニということになる。 こうした枠組みの改良が功を奏したのか、2007年3月期の決算では、オンライン課金・携帯事業は87.7%増と、全分野の中でもっとも高い成長率を示した。また、オンライン事業の主戦場であるアジア地域でも59.2%増の成長ぶりを示し、売り上げ全体の占める割合も、前年の12%から25%にまで増大している。コーエーの中でオンラインゲーム事業が名実共に重要なビジネスになりつつある。
今後、オンラインゲーム事業部として完全に統合されるのかどうかは「松原ら経営陣が決めること(藤重氏)」と不明瞭だが、現時点でオンラインゲーム開発がソフトウェア4部とKoei Entertainment Singapore Pte.Ltd.とにわかれ、ゲームシティ事業部もポータル事業に加えて、オンラインゲーム運営、モバイル事業とその業務内容が複雑化、多様化してきているところをふまえると、6月21日の松原新社長就任以降、新たな改革が行なわれる可能性もありそうだ。引き続き今後の動向に注目していきたいところだ。 ■ 入り口は豪華、中身はシンプル。コーエーのオンライン事業の本丸を覗く
まず、1階は、無人の受付と打ち合わせスペースになっている。入り口正面は銀色の壁に銀色のメーカーロゴ、そのすぐ側には、金とプラチナの鷲の像があるなど豪華な雰囲気。エレベーターに繋がる細い廊下を進むと、分別用ゴミ箱の穴が並び、その隣の小部屋にはパンとドリンクの自販機があるだけというシンプルな構造になっている。 エレベータで4階へ。4階は、ゲームシティ事業部のオンラインゲーム運営課とネットワーク企画課が入っている。モバイル部門は、コーエー第2ビルに残留している。運営課は文字通り、各タイトルの運営を行なう部署で、開発とは別にQA(品質管理)チームも備えている。ネットワーク企画課は、GAMECITYのポータル事業全般やオンラインタイトルの公式サイトの更新を行なう部署。ちなみにオンラインゲーム以外のコンシューマゲームやPCゲームの公式サイトは、広報等を行なうSP部の担当となるようだ。 4階には屋上に上る階段があり、屋上はスタッフの休憩所兼喫煙所になっている。高台にある建物の屋上だけあって見晴らしが抜群に良く、コーエー本社の長細い社屋も一望できる。 階段を下りて3階へ。3階と2階はソフトウェア4部の根城となっており、「信長の野望 Online」、「大航海時代 Online」、「真・三國無双BB」、その他新規事業を担当する開発スタッフが、2階と3階に配置されている。コーエージェミニにいるのは企画とプログラムのスタッフだけで、グラフィックスはCGチームとして独立しており、ここには入っていない。なお、2階には開発のほかに、社内のインフラを担当する技術支援部もある。
4フロア合わせて200名程度の座席が確認できたが、空席もあり、まだ余裕があった。現在開発中の次期主力タイトル「三國志 Online」は、開発はシンガポール子会社のKoei Entertainment Singaporeの担当だが、運営はGAMECITY事業部となる。今後、βテスト開始に合わせて人員を増強するとしているが、1年後には倍ぐらいの規模になっていてもおかしくないと感じられた。
■ 今期の目標は「三國志 Online」の成功と既存タイトルの活性化
まず、今期の目標については「『三國志 Online』を成功させること。同時に『大航海時代 Online』、『信長の野望 Online』の活性化(渥美氏)」と明快な回答を頂いた。 具体的な戦略としては、6月29日、30日の両日に「三國志 Online」の合戦テストを実施する。現在公式サイトを通じて3,000名のテスターの募集を行なっており、クローズドβテスターの約2万人と合わせて23,000人を対象に、大規模対人戦「合戦」にフォーカスを当てたテストプレイを実施する。夏には第2次クローズドβテストを予定。正式サービスまではもうしばらく時間がかかりそうだが、「三國志 Online」コーエージェミニでいよいよ本始動といったところだろうか。 また、「大航海時代 Online」でも新しい試みを行なう。同作は、7月15日に、次期拡張ディスクの記者発表会を開催する。という情報を明らかにしていることからもわかるように、対象はメディアだけでなく、一般のユーザーも100名を招待する。ユーザーに対して、開発中の最新映像をいち早く紹介し、ブログやファンサイト等を通じて、コミュニティと情報を共有して貰おうという考えだ。 これまでゲームで一番大事な「開発コンセプト」は、メディアのインタビューや発表会レポート等を通じて間接的に伝えられることが通例だったが、ユーザーに直にメッセージを伝えるという考え方であり、オンラインゲームならではのアプローチと言える。コーエーは、オンラインゲームのイベントに対する取り組み方は、オンラインにいる、つまり課金しているユーザーに対する満足度の向上を目的として行なわれていた。結果としてオンラインイベントが主体となっていたが、「大航海時代 Online」の発表会でユーザーを呼ぶという試みは、イベントポリシーの変化を感じさせる。 気になる「大航海時代 Online」の拡張パックの中身については「発表会をお楽しみに(渥美氏)」ということだが、14日からティザーサイトをオープンし、発表会まで数回にわけて少しずつ情報を公開していくという。そのほか、「真・三國無双BB」も拡張ディスクを開発中で、大規模アップデート「Evolution 3」や1周年記念イベントの準備も進めているということだ。
今回、オンラインゲーム事業の要となるポータルとしてのGAMECITY戦略について、具体的な話が伺えなかったのは残念だが、担当役員である松原氏が6月21日に社長就任を控えていることもあり、GAMECITY事業戦略についてはまた機会を改めて取材するつもりだ。
□コーエーのホームページ (2007年6月14日) [Reported by 中村聖司]
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