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「Game Tools & Middleware Forum 2007 TOKYO」開催される
SCEJやマイクロソフトなどゲーム開発メーカーがセミナーを実施

6月1日 開催

会場:ベルサール神田

 ゲーム開発などで使用されるツールやミドルウェアを取り扱っている5社はツールとミドルウェアの総合展示会「Game Tool & Middleware Forum 2007」を、大阪で5月31日に、東京では6月1日にそれそれ実施した。共催しているのは、株式会社ウェブテクノロジ、オートデスク株式会社、シリコンスタジオ株式会社、ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社、株式会社ボーンデジタルの5社。このほかにも株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント、日本ヒューレット・パッカード株式会社、マイクロソフト株式会社の3社が協賛会社としてブース出展などで参加した。

 「Game Tools & Middleware Forum」は、毎年この時期に開催されているイベントで、これまでは各社のブース出展が中心だった。今年はブース出展もこれまで通り行なわれたが、セミナーがこれまで以上に充実しており、マイクロソフト、SCEJ、イニス、カプコン、セガといったメーカー各社がセミナーを行ない、現場レベルでの各種ツールの使用例や製作過程を披露した。

 最近では、技術などを共有することで、製作過程におけるクリエイティビティの向上を図ろうとする動きが各社で盛んになり、GDCやCEDECといったイベントに注目が集まっている。今回のイベントもセミナーに人気が集中し、多くのセミナーで満員となった。また、セミナー会場の合間にはゆったりとした時間が取られ、その間にブースを見てもらおうというシステムで、ブース会場も混雑気味だった。

 総じて活況であったが、基本的にオープンなイベントであり、来場者の中にはデベロッパー各社とライセンス契約を結んでいない参加者もおり、セミナーもより突っ込んだ内容までは踏み込めないため、従来の情報をまとめた内容が多かったのは若干残念だった。また、40分という時間は思ったより短く、駆け足になりがちなのも残念なところ。もちろん講義に興味を持てば、隣のブースでより突っ込んだ質問をぶつけることもできるので、イベントの趣旨としては正しいのかもしれない。

 セミナーでは、イニスによる「燃えろ! 熱血リズム魂 押忍! 闘え! 応援団2」の事例紹介や、セガの「ファンタシースターユニバース」を開発したスタッフによるダンジョンエディターの導入事例やキャラクタ制作の事例などが特に人気を集めていたようだ。

 通例のイベントとなりつつある「Game Tools & Middleware Forum 2007」。来年の開催は未定だが、この活況ぶりを見ていると期待したいところであり、開発者の皆さんはぜひとも注目していただきたい。

第1回目に開催さたソニー・コンピュータエンタテインメントのセミナー修了後の展示会場。会議室の1室だったが、非常に多くの来場者で賑わった ウェブテクノロジのブース。デモを行ないながらソフトのプレゼンを行なっていた 同じくウェブテクノロジのブースでは先日発表されたばかりのバグトラッキングシステム「TestingStudio Ver2.0」も出展されていた
ソニー・コンピュータエンタテインメントのブース。従来のゲームと次世代ゲームの違いのひとつとして、同社が重要視する物理計算の導入に関するデモ(写真左)。SIXAXISを使用し、デモプログラムで遊べるようになっていた。そしてSN Systemsのプレイステーション 3用開発ツールのデモノンストレーションも行なわれていた (写真右) マイクロソフトのブースでは「XNA」をプッシュ。ソースレベルで公開されている「Racing Game」をXbox 360とWindowsでデモしていた。両方ともほとんど同じように見える
ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社のブースでもどれほどの効果が体感できるのか、デモを実施して来場者に効果をアピール シリコンスタジオのブースにおいて、アニメーション技術「Motion Portrait」のデモを実施。このほかにも統合開発環境を提供する「ALCHEMY」などを出展 オートデスクのブース。HP製のワークステーションでAutodesk Maya 8.5、3ds Max、Motion Builderなどのデモを見ることができた


 SCEJのセミナー「SCEの最新技術紹介」では、同社のソフトウェア・プラットフォーム開発本部、副本部長の豊禎治氏がプレイステーション 3のソフト開発について解説した。

 まず取り上げられたのが3月のGDCで発表された「PLAYSTATION EDGE」。ソニー製のプレイステーション 3専用フレームワークで、ファーストパーティの技術をサードパーティにも広めることが目的と説明し、すでに活用されていると続けた。「PLAYSTATION EDGE」では、SPUによるジオメトリ処理、SPUによるアニメーションシステム、SPUによる圧縮データの解凍処理、グラフィックスをチューニングする「GCM Replay」などが提供される。

 続いての話題については、まずは「次世代機で重要なのはなにか?」という問いかけからスタート。これまでのゲームとこれからのゲームとの違いはどこにあるのかと豊氏は自問しているという。氏の答えとしては「グラフィックスはかなりのレベルまで到達しているが、インタラクティブな動きはまだまだ不十分。これを改善するひとつの技術が物理演算」ということで、Physicsをアピールした。Physicsはパフォーマンスを喰うので、パソコンや従来のゲーム機では難しかったといい、次世代機で採用することでゲームが変わるとコメント。さらにPS3のSIXAXISとの相性も良いとした。

 最後に解説したのは、低予算でゲームを作成できるとして解説された「PSSG」。ゲームの制作コストが高騰しているのは事実で、これにより制作過程で冒険することができないといった声が現場サイドから聞こえてくるという。ここで「PSSG」を使用することで低価格でより冒険的なソフトウェアを作って欲しいとしている。ソースコードレベルで公開され、Windowsで制作し動作したソフトをPS3に比較的容易に持ってくることができるという。日本でも先日リリースされた「flOw」や、米国ではすでにリリースされている「Grip Shift」などは「PSSG」で制作されている。

 SCEJのブースでも簡単に遊べるPhysicsのデモなどが展示されており、注目を集めていた。



 イニスの開発事例の紹介セミナーでは発売されたばかりの「燃えろ! 熱血リズム魂 押忍! 闘え! 応援団2」のデータを使用しながら開発過程を説明していった。

 同作はリズムゲームだが、ゲームの結果によってストーリーが分岐する。またリズムゲーム中にはデモも挿入され、そういった意味でも大量のグラフィックスデータが必要となった。同社によれば1,800カット、8千枚以上のグラフィックスデータを用意する必要があり、これらのクオリティを保つのは並々ならぬ苦労があったようだ。

 制作過程としてはシナリオが作成され、続いて絵コンテを作成。ここで大まかなカット数などが決定となる。そしてレイアウトの作成。これは大量の作画データのクオリティを保つため、スタッフのコンセンサスをとるために必要だったという。さらにモーションコンテで、レイアウトを使用し動画を作成してみる作業が入る。動画で見てみないとおもしろいかどうかわからず、実際にこのモーションコンテでボツになることもあったとか。

 そしていよいよ作画作業、オーサリングとなる。オーサリングではPhotoShopによる作業のあと「OPTIPiX iMageStudio」による減色作業となる。同作はリズムゲームであるために、全体の容量の半分が音データで構成されている。このため、グラフィックスデータは極力容量を小さくせざるを得ない。ここで役に立ったのがウェブテクノロジの「OPTIPiX iMageStudio」だったという。セミナーでは具体的な作業経過を詳しく説明。現場の方にとっては参考になったことと思う。

 オーサリングは任天堂のツール、Directorを使用して作り上げられ、実機プレビューを経て完成となる。同社ではどうやったら綺麗に減色できるのかということで、かなりの試行錯誤を行なったという。また、できる限りの効率化の工夫がされている。セミナーでは様々なアイディアが説明の端々にちりばめられていた。来場者にも大変参考になったのではないだろうか。



 マイクロソフトのセミナーではXNAの解説が行なわれた。XNAどういった構造になっているのかといった基本的な部分から話がスタート。様々な場で同社はXNAについての啓蒙を行なっている。

 今回のセミナーでは、投石機で石を投げるという簡単なプログラムを、まずはWindows上で実行。まったく同じ構成でXbox 360上でも動かしてみせた。1行の変化も加えずにすぐに動作するという点をアピール。ちなみにブースではより高度なカーレースゲーム「Racing Game」が動作していた。基本的に市販のレースゲームと遜色ないゲームだが、WindowsとXbox 360のソースコードでは95%が同じだという。つまり移植は本当に楽だということが言える。

 これだけではなく、スタッフの少なさにも驚かされる。前述の「Racing Game」は、メインで携わっていたのが1人、グラフィックスやサウンドなどを手がけたデザイナー<が3人で制作され、数週間でほとんど形となったという。

 セミナーを担当したXbox事業本部ゲームデベロッパー部XNA Teamの鈴木悠氏は、「新しいことにチャレンジして欲しい」とコメントし締めくくった。



 最後に行なわれたのは、セガによる「ファンタシースターユニバース」の制作事例。ここで紹介されたのは、「キャラクタメイクシステム」と「ダンジョンエディター」の紹介。

 同作の「キャラクタメイクシステム」の特徴のひとつが、ユーザーが体型を調整でき、肌や髪、リップなど色の一部を変更することができる点にある。キャラクタメイキングで体型などをモーフィングさせてユーザーが調節できるわけだが、実際にはモーフィングデータが流れていて、フレーム単位でキャラクタが登録されており、選択された位置のキャラクタを持ってくるのだという。逆に言えば、膨大な数の組み合わせが必要となる。

 ここで、色バリエーションをデザイナーが容易に作成でき、なおかつクオリティのばらつきを抑制するアイディアが必要だったという。今回のセミナーではツールを有効活用することなどでこの難局を乗り切ったという。

 もう一つの「ダンジョンエディター」だが、同作ではひとり用とマルチプレイによってマップが変わるため、多数のマップを作成する必要性からマップエディタの導入を決定。プログラマによるエディタの制作時間は、動くレベルのものができあがるまで3カ月程度という(それも専任ではない)。

 導入結果としては多くのステージが制作でき、未経験者でもマップの作成ができ、当初の目標は達成できたという。しかしながら、修正確認に手間がかかり、デザイナーの負担が大きくなったという。またプログラマのサポートが必要で、拘束時間が長くなってしまった。こういった反省点も踏まえ、今後も挑戦していきたいという。

ダンジョンエディター左はダンジョンを制作中の画面で、森を指定しペンツールで書いていくと木が壁に見立てられてマップが作成されていく。右写真は、作成後にどのようなダンジョンに仕上がっているかを、チェックしているところ。視点を変更でき周りを見渡せ、背景などに不都合がないかチェックできる


□「Game Tool & Middleware Forum 2007」のページ
http://www.webtech.co.jp/gtmf2007/
□ウェブテクノロジのホームページ
http://www.webtech.co.jp/
□オートデスクのホームページ
http://www.autodesk.co.jp/
□シリコンスタジオのホームページ
http://www.siliconstudio.co.jp/
□ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスのホームページ
http://www.dolby.co.jp/
□ボーンデジタルのホームページ
http://www.borndigital.co.jp/
□「Game Tools & Middleware Forum 2007」のページ
http://www.webtech.co.jp/gtmf2007/
□関連情報
【4月27日】ツール・ミドルウェアメーカー5社が総合展示会を開催
SCEやマイクロソフトなども開発者向けセミナーを実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070427/gtamf.htm

(2007年6月1日)

[Reported by 船津稔]



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