【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

特別鼎談企画

オンラインゲームパブリッシャー3社長特別座談会(前編)
“ナナロク世代三羽烏”がオンゲービジネスの次の1手を語る

5月収録



 オンラインゲーム業界は、横の繋がりが深いと言われる。新しい業界であり、先行者利益以外の勝つためのセオリーが存在せず、顧客層も似通い、悩みも共通している。コンシューマゲーム市場に目を向けると、年輪を重ねたいくつもの巨樹がそびえ、仰ぎ見るような立場から、同じ土俵でビジネスを展開していかなければならないという点でも同じだ。

 こうした事情から、いつから始まったのかは不明だが、日本のオンラインゲームパブリッシャー同士で定期的に情報交換会がもたれるようになっているという。この席にメディアが参加したらおもしろいのではないか、というのが今回の企画のそもそもの発端である。また、ユーザーにとっても、そのメーカーの舵取りを行なうトップの発言を知ることで、個々のオンラインゲームパブリッシャーの方向性と、業界全体の流れを知ることができるという点で、大きなメリットがあると考えた。

 今回、鼎談に参加していただいたのはELEVEN-UP代表取締役社長 片山崇氏、ハイファイブ・エンターテインメント代表取締役社長 澤紫臣氏、GMO Games代表取締役社長 村岡総仁氏の3名。この3人はいわゆるナナロク世代(俗に'76年前後に生まれたネット起業家を指す)の社長であり、独立系の日本のオンラインゲーム会社を牽引しているという点が共通している。3人は人づてで知り合い、同業として意気投合し、定期的に会合を重ねる仲だという。

 長い鼎談記事になったため、前後編にわけて掲載する。前編では、3人の馴れ初めから、現在やっているゲームなど雑談レベルの内容から、そこから転じて携帯ゲーム事情や、「オンラインゲームの三重苦」など、徐々にオンラインゲームビジネスについて話し合っている。後編では、オンラインゲーム運営の秘話や、独立系としてのゲームポータルとのつきあい方、ビジネスモデル、人材育成などをテーマに活発な議論を行なった。明快な結論が生まれたわけではないが、示唆に富む話題がふんだんに散りばめられている。オンラインゲームファン必見の座談会である。


■ 今やっているゲームは全員「携帯ゲーム」。携帯型ゲームコンテンツとの向き合い方

編集部 中村聖司: 本日はざっくばらんにオンラインゲーム市場の今日と明日を大いに語っていただければと思います。特定のコンテンツの話ではなくて、オンラインゲームパブリッシャーのトップとして、経営者の視点から語ってください。皆さんは、ナナロク世代繋がりということですが、まずは3人の馴れ初めからお話しいただきましょうか。

ELEVEN-UP代表取締役社長 片山崇氏。序盤は言葉少なだったが、終えてみれば一番喋っていた。熱いモノを胸に秘めた情熱家肌の経営者
ハイファイブ・エンターテインメント代表取締役社長 澤紫臣氏。業界随一のアイデアマンであり、携帯ゲーム機マニアとして有名。とにかく話の引き出しの多い経営者
GMO Games代表取締役社長 村岡総仁氏。今回の鼎談では、同世代らしい昔話と、関西風のツッコミで場を盛り上げてくれた。酒の席の押しの強さは驚くほどだが、実は部下思いの経営者
GMO Games村岡総仁氏: この3人だけで集まるのは実はこれが2回目なんです。たまたま歳が近くて、それで意気投合して。

ハイファイブ・エンターテインメント澤紫臣氏: これまでは2人2人で個別にという感じなんですけど。

村岡氏: 片山さんとはゲーム業界というよりは友達の友達ですよね。韓国つながりの友人に紹介されたのが片山さんで。

ELEVEN-UP片山崇氏: たまたま業界が一緒だったと。澤さんとは別件ですよね。

澤氏: ハイファイブができる直前ですね。ケスピをやめて何しようかとしていたところで、片山さんに会う機会があったんですよね。そうそう、その前に辞めますって皆さんにメールしたら中村さんから電話が掛かってきたんですよね。

村岡氏: 澤さんとは何が接点でしたっけ?

編: それはよく覚えてますが、私がGMO Gamesの記事の中で村岡さんと澤さんは同世代だと書いたんですよ。そしたら村岡さんが私に澤さんを紹介してくださいといわれて。

村岡氏: 今では澤さんのところのGMとうちのGMで意見交換をやったり、プライベートの話をしたりとかしていますね。直接会ったのは確かプライベートで集まったオンラインゲーム経営者の集いですよね(笑)。

澤氏: そうだと思います。GM同士の交流会って他ではあまりやってないと思います。近いうちにまたやりたいですね。

編: 皆さんは最近どんなゲームをされていますか?

澤氏: 最近はPSPの「機動戦士ガンダムSEED 連合vs. Z.A.F.T. PORTABLE」をやっています。

村岡氏: この前に渋谷で待ち合わせしていたんですよ。それで先に待っていてもらっていたのですが、マークシティの下で澤さんがPSPをピコピコやっているんです。

澤氏: それはキューエンタテインメントさんから貰った「ルミネスII」をやってたんですよ。

村岡氏: 「ヤバッ、PCオンラインゲームの社長が携帯型ゲーム機やっている」って思ったんです。実際には僕もやってますが(笑)。

片山氏: そりゃーやりますよ(笑)。

村岡氏: PCオンラインゲームってPCの前にいないとできないじゃないですか。でも携帯ゲームはどこでもできる。当たり前のことだけど怖いなって思いましたね。

澤氏: 僕は隙間の時間を使って携帯型ゲーム機ですね。DSやPSPは大好きで、あまった時間でちょっと何かあるとパッとカバンから出して。「何でそんな1分2分の隙にやっているの」と言われます。眠れないときは枕元に充電器を置いて、眠くなるまでやっていますね。

村岡氏: 携帯電話でゲームはやらないのですか。

澤氏: 携帯電話でゲームはやらないですね。やっぱり十字キーが無いとね。今使っている携帯電話には十字キーがないんですよ。それよりも今はPSPですね。

編: 村岡さんはいかがですか。

村岡氏: 昔からパソコンゲームが大好きなんですよ。中学1年の時に全国模擬試験で5位以内に入ったら買ってやると言われて、当時PC9801-RX2を買って貰ったのがきっかけです。「ブランディッシュ」とかにハマっていました。オンラインゲームでは「Starcraft」とかですね。韓国では今でもTVで実況中継をやっていますね。韓国に2001年頃に行って、オンラインゲームの実況中継をやっていて、ロボットみたいなスーツを着たプレーヤー同士の対決を解説者が熱く解説しているのです。最初は理解できなかったのですが、やってみるとすごく楽しくて(笑)。

編: 片山さんはいかがですか。

片山氏: 忙しくてあまり時間は割けないのですが、年明けくらいまではDSやっていましたね。「三国志大戦DS」です。

澤氏: 僕の「三国志大戦DS」は手付かずですよ。チュートリアルで負けちゃって、コノヤローって。普通の人なら勝てるんだろうけど、僕にはダメなんだなって(笑)。

片山氏: 今は「逆転裁判」の携帯電話版ですかね。

村岡氏: 携帯電話のゲームでいったら「天地を喰らうII」です。昔アーケード版をやっていて、懐かしくてまたやっているんですよ。

編: やはり忙しいビジネスマンは、最終的にどうしても携帯型ゲーム機や携帯ゲームになりますね。

片山氏: でも、PC向けのビジネスをやっているので、「じゃPCはどうするの?」ということは考えますよね。トレンドとしてはカジュアルなサービスを僕らも考えていかなければならないのですが、この携帯の手軽さには対抗できないなと思うところもあります。

村岡氏: そのアプローチは本当に必要ですよね。PCだけでなく、携帯でも経験値が貰えるミニワールドを作ったり。社会人や学生でもそうですが早く家に帰りたい、「コルムオンライン」でバトルダンジョンに参加したい、ギルドハンティングに参加したいというのがあります。どうしても会社であったり、学校であったりで、PCにむかえない時間がそれなりにあると、社会生活の隙間の時間を携帯ゲームで埋められるといいですよね。


■ 携帯ゲーム事業に参入しない理由と携帯プラットフォームの可能性

編: ただ、3社とも携帯コンテンツそのものには参入されていないですよね。やはりPCオンラインゲームからは遠いのでしょうか。

携帯電話を肴に携帯ゲーム話で盛り上がる3人+筆者
澤氏は、忙しい経営者の立場でありながら、実によくゲームをプレイしている。アーケードまで手を伸ばしているところが澤氏らしい
澤氏: 遠くはないと思いますけどね。たとえばガマニアさんだって自社コンテンツをそのまま携帯でやっているし、あれは良くできているなと思います。

村岡氏: 澤さんのところは開発会社持っているんじゃなかったでしたっけ?

澤氏: ウチはPCだけですね。あと日本のモバイルは特殊に思えてちょっと……。

片山氏: ウチもすごく参入したいのです。事情もあって参入を考えているんですが、携帯ネットワークを通じてネットワークの面白さを伝えるのにはどうしたらいいと考えたときに、何か1つピンと来るものがなくて踏ん切りがつかないのです。

 ネットワークの楽しさを伝えようとしたときにインターフェイスとしての携帯は、「オンラインゲームがメイン、携帯はサブとして何かできます、ミニゲームもあります」という流れになりがちなんですが、それが携帯ゲームの本質ではないと思うんです。ある種パーソナルな端末としてはさっきの「逆転裁判」でもそうですが、1人遊び用のものとしては遊べるし、十分時間も潰せます。それをネットワーク端末として、捉えようとしたときに「うーん」というね。

澤氏: どうしてもPCと連動させたいという方向ばかり考えがちですよね。サーバーのデータベースからキャラクタのデータを読み込んで、みたいなね。

片山氏: 僕はむしろ携帯ネットワークの中だけで何かできないかな、と思うんですが、PCオンラインの方が自由で、やれることが多いですよね。それを携帯に当てはめると、あれできないこれできないと減ってしまう感があってモチベーションが上がってこないですよ。PCと同じ方法論で携帯ゲームを作るのではなくて、携帯端末に合ったもので、なおかつ良さを引き継げる何かということを会社ができてからずっと考えています。

村岡氏: コンシューマ機でも、高グラフィック高ゲーム性で開発費を大量に投入したゲームと、そうでないゲームがあります。オンラインゲームでもそうです。高性能をすごく要求されるゲームもありますが、グラフィック重視ではない2Dものでも流行るというのがあって、何を求めるかというのはお客様お客様の人それぞれなのだろうなと。

澤氏: 結局、PCとMMOの経験しかなく、モバイルのノウハウの蓄積が無いので、明日できるという態勢になっても、正直もうちょっと時間が欲しい(笑)。あとは圏外の問題をどうするか。圏外があると、ラグ対策などでついつい考えが「ターン制」になっちゃうから。

村岡氏: やるとしたら3社とは言わず会社の壁を越えてオンラインゲーム業界全体で何かとかね。単独ではキャリアを持っている片山さんのところが一番早いかなと。

片山氏: グループとしては持っているかもしれませんけど、ELEVEN-UP的には持ってないから(笑)。それに、やるとしたら特定のキャリアだけでやるつもりはないですよ(編注:ELEVEN-UPはソフトバンクグループ)。

編: 展開を見送っているのは、要するにやりたいことができないからだと思いますが、携帯プラットフォームでやりたいことって何なのでしょう?

片山氏: 基本的には人間の輪を広げましょうということです。ダメな輪を広げてもしょうがないのですが、携帯端末でできることもあるだろうし、PC端末でできることもそれぞれあると思うのです。オンラインゲームビジネスって僕は胸を張っていい仕事だと思っているのですよ。

 人間の輪を広げていくというアプローチは、僕らの中でノウハウとしてたまってきているし、それなりの成功体験があるわけです。それを持っている人たちは世の中にはそうはいないよと。DSのネットワーク機能も面白いし、PSPの赤外線の対戦機能も面白い。それで広がっていくネットワークの広がり方もあるのだけど、PCの中で広がっていく広げ方はどうやってできるのだろう、それは僕らが作っていくものだろうな、と。

澤氏: パソコンだと複数アカウントをもって複数の違う自分を演出したりするけど、携帯電話ってモロにアイデンティティだと思うんです。そういうものが一意のIDでネットワークに入れるわけです。この端末でログインするキャラクタが傷つけられると、現実世界で傷つけられたのと似たようなものが付きまとうと思うのですよ。この問題をどうするか。

片山氏: その問題を解決するくらいだったら、現実世界で身近な人と仲良くなるツールの方を考えますね。

村岡氏: そう考えると仲良くなるツールとしてのファミコンて凄かったですよね。今の小学生はどうしているんですかね。

編: DSを持ち寄って、DSを突き合わせて無線対戦ですよね。

村岡氏: 僕はエポックさんのスーパーカセットビジョンに思い出があります。ファミコンを買いに行ったら1,000円足りなくて、値引きして貰ったカセットビジョンを買いました。小学校でファミコンのカセットの貸し合いとかしているのに、スーパーカセットビジョンは人気がなくって、貸し借りする相手がいないの(笑)。新しいのは出ないし。友達は「何それ?」って感じで……。それを言うと中村さんがおっしゃられた「持ち寄って」というのはなるほどと思いました。人と人とを結びつけるハブ的な役割のプラットフォームがいつの世も常に必要とされているんですね。

澤氏: 今の流れはネットワークに繋がっていても、見える人話せる人は、指定した人だけって感じですよね。DSもそうだし、WiiにMiiってあるでしょう? 招待した知り合いだけ連れて来れますよね。知った顔、という安心感の範囲というか。

村岡氏: 韓国では、ゲームがアイデンティティを作るという側面があります。ネットカフェにはWebカメラまであるんですよ。フルネームや顔写真、携帯電話とか全部公開してしまうんです。韓国は国民総背番号制がありますよね。その人はその人以外誰でもないという特定された状況で全部公開するんです。それに比べて日本では、結構匿名性でリアルな名前は出したくないと。国によって考え方は違いますよね。

編: 韓国のブログを見ると、顔から何から全部出していますよね。日本とはまるっきり文化が違う。

澤氏: ネットゲームに関わる前、もう5年以上前ですが、前ライブチャットのサービスを、韓国のソリューションを持ってきてやろうとしたのですが、向こうの女性誌で「ライブカメラに綺麗に写る化粧の仕方」みたいな記事が出ているのを見て、すごく進んでいるなと思いました。当時、日本でやったらみんな顔を隠して、ダメだこりゃと(笑)。口から上は写さないんですもん。

編: 日本人は、微妙にプライバシーが保護されたセキュアな環境で、安心してオンラインゲームをやりたいのだろうなと思いますね。

澤氏: それはすごく思いますね。セキュアだとコミュニケーションが限られるものですが、その制限の中でもよく考え出しますよね。たとえば「クイズマジックアカデミー」で答えを適当に入れるとかありますよね。タイピングクイズで解答代わりに4文字のメッセージを入れるわけです。問題を読んだ瞬間、もうわかんないというときに、4文字の回答欄だったら「で き ね え」とか入れだすっていう。ほんの数文字の中でもみんなに自分を知らせたい気持ちは働くのだなと。だから、ある程度セキュアにしても面白みは出せるのだろうなと思いますけどね。

片山氏: 今の小学校の子たちが5年10年して大人になっていくわけですが、僕らが生きてきた世代とは違った世代を生きてきていますからね。彼らは生まれた瞬間から携帯電話があります。インターネットもあります。DSはネットワークでつながり、この子たちが大きくなるとどういう大人になるのだろうと。

澤氏: 昔はPHSの20文字制限でいかに情報を伝えようか四苦八苦していましたからね。

村岡氏: 僕が高校生の時は、数字だけしか対応していないポケベルでしたよ。“396”でスクールとか。ポケベル辞典がベストセラーになりましたよね。

編: 今では携帯で大学のレポートを書くこともあるようです、信じられないでしょう? 私は携帯ではさすがに原稿書けないですよ(笑)

村岡氏: 僕は卒論のときにはすでにインターネットがありましたけど、わざわざ図書館にいってOPACで本を検索して、他大学の図書館に行って調べてって、やってましたね。今は、論文などが無数にインターネット上にあるので、簡単なものであればコピペで完成しますので、片手間でできてしまうところがある分、よくもあり悪くもあるところです。

澤氏: 携帯だと保存も怖いですよね、消えてしまいそうで。


■ 今の子供はPCを遊んでいる!? 「オンラインゲームの三重苦」を越えて

編: 「子供が今何をやっているか?」ということに関しては、私もいろいろ聞いたんですが、やっぱりDSという意見が最多数なんですけど、携帯電話を最初に持って、その後に情報ターミナルとしてのPCに手が伸びる。つまり今の子はPCをやっているという意見もよく聞くようになりました。

幼少時にファミコンを買えず、パソコンでゲーム経験を重ねたという村岡氏。その影響がいまの仕事に結びついているようだ
ファミコンを父に壊されて大げんかしたという悲惨なエピソードを持つ片山氏。親が見て合格印を与えるオンラインゲームとはどのようなものなのか
片山氏: 私は子供がいないので、社員の子供さんが一番身近なところです。どうやら最初に携帯電話を持ちたがるのだそうです。その次にPCにいくのです。触ると動くというインターフェイスがあるものから順に、すごく触りたがるのです。アメリカでもいま面白いサービスがあると聞きました。ぬいぐるみにシリアルナンバーが入っていて、それをWeb上のホームページに入れてあげると、そのぬいぐるみの子がFlashでそこに出てくるのです。ほっといたら頭ぼさぼさになったりとかね、ポストペットとたまごっちを足した感じですよ。

 ちゃんとしているなと思ったのが、ペアレントIDを発行できるので、お父さんが一緒に遊んであげられるのです。おそらく人形のIDを入力するのは子供ではないのですよ。親が入れてあげて一緒に遊ぶと。そういう文化がいいのですよ。アメリカはパソコンの国だなとすごく刺激を受けました。「Webkinz」というサービスです。コンカレントで80万人いるそうです。正直コンテンツとしてはチープもチープなのだけど、子供向けには良いですよね。

編: そういう意味でPCで子供向けのサービスって実はあまり無いですよね。

片山氏: 僕らも最近気をつけなければならないのは、まずはビジネスモデルから入りますよね。(周りの反応を伺って)でしょでしょ?(笑)。それは良くないなと。それよりも何よりも、子供がいないのにこんなことを言うのは生意気なのだけど、親から見て子供に遊ばせて上げたいというサービスを作るのが1つのテーマとしてやりがいがあるなと。

村岡氏: 子供の頃はゲームは頭悪くなるからやるな、と言われましたよね。今でもか(笑)。

片山氏: 俺の親父は、俺がゲームをやりすぎて、それで怒ってハサミをぶすーってファミコンに突き刺したのですよ。あの瞬間が人生で一番親父と喧嘩した瞬間ですね(笑)。

村岡氏: 最近のDSプラットフォームに勉強できるものが増えました。あれってすごくいいなと思いました。新しい文化を創っていますよね。

編: IGDA日本代表の新さんと何かの懇親会で話をしたら、最近は子供の教育にDSを使ってると言ってました。DSをやりたがる子供に対して、何時間知育系ソフトをやれば、好きなゲームを30分遊んでいいよということをやっているみたいです。

村岡氏: なるほど。僕らの時代は教育とゲームは相反するものではないですか。それは本当にすごいな。

片山氏: 任天堂さんから僕らは間接的にすごく恩恵を受けてますよね。ネットワークに対するポジティブさ、ゲームに対するポジティブさが、DSを通じてものすごくあがりました。僕らもうまくそれに乗っからないといけないですよね。

村岡氏: 仕事柄、家には当たり前のようにパソコンがあると思いこんでいますが、実際に小学生や中学生が今どれだけPCを触れる環境にあるのか? その辺DSであれば手軽に使えるし、ソフトも安いではないですか。ファミコンの時代は、ゲームソフトが1万何千円もしていたり、ファミコンが売れすぎてパッケージでソフトと抱き合わせのみとかそういう時代でした。それから考えると、今はDSで勉強もできるしゲームもできるし。知らない国に知らない友達もできますしね。いい時代になりましたよね。

編: そうした時代に、PCオンラインゲームで頑張りましょうという3社が集まっていますので、「じゃあ、どうするのか」という話を聞かせてください。

澤氏: コンシューマゲームのノウハウがどのようにオンラインに対応されていくかということに注目しています。たとえば、カプコンさんの「モンスターハンターフロンティア」は、すごく日本人のPSやファミコンをやっていた世代にぴったりのやり方を出してきています。PCから入ってきている我々に取ってみると、なんでPCなのかというと、いろんな意味で自由だからですよね。片やコンシューマゲームは、先ほどのMiiではありませんが、情操教育的な部分を守りながらセキュアな状態でやっていくアプローチです。

編: Xbox 360をプレイすると誠に実感しますが、コミュニケーション機能は今やコンシューマの方が優れていると感じます。きわめてシームレスかつ自然ですよね。

澤氏: ええ、さくっとやれてしまう。簡単だと思いました。弊社では「オンラインゲームの三重苦」と呼んでいるものがあるんですが、ID登録、ダウンロード、インストールです。コンシューマに慣れた人からすると、ID登録からして、もう意味がわからないのです。コンシューマゲームをやると、ゲームの真ん中に立っているのは必ず自分のキャラクタです。それなのにオンラインゲームになると、見た目は同じなのに、なんでIDとパスワードを入れないと自分を特定できないのかという理屈です。そのとおりなんですよね。

村岡氏: 「Second Life」をみんながやっているので登録してみましたが、登録も大変だし、名前も勝手に決められてしまうし、最初すごく戸惑いました。ログインできても何なんだろうと感じてしまったので。いかに手軽にできるかと、わかりやすさは絶対に必要だなと。「ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン(LOTRO)」のチュートリアルのように、パッと触ってパッと感覚的に面白いなと掴めないとダメだなと思います。

澤氏: 僕も「LOTRO」をやってみたんですが、躓いたところがちょっとあって、LieVoさんのサイトでこのゲームを登録するという作業をやらないと、IDを入れてもすぐにはプレイできなかったんですよね。なんで繋げないのか、文章を読むまでわからなくって。たとえばUSBメモリの中にゲームが入っていて、IDもパスも入っていて、挿せばすぐ遊べちゃうぐらいのものにしていかないとマズいんじゃないかなって思いました。

 あと、先日、弊社で「アドクエ」を始めたのですが、ゲームよりも広告の手続きの方が遙かに複雑でした(笑)。だから、ログインも全部フリーにしてしまおうかなと。そうなると本当に「どこでお金とるの?」という感じなのですが(笑)。うちの総務部長が50歳代なのですが、1回登録の手続きを乗り越えたら、もう僕よりレベル高くなっているんですよ。毎日帰る前に少しずつ進めているみたいで、失礼な話、普通のおっさんなのですが、「ただでできるなら面白いわ」とやっています。無料であることが敷居を下げられているのは間違いないと思うんですよね。

村岡氏: それは良いヒントになると思います。今50代とおっしゃいましたが、基本無料のゲームが流行っているなかで、自社のゲームだし、試しにやってみると面白いと。今は10代後半、20代のユーザーが多いですが、50代の人がやってみればはまっていただける可能性もあるというわけですよね。

澤氏: 「2007年問題」ではありませんが、定年退職されてパソコンを始められる方も多いと聞きますし、基本無料の敷居の低さで何かが変わってくると良いと思います。


■ なぜ「PC」なのか!? ゲームプラットフォームとしてのPCの可能性

大いにPCの必然性を説く片山氏。どちらかというと寡黙なイメージだったが、驚くほど熱いモノを宿した経営者だ
村岡氏の関西仕込みのツッコミに耐えられず、飲み物をこぼしそうになる片山氏(笑)。天性のものが感じられる
片山氏: PCゲーム業界にいて、なんでPCなのですかとよく聞かれます。同じ業界にいるとそんな質問は無いのですが、違う業界の人と話すと「今DS売れていますよね、どうしてPCを?」とよく言われます。PCをやるのは色々な理由はあるのですが、PCゲーム業界の凄いことはいろいろなことが無料でできることです。

 いろいろな問題もあるけど、タダで最初は入れるということで、ハードルは下がっているはずなんです。ID登録などの手間のハードルを下げるという方法論も重要なのですが、無料でサービスを始められるのはすごいことだなと。ロムを売ってる人たちはロムをタダでは配れない、やろうと思ってもなかなかできないだろうと。オンラインゲーム市場のブレイクポイントって、無料化が貢献していると思うのです。

村岡氏: 片山さんに加えて、インターネットが何でこんなに普及したのか、という問いへの答えがPCをやっている理由に近いですね。オンラインゲームってまったく別の場所にいる人に会えるというサービスで、インターネットが無ければ僕らのこの産業は成り立たなかったのですよ。今後は、コンシューマ機からアクセスして、ということはあると思いますが、「今何でPCなの?」と聞かれたら、インターネットが「リアルでしか会えない人」という枠を超えてコミュニティを形成できるからだと思うんです。

編: メディアの視点から言うと、今も昔もPCゲームしかやらない層というのが存在するんです。「DSやPS3はイヤで、PCがいい」という。私も十数年PCゲームと付き合ってきて、それって何故だろうと思うんですが、やっぱりマルチタスクが良いのですよね。たとえば、ウィンドウ表示でオンラインゲームをやりつつ、Webブラウザで攻略情報を見ながら、その他メッセンジャーやIRCとかでゲーム外の人と情報交換する。ALT+Tabでアクティブウィンドウを次々に切り替えつつ、オンラインゲームを含めたさまざまなデジタルエンターテインメントにアクセスする。この空間丸ごと全部が「楽しい」んだと思うんです。

片山氏: そうなんですよね。この前の飲み会でも言っていたんですが、横連携なのですよ。ゲームだけという捉え方ではなくて、横との繋がりなのですよ。サービスのシェアリングをしましょうと。現代人は何かひとつに没入する時間がどんどん短くなってきていると思うのです。僕ね、面白い話を聞きました。「24」(編注:アメリカの人気テレビドラマ)の製作手法を教えてもらったのです。同時進行でいろいろな事件がパラレルに起きているっていうのは、いま中村さんが言ったPCが好きというユーザー層の思考とすごく近い。

 パソコンがインターネットに繋がった瞬間、爆発的に色々なところに繋がるようになっている。これがインターネットと出会って面白いと思った理由だし、横連携ってそういうことかなと思います。うまい言い方が見つからないけど、それをお金を払わなければできないということではなくて、自分の好きなようにカスタマイズできつつもタダなものもあって、さらに楽しいと。誰のパソコンを見ても、同じデスクトップなんて1つも無いわけです。パーソナルな時代なのです。Googleの使い方だって十人十色ですよ。Web2.0という言葉でひとくくりにしてしまうのは好きではないけど、そういう時代でしょ、と。

 そういう時代の中でオンラインゲーム事業をサービスしている我々はそこに合わせていかなければいけないし、それこそがユーザーのリクエストなわけではないですか。オンラインサービスは、ユーザーさんにとってもっとカジュアルな存在であるべきです。三重苦もそうです。ユーザーさんに手間隙かけさせてはいけない、それに尽きるよねと。各社協力・横連携というのは、ユーザーさんが望むことをできるようにするのが僕らの義務であり仕事です。まあ、どこの会社も一緒だと思うのですけど、ユーザーの内側にどんな要求があって、ということが一番大事です。その要望が減っていたら焦りますよね。要望が減るっていうのは、たとえるなら女の子にフラれる前の状況ですよね。

村岡氏: フラれたことあるのですか?

片山氏: ありますけど(笑)、メールの件数が減ってきたとかそういう予兆がありますよね。そこを見て常にリクエストにお答えしていくということですよね。

澤氏: 好きだからこその物言いってあるよね(笑)。

村岡氏: 弊社のユーザーにも、生活の中心が「コルムオンライン」という人がいらっしゃるんです。例えばどの運営会社さんもポリシーとして、いただいたメールは1週間以内で返します、2週間以内で返しますといったものは規定されていると思うのですが、そういう人は「すぐにでも返して欲しい」、「10分以内に返して欲しい」、「昨日ギルドのメンバーと約束したのにログインできない」、「週に1度しかできないのに、なんで俺のパソコンからログインできないのだ」と。早く直してよという気持ちの人がいるんです。ユーザーさんの気持ちは痛いほど良くわかる。本当に10分、20分単位で送ってくださるかたもいらっしゃいますよね。だからこそ企業として、運営チームとしてユーザーサポートをもっと強化していきたいな、という気持ちは強くあります。

編: 横の繋がりについてですが、インターネットはフラットな存在ですから、必ず圧倒的勝者が生まれ、そこに過半数の人が集まるような状態になります。最近オンラインゲームでは、SNSやブログを用意しますというあれもこれもという例が増えてますが、実際は使われていないように思うんですね。ゲーム屋さんにはゲーム1本に集中して欲しいなと思うのです。

澤氏: うちはテニスゲームにSNSを付けようかなと思っています。別にmixiを超えようとは思っていなくて、あくまで1つのツールという位置づけです。

村岡氏: ゲームにインしないとチャットとかできない人がオフのときにやってくれたらいいですよね。

澤氏: 職場だったり学校だったりで昼休みにやっている人がいる。そこのPCにゲームはインストールできないけどメッセージはやりとりしたい、というところですよね。ブラウザさえあればできるという余地を残しておきたい。ゲームに入る理由を外側から作ってあげるという考え方です。

(以下、後編へ)

□ELEVEN-UPのホームページ
http://11up.co.jp/
□ハイファイブ・エンターテインメントのホームページ
http://www.hi5.co.jp/
□GMO Gamesのページ
http://www.gmo.jp/

(2007年5月30日)

[Reported by 中村聖司]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.