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5月19日~20日開催
会場:ソウルオリンピックパーク
この日は各タイトルの有名プロゲーマー8人を世界から招待しての試合で優勝者には10,000米ドル、準優勝には5,000ドルの賞金が贈られた。中でも今回のトーナメントで韓国のユーザーを熱狂させたのが「StarCraft Invitational」の決勝戦だ。「Maestro」のニックネームで呼ばれる強豪Savior選手と、3月に行なわれたリーグ戦でSavior選手を破り最年少チャンピオンとなった現在16歳のBisu選手が戦った。コミュニティの下馬評ではSavior選手が勝つと見られており、第1ラウンドは順調にSavior選手がとったものの、第3ラウンドでは捨て身の短期決戦に臨んだBisu選手が取り、逆転優勝を成し遂げた。
「WarCraft III Invitational」では、フランス人のTod選手がトリッキーな戦略で挑むFov選手に翻弄されながらも逆転で押さえ込み優勝を遂げた。日本では、「SC」の大会はおろか、RTS自体の市場規模が小さいため、なかなかRTSの大会レポートを紹介する機会がないが、韓国ではプロゲーマーたちの活躍により、ゲームとして、またe-Sportsとしてここまで洗練されているということを、両タイトルの決勝戦を通じてご紹介したい。 ■ 「StarCraft Invitational」 第1ラウンド。資源を上手く断ち切ったSavior選手が勝利
最初に仕掛けたのはSavior選手。「Zergling」6機による先制攻撃と同時に資源確保とユニット増産をめざし2つ目のを「Hacthery」を建設。しかし、この「Zergling」による速攻を先読みしていたBisu選手は自軍拠点に「Zealot」1機と「Dragoon」1機を待機させていたのだ。先制攻撃こそ防がれたものの、施設の増設に成功したSavior選手は1歩有利に立つことになった。 一旦膠着状態に入ると、Bisu選手は「Corsair」を利用し偵察を兼ねつつ「Zerg」の「Overlord」狙いをはじめ、さらに「Mutalisk」にも攻撃を加える。陣営の最大ユニット数を左右する「Overlord」への攻撃はかなりの痛手だ。Bisu選手はさらに追い討ちをかけるように「Dark Templar」を準備した。「Dark Templar」はステルス機能が特徴だが、「Overlord」が近くにあると存在がバレてしまう。レーダー代わりの「Overlord」が無くなった今こそがチャンスというわけだ。 これに対しSavior選手は、対地対空攻撃可能な地上ユニット「Hydralisk」を中心に、空中から対地対空攻撃可能な空中ユニット「Mutalisk」、自爆ユニット「Scouge」の3種類の混成部隊でBisu選手の攻撃に対抗する。「Overlord」狙いの「Corsair」に対抗する手だ。しかし、これはSavior選手の思い通りにはならない。Bisu選手の「Corsair」の絶妙なユニットコントロールでそれらの攻撃をことごとく防いでいった。 Bisu選手はさらに追い討ちをかけるべく輸送船「Shuttle」に「High Templar」、「Dark Templar」を乗せて攻め寄せる。資源採集ユニットである「Drone」を倒しに行くことが勝利への第一歩となるわけだ。「Drone」にとって「High Templar」の広範囲に電撃を与えるスキル「Psyonic Storm」は、一撃で仕留められてしまう最大の脅威なのである。 しかし、ストーリーはこれで終わらない。なんとSavior選手は守りにあてた「Hydralisk」でBisu選手の猛攻を最小の損害で切り抜けてしまったのだ。ハイコストのユニットを失ったBisu選手はたまらず「Reaver」、「Corsair」でSalvaior選手の資源元を攻め続ける。Savior選手は最後の猛攻を切り抜けつつ「Gudian」、「Lurker」、「Ultralisk」でBisu選手陣営を攻め立てたのだ。
ギリギリの資源を残して決戦を挑んだBisu選手であったが、最後の一押しを切り抜けられ、手元の資源が底を尽き投了の「GG(Good Game)」宣言。第1ラウンドはSavior選手の勝利となった。 ■ 「StarCraft Invitational」第2ラウンドは、相手の動きを上手く封じたBisu選手の勝利
Savior選手はこれを嫌がり早速壊しに攻め寄せる。「Hydralisk」を送るが、「Photon Canon」付近で「Zealot」、「Dark Templar」で守りが入り、結局「Hydralisk」の損害だけを受ける形になってしまった。 このままではSavior選手は不利な戦いになる。Savior選手は自分自身の高いユニットコントロール能力を信じ「Hydralisk」を再び送る。しかし、Bisu選手は地上ユニットを生産する「Gateway」を増やし、大量の地上ユニットで守りを固めていたのだ。 そこで次の手としてSavior選手は輸送船を利用し、直接ベースにHydraliskとZerglingを送り込むドロップ作戦に出る。しかし、この作戦もBisu選手は読んでいた。なんとドロップポイントを予測し、予め「Photon Cannon」を建設していたのだ。ドロップ場所までぴたりと予測するところはプロのなせる業といったところだ。
Savior選手が三度攻撃に失敗したのを見届けると、Bisu選手は温存した大量のユニットでベースを蹂躙。Savior選手はあえなく投了の「GG」宣言。Bisu選手の初動からの作戦と、Savior選手の読みの甘さで、スコアは1-1のイーブンとなり、試合は最後の第3ラウンドに入った。 ■ 「StarCraft Invitational」第3ラウンド。一瞬の間隙をついた1stラッシュでBisu選手が優勝!!
第3試合は実に予想外の展開になった。過去2ラウンド、双方中・長期戦を睨んだ初期展開を行なってきたが、今回はなんとBisu選手が「先2Gateway」作戦で速攻に出たのだ。地上ユニットを生産する「Gateway」は初期に1つだけ建てておくのが一般的で、偵察で得られる情報に合わせテックツリーを引き上げていくのが中・長期戦を睨んだセオリーだが、「先2Gateway」作戦は、「Gateway」を初期から2個建造し、発展させるコストのすべてを低コストの「Zealot」の生産に回し、序盤に勝負を掛けるというもの。これに失敗することは即負けを意味するリスキーな作戦だ。 だが、Savior選手もすばやくこれを察知。出遅れた「Zealot」2機を「Zergling」で消し去るなど、高い対応能力を見せた。その結果、守備のユニットを蹴散らしSavior選手の陣営に到達したのは「Zealot」5機と資源採集ユニット「Prove」3機、Bisu選手はこれで勝負を決するしかない。 辛うじて生産の追いついたSavior選手の「Zergling」を相手にユニットコントロールの勝負だ。カメラがベース付近に移ると、会場の開発陣やユーザーから物凄い歓声が起きた。Savior選手は「Zergling」数機を1グループにして、「Zealot」を囲むように攻撃をしかけるが、Bisu選手はこれをものすごいユニットコントロールで対処。蛇行する「Zealot」で「Zergling」を引き回しながら絶妙な感覚で他のユニットが「Zergling」を追い攻撃する。これにより最低限の損害で壊滅に成功したのだ。 時間にしてみればほんのわずかな時間だったが、両選手の判断力、瞬発力、繊細なコントロールが高い次元でぶつかり合い、これぞプロゲーマー同士の戦いといえる熱い場面だった。会場の観客の声援も大きなものとなった。 Bisu選手は殆どユニットに傷を負うことなくSavior選手の本拠地に入り、生産施設を壊滅させる。後方では続々と「Zealot」を追加生産して戦線に投入する。Bisu選手の勝利は確定的となり、Savior選手の「GG」宣言を引き出しゲームセット。「Maestro」Savior選手を下し、Bisu選手が優勝を手にした。
■ 「WarCraft III Invitational」勝者Tod選手。序盤の劣勢を覆す波乱の展開
第1ラウンドのマップは「Terenas Stand」。Tod選手が最も得意とするマップだ。10時方向にFov選手、4時方向にTod選手という位置からスタートした。 Tod選手が最初に選んだ英雄は「Archmage」。最近のスタイルとして、対「Undead」戦で「Human」は最初の英雄に「Paladin」を選択し、「Undead」にだけダメージを与える「Holy Light」や一定時間自身を無敵化する「Divine Shield」を使うのがセオリーとなっている。しかし、以前の対戦の際に「Paladin」を用いた戦略でFov選手に敗れた経験からか、対「Undead」への攻撃特化ではなく、ユニット召還や攻撃魔法の得意な「Archmage」を選ぶことで、「Human」の汎用的な戦略をとった。 Fov選手の最初の英雄は「Death Knight」。「Paladin」とは逆の位置づけの英雄で、「Death Coil」で味方の「Undead」のユニットを回復する一方で、「Human」に対してはダメージとなる「Undead」使いが最初の英雄としてもっも選びやすいユニットだ。 「WC3」の対決では英雄のレベルが勝負を分けることが多い。双方とも最初の英雄の生産が終わったらすぐに狩りをし始めた。ある程度英雄のレベルが上がると、Tod選手は資源を効率的に得るために2つ目の「Town Hall」を立てるマルチ展開をとるが、これが仇になった。 高コスト体質の「Human」の戦略を見据えて広く偵察圏をとっていたFov選手に建設直後に発見されてしまったのだ。初期に作戦が見破られてしまったために、戦力が整う前に両面作戦を余儀なくされてしまった。しかし、Tod選手は勝利のためにマルチ展開は必要不可欠と判断し両面の守りを継続することを決断する。 Fov選手は2つ目の英雄ユニットに氷にまつわるスキルで多数の敵ユニットの動きを効果的に止めることができる「Lich」を選択し、「Death Knight」、「Lich」、「Ghoul」、「Gagolye」の組み合わせで部隊を編成した。ここで、Fov選手も2つめ「Haunted Goldmine」を建て、マルチ展開へ。このタイミングで、Tod選手のラッシュが始まった。近接攻撃の得意な地上ユニット「Footman」で「Lich」を圧迫し、この攻撃で「Lich」を撃破するなど大きなダメージを与えた。 Fov選手は何とかこのラッシュを乗り切り、2つめの「Haunted Goldmine」は温存できたものの「Lich」が倒されたのは大きく、この戦闘が決め手となった。Tod選手はこのチャンスを逃さず、「Gagolye」狙いの「Gryphon Rider」と「Flying Machine」を生産し、勝負を決める対建造物ユニット「Siege Engine」で一分の隙も許すことなくFov選手の「GG」を引き出した。
■ 「WarCraft III Invitational」第2ラウンド。相手をとことん煩わせたFov選手に軍配 第2試合のマップは「Twisted Meadows」。Tod選手は1時方向、Fov選手は5時方向でのスタート。第1試合と同じ最初の英雄はそれぞれ「Archmage」と「Death Knight」から始まった。先ほどの試合の敗戦で何か感じるものがあったのか、ゲーム開始直後からFov選手の圧迫が始まる。Tod選手が狩りをしようとする場所を予め妨害する行為を繰り返す。これが功を奏し序盤のうちに「Archmage」を取り囲んでテレポートアイテムを先に使用させる成果を上げた。 テレポートアイテムは、初期装備として英雄が1つ持っているが、商店で2個目を購入するには高いコストがかかる。序盤で使ってしまうと中盤への展開にかけて英雄がピンチの際の保険がなくってしまうために運用面でもプレーヤーの精神面でもかなりのダメージを受けるわけだ。 Fov選手の圧迫はこれで終わらない。狩りの妨害をし続けて何度も何度もTod選手の英雄ユニット「Archmage」をつけ狙う。HPが10を切るほどに追い詰められるも何とか逃げ切った「Archmage」だが、不運にもFov選手の2人目の英雄「Naga」に出会ってしまう。 「Archmage」はあっさりと「Naga」の矢一本で倒されてしまった。こうなると「Archmage」を再生しなければならない。生産が完了するまでの時間は無防備になる上、レベルの高い英雄ほど再生に時間がかかる。Tod選手はすぐに防御タワーを建てて守りを固めたが、その間Fov選手はゆっくりと狩りをし英雄のレベル上げに専念した。 Tod選手は「Archmage」の復活コストと、防御タワーのコスト負担が、「Human」の高コストユニットの生産を圧迫してしまった。Fov選手はレベルをあげた「Death Knight」を軸に「Lich」、「Destroyer」、「Obsidian Statue」でTod選手の拠点を破壊し、成すすべのないTod選手は「GG」を宣言するより他なかった。「Human」族全体の成長を効果的に阻止したのが勝利の鍵となった。これでスコアは1-1の引き分け。最終の第3ラウンドに勝敗がゆだねられた。
■ 「WarCraft3 Invitational」 短期決戦を挑んだFov選手を上手く阻止し、Tod選手が優勝!
「Pandaren Brewmaster」は、レベル3から広範囲の敵に大きいダメージを与えられるスキル「Breath of Fire」を使用できるようになる。非力なローコストユニットが大勢を占める序盤戦では非常に強力なスキルで、「Pandaren Brewmaster」の選択は短期決戦を意味する。とはいえ「Undead」陣営の場合は、ほとんど「Dark Knight」か「Lich」で始まるため、「Pandaren Brewmaster」が選ばれることは滅多に無い。非常にレアなケースだ。 Fov選手は狩りでレベル3になった「Pandaren Brewmaster」と中立ユニットを率いてTod選手の前線側の「Town Hall」に攻め始める。しかし、守備にあたる「Water Elemental」と「Footman」が「Pandaren Brewmaster」を集中的に狙い続けた結果、退却を余儀なくされてしまった。 中立ユニットで構成されたFov選手は当然ながら種族のテクノロジーのアップグレードが行き届いていない。時間が経てば経つほどFov選手の勝利は遠のいていく。焦りを露に決戦の継続に出たFov選手だが、Tod選手も中立ユニットの生産と、防御タワーの設置で見事防ぎ切った。 これでもう勝負は見えた。テクニカルツリーを完成させたTod選手は2番目の英雄をFov選手と同じ中立英雄「Pandaren Brewmaster」を選択し、3番目の英雄「Paladin」、対建物ユニット「Siege Engine」、「Gryphon Rider」で決戦を挑んだ。対するFov選手はなすすべなく「GG」宣言で、「WarCraft III Invitational」の優勝はTod選手に決定した。 この日のプロゲーマーの戦いぶりに会場は大きく盛り上がり、人々を熱くさせた。会場に集まった多くのユーザーが上級者のゲームプレイに感動している姿には感慨深いものがある。日本でもe-Sportsに対する一般的な理解を広げ、幅広い層でプレイする楽しみや喜びを共有できる枠組みを作ることで、同じ感動を共有できればと願っている。
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□Blizzard Entertainmentのホームページ (2007年5月24日) [Reported by Dong Soo “Luie” Han / 三浦尋一]
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