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【連載第5回】韓国最新オンラインゲームレポート

Blizzard、韓国ソウルにて「2007 World Wide Invitational」を開催
全世界待望のシリーズ最新作「StarCraft 2」ついに発表!!

5月19日~20日開催

会場:ソウルオリンピックパーク

 Blizzard Entertainment(以下Blizzard)は5月19日、20日の2日間、韓国ソウルのオリンピックパークにおいて、「WarCraft」シリーズ、「StarCraft」(以下「SC」)など同社開発タイトルによるリーグ戦や、ユーザー向けイベントの集大成となる「2007 World Wide Invitational」(以下「WWI」)を開催した。

 この日の開会式では2004年のMMORPG「World of Warcraft」(以下「WoW」)以来の新作となる新作「StarCraft II」(以下「SC2」)が発表された。韓国でのe-Sports人気に火をつけたRTS「SC」の次回作という位置づけの本作は、「SC」のシステムをそのまま継承した3Dリメイク版だ。

 驚くべきはBlizzardの開発構想だ。2002年の「WarCraft III:The Frozen Throne」(以下、「WC3」)の完成後、2003年から「SC2」の開発に取り掛かり、同社内だけで40名体制で、開発費は青天井、納得のいくものができあがったらお見せすると語るなど、開発陣によってここまで超然としたゲーム作りが語られるのを見たことがない。当然のことながら、サービススケジュールやビジネスモデル、パブリッシャーなどいずれも未定となっている。

 今回の取材では、「WWI」のイベントレポートに加え、記者懇談会等で公開された「SC2」の資料からのファーストインプレッション、「WC3」、「SC」トーナメント決勝戦のレポートの3本立てでお伝えする。


■ ついに「StarCraft II」発表!! 「Protoss」族を中心に新ユニット群を公開

Bllizard Entertainment代表取締役社長Mike Morhaime氏。「『WWI』を全世界のゲーマーが出会える場所にしていきたい。「WoW」、「SC」、「WC3」の大会を1度に行なうことはBlizzardにとって初めての試みだが、ファンの期待に応えるイベントにしていきたい」と新作「SC2」の発表と共に今後の事業展開への意気込みを語った
新ユニットの解説をする「SC2」リードデザイナー Dustin Browder氏。観戦のしやすさも開発テーマに盛り込むなど、e-Sportsタイトルを強く意識しているようだ
10年ぶりの新作となる「StarCraft II」。往年のRTSファンにとっては、新しさより懐かしさがこみ上げてくる。21世紀の「StarCraft」だ
 「Starcraft」は、マップを探検しながら、資源の収集、テクノロジーの開発、ユニットの生産を平行して行ない、相手陣営の滅亡を狙うというリアルタイムストラテジーの代表的タイトルの1つだ。特に韓国では、国民的ゲームとなるほどの人気を博し、韓国でe-Sportsとイコールとして語られるほどの人気タイトルだ。

 「SC2」では「SC」からのシステムの大枠の変更は無く、登場種族も「Protoss」、「Terran」、「Zerg」の3種族。グラフィックスをフル3D化し、種族の個性をより引き立てた内容となっている。フル3D化しながらも、安易に取り入れられがちな過度なエフェクトは極力割け、e-Sportsタイトル、プロゲーミングタイトルとしてデザインを練り直した1作となる。

 Blizzardが、「SC2」をフルモデルチェンジではなく、初代の内容を踏襲したリメイク版として送りだそうとする理由として、「SC」の後継タイトルがいまだに現われていないことが挙げられる。'98年に発売された「SC」は、発売から早10周年を迎えようとしている。2002年に「WC3」を発売しているが、欧米ではともかく、韓国ではメインストリームに成り得ていない。

 現在でも「WC3」によるリーグ戦が行なわれてはいるものの、「SC」の人気を覆すほどの力はない。今回の「SC2」の登場で、「StarCraft」を超えるのは「StarCraft」自身だというBlizzardの意気込みが大いに伝わってきた。同社がビジュアル的な目新しさよりもゲーム性の向上とe-Sportsに重要なバランス調整にこだわっていくことへの韓国ユーザーの評価の大きさは、「StarCraft」という1タイトルが10年をかけて1つのジャンルとして成長を遂げた証左となるだろう。

 さて、19日のオープングセレモニーでは、Bllizard Entertainment社長Mike Morhaime氏とBlizzard Entertainment Korea社長Han Jeoung Won氏が登壇し、挨拶を行なった。Mike Morhaime氏は、会場に詰め掛けた1万人ほどのユーザーに謝辞を述べ、2004年、2006年に続き第3回目となる今回の「WWI」はトーナメント中心のイベント設計を採用したと述べた。

 「SC2」の発表では3本のデモムービーが上映された。1本目は「Terran」の強襲兵がアーマーをつけられ母艦から出撃するというもの。ムービー中、兵士の体に当てられたチェッカーが韓国語で「現役」と表示されると、韓国ユーザーは大盛り上がりとなった。

 2本目は戦闘シーン。「Protoss」陣営の各ユニットを戦わせながら紹介された。Blizzardにとって韓国展開は規定事項といった様子で、ゲーム画面こそ英語表示だったものの、ゲーム中にカットインするキャラクタボイスはすでに韓国語に吹き替えられていた。

 段差を利用した攻撃や、短い距離をワープ移動しながら逃げる敵を追い詰める「ストーカー」、ブラックホールを出現させるなどさらに特徴的なスキルを使えるようになった「母艦」などが紹介された。「SC」のシステムを踏襲しているため、同作の基本操作などベーシックな話は一切抜き。それでいて会場全体がムービーに吸い込まれる雰囲気になっているのが、韓国市場の凄みだろう。

 ムービーを見る限り、デザインやユニットの動きなど、ほとんど完成に近い出来を思わせる。その一方で、ユニットのパラメータや種族ごとのバランスなど、細かい調整の部分は時間がかかるため、我々がプレイできるようになるまでにはもう少し時間がかかるのではないだろうか。いずれにせよ、予算や製作期間を定めないという稀有なプロジェクトだけに、今後の展開は目が離せない。

【StarCraft II】
見ての通り、ゲームの完成度はかなり高い。新ユニットや新マップなどの新要素のボリュームにもよるが、3年も4年も待たされるようなことにはならなそうだ。どの画面も見栄えがするが、中でもザーグリングラッシュの臨場感は素晴らしい(左上)。韓国ではすべてのオンラインゲームを吹き飛ばすほどの人気を集めることは間違いないが、日本でもRTSブーム再燃を期待したいところだ

「SC2」のPV。生身の兵士のステータスをチェックすると「現役」の文字。兵役のある韓国の男性ユーザーに大ウケしていた。強襲兵が出撃するところでエンディングとなる。「機は熟した」と韓国語で喋る

基本的なインターフェイスは「SC」と同じのため、すべてが新ユニットというわけではなく、旧来のユニットがより陣営の性質に特化された形でも変更がなされている。「Protoss」以外の2種族の新ユニットはごく一部しか公開されていないため、早く全貌を知りたいところだ

3番目のムービーでは「SC2」のマップやキャラクタのコンセプトが公開された


■ トーナメントを軸にした一大イベント「WWI」。連日の大盛況で閉幕

メイン会場の体育スタジアムでは、ゲーム音楽を奏でるオーケストラVideo Games Liveの演奏が行なわれ、Blizzardタイトルの各テーマが演奏された。生演奏にゲームムービーを組み合わせ、会場は大盛り上がりだった
 「WWI」は、ファンイベントとしても非常にクオリティの高いものだった。メイン会場となった体育スタジアム、フェンシング競技場、2つの間を挟む青空会場とBlizzardシアターの4つでイベントが組まれ、体操スタジアムで行なわれる「SC」と「WC3」、フェンシング競技場で行なわれる「WoW」アリーナモードの3つがプログラムの柱となっていた。会場全体では同じ会場で行なわれた「World Cyber Games 2003」と同規模の展開となり、1社でのイベントとしては韓国最大級の規模といえるだろう。

 フェンシング競技場には、「Diablo」シリーズ以外のBlizzard作品を用いたクエスト形式の体験コーナーがあり、射的やカードゲーム、ロデオなどアトラクションをプレイすると賞品が当たったり、「WoW」アリーナモードで勝利すると表に出ている熱気球に乗ることができるといった、ユニークなイベントを実施していた。さらに2日目は天候にも恵まれたため、オリンピック公園に遊びに来ていたユーザーを巻き込み、入場規制が敷かれるなど大盛況となった。

 Blizzardシアターでは、ゲームデザイン、アートデザイン、デモムービーの試演の3つのプログラムが何度も繰り返されていた。「SC2」の試遊台を置くことこそかなわなかったものの、シアターはいずれの回も長蛇の列となった。ユーザーにとっては開発者に直接質問できる機会が何度も設けられるなど、ファンサービスという点でも非常によくできたイベントであった。「SC2」の話題性もさることながら、韓国でBlizzardタイトルが非常に広く浸透しているのに驚かされた2日間だった。

フェンシング競技場で行なわれたユーザー向けイベントの模様。試遊台やアトラクションを中心とした展開だった。2つの競技場と間の広場の3箇所には物販コーナーが設けられた。各タイトルのフィギュアを中心に揃えられ盛況だったが、品揃えは同じものが置かれており来場者の数の割りには落ち着いていた

屋外ステージやBlizzardシアターでもサイン会やコスプレ大会、デモプレイなどユーザー向けイベントが目白押し。開発者がユーザーの質問に答える懇談会は同じプログラムが3回も組まれ、ユーザーからもバランスや仕様について積極的に質問された

開会式と閉会式では元Fink.Lのイ・ヒョリや女性歌手IVYなどが登場。開発者達がノリノリ。会場前方のアリーナ席を埋め尽くすBllizard関係者は家族の同伴も多く、「WoW」の大成功でこの世の春を謳歌している雰囲気が印象的だった

(c)2007 Blizzard Entertainment. All rights reserved.

□Blizzard Entertainmentのホームページ
http://www.blizzard.com
□Blizzard Entertainment Koreaのページ
http://www.blizzard.co.kr/
□「2007 World Wide Invitational」の公式サイト
http://wwi.blizzard.co.kr/
□「StarCraft II」の公式サイト
http://www.starcraft2.com/

(2007年5月21日)

[Reported by 三浦尋一 / Dong Soo “Luie” Han]



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