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★Xbox 360 ゲームレビュー★

南国ハワイで濃密なカーライフを満喫
「テストドライブ アンリミテッド」

  • ジャンル:ドライブシミュレーター
  • 発売元:マイクロソフト株式会社
  • 価格:6,090円
  • プラットフォーム:Xbox 360
  • CEROレーティング:B(12歳以上対象)
  • 発売日:発売中(4月26日)



 4月26日に発売された「テストドライブ アンリミテッド」は、ハワイのオアフ島“全域”を再現したスケールの大きいドライブシミュレーター。一見すると「ふーん、ハワイでスーパーカーぶっ飛ばすゲームなのね」とアバウトに考えられてしまいそうな雰囲気だが、それは本作における「氷山の片隅の、そのまたひと欠片」にすぎない。

 実は筆者も、製品版に触れるまで予備知識ゼロだったため「ふーん(以下同文)」だったのだが、ファーストプレイから数時間後には「……なんだコレは!」と戦慄を覚えずにはいられなかった。次世代機のマシンパワーを贅沢に使った繊細で質感タップリなグラフィック表現とか、臨場感あふれる車の挙動とか、そんな次元ではなく“全体の作り、コンセプト”に、軽い感動を覚えてしまったからだ。

 一言でいえば「力技にもほどがある」といったところだが、ステレオタイプな純国産ゲーム的発想からは生まれてこないであろう作風は、カーマニアはマストとして、箱庭風ゲームが好きな人にも「ぜひ一度体験して欲しい」といいたくなるほどの訴求力を備えている。まずは、主人公たるプレーヤーがオアフ島に放り出されるゲーム序盤の流れをざっと解説していく。そうすれば「本作がどのようなゲームなのか」なんとなくでも感じ取っていただけるはずだ。


■ レースゲームのはずが、なぜか空港からスタート

 タイトル画面でスタートボタンを押すと、ゲームは空港の待合室らしき場所からスタートする。いかにも海外ゲームといった人物のモデリングが、えもいわれぬ雰囲気を醸し出す。

 「……これ、レースゲームだよね?」と確認する間もなく、搭乗手続きのシーンからキャラクタ(アバター)選択画面に移行。念のため説明しておくと、ここで選ぶ8タイプ(男性6人、女性2人)は、あくまでもベーシックパターン。あえてアバターと注釈をつけたのは、後々「キャラクタの外観がこと細かにカスタマイズ可能になるから」という理由による。

 土台となるキャラクタを決めたら、あとはハワイまで一気にフライト。ここでふと「なんでこんなにキャラクタ性、パーソナルな部分を強調したデモシーンが冒頭に用意されているんだろう?」と疑問に思うも、それはオアフ島に到着した後、少しずつ明らかになっていく。




■ 島に着いたら家とマイカー探し ~常夏の島で夢のカーライフが幕を開ける~

 ホノルル空港に到着後は、すぐにレンタカーを借りることになる。ここで注意したいのは、これはあくまでも一時的なものだということ。現時点でそこまで神経質にならなくてもいいが、この後すぐにマイカーを購入することになるため、節約するなら一番安いレンタカーを選んでも構わない。

 レンタカー車名の横にある欄の数字は、10分もしくは20分あたりのレンタル料金。スタート直後の所持金は$200,000。ここからレンタカーの料金を支払ったら、次は画面左下のGPS画面とアナウンスを頼りに、地元不動産屋を目指す。

 不動産屋についたら、所持金の範囲で滞在先となる家を購入する。カーライフの基点となる家にはインフォメーションやランキング閲覧といった機能のほかに「ガレージ」が用意されており、それぞれ収納可能な台数が異なる。最初は4台しか収納できないが、先々お金に余裕ができれば、新たに家を買い増すことが可能。複数の家を所有している場合は、ガレージ相互に車を移動させられる。

 家を購入したら、次はカーライフの最重要ポイント「マイカー」の購入だ。マップ画面に表示されるいくつかのディーラーから、購入可能な範囲で好きな車を選択。加速、スピード、ハンドリング、ブレーキング、最高速度、加速、最高出力などの諸性能が気になるものの、家を買った直後だけに購入可能な車種はおのずと限定される。

 筆者は初期アバターの雰囲気から、なんとなく「コイツだったらコレを買いそう」などと勝手に脳内で妄想しつつ「Saturn Sky」をチョイス。$23,000と安価で差し引きの所持金にも若干の余裕が生じるため、最初の一歩という意味では悪い選択ではなさそう。とはいえ、慎重派の人はジックリ選ぶのもいいだろう。オアフ島を舞台にした夢のカーライフは、この1台から始まるのだから。

なんで最初にレンタカーを使わせるのかといえば、実は先々のカーライフとレンタカーは、決して無縁ではないからだ。とはいえ、まずは滞在先となる家とマイカーの選択に専念。すべてはここから始まる。ちなみに視点はドライバー、ボンネット、後方など6段階で自由に変更可能



■ 家も買った、マイカーも手に入れた、さてそこから先は……!?

 家とマイカーを調達したら、ここからが本当の意味でのゲーム開始。ガソリン代などの消耗品があるわけでもないので、あとは島内を気の向くままに車で走り回ればいい。

 「走り回ればいいって……それで終わり?」と疑問に思われるだろうが、極論すれば「そのとおり」ということになる。家と車があれば、あとは何をしようがプレーヤーの自由。文字どおり“マウイ島に放り出されたも同然”の状態だが、そこから先のカーライフは、プレーヤー自身の手で築きあげていくべき類の事柄であり、全プレーヤーに統一された目標があるわけでもない。冗談抜きで、あとの楽しみ方はプレーヤー次第なのだ。

 ベーシックな部分をあげるなら、道路上に設置されたレースイベントに勝利してお金を稼ぎ、新しい家や車、マイカーのチューニング、キャラクタの服装などを充実させていくといった方向性がある。ヒッチハイカー、荷物、依頼者の車を特定の場所に運ぶといったミッションも島内のあちこちに配置されているが、それをクリアしても島内の何かが変化していくといったことはない。勝ち得たものは、あくまでもプレーヤーのカーライフに“個”で蓄積もしくは還元されていく。

 マイカーでは挑戦できないクラスのイベントやミッションにしても、一般的な作品ならRPGの武具よろしく「その車を買うまでがハードル」だったりするが、本作ではレンタカーで済ませることも可能。すべてカーライフが前提ではあるが、凡作にありがちな制約のたぐいは、本作においてほとんど見受けられない。

 あえて全体の方向性やフレーム的な事柄があるとすれば、それは本作が「Xbox Liveにつながっていてこその作品」だということ。街中を少し走ればわかるが、画面内にゲーマータグがいくつか表示されることがままあるはず。これは、プレーヤーの近くを他の誰かが走行しているということ。近辺にいる最大8人が表示される仕組みで、色がついた状態のタグがプレーヤー、白く表示されたものはNPC(ノン・プレーヤー・キャラクタ)。カッコ内の数字は、その車との距離をあらわしている。

 最大8人とやや少なく思われるかもしれないが、実際にはもっと多くの人たちが島内をマイカーで縦横無尽に走り回っている。こうした不特定多数のプレーヤーという存在があるからこそ「テストドライブ アンリミテッド」は他のレースゲームとベクトルが異なる独自の魅力を醸し出すのだ。

島内の道路上に、シングルもしくはマルチ用レースイベント、ミッションを示すアイコンが設置されている。近くに寄ってAボタンを押せばチャレンジできる
キャラクタの体型などは細かくエディット可能。ただし洋服などのアイテムで着飾るには、ヒッチハイカーや荷物運搬などで得られる“ポイント”必須
十字キー右を押すとMAPが表示される。周辺にある主要なイベント、施設、他プレーヤーなどの情報が一目瞭然。ただしショップなどの施設は近くまで行かないとマップに表示されないものがある
一度走ったコースや利用した施設はマップ画面からGPSで指定すれば直接移動できる。コースは青いラインで、施設はアイコンで表示される。ただし、好きな場所に瞬時に移動するためには、少なくとも島の外周を一度は回る必要がある。筆者の場合、ショップ探しなど細かい寄り道が多かったため、ほぼ半日以上を費やす結果に。さすがに疲れました……



■ カーライフの核心 ~ふんだんに用意された他プレーヤーとのコミュニケート機能~

 いきなり核心的な部分に触れるが、本作最大のポイントは「プレーヤー間のコミュニケート要素に重点が置かれている」これに尽きると思われる。あとは、その核心部分を装飾していく個別要素にすぎないとさえ言い切れる。島全体のスケール感、最限度が強調されることもあるが、極論するならそれらも“ユーザーコミュニティの土台を彩る大掛かりな演出”のひとつだ。

 シングルプレイも可能だが、本作は「まずはじめにXbox Liveへの接続ありき」で作られている部分が大半を占める。近辺を走行するプレーヤー情報が常に表示されるのはもちろんだが、ボイスチャットで会話したり、道路上に表示されたアイコンを入り口にしたマルチプレイ、中古車の売買、レースなどの課題を自作してコースに配置し他プレーヤーにプレイさせるカスタムチャレンジ、クラブ(ユーザーグループ)の作成など、実に多種多様なコミュニケート機能が用意されている。

 なかでも特徴的なのは、インスタントチャレンジ機能と、プレーヤー車同士の接触が“有り”で固定されている判定処理の存在。インスタントチャレンジは、コース上にあるマルチプレイ用アイコンで集まる対戦形式と異なり、相手のすぐ近くでAボタンを押すだけでレース勝負を挑めるというもの。コースはどちらか一方が即興的に作成。あとはNPC車両やパトカーに注意しながら相手より先にゴールしたほうが勝ちとなる。

 インスタントチャレンジは、もちろん断ることも可能。何度断っても、Aボタンのパッシングを連打して執拗に挑戦してくるプレーヤーもいるが、是非はともかく、それも人間同士のコミュニケーション。NPCはもとより、プレーヤー車同士の当り判定に「有無」の選択肢が用意されていないのも、他ユーザーの存在を意識させるという“明確な設計思想のあらわれ”ではないかと推察する。筆者がレビュー用にプレイした時点ではまだ日本語版が発売されていなかったため、Xbox Liveに接続してプレイしていたときに周囲を走っていた他プレーヤーは、ほぼ大半が外国人だったかと思われる。ゆえに、耳から入ってくるボイスチャットの会話は、ほぼ英語オンリー。これでプレーヤー間の接触判定がなければ、もしくは消せたなら、恐らくはハワイという箱庭(島?)を走り回るだけの環境ドライブゲームに終わったかもしれない。

 だが、Xbox Liveに接続して島内を走る限り、他プレーヤーの存在、情報が、否応無く耳目に飛び込んでくる。酷いケースになると、こちらが何をしたわけでもないのに辻斬りよろしく物凄い勢いで何度も車をぶつけてきたり、複数の車でこちらを囲んで威圧する暴走族まがいの行為をする輩にまで遭遇した。これにはさすがに「なんで接触判定の切り替えをオプションで用意しないんだよ!」と憤慨することもあったが、本作が目指したもの、ゲームの在り方を推察したとき、やはり「他者の存在を意識させる」という点は、「テストドライブ アンリミテッド」の根幹に関わる事柄なのだな、との考えにいたってしまう。

 ただ単にマルチプレイでレースがしたいなら、そうしたゲームは過去に多数リリースされている。だが本作は、カーマニアのアイデンティティ、カーライフなどの嗜好性に着目し、なおかつ既存のレースゲームが持っていた要素をシステム全体でまとめてやっつけてしまうという、文字どおりの力技で夢のような環境を実現している。シングル指向の人でも楽しめる要素は多数あるが、全体は「積極性のある人向け」に作られている。そしてそれは、恐らく一切ブレることない確固たるディレクションの元、きちんと形づくられたもの。だからこそ、我々プレーヤーは箱庭のあちこちを思う存分走り回り、心ゆくまで堪能できるのだ。

近くを他プレーヤーが走行していた場合、画面にゲーマータグと距離などの情報が表示される 後方から追跡してきたバイクに煽られ、挙句インスタントチャレンジを仕掛けられる筆者。こちらはドノーマルのFクラスにつきお断りしたら体当たりされる始末。勘弁して……



■ 巨大な箱庭「オアフ島」に凝縮された“個々のカーライフ”と“その交わり”を楽しもう

 車が好きな人のために作られた「コミュニティ重視」のレースゲームという、これまでに類を見ない本作は、肝心の車の挙動、レース部分にも一切の手抜かりがない。あんまりベタ誉めしても「ウソくさいなぁ」などと胡散臭く思われそうだが、もしウソだと思われるのであれば、マーケットプレースからダウンロードできる体験版(英語版)をぜひ一度プレイしていただきたい。断片的で、しかも体験版ゆえに運転が粗雑(というか半ば他プレーヤーへの嫌がらせ同然)なプレーヤーも少なくないが、核心部分にはきちんと触れることができる。

 正味な話、「チューニングが全体で1~3段階と大雑把」など、細部で気になる部分がないわけではない。ゆるぎない指向性が感じられるぶん、瑣末な部分がわりとザックリ処理されている点も、いくつか目に付く。ただ、そうした細かい部分をひとつずつ拾っていくとキリがないし、なにより核心部分がレビュー内に埋もれてしまいかねない。先々同社から「Forza Motorspor 2」が発売されることもあり「Forzaの新作があるから、その前に同じようなレースゲームはいらないよね」などと勘違いされることがないように、といった余計な心配をした部分もある。

 コミュニティ指向ゆえに引っ込み思案な人に対して「これ絶対にやっとくべきだよ!」とは言いづらいが、もしここまで目を通してくれた貴方が「車が好き」であれば、「テストドライブ アンリミテッド」には、心の琴線に触れる“なにか”が必ず存在しているはず。先ほどもレビュー用にプレイしていて外人プレーヤーの執拗なパッシングと去り際の体当たり+4文字言葉に凹まされた筆者がいうのもアレだが、そんな経験をしてなお、本作には「他者が存在するからこそ」の魅力がぎっしり詰め込まれていると考える。そしてそれは、本作でなければ体験できない独自の面白さなのだ。




Test Drive (C)Unlimited (C)2005-2006 Atari Inc. Designed and developed by Eden Games SAS, an Atari development studio. All trademarks are the property of their respective owners. (C)2007 Microsoft Corporation. All rights reserved.

□Xbox 360のホームページ
http://www.xbox.com/ja-JP/
□「テストドライブ アンリミテッド」公式サイト
http://testdriveunlimited.jp/
□関連情報
【2月22日】マイクロソフト、オアフ島全域を再現したドライビングゲーム
Xbox 360「Test Drive Unlimited」発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070222/test.htm

(2007年4月27日)

[Reported by 豊臣和孝]



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