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★DSゲームレビュー★

法廷バトルの戦場をDSに移し、シリーズ最新作開廷!
「逆転裁判4」

  • ジャンル:法廷バトル
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:5,040円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(4月12日)
  • CEROレーティング:A (全年齢対象)



 文章を読んでストーリーを進めていくアドベンチャーゲームは、古くは「ポートピア連続殺人事件」などから、ミステリーと相性がいい。ある事件(たいていは殺人事件)が起こり、事件の解決という明確な目的のために主人公が動くというわかりやすさ。そして人間関係を起点として起こる事件を通し、登場人物の内面が描かれるというドラマ性が、ゲームとしての面白さにつながっている。筆者はミステリー小説との出会いにより本の世界にどっぷり浸かり、もうひとつの好物であるゲームでご飯を食べてさせていただいている。

 そんなミステリー小説好きがレビューするのは、弁護士を主人公に、数々の証拠品と“言葉”を武器に法廷で戦う「逆転裁判4」。多くのファンを持つ名作アドベンチャーシリーズの最新作だが、ナンバリングタイトルとしてはGBAで発売された前作「逆転裁判3」の発売から3年の月日が流れており、遊んだことがないというゲームユーザーもいるだろう。まずはこれまでのシリーズを振り返りつつ、ゲームとしての「逆転裁判」の魅力に触れていきたい。



■ 事件の謎を解き明かす法廷バトルの快感

「逆転裁判」といえば「異議あり!」。キャラクタボイスが響き、相変わらずの爽快感が味わえる
 「逆転裁判」シリーズは、2001年10月に第1作がGBA用として発売され、その後2002年10月にGBA用「逆転裁判2」、2004年1月にGBA用「逆転裁判3」が発売されている人気アドベンチャーゲーム。「逆転裁判3」と、今回発売された「逆転裁判4」の間には、2005年9月にDS用「逆転裁判 蘇る逆転」と、2006年10月にDS用「逆転裁判2」という2本のリメイク作品が発売されている。

 本シリーズは冒頭で説明したとおり、プレーヤーが弁護士となって、罪に問われて法廷に立つ被告人を弁護し、無罪を勝ち取るというアドベンチャーゲーム。プレーヤーへの依頼人となる被告人は、基本的に殺人の罪に問われて法廷に立たされており、検察側は被告人の罪を立証すべく、不利な証拠や証人をたくさん用意している……。その状況から被告人を無罪にもっていくのが、まさにタイトルにもなっている“逆転裁判”だ。

 法廷で無罪を勝ち取る、と一言でいっても、何も準備をしないでは弁護もままならない。そこで「逆転裁判」では、「探偵パート」と「法廷パート」にゲームの進行が分かれており、オーソドックスなアドベンチャーである「探偵パート」で武器となる“証拠品”を集め、会話で進む「法廷パート」で裁判長に被告人の無罪をアピールしていくこととなる。提出する証拠品、重要な選択肢を間違え場合、裁判長の心証が悪くなり、それを繰り返すと問答無用で有罪になってしまうので注意が必要となる。

 ここで重要なのは、原則的に取り扱われる事件に対して“被告人は冤罪”ということ。つまりゲームの中で登場する事件の真犯人は別にいる。そして無罪である被告人に対して不利な証言をする“証人”とは? ここまでいえば一目瞭然、「逆転裁判」に登場する証人はみんな“ウソつき”だ(本人が意識している・いないに関わらず)! そして彼らの“ウソ”は“ウソ”であるがゆえ、その証言には必ず“ムジュン”が発生してしまう。その“ムジュン”を解き明かし、真犯人を見つけて被告人を無罪にするのが「逆転裁判」である、といえるだろう。真実を突き付けられ本当の姿をさらしてしまう真犯人たちのリアクションは必見だ。

 ちなみに、「逆転裁判」は「法廷バトル」というジャンルのゲームだが、法廷は人間の内面を描く舞台として際立っているため、小説では過去にたびたび題材として使われてきている。和久峻三氏の「赤かぶ検事」シリーズなどは映像化もされており、知っている人も多いと思う。しかしながら、陪審員制度の存在などで裁判が身近な北米に比べ、日本ではあまり触れる機会がないのも確か。「逆転裁判」の存在によって今後の日本法曹界に対する理解が深まることを期待する。



■ 新たなキャスティングで綴られる新章

本作の新主役、王泥喜法介。「逆転裁判」の時の成歩堂龍一と同じく、新人弁護士として物語が始まる
 「逆転裁判」について一通り触れたところで、お待ちかねのシリーズ最新作「逆転裁判4」について紹介していく。「逆転裁判4」は、上記で触れた「逆転裁判」というゲームの面白さ、“ムジュン”を追及し真実を白日の下にする快感が色濃く受け継がれているという意味では、正統な後継作といえる。だが、物語を織りなす登場人物たちの一新、各種新要素の登場により、多くの部分が生まれ変わっている。

 これまでのシリーズタイトルでは、主人公の弁護士“成歩堂龍一”(なるほどくん)をはじめ、パートナーの霊媒師“綾里真宵”、ライバル検事の“御剣怜侍”といったレギュラーキャラクタを中心に物語が進んでいた。だが、前作「逆転裁判3」で登場キャラクタたちの因縁に決着がついたこともあり、「逆転裁判4」では主要な登場キャラクタが一新されている。

 新たな主人公に選ばれたのは、広いおでこと2本のツノのような髪型がトレードマークの“王泥喜法介”(オドロキくん)。「逆転裁判」シリーズは新米弁護士・なるほどくんの成長を描いた物語でもあったが、「逆転裁判3」の段階でなるほどくんは数々の難事件を解決に導いており、弁護士としてもキャラクタとしてもすでに完成していた。その点、本作の主人公・オドロキくんは新米弁護士として一からのスタート。第1話「逆転の切札」の裁判は初仕事のため、必要以上に緊張したオドロキくんの姿を確認できる。

 ちなみに「逆転の切札」では、「逆転裁判」の第1話である「初めての逆転」をほうふつとさせる会話が楽しめる。シリーズファンにとってはうれしいサービスであり、さらに新主人公のオドロキくんにすんなり感情移入させる効果も期待できる。素直に「上手いな」と称賛を贈りたいところだ。

 主人公の脇を固めるのは、法廷でオドロキくんのパートナーを務める魔術師(マジシャン)の少女“みぬき”や弁護士の先生“牙琉霧人”、ライバルとなる天才検事“牙琉響也”、「カガク捜査」好きな女刑事“宝月茜”(「逆転裁判 蘇る逆転」の追加エピソード「蘇る逆転」にも登場)といったキャスティング。他にも、事件によってさまざまな被告人・証人たちがストーリーに絡んでくる。

 「逆転裁判」というシリーズは、登場キャラクタの性格が濃ゆ~く、一部のファンから大きな支持を集めているゲームだ。そういう意味では、本作は少々スパイス不足な感がある。筆者が特に気になったのは、オドロキくんと検事“牙琉響也”の対立という構図があまりない部分。検事という立場の人物として、被告人を何が何でも有罪にしようとせず、真実を求める姿勢はまちがってはいないのだ、もちろん。だが、その分「異議あり!」の応酬といった、法廷バトルならではの熱い展開が少なく、物足りなく感じた。

 また、これまでのシリーズ作品からの続投キャラクタとして、なるほどくんが登場する。これまでのシリーズでは弁護士として活躍していた彼だが、7年の月日が経過した「逆転裁判4」では、ある事件をきっかけに職を辞し、「ピアノを弾けないピアニスト」になっている。しかも初登場は弁護を依頼する被告人としての登場で、彼を無罪にするのがオドロキくんの初仕事だ。

 なお、「逆転裁判4」ではキャラクタデザインの担当が塗和也氏に変更(正確には「逆転裁判 蘇る逆転」の追加エピソード「蘇る逆転」以降)されている。キャラクタデザインは受け取り手の好みによって評価が分かれるところで一概には言えないが、個人的にはオジサンキャラがかっこよくてGood。でも、女性キャラクタの露出度は低めかも。

【登場キャラクタ】
オドロキくんのパートナーとなるが少女、みぬき。15歳にしてプロのマジシャンとして活躍している オドロキくんの弁護士のいろはを仕込んだ弁護士、牙琉霧人。第1話ではオドロキくんのとなりで助言を与える 本作でライバルとなる検事で、霧人の弟の牙琉響也。検事のかたわら、大人気バンド「ガリューウェーブ」のリーダーも務める二枚目
刑事の宝月茜。DS「逆転裁判 蘇る逆転」で科学捜査官を目指す少女として登場したが、願い叶わず現場の刑事にされてしまった。いつも不機嫌そうにカリントウをかじっている 前作までの主人公、成歩堂龍一。今回は「ピアノを弾けないピアニスト」として登場。とにかく沈着冷静で、熱気満点だった以前の彼とはまるで雰囲気が異なる



■ ニンテンドーDSならではの進化形態

 すでにDS向けに発売されている「逆転裁判 蘇る逆転」、「逆転裁判2」をプレイしている人は体験済みだが、プラットフォームをDSに移したことにより、ユーザーインターフェースも変更されている。

 具体的には、タッチペンの操作に対応、法廷パートでマイクを使い「待った!」や「異議あり!」を音声入力できる、証拠品をポリゴンで表現しており角度を変えて検証できる、など。正直、音声入力は恥ずかしくて使いづらいが、タッチペン操作はいい感じだ。探偵パートでの捜査時、事件現場を調べるときに気になる場所をタッチするだけでOKなので、ポインタが上手く合わずにイライラするということがなくなっている。

 また、「逆転裁判」シリーズでは各話の冒頭で事件発生時の模様がプロローグデモとして描かれるが、「逆転裁判4」ではムービーなども挿入され、相当動くようになっている。TVドラマ「刑事コロンボ」シリーズや「古畑任三郎」のように、冒頭から事件に引き込まれること請け合いだ。もちろん、倒叙ミステリーではないので誰が犯人かは明かされないが。

【ムービーシーン】
第1話冒頭で流れるプロローグデモ。モノトーンで描かれたムービーが流れ、事件発生の雰囲気を伝えている


 さらに、「逆転裁判 蘇る逆転」で宝月茜の登場とともに導入された「カガク捜査」も引き続き登場。探偵パートの証拠品集めにおいて、指紋検出といったオーソドックスなものから、足跡を検出するものなどの「カガク捜査」を行なうことになる。

 前作以前のシリーズタイトルには“霊媒”や人の心を閉ざす錠前を視覚化する「サイコ・ロック」という要素があったのだが、この「カガク捜査」はこれまでに探偵パートに存在した「サイコ・ロック」の代わりに追加されたという印象が強い。「カガク捜査」自体には証拠品集めの一貫という地味な作業が多いが、文字を読むことが基本となるアドベンチャーゲームの中でタッチペンを使う作業は箸休めのような効果もあり、楽しめる。今回は探偵パートのエッセンス的な色合いが強いが、もっと「カガク捜査」を押し出して、ストーリーのメインになるエピソードがあってもいいのではないかとも思う。

 筆者としては、ミステリーの世界において「霊媒」や「サイコ・ロック」などの超常現象が当たり前に存在することに違和感があったため、「カガク捜査」追加による路線変更を歓迎している。マジシャンであるみぬきちゃんのマジックは超常現象のように見えるが、マジックなのでOKだ(ゲーム中でタネは明かされないけれど)。

【カガク捜査】
第2話で登場する「カガク捜査」は指紋検出と足跡検出の2種類。物語を進めていくと、その他の「カガク捜査」も宝月茜から教わることができる


 そして本作からの新要素となるのが、「みぬく」という新システム。人間は、ウソをつくときに緊張状態になるもの。その結果、表面に現われる何らかの反応を“みぬく”というのがこのシステムの理屈だ。松岡圭祐氏の著作「催眠」シリーズなどでスポットが当てられた、神経の表情筋への作用をわかりやすくしたようなものだ。

 主人公のオドロキくんはある条件によって、この緊張状態による変化を見抜けるようになる。ゲーム的なシステムとしては、法廷パート中に証人が証言している最中に“みぬく”ことで、その人が隠していることがわかる。初めは戸惑うかもしれないが、使いどころは彼が身につけている腕輪が教えてくれるので、いつ使用可能かわからないということはない。証人が他のセリフをしゃべるときと違う動き、反応を見せた所が“みぬきどき”なので、落ち着いて観察しよう。間違えてもペナルティはない。

 この「みぬく」は、法廷パートのみで使用できることもあり、新たな法廷戦術のひとつという位置づけ。証拠品をつきつけて“ムジュン”を暴いていくのとは一味違う、「証人を追い詰めていく感」を味わえる。

 既存の「ゆさぶる」と「つきつける」と合わせることで、証人に対して言葉でゆさぶりをかけて動揺を誘い、緊張をみぬくことで攻撃するべきポイントを見極め、止めに証拠品を突き付ける、というようなコンボに発展していくと面白いかもしれない。次回作が発売されるのであれば、さらにこの要素を活用した法廷バトルに期待したい。

【みぬく】
証言台に立っている証人の姿がズームされ、その動きを観察できる。ズームでないと見えない動きや変化もあるので、怪しいところは徹底的に調べたい



 「逆転裁判4」の発売元であるカプコンは、「新章開廷!!」をキーワードに本作の広告展開を行なっている。なるほどくんを主人公としてきた「逆転裁判」から「逆転裁判3」がシーズン1だとすると、これからはシーズン2といったところか。物語の主軸となる面々が変わったこともあり、本作を「新章」とするのもうなずける。

 と、ここまで「逆転裁判4」の新要素について触れてきたが、真犯人のウソをあばき、証拠品を突き付けて“ムジュン”を解明していく快感、といった「逆転裁判」の本質的な面白さは変わらずに強く残っている。「逆転裁判」シリーズはすでに多くのファンを持つ人気タイトルのため、登場人物の一新をはじめとしたさまざまな変更を加えることは大きな挑戦だっただろう。

 システム面に関しても、「逆転裁判2」の時点で既に1つの完成形に達していたため、変えるべきでない部分と新要素の融合には慎重になったであろうと思われる。その意味では、「逆転裁判4」での挑戦はまずまずの成功を収めているといっていいだろう。変わらずに「逆転裁判」シリーズの新作として楽しめる内容に仕上がっているので、シリーズのファンは安心して存分に遊んでほしい。

 そして「逆転裁判4」ではじめてシリーズをプレイした人は、ぜひこれまでのタイトルにも触れてほしい。本作の登場人物や舞台設定など、背後にある物語が数多く描かれており、4作にわたり続く「逆転裁判」の面白さも、さらに感じてもらえるはずだ。

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□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「逆転裁判4」のページ
http://www.capcom.co.jp/saiban4/
□関連情報
【4月12日】カプコン、DS「逆転裁判4」
「逆転裁判4」公式携帯サイトにてTVCMを先行配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070412/gs.htm
【3月29日】カプコン、DS「逆転裁判4」
第1話「逆転の切札」情報を公開!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070329/gs4.htm
【2004年2月19日】GBAゲームレビュー「逆転裁判 3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040219/saiban.htm
【2002年10月30日】GBAゲームレビュー「逆転裁判 2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021030/saiban.htm
【2001年11月12日】ゲームボーイアドバンスゲームレビュー
被告人の無罪を勝ち取れ!!「逆転裁判」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011112/gyaku.htm

(2007年4月27日)

[Reported by 眞鍋航希]



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