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会場:東京デザインセンター
今回発表されたのは、オンラインスポーツシミュレーション「プロ野球チームをつくろう! ONLINE」、同「プロサッカークラブをつくろう! ONLINE」、オンラインゴルフゲーム「SPLASH! GOLF」、オンラインRPG「ファンタシースターユニバース イルミナスの野望」、「ゾンビ打 ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド2」の5タイトル。本稿では取り急ぎ、発表会の模様と、発表会から見えてきたセガのPCオンライン戦略について紹介していきたい。ゲームの詳しい内容については別稿にて紹介する。
■ 「SEGA PC」復活の狼煙と新たなPCオンライン事業の幕開け
しかし、2005年以降、セガのPCオンライン事業は、元NC Softのスタッフが中核となって進められたSEGA Link事業にシフトし、「SEGA PC」は既存タイトルの価格改訂版や単発モノの海外PCタイトルが続くという苦しい時代が続いた。2007年3月30日にSEGA Linkが終了したことに伴い、再び「SEGA PC」ブランドを前面に押し出す形で、PC事業単独で発表会を開くほどの勢いを取り戻した。 特に2006年は、「RF Online」のサービス終了、そして「ファンタシースターユニバース」のサーバートラブルなどネガティブな話題が続いたこともあり、今回の発表会は、「SEGA PC」復活の狼煙といった印象がある。 一方、セガ全体としてみると、オンラインサービスの拡充を戦略目標として掲げており、その先駆けとして「SEGA PC」が選ばれたという見方もできる。近年セガはアジア地域への投資を拡大しており、もともと「SEGA PC」の資産もあることから、PCオンラインゲーム市場に対して、日本のゲームメーカーとしてはもっともいいポジションにいる。 SEGA Linkは、ノウハウ、コンテンツともに韓国式オンラインゲームビジネスの直輸入だったが、今回は、海外展開も視野に入れたデジタルコンテンツサプライヤーとしてのセガ本来の強み、「SEGA PC」の資産を活かしたPCオンラインゲーム戦略が披露された。 まず最初に登壇したセガ常務取締役岡村秀樹氏は、「SEGA PC」は現場がこだわりを持っているネーミングであり、'98年に発売されたドリームキャストに通信モジュールを標準搭載していたこと、2000年には家庭用ゲーム機向けとしては世界初のオンラインRPG「ファンタシースターオンライン」をリリースしたことなどを紹介し、セガは古くからオンラインゲームへの取り組みを行なっていたことをアピールした。 その上で岡村氏は、昨今、次世代機が世界中で出そろい、携帯型ゲーム機市場が急成長するなど家庭用ゲーム機市場が賑やかになり、PCゲーム市場でもWindows Vistaが登場し、機能性の向上と共にハイスペックPCの普及が進みつつあることに着目し、「ステージが変化しつつある」という見方を示した。 村岡氏は、これはハンドリングが非常に難しくなる一方で、セガにとっては大きなチャンスの時期だという認識を示し、「そのような時代に優良なコンテンツを提供するのは当然の話で、さらにいかに個性的なラインナップを提供できるか、これがセガとしての責務ではないか」と話を繋げ、セガの新PCオンラインゲーム戦略を開陳した。
■ 有力キャラクタIPの積極活用、アイテム課金化の採用、大胆な施策続々
・ユーザーコミュニティの育成 ひとつずつ補足していくと、まずユーザーコミュニティの育成については、SEGA Linkのようなオンラインゲームとは切り離されたアバター&カジュアルゲームビジネスから決別し、ゲームファンにとって居心地のいいゲームデータと直結したコミュニティサービスの展開をはかる考えだ。 具体的には、「野球つく ONLINE」や「サカつく ONLINE」において専用ウェブサービスをユーザーに対して無償提供し、ユーザーはウェブブラウザから自チームやライバルチームの情報を得たり、「mixi」のようなコミュニティサービスを行なえるようだ。 スポーツタイプのオンラインゲーム化は、今回発表された「野球つく ONLINE」や「サカつく ONLINE」といった、セガが持つスポーツゲームのオンライン化を指す。日本にはまだスポーツを題材にしたオンラインゲームは数が限られることもあり、「なかなかゲームに時間がとれない忙しい大人でも不定期、短時間で楽しめる」ことを重視したカジュアルだが奥行きの深いオンラインゲームを提供していく。 3つ目のビジネススキームの変化は、日本のゲームメーカーでは採用例の少ないアイテム課金への対応を意味している。岡村氏によれば、アイテム課金への対応は、時代と世界の趨勢であり、アイテム課金化によってハードルを下げる狙いがあるという。今回の採用例としてはオンラインゴルフゲーム「SPLASH! GOLF」が挙げられる。 有料アイテムとなるのは、衣服やゴルフグッズ、新キャラクタ、キャディなど。セガらしい要素としては、キャラクタには衣装の好みがあり、衣装の組み合わせによって感情が変化し、結果としてモーションが変化する。つまり、衣装を換えると見た目だけでなく、モーションも変化するところが新しい。肝心のゲーム内通貨用アイテムと有料アイテムの切り分け、それぞれの価格設定については、これから詰めていくとのことだ。 最後のセガの有力シリーズ、キャラクタIP(知的財産)の積極活用は、老舗のゲームメーカーであるセガの強みを活かした動きだ。たとえば、「SPLASH! GOLF」のキャディを、ソニックや「スペースチャンネル5」のうらら、「ぷよぷよ」の“ぷよ”など、セガお馴染みのキャラクタが務めてくれたり、空に浮かぶ「ソニックコース」などコースデザインとして馴染み深い舞台が採用されていたりする。 キャディたちは、ボールを追いかけてくれるだけでなく、一緒に記念撮影したり、きちんとシミュレーションした情報をもとに的確なアドバイスを提供してくれたり、場合によっては特殊なショットを打つことなどもできるようだ。有名キャラクタIPの活用の可能性は無限大であり、オンラインゲームファンのみならず、セガファンとしても気になる要素だろう。 最後に、今回岡村氏はまったく触れなかったが、ひとつ気になったのは、オンラインサービスと顧客情報を一元管理するゲームポータル戦略である。「SEGA Link」の後継サイトとなっている「セガインターネットゲームナビ SIGN」は、その名の通りナビゲーターサイトで、セガオフィシャル情報をまとめたリンクサイトの機能しか持っていない。 SEGA Link時代は、明快にゲームポータルとしてすべてのオンラインコンテンツをSEGA Linkにまとめ、ユーザー情報や課金決済を一元管理する意向を示していたが、現在はISAOに委託する形で各タイトル個別に登録する必要がある。今後、ラインナップが増えるたびにすべて1からユーザー登録させるつもりなのか、それとも自社にこだわらずに他社のゲームポータルサイトにチャネル提携して入り口を広げていくつもりなのか。
仮にタイトル個別だとすると、岡村氏の言う“ユーザーコミュニティの育成”とは、タイトルに限定された概念になってしまう。各大手ゲームポータルが有力コンテンツ獲得にしのぎを削る昨今、今回の「SEGA PC」タイトルの登場はどのような影響をもたらすのか。セガの今後のPCオンラインゲーム戦略をゆくえをじっくり見守りたいところだ。
(C)SEGA
□セガのホームページ (2007年4月20日) [Reported by 中村聖司]
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