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Game Developers Conference 2007現地レポート

2007年北米売り上げトップはXbox 360「Halo 3」
ゲーマーの志向から2007年市場大予測
IGN、「30Million Gamers Can’t be Wrong」、「Breaking the In-game/ Out-of-game Barrier」

3月5~9日開催

会場:Moscone Convention Center

 “2007年で次世代機タイトルを席巻するのはXbox 360「Halo 3」”、ゲーマーの志向からこんな予想を立てた会社がある。月間ユニークアクセス2,800万ユーザーを擁する「IGN.com」を筆頭に「GameSpy」、「TeamXbox」といったゲーマー向けコミュニティサイト運営会社の系列会社IGN GamerMetricsだ。

 今回お伝えするIGNが提供する2つのスポンサーセッションでは、大規模なゲームコミュニティを擁し、ビジネスを行なっているIGNの系列会社が、それぞれが運営するサービスから得られた分析や提言を行ない、好評を博していた。コミュニティマネージメントという点でもグループ全体で小国の人口にも匹敵するほどのアクティブユーザーを擁する彼らが、1人1人のユーザーをいかに引き立たせるかに主眼を置いて話していたのには非常に興味深かった。

 冒頭でお伝えした市場予測をはじき出したのは、IGN系列各社が運営する各ゲームコミュニティポータルのユーザーの嗜好を分析し、導き出された数値から売り上げ分析やユーザー動向などを運営会社や開発会社、銀行、パソコンメーカーなどに提供しているIGN GamerMetrics。IGN GamerMetricsが市場予測の際に使う表現方法はマインドシェアと呼ばれ、特定ブランドや企業が消費者の心理の中で占有率を表すものだ。IGN GamerMetricsではサイトごとに、タイトルやゲーム機本体に関するページへのページビュー、ウィッシュリストへの登録、Eメールアラートへの登録状況などから導き出され、発売前のマインドシェアから発売後の売り上げ本数などを予測しようというものだ。これら一連のインテリジェントツールは「GamerMetrics」と名づけられ、様々な角度からのユーザー動向分析に用いられている。

 GDC 2007、3日目にはIGN GamerMetricsプロダクトマネージャーScott Mucci氏と同ビデオゲームアナリストNick William氏によるセッション「30Million Gamers Can’t be Wrong」が行なわれ、「GamerMetrics」によりはじき出された2007年の次世代機タイトルのマインドシェアトップ10が公開された。また、4日目のセッションでは、IGN Entertainment プロダクトマネージャーSean Flinn氏とGameSpy Industries SDKプロダクトディレクターのTodd Northcutt氏によるセッション「Breaking the In-game/ Out-of-game Barrier」が行なわれた。コミュニティマネージメントを担う側から、開発会社に対しゲームの開発段階からコミュニティを取り込み、コミュニティビジネスも含めた長期的なビジネスモデルでゲーム開発を行なうよう提言がなされた。

 その中で、将来的にユーザーコミュニティに対するサービスが単体でランニングするようになれば海賊版の存在が怖くなくなるかもしれないといった発言が飛び出すなど、ゲームをフックとしたコミュニティ運営にまで大胆なビジョンも描けているようだ。成熟したコミュニティに投入するものとして最初に拡張版を持ってくるところはBOX販売主体の北米ならではの方向性だと感じたが、彼らが目指すコミュニティビジネスの基本モデルが示されたことは非常に興味深かった。


■ 2007年の北米売り上げトップは「Halo3」と予測。コミュニティサイトのマインドシェアに見る売り上げ予想

マインドシェアによる次世代機3機種のランドスケープ。Xbox 360「Halo3」が2位PS「God of War II」に倍差をつけている
 Nick Williams氏は、まず2006年の事例を引きながらゲーマーのマインドシェアにより2006年の売り上げ予想とその結果を紹介した。売り上げが上方に伸びた例として、「Crack Down (邦題:「ライオットアクト」)」の例を挙げた。

 本作の発売2カ月前にIGNにスクリーンショットが公開されると一気にIGNサイト内の関連ページへのアクセスが跳ね上がり、「Halo3」βテストプロモーションが本作にバンドルされることが発表されるとさらにその数は上方に跳ね上がる。IGN GamerMetricsはこの時点で25万本の販売数を予想した。発売日1週間前にIGNサイト内で本作のレビューがアップロードされ、格付けでは8.0とレーティングはまあまあといったところ。しかし「Halo3」のβプロモーションが含まれるというハロー効果で、販売数では予想を大きく上回る35万本を達成したと報告。

 一方で、10点満点で9.1という驚くべきレーティングを獲得したが販売数が振るわなかったXbox 360「F.e.a.r.」の例も紹介。Xbox 360「CALL OF DUTY 3」、Xbox 360「SPLINTER CELL DOUBLE AGENT」、Xbox 360「GEARS OF WAR」、Xbox 360「Rainbow Six: Vegas」といった競合タイトルに埋もれ、発売直前まで停滞したマインドシェアを覆す材料がなく、販売シェアもマインドシェアと同じ割合になってしまったとのこと。

 これを踏まえ、2007年の次世代機タイトルのマインドシェア占有率ランキングを発表した。1位Xbox 360「Halo 3」、2位PS2「God of War II」、3位Wii「Super Smash Bros.Brawl」、4位Xbox 360「Mass Effect」、5位Xbox 360「Ghost Recon Advanced Warfighter」、6位Xbox 360「Assasin’s Creed」、7位Wii「Super Mario Galaxy」、8位Xbox 360「Guiter Hero II」、9位Xbox 360「BioShock」、10位Xbox 360「Grand Theft Auto IV」になるとのこと。

 発表した内容を見る限り、Xbox 360の一人勝ち、「Halo3」がダントツという格好だ。あくまでボックスタイトルにデータがとどまっているが、オンラインゲームでもこうしたマインドシェアによる分析は可能だという。オンラインゲームで主流となっている、ゲーム内でサービスの価格が決まるアイテム課金や、それらのユーザー数など、ボックスタイトルの行方ばかりでなく、ビジネスモデルの変化にも対応できるようなリサーチ技術の向上にも期待したいところだ。

Nick Williams氏 Scott Mucci氏
次世代機3機種のプラットフォーム別インデックス。北米ではPlaystation 3が失敗しているとはいえず、Wiiと拮抗しつつXbox 360を追従している格好を示している。3千万人という巨大なコミュニティを様々な角度から分析することによって、実勢の販売に近いデータを出すことが可能なのだという



■ コミュニティビジネスを見越したゲーム開発を! コミュニティマネージャーの語るゲーム開発

Sean Flinn氏
 4日目に行なわれた「Breaking the In-Game / Out-of-Game Barrier」では、コミュニティビジネスを見越したゲームとゲーム周辺のサービス開発について語られた。GameSpyは月間850万ユニークユーザーのアクセスがあるマルチプレイゲームのユーザーコミュニティとして知られ、タイトルごとのフォーラムやマッチングサービスを提供している。

 両氏はコミュニティ作りで大事なこととして、まずは忠誠心の高いファン層を作ることとした。PS2「ギターフリーク」を例にマルチプレイの無いゲームでもYoutubeには数多のリプレイがポストされていることを挙げ、ゲーム外にユーザー間のコミュニケーションをサポートするツールの存在が、こうした忠誠心の高いファン層を育んでいるとした。また、インゲームのレベルエディターで、「Mini Mario vs. Donkey Kong 2: March of the Minis」のマップがユーザー間で盛んに交換され、遊ばれている例を紹介、インゲームから外に広がるコミュニティの可能性を説明した。

Todd Northcutt氏。「BattleField」のStatsは武器の扱いや殺傷率など様々な角度から順位をつけることができ、結果たくさんのナンバーワンを生む結果となっているとし、ユーザーを引き立たせるプロセスを高く評価した
 こうした取り組みが売り上げに反映できているものとしては、「BattleField」シリーズを挙げた。ゲーム内のBuddyリストがデスクトップ上でも見ることができ、公式のポータルサイトで、ユーザーのプロフィールやStatsを公開している。ユーザーにとって、ゲームをしていないときでもゲームのことを考えていられるような環境をパブリッシャーが積極的にとっている典型である。

 さらに、ランキングの成長の度合いをWebで見ることができるところはいかにも素晴らしいと述べた。ゲームをプレイせずともWebに人が多く集まるようになり、たくさんのオーディエンスが作られたところで、拡張版やイベントをユーザーに自然と勧めることができるようになるだろうと述べた。

 開発者へのメッセージとして、両氏は「オンラインゲームに限らずコミュニティを巻き込んだゲーム設計、投資設計で開発をスタートし、コミュニティマネージメントを含んだミドルウェアへの投資を惜しまず、ユーザーがゲームをやめてからでも楽しめるようなゲーム作りをしていかなければならない」と話し講義を締めくくった。オンラインゲームタイトルの例を一切引かず、ボックスタイトルでのゲーム設計を述べているところはいかにも北米らしいセッションだった。

コミュニティサービスがビジネスに結びつくまでは、ユーザーを引き立てる工夫を一貫して行ない、ビジネスに結びつくのは最終段階という。5年間続ける気がないのなら初めからよしたほうがいいとのこと。オンラインゲームの話ではなく、コンシューマやPCタイトルのビジネスからこうした発想にたどり着くのが北米らしい
Valveのプラットフォーム「Steam」のように、ユーザーが作ったModなどのコンテンツの公式販売を運営側が提案するなど、ユーザーがいるからこそ成り立つビジネスが派生してくる


□Game Developers Conference(英語)のホームページ
http://www.gdconf.com/
□Game Developers Conference(日本語)のホームページ
http://japan.gdconf.com/
□IGNのホームページ
http://www.ign.com/
□関連情報
【3月7日】サンフランシスコにてGame Developers Conference 2007が開催
史上最大規模での開催。任天堂とSCEのキーノートに期待
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070306/gdc2007.htm
【2006年3月22日】Game Developers Conference 2006がサンノゼにて開催
任天堂、SCEの基調講演と日本人セッションに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060322/gdc2006.htm
【2006年3月】Game Developers Conference 2006 記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060324/gdclink.htm

(2007年3月9日)

[Reported by 三浦尋一]



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