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GDC2007 チュートリアルセッションレポート
“Know Your Players”、“Audio Boot Camp”

3月5日~9日(現地時間) 開催

会場:Moscone Convention Center

 米サンフランシスコにあるMoscone Convention Centerにて、3月5日から9日(現地時間)の日程で開催されているGDCでは、初日と2日目に「チュートリアル(TUTORIALS)」と呼ばれる基礎的な内容を中心としたセッションがいくつも開かれている。3日目からの本格開催に先駆けた“準備運動”のようなものだが、ここではTUTORIALSセッションの中から、“Know Your Players”と“Audio Boot Camp”の2つを紹介する。



■ Know Your Players ~顧客の性向を知る~

 “Know Your Players: An In-Depth Look at Player Behavior and Consumer Demographics”と題されたチュートリアルセッションは、ひらたくいえば「顧客の調査およびマネージメント」のゲーム業界版といったもの。ゲーム開発者向けのカンファレンスといっても技術的なことばかりではなく、こうした類のセッションも積極的に催されている。

 αやβといったテストプレイからの効率的なフィードバック、統計や測定の考え方、プレイスタイル、購入動機、市場分析、それらに対するメソッドのありかたなどが、スライドとゲスト陣のスピーチによって解説されていく。こう記載すると何やら経済学的な小難しい内容を想起してしまうが、そこはTUTORIALSとあって、導き出される具体的な提案は、マーケティングなどのビジネス書籍と共通する「ゲーム(売り手自身)を理解する」、「問題点の本質を明らかにする」といった内容が多い。

 ただし、ゆえに本セッションがありきたりでつまらないかといえば、そんなことはない。基本的だからこそ誰にでもわかりやすいものになっており、豊富なスライド資料、Wiiと「Wiiスポーツ」、Xbox 360と「Gears of War」を用いた実践形式のレクチャーと質疑応答など、聴衆を飽きさせない工夫が凝らされている。

 ゲーム機を使用したレクチャーは、たとえば「Wiiスポーツ」を使った実践形式では、Wiiに始めて触れるプレーヤーをサンプルとして起用。「はじめてコントローラーを握った感触はどうですか?」など、プレーヤーが本体とソフトをどのように楽しむか、観客からの質疑応答を交えて実際に調べていくといった形式になっていた。

 こうしたセッションは、コンテンツ開発および提供側だけでなく、それを享受するプレーヤー側としても興味深いものがある。セッションで提示された「どうすれば顧客を理解できるか」は、裏を返せば「コンテンツやサービスの運用法から、安心して選択できる会社がわかる」といった部分にもつながる。複数メーカーの開発者が忌憚無く意見を交換できるGDCのスタイルをそのまま持ち込むのは難しいだろうが、なんらかの形で日本でもぜひ実施していただきたいセッションのひとつといえるだろう。

豊富なスライドデータと双方向性のあるやりとりで、見る側を飽きさせない工夫がなされていた



■ Audio Boot Camp ~ゲームサウンドとは何か、を広く学ぶ~

 GDCのセッションは、プログラミングやビジュアルアーツ、ゲームデザイン、プロダクションなど、いくつかのジャンルに分けられており、オーディオもそのジャンルの1つとして設定されている。“Audio Boot Camp”は、その基礎となるもので、技術的な話に入る前段階として、基礎知識に関するセッションが開かれている。

 “Audio Boot Camp”の面白いところは、セッションの中で、実際にゲームサウンドをサンプルとして使ってくれるところ。例えばゲームサウンドの歴史についてのセッションでは、'70年代から始まるゲームサウンドの変遷をたどりつつ、各時代のサウンドを流してくれた。インベーダーゲームから始まり、プレイステーションの世代に至るまで、どのような技術革新があり、結果どういったサウンドが奏でられるようになったかが、ものの数十分で把握できてしまう。ゲーム好きなら誰でも楽しめる面白い内容だが、GDC以外ではちょっと見られない。

 他には、ゲームと映画など他のメディアを比較して、ゲームサウンドの特徴をわかりやすく解説するセッション、水中で手を動かす音を飛行機のジェットストリームに当てはめるなど、“リアルではない”音を使ってサウンドの演出効果を高めるテクニックを紹介するセッションなどが開かれた。これらも誰でも理解できる内容だが、特にサウンドのテクニックを紹介するセッションでは、聴講していたサウンドクリエイターも興味をそそられる場面が多かったようで、会場のリアクションも大きかった。

 またいくつかのセッションでは、ゲームサウンドの展望が語られたが、“Emotional”な表現がキーになるという答えが多く見られた。あくまでチュートリアルなので技術的なことは意図的に避けている部分もあるのだが、サウンドクリエイターに求められるものが従来はテクニックよりだったものが、創造性に移っているとするものもあった。今後は開発の場面でも、GDCでの発表の場面でも、単純に技術を追っているだけでは足りないというメッセージが見て取れた。

 全体を通してみると、「ゲームサウンド」の学校で、科学や歴史などいろいろな科目を学んでいるような印象を受けた。サウンドクリエイターばかりではなく、ゲームサウンドに興味があるユーザーでも十分楽しみながら聴講できる。特にサウンドクリエイターを目指す人には、非常に価値ある内容になっており、これが開発者向けのGDCでしか見られないのが残念だ。

スライドの中にサンプルのオーディオファイルが準備してあり、言葉だけではわかりにくいニュアンスも非常に伝わりやすく、理解しやすいセッションが続いた。具体的な技術を紹介するものはほとんどなかったが、聴覚の欠陥を突いた科学的なテクニックの紹介(中央)や、実際のゲームを例にしたサウンドの分析(右、PS3「Heavenly Sword」)なども行なわれた


□Game Developers Conferenceのホームページ
http://japan.gdconf.com/

(2007年3月6日)

[Reported by 豊臣和孝/石田賀津男]



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