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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人200台湾ドル(約800円)
■ なぜアーケードゲームは台北ではまだまだマイナーな存在なのか?
ゲームセンターの展開を規制しているのは台湾政府経済部ではなく台北市政府で、従って台中や台南では、ゲームセンターが展開されている。台北市政府は、首都の機能を持つ台湾の中心地だけあって、他の市政府に比べて規制が厳しく、現状では教育的要素、完全中文化(繁体字)、子供向けといった諸条件を満たさないと申請が降りない。 なぜ台北市でここまで規制が厳しいのかというと、遊技場(ゲームセンター)がもっぱらギャンブルに悪用された経緯があるためで、現在でもなお台湾全土にある約4,000店舗の遊技場のうちの90%以上は、ギャンブル施設になっているという。つまり、台湾では業務用のスロットマシンやメダルゲームが相互換金可能なギャンブル機として悪用されてきたわけだ。台湾市政府の施策は、いわば物理的な締め出し策といっていい。 このため、台湾でもアーケードゲームメーカーは存在するものの、最初から中華圏向けの輸出用として開発が進められている。しかし、これでは地場産業として成立しにくいため、アーケード大手のIGSなどは、業務の中心をオンラインゲームに鞍替えしたりしている。こうした背景から日本を中心とした海外のアーケードメーカーは、台湾市場への進出を断念し、中国市場を視野に入れ始めている。 しかし、そこは輸入版、海賊版が興隆を極めた台湾だけに、アーケード業者による“アーケード筐体の直輸入”という離れ業によって、台中、台南を中心に細々と展開されている。しかしながら、台北は規制で展開できないというのが、台湾アーケード市場の実状である。
このため、今回セガがアーケードゲームをTaipei Game Showに出展したのは、それそのものがエポックメイキングな出来事で、これまでの経緯から個人的にも「もはや台湾でアーケードはないだろう」と考えていただけに、ついつい念入りに取材してしまった。それでは以下、セガ台湾のアーケードビジネスの状況をお伝えしていきたい。 ■ 「三国志大戦」は30箇所に展開予定。台北進出は市政府の法改正に期待
セガ台湾ブースには「世嘉三国志大戦」が8台、「恐竜王」と「LOVEANDBERRY」が4台ずつ設置されていた。「世嘉三国志大戦」は、筐体のロゴのみを変えた日本語版筐体で、「恐竜王」と「LOVEANDBERRY」は完全中文版。 このうち「恐竜王」と「LOVEANDBERRY」、そして「ムシキング」は、すでに台湾では出荷が始まっている。「ムシキング」は2004年から設置がはじまり、設置台数は約800台。「LOVEANDBERRY」は2005年8月から、「恐竜王」は2006年1月からそれぞれ出荷が開始されている。出荷台数は、それぞれ約500台と約300台となっている。軽く1万台を超える日本と比べると寂しい限りだが、日本で爆発的なムーブメントを巻き起こしたこれらのゲームが徐々に台湾にも浸透していることが伺える。 ちなみになぜビデオゲームではなく、カードゲームばかりを出展しているのか、つまりビジネスとして重きを置いているのかというと、ビデオゲームは先述した直輸入の問題があり、カードの供給の問題から構造的に輸入版が発生し得ないカードゲームをビジネスの主軸に据えることで、輸入版のリスクを元から絶つという判断のようだ。 この背景には、ニンテンドーDS版が日本で発売され、それが非正規の輸入版として相当数台湾に流れてきているという事情もプラス要因として加味されている。このあたりはなんというか非常にアジア的なビジネスと言える。 さて本命の「世嘉三国志大戦」は、現在台中、台南、桃園の3箇所でロケテストを実施しており、年内に25店舗から30店舗へと展開店舗を広げる見込み。念のために触れておくと、今回台湾で展開されるのは現在日本で展開している「三国志大戦2」ではなく、初代「三国志大戦」で、バージョンは1.1と若干古めのものを採用している。カードはいきなり全230種類を揃えるようだ。 先述したように、ゲーム、カードの説明文、筐体の説明文はいずれも日本語版のままで、店舗用の案内板や小冊子「戦術指南書」のみ中文化されている。さしずめ中文マニュアル付き、日本語版といったところだ。 プレイ料金は1回60台湾ドル(約240円)。日本より若干安めの設定となっているが、台湾の物価水準からするとかなり高い。基本プレイ無料のアイテム課金全盛の台湾では尚更割高感がある。しかし、コアゲーマー率が世界一高いと言われる台湾では、DS版の存在もあるためか、ユーザーはまったく抵抗感なくコインを投入してカードを手にし、ゲームプレイを楽しんでいた。 店舗に対しては4台1セットでレンタルのみ、カードの供給はセガが行なう、というシンプルなビジネスモデルを採用。現在は店舗間の相互接続は実施しておらず、店内対戦のみとなる。対応は3月を予定。ちなみに先行する香港では、すでにネットワーク対戦に対応し、対応店舗も16店舗に上るということだ。 気になる台北への進出は、「市政府の法改正次第」という。法改正は市政府が決める案件なので、見込みは立っていない。業界的には、「そろそろ改正されるかも」と毎年言われ続けてきて実際にはまったく変化がないため、現在はあまり期待せずに今できることを進める方針だという。
台湾でゲームセンターにまだ遭遇したことがないためなんとも言えないが、Taipei Game Showやネットカフェでのユーザーの熱中度、食いつきの良さ、そしてなんといってもゲームに対するひたむきな姿勢を見ていると、一大アーケード市場が台湾に生まれる可能性は否定できない。今後の動向に期待したいところだ。
□SEGA AMUSEMENTS TAIWANのホームページ (2007年2月9日) [Reported by 中村聖司]
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