【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

テクモ/SeedC、「『LieVo』カンファレンス 2007 WINTER」を開催
レッドとさくらインターネットが新規参入、「LieVo」の目玉は「天外魔境ONLINE」

1月31日開催

会場:泉ガーデンギャラリー

 テクモ株式会社とSeedC株式会社は、1月31日、都内で両社が共同事業として取り組んでいるオンラインゲームプラットフォーム「LieVo」の新規展開に関する記者発表会を開催した。

 発表会では、レッドエンターテインメントとさくらインターネットの2社が「LieVo」プロジェクトに新規参入したことが発表されたほか、レッドエンタテインメントが手がけるビッグタイトル「天外魔境ONLINE」を筆頭に多くの新規タイトルが公開された。本稿では発表会前半に明かされた「LieVo」プロジェクトの2007年度の事業戦略と、新しいパートナーについてお伝えしていく。発表会後半で紹介された「LieVo」コンテンツの具体的な紹介については別稿にてお届けしたい。


■ SNS、WIKI、RSSなどコミュニティ機能を3月31日にいよいよ実装、「LieVo」が目指すプラットフォーム構想とは何か?

「LieVo」の2007年の戦略を発表するテクモ代表取締役社長安田善巳氏
「LieVo」はグローバル&オープンプラットフォームとして位置づけられている。グローバルはともかくどの程度オープンにできるのか。プラットフォーマーとしての懐の深さが試される部分だ
「LieVo」の2008年末までのタイトル展開ロードマップ。海外展開よりもむしろ日本でのタイトル数の多さに注目したい。「LieVo」として個々のタイトルをどう回していくのかが注目される
「LieVo」に配信する各オンラインゲームタイトルのプロジェクトリーダーたち。中央は「ギャロップレーサーオンライン」エグゼクティブプロデューサーの原尾宏次氏
 発表会は、テクモ代表取締役社長安田善巳氏の挨拶から幕を開けた。安田氏はまず、2006年10月から正式スタートした「LieVo」の現状報告を行なった。安田氏によれば、この3カ月間で、「LieVo」プロジェクトに参入を希望するメーカーが、国内外から現われ、現在も20社もの企業と協議を続けている段階だという。

 その中で「プラットフォームとは何を意味するのか?」、「他社のゲームポータルと何が違うのか?」といった質問も生まれてきているという。確かに「LieVo」には8月に発表された初期構想のうち、上記に該当する機能はほとんど実装されていない。1月時点では、プラットフォーム構想、他ゲームポータルとの差別化共に不十分なのが現状だ。表面をなぞる限りでは、韓国NHNのグローバル戦略ときわめて似通っており、「『Hangame』と争って勝てるのか?」という疑問が生まれても不思議ではない。

 こうした疑問に対し安田氏は、「Web上にクリエイターとユーザーによる世界規模のゲーム市場の創造」、「世界中のクリエイター同士の交流とコラボレーションを促進する」という「LieVo」のビジョンを改めて示しつつ、他のゲームポータルとはビジネスモデルからして異なることを強調。その上で安田氏は、「ノウハウ、スキル、顧客基盤をオープンにし、共有化することで参加パートナーが活性化していくことを目指している」とコメント。

 安田氏の発言は、8月の「LieVo」構想の発表当時と同じ内容であり、発言内容にまったくぶれがない。安田氏が目指しているのは、オンラインゲーム運営を下支えする共通基盤をオープンプラットフォームとしてサードパーティーに提供し、オンラインゲーム参入への障壁を一気に下げることで正のスパイラルを構築し、結果としてクリエイター(メーカー)とユーザー(ゲームファン)がどんどん集まる仕組みをワールドワイドレベルで構築していくということであり、そのビジネスのコアとなるのが「LieVo」プラットフォームということになる。

 「LieVo」プラットフォーム戦略における具体的な動きとなるのが、「ユーザー創造サービス」と「クロスボーダーソリューション」の2つである。「ユーザー創造サービス」の具体的な取り組みとしては、新型SNS、RSS、攻略WIKI、ギルドマップ機能の4つを挙げており、2007年3月31日より順次LieVoの無料サービスのひとつとしてLieVoユーザーに提供していく。

 これらのWeb2.0的コミュニティサービスの魅力は、ユーザーとメーカーの双方にメリットをもたらす仕組みが盛り込まれているところだ。ユーザーに対しては、ゲーム内データとの連動を柱とした濃密な情報がやりとりできる独自のコミュニティサービスを提供することで、ユーザー間でよりゲームに直結したコミュニティの構築が可能になり、一方メーカーとしてもユーザーとの距離感が格段に近くなることからユーザーからアイデアを吸収しやすくなり、ロイヤリティの高いユーザーとのコラボレーションも容易になる。オンラインゲームとはいえ、ごく一部のメーカーを除き、ユーザーとクリエイターの距離感は遠いままだ。これらWeb2.0サービスを通じて、オンラインゲームコミュニティにどのような変化が生まれるのか注目したいところだ。

 一方、「クロスボーダーソリューション」は、要するに国境やゲームプラットフォームを越えたクロス展開を指しており、参考例として安田氏は昨年11月にテクモがWii向けにリリースした「スイングゴルフパンヤ」を挙げた。同作は「スカッとゴルフ パンヤ」をモチーフに、Wiiならではのインターフェイスを搭載したゴルフゲーム。安田氏によれば、現在3社と同様のアプローチで新規プロジェクトを協議中とのことで、2007年中にも新たなコラボレーションプロジェクトが具体化する予定だという。

 「LieVo」の今後の計画について安田氏は、2007年末までに日本、韓国、東南アジア、オセアニア地域へ展開し、コンテンツ数も現在の4タイトルから13タイトルまで増やす計画を明らかにした。日本以外のエリアは、2007年末で4タイトル程度と比較的緩やかな展開になるが、日本は今年一気に9タイトルも増えて13タイトル同時展開となる見込みだ。2008年末までにはさらに5タイトル増えて全18タイトルを提供予定だという。予定通りにいけば、2008年にはオンラインゲームに特化した大規模なゲームポータルが日本に生まれることになる。

 ユーザー数の見込みについても8月に発表した2007年末で500万人の計画を700万人まで引き上げると発表。この700万人という数字はワールドワイドでの累計会員数であり、基本プレイ無料のタイトルはこの数字に重みはなく、売り上げに掛かる係数もかなり低くなるが、「LieVo」発表後の各社の反応が良かったためか、安田氏の発言からは絶えず強気の姿勢と自信が感じられたのが印象的だった。

 発表会終了後、安田氏にコミュニティサービスの実装が遅れてる理由について訪ねたところ、10月10日の正式サービス以降、ユーザーから「LieVo」について多数の意見が寄せられ、サービスや機能の再開発に時間を割いているためだという。新型SNSとRSSが実装される3月に「LieVo」にどのような変化が起きるのか楽しみだ。

【「LieVo」のロードマップ】
ユーザー数は2007年末までに700万人を見込む。この数字は、韓国の割合が多く、βテストでユーザー数が飛躍的に伸びるためあまり参考にならない。ちなみに日本では250万人を狙う。大手ゲームポータルのガンホーモードを上回る強気の数字だ

【「LieVo」コミュニティサービス】
発表会の最後に、SeedC副社長で「LieVo」事務局リーダーを務める中川秀明氏が、「LieVo」のコミュニティ機能の補足説明を行なった。SNSは個人用のSNSとコンテンツに特化したSNSが別々に提供される。RSSについてはメルマガに代わるツールとして提供していくようだ


■ LieVo Studio発足、新規パートナーはレッド・エンタテインメントとさくらインターネット

「自由な発想から様々なチャレンジをしていきたい」と抱負を述べた「LieVo Studio」プロデューサーの高崎俊行氏。担当は「BASTARD!! ONLINE」
同じく「LieVo Studio」プロデューサーの長谷川仁氏。完全初出となる「EDEN」プロジェクトを担当していることを明かした。昨年末まで家庭用ゲーム機向けの開発を行なっており、開発はまさにこれからとなるようだ
レッド・エンタテインメント代表取締役社長名越康晃氏。「レッドの企画力、アジア有数の開発力、LieVoの顧客基盤を通じて全世界のユーザーに遊んでもらいたい」と抱負を述べた
 「LieVo」の事業戦略のあとは、新しいパートナーが紹介された。まず最初に紹介されたのが、「LieVo」プラットフォームに特化したテクモの自社開発部隊「LieVo Studio」。家庭用ゲーム機の開発経験を持つ若手を中心に編成された開発チーム。1月に発足したばかりながら、現在すでに4タイトルの開発が進められているという。今回の発表会では、「BASTARD!! ONLINE」プロデューサーの高崎俊行氏と、新規タイトル「Project EDEN」プロデューサーの長谷川仁氏の2名が紹介されたが、残念ながら各コンテンツの具体的な発表はなく、詳細は次回に持ち越しとなった。

 続いて新規パートナーとしてレッド・エンタテインメントが紹介され、代表取締役社長の名越康晃氏が登壇した。名越氏は、「天外魔境」シリーズ、「サクラ大戦」シリーズといったキャラクタオリエンテッドな物作りを20年近くに渡って続けてきた自社の歴史を振り返りつつ、「LieVo」参入第1弾コンテンツとして「ラブネマ」、そして今回の発表会における目玉タイトルとなる「天外魔境ONLINE」を発表した。

 「ラブネマ」は、台湾大手ゲームパブリッシャーSoftworldの子会社Chinese Gamerが開発した女性向けのオンラインゲーム。原題は「Love Box Online」で、テクノブラッドが仲介し、レッドエンタテインメントがライセンスを獲得し、日本ではLieVoで配信するという流れになる。具体的なゲーム内容については別稿にてお届けしたい。

 「天外魔境ONLINE」は、架空の日本「ジパング」を舞台にしたMMORPG。今回の発表会では、2008年を目処に「LieVo」に投入するという計画しか明らかにされず、タイトルイメージ以外の素材や、ゲームコンセプトなども不明のままだった。開発責任者を務める広井王子氏も欠席していたが、ビデオレターを通じて同作への抱負が述べられた。

 広井氏は「ネットワークというのはゲームの究極なんですね。パッケージゲームはプログラマや企画者が思ったとおりにしかゲームを進めないが、オンラインゲームではユーザーさんが自由に物語を紡ぎ上げることができる。いってみれば架空の人生そのものをゲームの中で味わえる。それはとっても素敵なことでおもしろい遊びだと思います。ネットワークの中に『天外』という世界が入り、『LieVo』を通じて世界中の人に配信されるのはとても幸せなことです。ぜひ『天外』をよろしくお願いします」とコメントした。

 レッド・エンタテインメントは、オンラインゲームだけ取ってみても、中国のSEGA Networksと共同で進めている「サクラ大戦MMO(仮称)」、ガイアックスのゲームポータルムポー向けに開発している「天晴! からくりボウリング」などすでに複数のオンラインゲームを抱えている。今回さらに2タイトルを追加したことで、オンラインゲームへのシフトがまた一段と進んだ印象だ。

【天外魔境ONLINE(仮)】
「サクラ大戦」シリーズに続いて「天外魔境」シリーズもついにオンラインゲームになる。レッド会長の広井氏、社長の名越氏共に、オンラインゲーム関連の席で目にすることが格段に増えてきた。レッドの企画力が、オンラインゲームにどのような影響をもたらすのか注目したい

「LieVo」との協業について展望を述べるさくらインターネットCEOの笹田亮氏。笹田氏の期待は、やはり家庭用ゲーム機への展開に寄せられているようだ
笹田氏は「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」の展開戦略について改めて全世界同時展開と家庭用ゲーム機展開を強調
 2社目のパートナーとして紹介されたのは、ホスティングを本業とする異色のオンラインゲームパブリッシャーさくらインターネット。同社は、オンラインゲームパブリッシャーとしては日本では数少ない独立系のメーカーだったが、今回LieVoと提携したことで、展開先が自社とLieVoの2箇所に広がることになった。

 提供コンテンツは、現在正式サービス中の「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン ストームリーチ」と今春正式サービス予定の「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」の2タイトル。ユーザー情報を移管して「LieVo」独占配信にするというわけではなく、既存の展開スタイルはそのまま維持しつつ、新たな配信先として「LieVo」を選択したという形になる。

 さくらインターネットCEOの笹田亮氏は、「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」について、当初の計画通り、今春世界同時発売を目指すと同時に、PCのみならずXbox 360やプレイステーション 3といった家庭用ゲーム機への展開も目指すことを明らかにした。また、マルチプラットフォーム展開については、プレイするハードウェアにかかわらず、プレイサーバーは一箇所にまとめる方針も明らかにした。

 LieVoとの事業提携の理由として、特定のプラットフォームに依存していないことや良質なコンテンツを国内外から集めるといったビジネスコンセプトが非常に近いことを挙げた。笹田氏は、現行の「LieVo」コンテンツと自社運営コンテンツとの毛色の違いをふまえ、「相乗効果が期待できるのではないか」と期待を寄せた。

 LieVoとさくらインターネットの事業提携は非常にわかりやすい。LieVo側としては日本、韓国のみならず、オンラインゲームの総本山である米国産の良質タイトルを持つことはワールドワイド展開をふまえたブランド形成の面で重要な意味を持つ。一方、さくらインターネットとしては、次期主力タイトルである「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」を日本でマルチプラットフォーム展開する上で、テクモが持つ家庭用ゲーム機展開のノウハウが欲しい。

 レッドエンタテインメントとの提携はコンテンツパワーに依存した内容といえるが、さくらインターネットとの提携は、両社のメリットを満たす理想的な事業提携といえる。中でも「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」のコンシューマ展開が現実味を帯びてきたことは、「LieVo」のコンセプトが理解された証拠でもある。特にプレイステーション 3向けにリリースされれば、時期によっては国内初のPS3向けMMORPGということになる。今後もLieVoの動きに期待していきたいところだ。

【ロード・オブ・ザ・リング・オンライン】
世界観、グラフィックスの水準共にMMORPGとしては申し分のないクオリティを備えている「ロード・オブ・ザ・リング・オンライン」。これが「LieVo」で展開されるのも大きなトピックだ

(C)2007 TECMO,LTD. / SeedC,Inc. Co.,Ltd. All rights reserved.
(C)HUDSON SOFT (C)RED
THE LORD OF THE RINGS ONLINE(tm): SHADOWS OF ANGMAR(tm) interactive video game (c) 1995-2007 Turbine, Inc. and patents pending. All rights reserved. Middle-Earth Poster Map * 2007 The Saul Zaentz Company, d/b/a Tolkien Enterprises (SZC), under license to Turbine, Inc. All rights reserved. "The Lord of the Rings Online", "Shadows of Angmar", The Watcher logo, "The Lord of the Rings" and the names of the characters, events, items and places therein are trademarks or registered trademarks of SZC under license to Turbine, Inc. Turbine and the Turbine logo are trademarks or registered trademarks of Turbine, Inc. in the U.S. and/or other jurisdictions. All other trademarks are the property of their respective owners.

□テクモのホームページ
http://www.tecmo.co.jp/
□SeedCのホームページ
http://www.seedc.co.jp/
□レッド・エンタテインメントのホームページ
http://www.red-entertainment.co.jp/
□さくらインターネットのホームページ
http://www.sakura.ad.jp/
□「LieVo」のページ
http://www.lievo.jp/
□関連情報
【2006年11月10日】テクモ/SeedC、韓国Hyosungとの事業提携を発表
2007年3月スタートのLieVo Koreaに「LANDMASS」を提供
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061110/gstar_li.htm
【2006年8月28日】テクモ、「プレスカンファレンス 2006 SUMMER」を開催
Web 2.0ベースのオンラインゲームポータル「LieVo」を正式発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060828/tecmo_01.htm

(2007年1月31日)

[Reported by 中村聖司]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.