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会場:ラフォーレミュージアム六本木
サービススケジュールは、2月26日よりクローズドβテストを開始し、その後3月中旬よりオープンβテスト、4月に正式サービスを予定。ビジネスモデルは基本プレイ、クライアント共に無料のアイテム課金制を採用する。本稿では取り急ぎ発表会の模様をお伝えする。「コンチェルトゲート」のゲーム概要については別稿にて詳しくお伝えするつもりだ。
■ スクウェア・エニックスの開発力とNHN Japanの運営ノウハウをひとつにした大型コラボレーション
発表会には、スクウェア・エニックスの和田洋一代表取締役社長、NHN Japan代表取締役社長の千良鉉氏の両社トップに加え、SQUARE ENIX Chinaを統括する本多圭司副社長、「コンチェルトゲート」エグゼクティブプロデューサーの齋藤陽介氏、同プロデューサーの渡辺範明氏、同運営統括の田代克行氏など、大勢の関係者が参席した。 会場には、「コンチェルトゲート」のイメージイラストとワンセットでスクウェア・エニックスとNHN Japanのロゴが描かれた垂れ幕が飾られ、壇の両脇には城壁のセットがライトアップされ、そして壇上にはグランドピアノと奏者の座る複数の座席が設置されるなど、オンラインゲームの発表会としては異例なほどにクオリティの高い演出が整えられていた。 発表会の開幕には、ピアノの存在を裏付けるように作曲家の伊藤賢治氏が登場。自ら手がけたメインテーマを演奏し、新作MMORPGのサウンドは伊藤賢治氏が担当することが明かされた。続いて、アニメ製作会社J.C.STAFFが手がけたアニメ映像が公開され、最後にゲームタイトルが「コンチェルトゲート」であることが明らかにされた。 最初に登壇した和田氏は、「オンラインゲームの世界は、遊び方やビジネスモデルなどいろいろなイノベーションが起こっており、オンラインゲームはコンテンツのフロンティアという認識を持っている。『コンチェルトゲート』のやさしい世界観を最高の状態で遊んでいただくためにNHN Japanという最高のパートナーを選択した」と挨拶。 続いて登壇した千氏は、「昨年よりゲームパブリッシング事業を強化しているが、『コンチェルトゲート』は今年最初のタイトルとなる。RPGでは抜群の実績を持ち、クオリティの高いゲームを作り続けているスクウェア・エニックスとの協業は、NHN Japanによって重要な意味を持つ。スクウェア・エニックスの開発力とNHN Japanの運営力により高品質なゲームを提供していきたい」と抱負を語った。 両社トップの祝辞の中で、協業の理由や両社のグローバル戦略における同作の位置づけなどは残念ながら述べられなかった。NHN Japanから見れば、スクウェア・エニックスと組む理由は、純粋に良質な国産コンテンツを獲得するためであり、これは非常にわかりやすいが、一方、スクウェア・エニックスから見た場合、NHN Japanと組む必然性が見えにくい。 今回の発表会では質疑応答の時間が設けられなかったため、細かい事業戦略については謎のままだが、ひとつのヒントは和田氏の「ビジネスモデル」に対する言及である。「コンチェルトゲート」は、基本プレイ無料のアイテム課金制を想定している。スクウェア・エニックスとしては、アイテム課金ビジネスは今回が初の試みになる。 スクウェア・エニックスはオンラインゲーム事業単体で約76億7,800万円(2007年3月期中間決算実績)という、単体で抜き出しても国内最大手のオンラインゲームパブリッシャーだが、その売り上げの過半数は、「ファイナルファンタジー XI」を筆頭としたプレイオンラインコンテンツであり、ビジネスモデルも月額課金のみとなっている。 仮に「コンチェルトゲート」をプレイオンラインコンテンツにするとすれば、アイテム課金の施行に際し、プレイオンラインの事業ポリシーとの調整が必要になり、その上で、それなりの投資と人的資源を割いてシステムを一から組み上げていくという非常にハードルの高いチャレンジになる。スクウェア・エニックスの2007年3月期中間決算説明会の中で和田氏は、オンラインゲーム事業について「新しいチャレンジがうまくいっていないというのも正直なところで、水面下で試行錯誤を繰り返している」と苦しい事情を報告している。
NHN Japanと組むことで、運営面やマーケティング面でのリスクが軽減されるだけでなく、アイテム課金制という新しいビジネスモデルに参入するための課題が一気に解決できる。もっとも、共にグローバル展開を指向している両社が組むことで、「コンチェルトゲート」の主戦場となる中国・台湾市場の展開をどちらが行なうのか、スクウェア・エニックスが行なう場合、その運営はどうするのか、アイテム課金の命綱となる“商材”はどちらが“開発”するのか、など新たな障壁も多々生まれていることが予想されるが、和田氏、千氏らしい思い切ったコラボレーションと言える。そのチャレンジ精神に素直に賛意を表したい。
■ 「クロスゲート」の魅力をそのまま受け継いで「コンチェルトゲート」
「クロスゲート」のもともとの開発元はドワンゴだが、2003年にリリースされた「パワーアップキット2~楽園の卵」から、元スクウェアのスタッフによって構成されたゲーム開発会社ポンスビックが担当している。「パワーアップキット2」以降はグラフィックスを一新し、オープニングアニメーションを取り入れ、サウンドには伊藤賢治氏を起用するなどドラスティックな変化を取り入れている。 こうしたアプローチの延長線上に存在するフルモデルチェンジバージョンが「コンチェルトゲート」だ。エグゼクティブプロデューサーは、「クロスゲート」の生みの親である齋藤陽介氏、開発はポンスビック、サウンドは伊藤賢治氏、キャラクタデザインは戸部淑(とべすなほ)氏と同じ布陣で挑む。ただし、今回、運営がNHN Japanになり、ポンスビックは開発に注力するところが大きな違いとなる。また、ビジネスモデルも月額制からアイテム課金制+αへと移行する。 発表会でもリッチなオープニングアニメーションが公開され、雰囲気はまさに「クロスゲート2」といった感じだ。グラフィックスも、前作の2Dの暖かみを活かすために、3Dでレンダリングしたデータを2Dに落とし込み、テクスチャとして貼り付けることで、フル3Dながら2Dライクな高精細グラフィックスを実現している。その代わり、3DMMORPGの魅力であるフルインタラクティブ要素はカットされ、視点は固定となるが、落としどころとしては絶妙である。 ちなみに「クロスゲート」は、2005年以降、年に1度のサイクルでリリースされていた「パワーアップキット」が発売されておらず、メジャーアップデートは2004年12月の「3」で打ち止めになっている。これは齋藤氏によれば「コンチェルトゲート」の開発に注力していたということで、「ユーザーさんには納得して貰えると思う」と発言しており、同時並行ではなく、1から2への以降を促す方針のようだ。 「コンチェルトゲート」の基本的なゲームデザインは、「クロスゲート」の間口の広い万人向けのカジュアルさをそのまま活かしつつ、フル3Dのグラフィックス、豊富な職業/スキル、使い魔育成、テラジェネレーションシステム、ランダムエンカウントとシンボルエンカウントを同居させたエンカウントバトルシステムといった、新しい要素を組み合わせることでMMORPGとしての奥深さを兼ね備えたものとなっている。 個人的に注目したいのは、特定の条件によって地形が変化し、それによって風景が変わるだけでなく、収穫できるアイテム等にも変化が生まれるというテラジェネレーションシステム。欧米発のトレンドであるインゲームにおけるUCC(User Created Contents)的な要素だとすれば、大きなムーブメントになる可能性もある。現時点では特定の条件が不明瞭だが、今後の開発に期待したい要素だ。 NHN Japanからのマーケティングプランの概要も発表されたが、詳細についてはすべて先延ばしされた。基本的には、公式サイトのみならず、インターネットテレビや地上波ラジオ、ブログサービスなどと、同時多発的なクロスプロモーションを展開していく方針としている。パートナーは、文化放送、impressTV(air impress)、TABLIER、CURURU(NHN Japan)、アメーバブログ(サイバーエージェント)、YUJINなどが紹介された。
最後に改めて「コンチェルトゲート」の今後のサービススケジュールをまとめておくと、まず本日1月24日より公式サイトにてクローズドβテスターの募集を開始。クローズドβテストの募集規模は10,000人で、2月26日と3月中旬の2回に分けて実施する。オープンβテストは4月、アイテムモール実装による正式サービス開始は5月以降を予定。ゲームの全容や、ビジネスモデルの詳細などまだ見えない部分は多いが、今後の展開に期待したいビッグプロジェクトだ。
Published by NHN Japan Corporation
□スクウェア・エニックスのホームページ (2007年1月24日) [Reported by 中村聖司]
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