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マイクロソフト、WindowsとXbox 360で同一のゲーム開発環境を可能にする
「XNA Game Studio Express」最終版を提供開始

12月12日 提供開始

価格:無料

【XNA クリエイターズ クラブ メンバーシップ】
   年間メンバーシップ 9,800円
   4カ月お試し版 4,800円


 マイクロソフト株式会社は、Windows XP SP2とXbox 360で共通したゲームを開発できる統合環境「XNA Game Studio Express(XNA)」の最終版を12月12日から提供を始めた。同社が2004年にその構想を発表してから早2年が経過したが、12月13日、都内において、そのローンチを記念したイベントを開催した。

 「XNA」は、無償でオンラインにて提供している「Visual C# 2005 Express Edition」と「.NET Compact Framework」を基盤とした、ゲーム制作に特化した「XNA Framework」による統合型の開発環境。Xbox 360とWindows XPに向けたゲームの開発作業を容易にする、各種のツールが提供される。PCの必要スペックは、同社の「Visual Studio 2005」と同等。さらに、DirectX 9.0cとShader Model1.1(推奨は2.0)に対応したビデオカードが必要となっている。

 また、開発環境だけでなく、「XNA クリエイターズクラブ」というコミュニティも開設。メンバーには、ホワイトペーパー、サンプル、MSDNサイト上のオンライン技術サポートなど、マイクロソフトおよびパートナー企業が提供する開発ツールや関連情報を利用できる。

 Windows上での開発だけなら無償で提供されており、PCとXbox 360を連携し、Xbox 360上でゲームを動作させるためには、「XNA Game Launcher」を利用可能にする「XNA クリエイターズ クラブ」の「メンバーシップ」をXbox Live マーケットプレースにて年間で9,800円、4カ月お試し版を4,800円で購入することが必要となる。これは、11月1日に発表されたものよりディスカウントされた格好だ。

 また、PCでXbox 360のコントローラを使えるなど、周辺機器の対応を可能にしたり、PCではDirectXの初期化など、必要な処理はあらかじめセットされており、現状、できうる限りプログラマの負担を軽減し、「XNA Freamwork」によって、プラットフォームに依存しない、しかもハードウェアの進化に対してXNAがバージョンアップすることで吸収できるという、ゲーム制作をこれから学ぶ人にも、現役クリエーターの要望にも耐えうるものになっているという。

 この環境の画期的なところは、一般にこの仕組みが開放されていることにある。Windows XPと製品版Xbox 360(HDD搭載)という2つの機材を用意することで、ユーザーはゲーム開発、デバッグを行なえるだけでなく、それを公開し、製品化への道筋も用意されている。

■ XNAは「次世代のクリエイターの夢の実現のためのソリューション」

 イベントでは、同社Xbox事業本部 ゲームテクノロジーグループ 田代昭博氏が壇上に立ち、XNAのプレゼンテーションとともに、リリースされた最終版にサンプルとしてコードとともに提供される、「Spacewar」をWindows XPとXbox 360でほぼ同じコードを走らせる実演も行なって見せた。

 「Spacewar」は、宇宙空間で戦う対戦型のシューティングゲーム。'62年にMIT(マサチューセッツ工科大学)で作成されたゲームで、XNA版では、当時の物理エンジンや基本コードはほとんど変更せず、XNAに移行して制作された。レトロバージョンと最新版が遊べる。

Xbox事業本部 ゲームテクノロジーグループ 田代昭博氏 PC上でXbox 360のコントローラを使用可能にするコンポーネントも提供されている
PC版で動作している「Spacewar」。コントローラはXbox 360版のもので操作可能
Xbox 360版 レトロバージョン


「XNA Game Studio Express」から、Xbox 360版のプロジェクトを選択し、PC版としてビルドされたコードをそのままコピー。Xbox 360で必要なデータを配置したら、Xbox 360実機のほうで、Xbox Liveを起動し(ここで『XNA クリエイターズ クラブ』の認証)、PCと通信状態にする。PCからXbox 360へとデータがコピーされ、Xbox側から起動することができるようになる


インプレスジャパンが制作する「できるXNA」も制作される予定
 田代氏は、「このソリューションはソフトメーカーであるマイクロソフトにしかできないことだ」と「XNA」への自信をのぞかせた。現状はすべて英語で提供されているが、将来は日本法人の側で日本語化が行なわれる予定があるという。さらに、インプレスジャパンが制作する「できるXNA」も制作予定だ。

 また、Xbox Liveに対応したオンライン関連機能にも対応を予定。Windows Vistaに対応するべく、Vistaのリリース後にバージョンアップが行なわれ、その際にサンプルゲームとして地形データを自動生成しているフライトゲーム「XNAField」と「XNARacer」の2タイトルもコード込みで公開されるという。

 「XNAField」はまだ開発中のものが公開された。すでにほかのデモなどで使っているデータを使いまわしているところもあり、サウンドなどは入っていないしゲームにはなっていないというが、XNAチームのエンジニアが1人で、約4週間で開発したもので、PCとXbox 360で共通のコードベースで動いている。このタイトルはマルチスレッドで動作しており、Xbox 360ではゲームメインで1つ、地形生成で3つのスレッドを利用しているという。

 「XNARacer」は、サウンドも当たり判定も入った、「XNAField」よりは開発が進んでいるという制作期間6週間のものが公開された。ドイツで開発されており、1人がメイン、パートタイムのアーティストが3人というチームで開発されている。Xbox 360で初めて1080pに対応しているもので、こちらもPCとXbox 360でほぼ共通のコードで動作している。

「XNAField」 「XNARacer」

 XNAに賛同したパートナーとして、東京大学をはじめとした大学や専門学校などで来期からXNAがカリキュラムに採用されることが決定しているが、コンピュータ総合学園HALの常務理事である中本典夫氏が登壇。

 HALは'84年に開校し、'94年に任天堂株式会社の協力を得て、ゲームの学科を創設。大阪と名古屋で毎年100名以上の開発者を輩出している。現在は任天堂だけでなく、ソニー・コンピュータエンタテインメントや、マイクロソフトの協力により、各ハードウェア向けのものをはじめ、PCの開発ツールを利用し、ゲーム製作者の育成を行なっている。2009年4月に東京校も開校予定。

 中本氏は、「入学当時は『こうしたいああしたい』という思いが学生にもあったはずだが、ゲームの仕組みを学ぶのは今まではハードルが高かった。いろんな工夫をしながら教育環境を作ってきたが、金の卵を逃していたかもしれない。XNAは学生たちの夢、目的を具現化するための画期的なツール。4月からカリキュラムに組み込む準備をしているが、現場からは『これはいける』という反応を得ている。XNAは過去にスーパーファミコン時代にプロトタイプを簡単に作るために任天堂が制作したツール『マリオファクトリー』の思想に近い」とXNAに対する期待を述べた。

XNAに賛同したパートナー一覧 コンピュータ総合学園HALの常務理事 中本典夫氏

 この「XNA」で制作されたゲームコンテンツを対象に、2007年1月1日から4月7日まで(アメリカ西部時間)、全世界のXNAユーザーを対象に、「Dream-Build-Play」コンテストが開催される。

□Xboxのホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□関連情報
「Xbox 360」記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/docs/backno/news/x360link.htm

(2006年12月13日)

[Reported by 佐伯憲司]



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