★PCゲームレビュー★
西部戦線を描いたミリタリーRTSの決定版
優秀なAIと表情豊かな3Dグラフィックスに注目
「Company of Heroes」 |
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- ジャンル:リアルタイムストラテジー
- 開発元:Relic Entertainment
- 発売元:THQ
- 価格:49.99ドル(実売7,000円程度)
- 対応OS:Windows 98SE/Me/2000/XP
- 発売日:発売中(英語版のみ)
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リアルタイムストラテジーファン待望のRelicの最新作が遂に登場した。広大な宇宙空間を舞台にした「Home World」や人気ボードゲーム「War Hammer」を題材にした「War Hammer 40,000: Dawn of War」など個性的な世界観とシングル・マルチプレイ共に優れたゲームデザインでゲームファンを魅了しているRelic Entertainmentの新作RTSタイトルが、この「Company of Heroes(以下CoH)」だ。
本作では第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を舞台に連合軍と枢軸軍の戦いを描いている。Relicは戦場をリアルに描写するため新しい3Dエンジン「エッセンス・エンジン」を開発。RTSゲームも現在はフル3Dレンダリングでの表現が当たり前だが、CoHの場合はまるでFPSゲームでもプレイしているかのような精緻な世界観描写を取り入れ、よりインタラクティブにという点において他ゲームと根本的に表現に対する追及姿勢が異なるのが最大の特徴と言って良い。
更に爆風で吹き飛ばされる兵士や瓦礫などの演出描写をより「らしく」させるためにHavok物理エンジンを採用し、これら新技術を惜しみなく投入することで、Relicの開発チームはRTSゲームにリアルな戦場体験と圧倒的な迫力という、新たな楽しさをプレーヤーに提供することに成功している。また、「Dawn of Warシリーズ」で培った陣取り合戦の面白さを更に洗練・進化させたゲームデザインも魅力的だ。
2005年のE3で初出展され、既存のRTSとは一線を画した強烈なビジュアルインパクトとあいまって、この年のE3アワードで数々の賞を獲得した本作は、更に1年以上の時間を費やし、今年9月に北米で発売された。2006年のRTSゲームの中では最高峰の出来栄えに仕上がっているといっても過言ではない本作の魅力をたっぷり紹介したい。
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全ての演出はプリレンダーではなくインゲームムービー。このクオリティは凄い |
枢軸軍側指揮官。彼との戦いがキャンペーンで描かれる |
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キャンペーンモード中に挿入される1シーン |
Havokエンジンのおかげで演出面が強化されている
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■ 映画でもおなじみの歴史的戦場をRTSゲームで再現
ゲームは第二次世界大戦の重要局面であるノルマンディー上陸作戦から、両軍激戦となり街全域が灰燼に帰したカーンの戦い、フランス・ブルターニュ地方の港町シェルブール奪還、そしてドイツ本土への侵攻を舞台にしている。作戦の中にはドイツ軍が開発したV2ロケット発射基地を空挺部隊が急襲して破壊活動を行なったり、敵の占領している高地を奪ったり、奪った高地を防衛したりと、CoHのタイトルにあるような兵士達の部隊を支える英雄的な戦いぶりがキラリと光るミッションが多数用意されている。
登場武器は連合軍・枢軸軍が実際に使用した兵器が精密に再現されて登場する。連合軍兵士の恐怖の的だったMG42機関銃、PantherやTigerといった戦車たちはゲームでも恐ろしい存在だ。連合軍のシャーマン戦車には地雷除去の装置をつけたり、ロケット砲を搭載した機体も登場するなど、そのほかにもミリタリーファンのツボをついた武器・兵器が多数登場する。
ゲームの内容は基本的に連合軍側のゲームプレイがメインとなるが、スカーミッシュとマルチプレイでは枢軸軍を使うことができる。多連装ロケット砲ネーベルヴェルファーなど史実で連合軍兵士を恐怖のどん底に叩き落した兵器や、前述のPanther戦車などおなじみの兵器が使えるため、こちらの陣営の方がしっくりくる、というプレーヤーも多いかと思う。
ゲームモードは全部で3種類用意されている。
1、キャンペーンモード
D-DAYのオマハビーチ上陸からベルリン占領までの軌跡を「歩兵」、「空挺」、「機甲」連合軍各中隊の活躍をムービーと実際のインゲームスクリプトによる演出でストーリーを重厚に描いたモード。
1マップあたりのプレイ時間は1時間~2時間程度で「町の中心地を30分間防衛せよ」などのマップに応じた勝利条件が設定されていることが多い。また、プレーヤーの力量を試す勲章獲得という要素があり、「50分以内に敵目標ポイントを占領せよ」などの課題も設定されている。
2、スカーミッシュモード
連合軍・枢軸軍どちらかの陣営を担当し、最大8人まで(プレーヤー以外はAIが担当する)対戦を楽しむことができるモード。AIの強さは変更可能だが、一番弱いモードでも初心者には厳しいかもしれない。
ゲームのルールとしては全ての敵部隊を倒すか、「BattleField」シリーズのようにポイント占領により敵味方に設定されたチケットを減らしていく2つのルールが用意されている。
3、オンラインプレイ
インターネットマッチングサービス、Relic Onlineに接続して世界中のプレーヤーと対戦が楽しめる。サービスの利用は無料で常に多数のプレーヤーが対戦を楽しんでいる。ルールなどはスカーミッシュモードに則している。
じっくり1人でプレイするかオンラインで対戦を楽しむか。RTSゲームとしては定番の構成となっている。オプションまわりの選択肢はあまり多くなく、カスタマイズ性は高くないが、ゲームの設計が隅々までしっかり行き届いている裏返しでもあって特に不満は感じなかった。
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連合軍兵士達の戦いを描くキャンペーンモード |
スカーミッシュモードでコンピュータとお手軽対戦 |
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オンラインモードでネット対戦も楽しめる |
ポイントを奪取して自軍テリトリーを広げていく |
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敵軍も当然のごとく戦場の重要ポイントを狙ってくる |
FPSではなくRTSゲームの画面ということにただ驚く |
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V2ロケット発射台爆破を準備する空挺部隊 |
多連装ロケットネーベルヴェルファーの攻撃は脅威の一言 |
■ 数で押し込むスタイルはもう古い!! ユニット育成こそが旬
各ゲームモード共通の基本ルールはシンプルで、分隊単位の兵士を操作し、マップ中に点在するポイントを占領していく。ポイント占領のメリットとなるリソースを得ることで新しい部隊や兵器を得れる建物や、自軍を強くしてくれるアビリティ(後述)を得ることで敵を徐々に不利な状況に追い込み、最終的に敵軍を壊滅させるのがゲームの目的となる。
他のミリタリーRTSと比べて特徴的なのは、まずどんなに多くても戦車3~4両、兵士6~7部隊程度の比較的少ないユニットしか操作しないところだろう。次にユニットに様々な追加兵器を持たせることができる点だ。例えば兵士に機関銃を持たせたり、対戦車砲を持たせたり、戦車にスモークや地雷除去装置をつけたりと、戦況に応じて様々なアレンジを加えられる。
更に特徴的な点をいくつか挙げてみると、戦場に敵が遺棄した機関銃やバズーカ砲などの武器を自軍の兵士が回収して使用することができる。そのため奪った武器で敵を倒すこともできれば、対戦時には自軍の兵士用に準備した武器を敵に奪われ、戦線が崩れるきっかけになったりもする。
「CoH」はゲームの世界観上、市街戦マップが非常に多い。兵士ユニットは建物に立て篭もって戦うことも可能で、しっかりとした建物であれば、防衛拠点につくりかえることもできる。最前線に近い建物に狙撃兵を配置したり、高層の建物に機関銃兵を配置したりと、本格的な市街戦を繰り広げることも可能だ。
エンジニアなどの一部兵士ユニットは、土嚢を積む・地雷を設置する・有刺鉄線を張り巡らせるなどの行動が可能で、これらを築いた場所に兵士ユニットを配置することで陣地をつくることができる。これはRTSに「城」という概念以外の攻防戦をごく自然的にシステムの中に導入できている点は特筆すべきところだろう。
これらは、人海戦術で押しまくるプレイスタイルではなく、少数精鋭のユニットを上手に育てて損耗をおさえつつ敵と一進一退の戦いを演出するために綿密に仕組まれたゲームデザインだ。「Star Craft」や「Age of Empires」など最大ユニット数が多ければ良いというゲームに慣れたプレーヤーにはとても新鮮な感覚でゲームを楽しむことができるのではないだろうか。
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周囲の状況に応じて様々な戦いができる |
陣地構築で敵の進攻を防ぐのも醍醐味の一つ |
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ワイヤー・地雷・土嚢で防御陣を構築してみた |
戦車のアビリティ「煙幕弾」は敵砲弾の命中率を落とす |
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敵軍の車列を襲撃するために展開中の連合軍兵士達 |
M10の装備する76㎜砲は対戦車戦に有効 |
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戦車の活躍にはエンジニアのサポートが必須だ |
市街戦はひたすら敵をしらみつぶしにするしかない
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■ 絶妙なバランスでチューニングされたユニットたちに注目!!
兵科は大きく分けて兵士と車両の2系統に分かれている。兵士ユニットは歩兵、銃機兵、迫撃弾兵、狙撃兵などがあり、連合軍であればレンジャー部隊、枢軸軍であれば士官など特殊なユニットが存在する。通常の歩兵は6人の分隊だが、機銃兵などは3人、狙撃兵などは1人と兵種に応じて人数が異なる。車両は常に1回の生産で1台だ。
兵士ユニットの特徴は、アレンジが利くという点だろう。分隊にBAR自動小銃を持たせて火力をアップさせたり、敵から拾った機関銃を回収して機関銃兵にするなど、戦況に応じて適材適所の兵士を仕立てることができる。
車両ユニットは、例えば装甲の厚い前よりも後ろから攻撃をされた方がダメージが大きく、機銃手が攻撃によって倒されてしまえば砲塔からの機関銃による攻撃ができない、エンジンにダメージを食らえば移動速度が大幅に遅くなる、戦車砲がダメージを受ければ砲が撃てないなど、細かいダメージ設定がされているため、単純にガチンコで戦わせるのではなく、敵に効果的に攻撃を与え、味方の生存率を上げるための運用術が必要だ。
これらの特徴を合わせると、いままでRTSゲームの定番だった、ジャンケンのようなユニット同士の天敵関係をプレーヤーの考え方ひとつである程度軽減できる点が面白い。例えば戦車の厚い装甲に歩兵の銃弾は効かないが、対戦車砲を調達すれば対等に戦えるし、建物に籠城してバズーカで攻撃すれば損耗をより抑えて車両を撃退できるかもしれない。プレーヤーの戦い方一つで不利な戦局も一変できるかもしれない絶妙なバランス取りがされている。
兵士ユニットの面白い点を補足すると、敵に倒された場合、銃弾で倒れた兵士は即死とはならずに、しばらくその場で悶え、その後絶命する。もし前線にメディックステーション(枢軸軍はエイドステーション)と呼ばれる医療キャンプがあれば衛生兵が走って回収し、しばらくして負傷した兵士を復帰させてくれる。兵士ユニットの場合、分隊の1人でも生き残っていれば元の状態に戻せる。無駄な損耗を防ぐことが、勝利するためための重要な戦略となる。
RTSゲームによくある「ゴッドパワー」に対応する要素として、CoHには「スペシャルアビリティ」と呼ばれる機能が用意されている。戦闘で一定の経験を積むとレベルが上がり、アビリティの使用が可能になる。「歩兵」、「機甲」、「空挺」など各兵科からアビリティの進化形態を選択して行く。
アビリティは歩兵であればレンジャー部隊の参加、空挺であれば空挺部隊の落下傘降下や空爆、機甲であれば後方陣地からの砲撃など兵科に応じて様々なものがある。これらを的確に使いこなして行く事で、膠着した戦線が一気に自軍有利になり、ゲームの戦略性をより豊かなものにしている。
AIの思考はなかなかユニークで、秀逸な演出とあいまって感心してしまう事も多い。戦闘中に味方の不利を悟ると撤退するという思考パターンは他のゲームでもあると思うのだが、この撤退タイミングがなかなか絶妙で、とりあえず一当てしてみてやはり戦力的に無理だと悟ると後退を開始したり、深いダメージを追った車両の逃走タイミング、少数の歩兵による敵占領ポイントの奪回など、戦力的に押されている状況でもいやらしくコツコツと抵抗する事を忘れない、まるで生きてるかのような、粘りのあるAIが素晴らしい。
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最前線に飛び込む空挺部隊は頼もしい存在だ |
シャーマン戦車による総攻撃は臨場感抜群 |
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建物など建設できるエンジニア達 |
アビリティは3種類の兵科から選べる
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アビリティの進化形態もパターンがある |
アビリティで戦闘機による支援爆撃も可能だ |
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様々な武器を駆使できる兵士達は戦力の要だ |
衛生兵は部隊の延命に欠かせない存在だ
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■ プレイにはハイスペックPCが必須。だがそれだけの価値は十分にあり
「CoH」は完成度が非常に高いRTSだが、最新のテクノロジーを導入したトレードオフとして、ハイスペックPC必須となっている。「CoH」のグラフィックオプションにはパフォーマンステストの項目があり、設定内容で実際のゲーム画面がどの程度軽快に動くかチェックをすることが可能になっている。
参考までに筆者PCの場合、Core2Duo E6300、メインメモリ1GB、ビデオカードATI Radeon X1600(512MB)という構成で、デフォルトのグラフィック設定で平均フレームレートが14.7FPS、最大フレームレートが67FPS、最小フレームレートが4.2FPSで結果は、“Poor”という悲しい判定が出た。この環境でも多少のスワップは発生するが、それ以外はそれなりに快適にプレイができている。このPCは買ったばかりだったため、Poor判定はちょっとショックだ(笑)。逆に言うと、同作はそれだけPCゲーマー泣かせのヘビー級のタイトルだということができる。
また、プレイ中、マップのローディングが長い印象を受けたが、この長さがスペックに起因するのかもともと読み込むデータ量が多いのかは確認できていない。たまにロードしに行ったままハングアップすることもがあったが、現在の最新バージョンである1.2のパッチを適用することでいくつかのクラッシュバグが修正されているので、この問題を回避することができるかもしれない。
いずれにせよ最新のゲームPCで全てのグラフィックオプションを最高にしてグリグリ動かしたい衝動に駆られるだけの内容は備えている。オーディオまわりも最大で8.1チャンネルの出力まで対応しており、快適なプレイ環境追求を目指して自分のPCをパワーアップさせてみるのもいいだろう。PCスペックに比例した素晴らしい表現力と臨場感、快適なプレイ環境が実感できるだろう。
主にヨーロッパ系のパブリッシャーから第二次世界大戦を扱ったRTSゲームは多数発売されているが、ひとつの作戦に的をしぼり、そこで展開された戦いを最大限リアルに、なおかつプレイしやすくゲームとして落とし込んだタイトルは、「CoH」が初めてだと言って良いかもしれない。
見事なビジュアルと演出は、今年発売されたRTSゲームの中で最高レベルの水準を持っている。第二次世界大戦モノという対象となる定番中の定番ではあるが、RTSファンであれば、プレイする価値は大いにある。日本版が出ればストーリーへの理解がより深まると思われるが、「CoH」の持つシンプルだけど奥の深い面白さは英語版でもすぐに理解し、ハマれるはずだ。
幸いなことに「CoH」には体験版が用意されている。少しでもこのゲームに興味を覚えた方は、まず体験版をお試しいただき、このゲームの面白さ、奥の深さを知ってもらうことを積極的にオススメしたい。
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オプション画面のグラフィック項目 |
パフォーマンステストはゲームの導入部分のシーンから |
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ベンチマークがわりにも使えそうなモードだ |
テスト結果。2006年製のマシンにも関わらず、残念な数値が
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弾の挿入から廃莢まで緻密な描写が素晴らしい |
シャーマン・カリオペはかなり強力な兵器 |
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後方からの砲撃支援は市街戦攻略には欠かせない |
Panther戦車と1対1でやり合うのは不利だ。常に2対1以上の有利な状態で戦いたい
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Copyright(C) 2006 THQ Inc. Developed by Relic Entertainment.
【Company of Heroes】
- CPU:Pentium 4 2.0GHz以上(Pentium 4 3.0GHz以上を推奨)
- HDD:6.5GB以上
- メモリ:512MB以上(1GB以上を推奨)
- ビデオカード:ビデオメモリ64MB以上のビデオカード(256MB以上を推奨)
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□「Company of Heroes」のページ
http://www.companyofheroesgame.com/
(2006年10月26日)
[Reported by GameDude]
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