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会場:幕張メッセ
入場料:当日1,200円、前売1,000円
本作の一番の特徴はファミコン時代の名作野球ゲーム「ファミスタ」の感触をきちんと再現し、友人とコントローラを握って同じ画面を見ているような対戦の感触を、オンライン上に再現したことである。今回はナムコブランドの野球ゲームを数多く手がけてきたバンダイナムコゲームスコンテンツ制作本部第3制作ユニットプロデューサー 塩澤敦氏 とNHN Japanゲームアライアンス事業部事業部長 瓜生貴士氏に「プロ野球ファミスタオンライン(以下、「ファミスタオンライン」)」にテストの感触や、今後の展開をお聞きした。 インタビューからは塩澤氏の「野球」への強い想いやコンシューマゲームを開発してきた経歴を持つ瓜生氏のコンテンツやユーザーアプローチに関してのこだわりも伝わってくる。今後の「ファミスタオンライン」はどのような方向性で発展していくのだろうか。
■ オンラインという新しいステージで生まれ変わった「ファミスタ」
瓜生氏: 9月11日までテストが行なわれましたが、30万弱のユーザーを獲得できました。当社が目標としていた数字に、ほぼ到達したという感じですね。CMもうっていましたし、私達もかなり高い目標を設定していたので、数字には満足しています。 他タイトルではお客さんを獲得するときに、例えばアバターをプレゼントしたりとか、「フリースタイル」の時はipodをプレゼントするなどキャンペーンを行なっていたのですが、今回はそういうのはなしで、本当に「ファミスタ」というネームと、ゲームの面白さだけで、従来以上のユーザーを獲得できたのは、「ファミスタ」というタイトルのパワーを我々も実感させられました。非常に満足できたスタートだったと思っています。 編: 塩澤さん、そして「ファミスタ」では初めてのオンラインゲームとなったわけですが、ユーザーの反応はどうだったでしょうか。 塩澤氏: 我々開発チームも自宅や職場からゲームをお客さまに混じってプレイしながら、自分たちで肌に感じながらゲームを作っていくのは今までにない体験でした。やりながら「確かにおかしい」、「ユーザーがいうのもわかる」という点を修正していくのは新鮮で、開発もこの方がやりやすいかな、と思いました。 そのかわり直さなくてはいけないことに関して、お客さまは当然「いつか直すんだろう」と待っています。コンシューマの場合は「次の作品でがんばります」という感じですが、オンラインの場合はやらなくてはいけないことが毎日目白押しでした。それがかえって良かったかなと。忘れないうちに色々できるので。精神衛生上もよろしいかなと。 瓜生氏: 私もコンシューマをやっていましたが、出した後っていっぱい後悔するんですよね。予算やスケジュールの関係で削らなくてはいけない部分とか、お客さんに指摘されると「俺たちもやりたかったんだよ」と言いたくなることもありましたね。 編: ユーザーは30歳代の比較的年齢が高めのユーザーが多かったとのことですが。 瓜生氏: そうですね、今までのハンゲームのユーザー層とは違います。私が予想をしていたとおりになりました。他のタイトルでは20歳以下のユーザーが6~7割を占めるのですが、ファミスタでは32パーセントくらい。つまり68パーセントが20歳以上のプレーヤーになります。20歳代、30歳代のユーザーがほぼ均等に占めています。 プレイ時間も面白くて、20歳代、30歳代のユーザーは明らかに多い。若いユーザーは「ハンゲームが押している野球ゲームだ!」ということでプレイしても、現在の野球ゲームとは少し違うので離れてしまうこともありますが、年齢の高い、当時の「ファミスタ」を知っている人はひたすらプレイしています。平均のプレイ時間として1時間以上違うんじゃないかなと思います。 編: 今回試遊台でパッドでプレイして感じたのですが、やはりボタン1つで打つ、投げるといったことができるのはシンプルで取っつきやすいですね。PCのカジュアルゲームに、あえてコンシューマのテイストを持ち込んだ、という部分の意義を教えてください。 塩澤氏: もともとファミコンは2つのボタンしかなかったですし。意義としては、韓国や中国などアジアでカジュアルゲームが盛り上がっている、ということは聞いていました。昨年「G★2005」にいって、「オンラインも面白い」と確信しました。それならば私達もやってみよう、というのが最初のスタートでした。ただ、「それほど甘くはないな」というのもやりながらわかりましたね(笑)。 それに野球ゲームというのは、社会人になって一端ゲームから離れてしまうと、なかなかもどってこない。野球を観戦している人たちは20歳代後半から30歳代ですが、その層のゲームの売り上げがかなり落ちてきているという現状もありました。それをどう補おうか、というところで、仕事や職場で使っているPCでプレイできれば良いんじゃないか、と思いました。それに価格的な部分でも、自分の気に入った額でプレイできるような方法はないかな、と思っていました。まず、無料で触ってもらって、それ以降はお金を使ってもらえればと。 とっかかりのハードルを低くしたいというのは会社としての考えもあって、ではどこが先陣を切るのか、という時に「野球からいきましょう」となったのも理由の1つです。 編: オンラインの野球ゲームを制作する、という時に、現代の複雑なものではなく、シンプルな方向性を目指したのはどうしてでしょうか。 塩澤氏: おそらくなのですが、ニンテンドーDSの成功を見るまでもなく、ずっと言われていることだったのですが、ゲームをプレイしていた世代の人たちがゲームを作るようになって、自分たちの世代のためだけにゲームを作っていくようになってしまった、という傾向がありました。そこで「原点に返ろう」というところがあります。 ユーザーの意見を聞いて制作者が作っていく内に、どんどんゲームは複雑に肥大化していってしまった。行くところまでいって戻れない状態になっていたと言うところもありました。ここで戻すとしたら、「ファミスタ」という原点しかないなと。それが、「投げる」と「打つ」という駆け引きの楽しみをシンプルに表現できるかなと。「20周年」という数字の意味も大きかったです。いつか戻そうとは思っていまして、20年目、というのは決めていました。 社内でもよく言われているのですが、40歳代のユーザーを開拓したいんだけど、なかなかオンラインゲームには行ってこれない、。シンプルな操作性はそういったユーザーを開拓する可能性もあります。チュートリアルやソロプレイモードなどでよりハードルを低くしていきたいと思っています。 ■ 「ファミスタオンライン」が表現する野球の楽しさ
塩澤氏: そうですね、まぐれでホームランが打てるのは「ファミスタ」くらいだと思います。初心者がプレイしても、1イニングでボールをバットに当てられる。リアル系のゲームだと、技量が違うとまったく打てない、それでは初心者は2度とやってくれなくなってしまいます。「ファミスタ」ならば、プレーヤーの技量差があったとしても、ホームラン1本打つこととができれば、明日への希望は出てくると思います。 編: 今回、ハンゲームさんは国内開発のしかもメジャーなゲームのオンラインコンテンツのパブリッシングというのは初めてだったと思いますが、社内外やユーザーの反応は今までとは違ったでしょうか。 瓜生氏: まったく違いました。一番大変だったのは、実は社内でした(笑)。ハンゲーム自体が開発が完成していないゲームを共同開発事業で1から、というのは初めてでした。サービス企画やビジネスモデルの設計をこちらで行なう。そこにリスクはありました。ハンゲームは「フリースタイル」以外は、ミニゲームしか扱ってこなかった。パブリッシャーとしても時期尚早じゃないかとも言われました。 しかしこれだけ動きの速い業界で、準備が整うのを待っていたら間に合わない。塩澤さんがいるところで言ってはいけないんですが、「失敗しても次も絶対やるぞ」という気持ちで取り組みました。成功するまでやるんだ、という覚悟でした。そして最初にやるならば高い目標を、と考えていまして、バンダイナムコさんと組めて、「ファミスタ」という大きなタイトルができたのは良かったです。社内は最初本当にみんなドキドキしていたんです。 社外からは「ハンゲームだから韓国のゲームじゃないの?」という風に見られがちですが、NHN Japanはほとんど社内は日本人なんです。社内で作業を統括しているのは取締役副社長の森川(亮氏)ですし、日本ローカルに徹したサービスを心がけていてもご理解が得られないところもありました。すでに提供しているタイトルにも日本の市場にぴったりはまるのか、といった見方をされることもありました。「ファミスタオンライン」はその日本ユーザーとの距離感をぐっと縮めたのかな、と思いましたね。 編: 「ファミスタオンライン」をプレイすると、20年、日本のゲームとして更に深いゲームとしての方法論と技術の積み重ねを感じる部分があります。 瓜生氏: たぶんすごく細かい部分だとは思うんですけど、私もコンシューマを手がけてきたので、一番違うのは、世界観とゲームから伝わるメッセージ性だと思います。韓国にも大型のMMORPGがあって、制作者のこだわりを感じられます。ですが、本当にほんのちょっとのごく細かいところですが、違いますね。それは、思い入れとか、そういった部分が (日本のものとは) 違うように感じられます。「ファミスタ」には世界観と、20年にわたるストーリーがあります。そしてメッセージがある。開発者の「こう遊んで欲しい」という想いがすごく伝わってくる。それをユーザーがうまく気づいてくれたと感じています。 編: 技術的な話としては、「投げて、打つ」という感触をオンライン上で再現させるためには非常に高いハードルがあったと思うのですが、どういった問題がありましたか。 塩澤氏: プログラマが「できる」と言い張っていたんです。業界には結構こういう人が多いんです(笑)。実際にやってみればまだまだチューニングしなくてはいけない部分もあって、プログラマも自覚しているのです。現在もまだストライクボールの判定が甘い問題もあります。プログラマは「わかってますよ! 間に合わなかったんでできてなかっただけです」といってるんで、「じゃあできるんだね」と(笑)。わかっていればできる人たちなので、やってくれると思っています。 技術的には心配はしていたのですが、現在一応は形になっているものができたと思っています。提示するものに対して、「任せてください」と勝手にやってしまって、それでできてしまう、というところもあるかもしれません。 編: スタートとして実際にできたときの感触、実際に塩澤さんがオンラインを通じて得たゲームの感触はどういったものがあったでしょうか。 塩澤氏: 直接ユーザーさんとプレイできるというのはアーケード以外ではなかったですから、新鮮でした。私達にはある程度のアドバンテージがあるので最初はそこそこ強かったのですが、1週間を超えたあたりから厳しくなって、本気でプレイしなくては勝てなくなりました。最終週での対戦はお互いが神経をすり減らすような、きつい戦いも体験できました。勝つためには強いチームを使って全力でやらなくてはいけませんでしたね。 ハンゲームではブログでユーザーの日記も見ることができます。なかなか真理をつくようなことが書いてあって面白いです。「三振は見逃すと相手が警戒する」。誰かがそういったことを書いたり、作戦を提示するとすごいスピードで伝播する。ユーザーのトレンドがリアルに感じられて非常に面白かったですね。一番最初多くのプレーヤーはストライクから入れてくるので、一番バッターに最強打者を入れるとか、色々工夫していまね。 編: ユーザーからはどのような意見が寄せられたでしょうか。 瓜生氏: 一番は判定の甘さに対する指摘でした。ゲームに対する要望がとても多いですね。オンラインゲームはどこかの部分でコミュニケーションのためのツールに成っていくと思うんです。ツールとして不完全な所に対しての意見が多いです。メールを受けるCS部門からは、他のサービスと比べて本当に要望が多いと言うことを聞きました。 ゲームに対してのユーザーの期待がとても大きいのです。新しいアイデアや、ユーザーが考えたファミスタの方向性など前向きな意見が多くて、担当者からも「こんなに楽しいのは久しぶりです」と言われました。一緒にタイトルを作っている気持ちになりますよね。バンダイナムコさんの反応がまた早いのがうれしいですね。最初の期間の「ファミスタオンライン」の完成度の早さは驚異的でしたね。 編: ただ、オンラインゲームは、ユーザーの要望に応えすぎてしまうとゲームの方向性を見失う、という危険性もあると思います。制作者が強く方向性を提示することで、ユーザーからの反応が生まれ、完成度が上がっていくと思うのですが、「ファミスタオンライン」での提示されるテーマはどんなものでしょうか。 塩澤氏: 出来る限り心地よく遊んでもらおう、ということがこちらの方針です。「超おもてなし」は守らないとなと(笑)。それはナムコ時代から受け継がれている徹底するべきものです。今回はそれが実現できる環境なので、やっていこうと思っています。野球を扱っているので、崩せると言っても限度があると思っています。「やって良いことと悪いことがありますよね?」なんてことを言われることもあって、野球としての世界観は守っていこうと思っています。 「ワールドスタジアム」では選手に鎧を着せて怒られたりもしたのですが、最近は子ども向けにハードルを低くしてもいいじゃないかと、崩せるところは崩してもいいと考えています。ダメだったらその要素を引き上げてしまうということもできますし。そういう加減ができるのもオンラインの強みだと思っています。子どもレベルまで野球が盛り上がって欲しいというのが希望です。 瓜生氏: 我々としては、メールをくれるお客さまはモチベーションの高いお客さまであって、必ずしも総意ではないと思っています。いただいた意見を参考にしつつ、多くのお客さまに喜んでいただけるポイントを見極めて、こちらの方でも大枠の方向性を見定めた上でバンダイナムコさんに要望を伝えています。
■ ユーザーコミュニティとカスタマイズ要素で迎えるまったく新しい進化
塩澤氏: プレオープンでは各チームの主力選手でプレイが楽しめましたが、これからはチームの“これから”の選手でスタートします。チームには2軍の選手が多くなっていて、プレーヤーはここから選手の組み合わせを考えてチームの強化を図っていきます。選手はスロットで「ガチャッ」という感じで、カードを買っていくことになります。 瓜生氏: 有料のカードと無料のカードのスロットが2種類あって、プレーヤーはランダムで入手できる選手カードを使ってチームを強化していくのです。確率やラインナップには少し違いがあります。 塩澤氏: 野球に興味を持つユーザーを中心に、遊んでもらえるかな、と思っています。野球ファンでも1軍しか知らないという人も多いとは思うんですが、ゲームで他のチームやこれからの選手達に触れることができて、より野球の深みを感じてもらえるようになると思っています。 瓜生氏: チームは「デッキ」とし選手カードを組み込んでいくのですが、ウェイトポイントという搭載量の決まりがあって、最初から強い選手ばかりをデッキに組み込むことができません。搭載量はゲームを進めることで増えていきます。これは監督の器という形で表現できると思います。経験豊かな監督ならば強い選手を使いこなせる、というように。 編: ゲームの具体的なスケジュールを教えてください。 瓜生氏: 10月の中旬にオープンβテストがスタートします。11月からは課金がスタートし、選手カードの販売が始まります。選手を強化していく要素などはその後という感じになりますね。最初は選手を組み替えることでチームを構成し、対戦していくという楽しさを体験してもらおうと思っています。 編: ベテランプレーヤーと初心者の実力がかけ離れてしまうのではないかと思うのですが。 瓜生氏: お金をかけて4番打者をそろえるだけで優勝できるかというと、現実の野球もそうではないですよね(笑)。プレーヤースキルだけでもない。選手カード、アシストカードの使い方も重要です。それに、勝つか負けるかということに関してはヒットの飛距離が変わったり、駆け引きの上で勝ったときの効果が変わってくるというところだと思います。 編: そのプレーヤーの駆け引きを分析したユーザーが知識の共有をはかっていく、というのは今までの「ファミスタ」や野球ゲームとはまったく違った対戦世界が生まれていると言えるのでしょうか。 塩澤氏: 好きなチームと、勝つための工夫というのはまた別なベクトルだと思うのです。ジャイアンツが好きでも、足を使ったゲームプレイをしたければジャイアンツの選手は外さざるを得ない。そこに葛藤も生まれてくると思います。チームが好きでも、自分だったらこうやって変えたい、と思うコアな野球ファンも多いと思います。そういった楽しみもできると思います。 瓜生氏: 勝つことだけが全てではないんですよ。「今日、俺の新庄がホームランを打った!」このゲームはそれがいいんじゃないかと思います。 編: それは本当の意味での野球の楽しみ方ですよね。ユーザーの情報交換だけを見ていると、効率のみの話や、強さだけの追求といった部分ばかりがクローズアップされてしまっている印象もあります。野球はもっと「ロマン」があるものではないかと思うんです。 塩澤氏: ユーザーの間では、「楽天で4番でカツノリを使っている」というプレーヤーが伝説になったようです。選手やチームに強い思い入れを持って、磨き上げていく「こんなチームになって欲しい」という考えでデッキを作っていくのと、勝つためのデッキを追求するなどいくつかの方法があると思っています。こだわりのマイデッキを提示し合って戦っていただきたいですね。 編: 野球本来の深さをよりアピールするためにはどういったことを行なっていきますか。 塩澤氏: 皆さんが意外に選手を知らないと思います。今回はランダムでさまざまな選手が自分の手札に入ってきます。テレビで2軍の選手が昇格したとき、「俺こいつ知ってるよ」というのは特別な思い入れになりますよね。他チームの選手だったけど起用してみたら活躍してくれた。そういったことを基軸により野球に興味を持ってくれればと思っています。 編: 今後、ゲーム大会などのイベントなどの予定はあるでしょうか。 瓜生氏: 「フリースタイル」では全国大会などを行ないました。これはゲームのカルチャー的にもマッチしていたからですが、「ファミスタオンライン」はやはり「野球ゲーム」なんです。ハンゲームのタイトルとしては珍しく女性プレーヤーの比率も少ないですし、野球が好きな人が集まっている。この人気は、逆に野球そのものを楽しめる機会が少ないのかな、とも考えさせられました。 「ファミスタ」は子どもの頃に遊んでいたゲーム、という記憶を持っている人が多いとも思うんです。会社の同僚や友人に声をかけて、「今夜やらない?」「昼休みにどう?」という楽しみ方をしてもらいたいと思っているんです。僕も運営チームに厳しく言っていたのですが、「全国の猛者と戦おう!」、「勝って日本一を目指そう!」とかそういうメッセージは全て排除していたんです。勝つことに価値を求めず、コミュニケーションツールとして、ご近所ゲームとして楽しんでもらいたい作品だと思っています。ですから、10月からもそういった方向性のキャンペーンになっていきます。 これはユーザーの反応、傾向から出てきた方向性です。今後人気が定着したら、そこから更にその時に合わせたキャンペーンを行なえばいいかなと。最初から世界一を目指す、ということをやってしまうとゲームの世界が急に遠いものになってしまう。派手なイベントではなく、生活に密着したキャンペーンやサービスをやっていこうと思っています。 面白いのが、ユーザーの接続数が昼12時頃に急に上がるんですよ。これはたぶん昼休みに会社でゲームをしてるんだと思います。
■ 次の世代に野球の楽しさを伝えるための「ファミスタオンライン」の役割 編: バスケットボールや、海外のサッカーのゲームの場合は特に非常にコアなユーザーを求めているのかな、と思う部分もありますが、やはり野球はそうではない、マス層へアピールするところがあると感じますね。 塩澤氏: 野球は、ひいきのチームがあったとしたら、勝ち負けだけで語っていたら生きていけないところもあるじゃないですか。チームランキングやホームランランキングはあるけど、下位チームを使う人がいなくなるわけではない。それはプレーヤーのポリシーや生き方だったりすると思うんです。「ファミスタオンライン」も自分のスタイルを確立して、突き進んでいこう、ということを目指すゲームだと思うんです。 現実がある中で、自分ならこうしたいというのがあるところが、野球だと思います。泥臭いだけに根深いところがある。現在の阪神の使用率はすごいのですが、「10年前であれば (成績が奮わないときもあったので) そうでもなかったかもしれません。それでも阪神を使う人がいなかったわけではないでしょう」としみじみ語る人もいます。長い歴史を持つ野球ならではの面白さがあります。 編: 確かに野球ファンは理想のチームを熱く語る人が多いですね。「ファミスタオンライン」はそういった自分の意見を主張できる公共の場になりそうですね。 塩澤氏: そうですね、そう使っていただければ。 瓜生氏: 他のスポーツと比べても野球は語りやすいのかとも思います。何百、何千ものプロセスが積み重なって野球の試合は成り立っている。サッカーはノンストップで時間が積み重なるので、勝ち負けの直接の原因が見ながらでなくてはわからないところもある。野球はそれまでのシナリオが一瞬で結実するんですよ。エンターテイメントとしても9回に満塁ホームランで大逆転、というシーンは他のゲームにはありませんね。 塩澤氏: 負けたときに選手に責任をなすりつけて、その選手を起用しない、といったこともできます(笑)。 編: ただ、ゲームである以上は見ているだけの野球とは違い、勝ち負けにはプレーヤーの責任は免れないところがあるのではないかと思います。その観戦と、プレイのギャップはどのように埋めていくのでしょうか。 塩澤氏: それは少しわかりません。ピッチャーが打たれた場合、「ここはこれがまずかった」、「あそこで変えるべきじゃなかった」というのは、本物の野球と同じ所があると思います。 瓜生氏: うちで「ファミスタオンライン」を始める際、私が社内を説得する時に「ファミスタ」は負けても絶対自分のせいにならない。というところを強調したんです。キャラクタを自分で作ってゲームを進めるとしたら責任はユーザーに跳ね返ってきますが、全ての選手が現実の選手ならば、「もっといい選手を使っていれば」、「彼が獲得できればもっといい試合ができるのに」ということになる。 「このピッチャー急にスタミナなくしやがって!」というように、自分は守られるんですよ。実際運営を初めても、プレーヤーその人をプレイの面でこき下ろしたり、賞賛したりはあまりないですね。チームや選手の話題は活発ですが、プレーヤーにそれがあまり向きません。 塩澤氏: 開発にも弱いチームのファンがいますが、彼は潔く負けますね。それで良いんだと思います。ぎりぎりまで抵抗してがんばるのが良いんですよ。 瓜生氏: 僕は広島ファンですが、どうしても勝てないから巨人でやりました(笑)。ディレクターからは「あんたプライドないのか」とか言われました。 編: これから「ファミスタオンライン」を通じて、ユーザーに提示していきたいこと、というのはどのようなものがあるでしょうか。 塩澤氏: 30歳代のユーザーが多いのですが、僕は口酸っぱくなるほどに言っているのですが、「子供」のユーザーにこの作品の楽しさを広げていきたいと思います。これは会社の方向性でもあるのですが、是非親子でキャッチボールするような感覚で、親子でプレイしてもらいたいですね。勝ち負けにこだわらずに、気楽にプレイしてもらいたい。弱いチームで、負けるのが当たり前、というプレイもいいと思います。子供に野球を知って欲しいというのは、野球選手の願いでもあると思います。自分の名前も知って欲しい、と思っていると思います。 編: 最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。 塩澤氏: 野球の人気は最近落ちていると言われています。確かに関東では惨憺たるものですが、名古屋では中日の快進撃で盛り上がっていますし、阪神もすごい。九州も人気だし、北海道は今特に人気です。全国的な視点から見れば、高い人気を持っていると言えると思います。東京の人ももっと野球に興味を持ってもらいたいですね。野球をもっと知り、選手の名前を覚えるために、このゲームをプレイしてそういう人が増えてくれればと思います。 お父さん世代を中心に子供達に広がっていけば野球はもっともっと発展していくと思います。まず野球が発展すればゲームも盛り上がると思いますので。我々バンダイナムコゲームズだけではなく、ハンゲームさんと組めたことで大きなプロモーションもやっていただき、かなり露出も増えました。久々に反響もありました。 今後、コンソールだけでなく、PCをプラットフォームにしたゲームも発展していかないと、韓国や中国のゲームも面白いものが増えてきて、日本のメーカーとしても踏ん張らなくてはいけないかなと。我々も欧米の側を見過ぎていたかなとも思います。アジアの勢いがまして、いいゲームが出ている昨今、もっとアジアにも目を向けようという気運が出てきました。社内でもコンシューマ一辺倒だけではなくて、発展していこうと思っています。 実際我々より上の世代の中高生の子供を持つ人に聞いてみると、家に帰ってハンゲームやってる、という人が多い。基本プレイ無料のゲームビジネスがここまで浸透して、新しいコミュニティも形成されているので、「このままではまずい」というのは、現場のリーダー達から出始めています。我々もこれをきっかけにしっかりとやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 瓜生氏: 我々はポータルの事業者として、世界中のゲームを紹介できればと考えていますので、「ファミスタオンライン」を一緒に出来たと言うことには大変感謝しています。これから私達が思い描いている「ファミスタオンライン」の全貌が10月から徐々に明らかになっていきます。1人でも多くの人に遊んでいただけるように、無理を言ってクライアントを軽くしていただきましたし、技術的には非常に高い水準のものになっています。 新しい面白さと、プリミティブな完成された遊びを持った作品ですので、これからますます注目していただければと思います。どっぷりではなく、気楽に、気長につきあっていただければうれしいなと思います。
□CESAのホームページ (2006年9月25日) [Reported by 勝田哲也]
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