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会場:幕張メッセ
本題に入る前にPS3のグラフィックスにまつわる最新動向を伝えておこう。 PS3のグラフィックスチップはNVIDIA GeForce 7800 GTXベースということは広く伝えられてきたが、取材によれば、各スタジオで開発が進むにつれてPS3の開発者達の一部からフィルレート性能不足が訴えられ始めている。 当初、PCベースでPS3タイトル向けのグラフィックスのプロトタイプを作り込んでいた開発スタジオは、PS3実機へ持っていった際にパフォーマンスが出ずに相当苦労したというのだ。各スタジオの現場では、レンダリング解像度を下げ、シェーダを剥がすといった仕様のデチューン工程を経て、PS3実機に持っていったらしい。 同じGeForce 7800ベースのGPUなのに、どうしてこのようなことが起きたのか……その原因は3つほど挙げられる。 PS3のRSXは、その設計がGeForce 7800 GTXベースとはいうものの、ビデオメモリは128ビットバス接続で実は下位モデルの7600相当になってしまっておりビデオメモリ帯域が(7800系と比較して)狭いのだ。これがその原因の1つと考えられる。 2つ目は、2005年に公開されたRSXのスペックが、引き下げられた点。2005年時にはコアクロック550MHz、ビデオメモリ700MHzと公表されていたPS3のRSXだが、2006年のE3ではうってかわって「非公開」となり、最終的な発売モデルではコアクロック500MHz、ビデオメモリ650MHzへと引き下げられたと伝わってきている。 3つ目はROPユニットがGeForce 7800 GTXの半分しかないという事実。 RSXはGeForce 7800系と同じ24基のピクセルシェーダがあるが、ここからの出力を実際にビデオメモリにデータとして書き込む(ピクセルを描き出す)、「ROPユニット」(Rasterize OPeration Unit。レンダーバックエンドともいう)が、GeForce 7800系の16基なのに対して、RSXは半分の8基しかないのだ。これも丁度下位モデルのGeForce 7600系相当と同じになってしまっている。ROPユニットをケチった……と言うよりは、まずビデオメモリバスが128ビットと決定され、これとバランスするためにROPユニットを8基とした……といった感じではないだろうか。
とはいえ、東京ゲームショウで公開されていたタイトルは(一部を除いては)、そうした裏事情を(なるべく)感じさせないようにチューニングされていたと思う。この辺りの調整力は現場のパワーに拍手を送りたい。
■ 東京ゲームショウは次世代ゲーム機一色に! 東京ゲームショウはここ数年で一番の盛り上がりを見せた。 昨年は「絵に描いたもち」といわれたPS3も、発売が直前であることをリアルに実感できるほどのPS3向けタイトルがこぞって出展されており、否応が無しに期待は高まる。PS3向けタイトルは、5月のE3の時点では海外タイトルばかりが目立ち、どうなるのか心配もされたが、TGSの展示を見る限り、「ジャパニーズパワーなおも健在」とアピールされているように見えた。 一応、本連載の主旨とは直接関係ないが、アレにも触れておこう。あの価格引き下げは、結果からみれば歓迎したい。依然高いことは高いが、なんとか頑張れば買えそうなイメージにはなった。そして下位モデルへのHDMI実装も全てのユーザーが高品位な接続手段を獲得することに相当するわけで、個人的にはゲーム業界において歴史的な出来事になったと思っている。 そして、小さくなったイメージのあるマイクロソフトブースだが、昨年と比較すれば数倍の混雑振りで、それだけXbox 360に対しての注目度が高くなってきたと言うことだと思う。テレビCMもちゃんと意味が伝わるものになってきたようだし、その効果も多少はあるかも知れない。 実際、目を奪われるタイトルの多くが実はXbox 360版……というケースも少なくはなかった。去年は「Xbox 360は海外ゲーム主体」というイメージがなきにしも非ずだったが、今年は日本スタジオの作品が多く目立ち、日本におけるXbox 360の本格スタートを実感させてくれていた。
さて、今回の本連載は、いつものような1タイトルに絞っての技術解説ではなく、東京ゲームショウに展示されていたタイトルの中から、筆者が個人的に気になったタイトルをピックアップして勝手に見どころを述べていくスタイルで進めていくことにする。
あまりにもかっこよすぎたイメージ映像ムービーと比較して、E3時に公開された車両が真っ平らな泥広場を走る回るだけのαバージョンを見たときは、そのギャップにめまいがしたが、今回展示されていたものはちゃんとゲームらしくなっており、「楽しそう」と思わせてくれるものとなった。 ゲームは、二輪車と四輪車が悪路を混走するもので、「グランツーリスモ」が華麗に美しく走るドライブゲームだとすれば、この「モーターストーム」はワイルドに敵をぶちのめしながら走る車の格闘ゲームというイメージ。 走る車両のタイヤが土を掻いて轍ができ、この轍が他の車両の走行に少なからず影響を与えるというゲームフィールドがリアルタイム変化するシステムが面白い。 制作はSCEAなので、暴力をオブラートに包んだ「マリオカート」とは異なり、直接敵の二輪ドライバを蹴散らしたり、他車に体当たりをして走行妨害もできるし、良い意味でアメリカンなセンスが炸裂した出来映えになっている。
グラフィックスも水準以上で悪くないが、それよりも各車両のガクンガクンと激しく動くサスペンションのリアルな挙動と、車両をぶつけ合ったときのリアルタイム破壊アニメーションのダイナミックさがこの作品の見どころだと思う。お勧め。
● グランツーリスモHD / ポリフォニーデジタル
ゲームモードは、PS3のポテンシャルを積極活用した「GT HDプレミアム」モードと、PS2の「グランツーリスモ4」のPS3へのグレードアップ移植版である「GT HDクラシック」の2つ。 PS3のテクニカルデモ的な意味合いも強い「GT HD プレミアム」は1,920×1,080ドットの1,080p出力に対応する。フレームレートは可変で描き換えが見えるようなこともあったが、クオリティを重視すれば、これも致し方ないことか。 車の表現は「PS3でこれがやりたかったんだよ」というような、複数のシェーダ動作が見られ。PS2のGT4と比べて大部進化している。HDRレンダリングはもちろんのこと、ボディペイントにはフレネル反射のシェーダが動いており、さらにボディモールドの微細凹凸表現はPS2ではやりたくてもできなかった法線マップによるバンプマップで表現されている。より深い凹凸にはセクシーなソフトシャドウがでているので、オクルージョンマップ(自己遮蔽項)付き半球ライティングが使われているように見えるが、ポリフォニーデジタルなので職人技のテクスチャの可能性もある。 車モデルの頂点数の多さも次世代感が漂っている。ボディのエッジ(縁)は実車同等に面取りが行なわれているのがすごい。
グラフィックスのアップグレードが凄まじい反面、車の挙動のリアリティはモーターストームには一歩譲る感じか。山内氏も「車の動きはオンラインアップデートする予定」と述べているのでそちらに期待したい。
● バーチャファイター5 / セガ
アーケード版のオリジナルはシステム基板「リンドバーグ」ベース。リンドバーグはPCベースのシステム基板であり、「VF5」ではCPUがPentium 4 3GHz、グラフィックスはGeForce 7800系/256MBという組み合わせとなっている。PS3のグラフィックスプロセッサRSXもNVIDIA GeForce 7800ベース。グラフィックスの移植はほぼ完璧に近い形で移植がなされているようで、キャラクタがアップになった時の影のエリアシングまでがアーケード版とコンパチであった。 懸念されたPS3側のCPUのパワー不足だが、プレイした感じでは特に重さは感じられない。
なお、アーケード版の「VF5」について、近々本連載で徹底解説を行なう予定なのでお楽しみに。
● パワースマッシュ3 / セガ こちらも現在アーケードで稼働中のセガの名物テニスゲームシリーズ「パワースマッシュ」シリーズの最新作。 こちらもほぼ「VF5」と同仕様のリンドバーグ基板ベースで、グラフィックスはほぼ完璧に完全移植がなされている。出力解像度は1,920×1,080ドットで60fpsを公言。服のシワやキャラクタの肌の微細凹凸に法線マップが積極活用され、デプスシャドウ(シャドウマップ)技法ベースのセルフシャドウ付き影生成……などなど、誰もが簡単にプレイできるテニスゲームではあるが、ビジュアルクオリティにはしっかりと次世代感が漂っている。 特筆すべきはHDRレンダリングのトーンマッピングのセンスで、明部を積極的に飛ばして暗部を沈み込ませたような、ちゃんと「屋外であること」を実感できるようなチューニングになっている。
オンライン対戦への対応を期待したいが、現時点では未定のようだ。
● Heavenly Sword / SCE イギリスの新鋭実力派スタジオNINJA THEORYが開発中の3Dコンバットアクションゲームが「Heavenly Sword」だ。E3で公開されるやいなや、日本の開発者達の間でも話題となり、逆に彼らを「『Heavenly Sword』に負けてなるものか」と奮い立たせたほどインパクトに満ちた作品だ。 東京ゲームショウでは、E3で公開された闘技場?のシーン以外が公開され、順調に開発が進んでいることが見て取れる。 ド派手なキャラクタアニメーションと物理シミュレーションの融合具合は見事。特に同時多発的に無数のオブジェクトが衝突し合って見せる動きにはPS3のCellプロセッサに内包されるSPE(Synergistic Processor Element)群のフル活用を連想させる。 グラフィックスも、HDRレンダリング、光散乱シミュレーション、法線マップ、セルフシャドウ等々、ハイテクの見本市のような状態。ボリューム感溢れるパーティクルシステムにも感動を覚える。
バイオレンス描写が激しいので、PS2の隠れた名作「ゴッド・オブ・ウォー」の時のようにSCEがローカライズを拒否しないことを祈るばかりだ。
● アフリカ(仮) / SCE どんなゲームか全くわからないながらも、動物のリアルな表現に目を奪われる作品。遙か遠方まで描かれる地形と、豆粒くらいになってもなおもさらに遠くまで描かれるヌーの群衆に圧倒される。さらに1頭1頭がセルフシャドウ付きで半影付の影生成が行なわれているのにも感心させられる。象やサイの肌のザラザラした質感の肌は法線マップによるバンプマップが適用されており、PS3のRSXのポテンシャルは積極活用されている感じが伝わってくる。
ただ、E3の時の初公開以降、全くどんなゲームかわからない。今後の情報開示に期待しよう。
● メタルギアソリッド4 / KONAMI
コンバットスーツのゴムっぽい質感を表現するヌメっとしたスペキュラマップや、ベストや手袋の布のエンボスを法線マップに落とし込んだ表現に目が行きがちだが、それよりも「パワースマッシュ3」と同様に、屋外であることが最大限に伝わってくるHDRレンダリングのチューニングに感心させられる。影はマルチサンプル式のデプスシャドウ技法によるソフトシャドウのようで、もちろんセルフシャドウも確認できる。 主人公スネークが老化しているのはシナリオの都合上だとは思うが、もしかすると顔のシワ表現に法線マップをたくさん使いたかったからあえてこうしたのではないか、と思うほど目立つ感じで適用されている。
今回の「メタルギアソリッド」は日中の屋外がテーマ。偶然か必然か、本作のライバルでもある、もう1つのスニーキングアクションゲームの巨頭「スプリンターセル4」(Xbox 360)も日中の屋外がテーマだ。外観はスネークの方が大部年を取った感じがあるが、とにかく、「スニーキングアクションゲームの主人公はオヤジ」という公式ができあがりつつあるのが面白い。
● 機動戦士ガンダム・ターゲットインサイト / バンダイナムコゲームズ
ゲームのシステムがどうなるのかはさておき、フォトモードが欲しくなるソフトだ。
● デビルメイクライ4 / カプコン
HDRレンダリングや光散乱シミュレーションが実装され、屋外表現がよりリアルになっている。ただ、全体としてPS2版のグラフィックスをハイレゾにしたような感じに留まっており、まだ開発途中版ということもあるのだろう、カプコンタイトルのグラフィックスの出来映えは後述のXbox 360用タイトルにやや及ばない印象。
逆に、これからグッと進歩しそうな予感がある。
● リッジレーサー7 / バンダイナムコゲームズ
1,920×1,080ドットの1,080p出力で60fpsの実現を公言しており、実際、本当にその仕様で動いていた。 背景の表現力は「グランツーリスモHD」に優るほどのクオリティで、車両と背景の一体感が素晴らしい。 車のボディペイントにフレネル反射シェーダが適用されているのは今世代の車ゲームのもはや必須事項か。 リアリティよりもゲームらしい表現を目指している「リッジレーサー」シリーズらしく、ノイズ変移させた環境マップを用いての濡れた路面表現、ニトロ加速時の画面ノイズ表現、暗闇でのドリフトにおけるテイルランプ残像処理などなど、良い意味で“非”リアルのユニークな表現も目立つ。
本作発売後に「グランツーリスモHD」が控えているのでセールス的にちょっと心配だが、やはり、PS3のベンチマーク的グラフィックスとなっているのでチェックしておいて損はない。
UE3ベースとしては珍しく屋外のオープンフィールドが舞台になっており、無数のキャラクタが遠方まで大量表示されている様は壮観。UE3が3Dシューティングだけのエンジンではないことを証明した格好になっている。 多ポリゴンモデルで作成したモデルから法線マップベースの低ポリゴンモデルに変換するシステムがしっかりしているUE3らしく、ディテール描写が凄い。服のシワから、鎧のモールドに至るまで、非常に細かい凹凸がライティング付きで見えている。この凹凸は実際には平坦なポリゴンに法線マップによるバンプマッピングを施して実現されているものなのだ。 またHDRレンダリング、モーションブラー、そして被写界深度のシミュレーションも効果的に使われており、現存するRPGのビジュアルとしてはトップレベルのルックスだ。ただ一つ気になるのはフレームレートで、可変方式の30fps程度のようで、かなりカクカクしている。RPGなので、ゲーム性への影響は小さいとは思うが、チューニングの必要性を少々感じる。
UE3はカットシーン(ムービーシーン)とゲームシーンをシームレスに繋いでいくことを得意とするが、今回公開されたバージョンでも、その特長を最大限に活かした演出が盛り込まれていた。
「大局照明風のビジュアルに拘った」(坂口氏)とのことであったが、それはゲーム中に挿入されるムービーシーンでの話で、プレイ中のゲームグラフィックスは意外にもオーソドックス。セルフシャドウもなく、柔らかい陰影は自己遮蔽マップによるものではなくて焼き込みのテクスチャ陰影のようだ。あまり先進的なグラフィックスを作り込む意図は感じられず。セクシーなシェーダーはあまり見あたらないが、その代わり、多ポリゴンモデルに解像度の高いテクスチャによる高精細さは認知できる。
シェーダーを駆使するよりも描き込みでハイクオリティを実現しようとするような、悪く言えば前時代的な、よく言えば日本伝統のゲームグラフィックス作成手法で作られている印象だ。
● ロストプラネット / カプコン
HDRレンダリング、法線マップによるバンプマッピングやセルフシャドウ付き影生成はもはや当たり前のように使われており、Xbox 360発売後わずか1年で日本発のXbox 360のゲームグラフィックスは、海外の最先端PCゲームグラフィックスに優るとも劣らぬレベルにまで達している。 ロストプラネットで特に凝っているのがパーティクルシステムとフレームバッファ・エフェクト。 濃い雪煙や立ちこめる爆風などは、これでもかというくらいの重ね書きで、ボリューム感たっぷり。爆発やダメージエフェクトなどの効果に挿入される画面全体にかかるポストエフェクト処理(フレームバッファエフェクト)も素晴らしい。Xbox 360 GPUのフィルレート性能の限界を超えているようにも思えたが、しっかりチューニングされていてよく動いている。
「ジャパニーズ次世代パワーここにあり」……まさにそんな感じで、今冬の日本向けXbox 360のキラータイトルの真打ちはむしろ「ロストプラネット」なのではないか。
もともとオリジナルは2.5次元グラフィックスと喩えられた2Dと3Dの間の表現技法であったが、21世紀版の「プロジェクト・シルフィード」では完全3D化。 目立ったシェーダテクノロジーは見あたらないが、無数のスターシップが、そのアフターバーナーで美しい軌跡を描いて飛び回る表現は、新体操のリボン演技のように華麗で美しい。同時多発的に無数の敵機を爆炎に変えていく爽快感もオリジナルにはなかったカタルシスだ。
それと面白いのは背景の宇宙空間の描写。自機の回転や移動に呼応して背景の星々がブラーを起こしつつ縦横無尽に動き回るのだが、この表現がいわゆる見慣れた通常の3Dではなく、特殊な幻想的な動きとなっていて実に印象的。3Dシューティングゲームではあるが、まるでインタラクティブな万華鏡を見ているような感覚……といえば少しは伝わるだろうか。カジュアルプレーヤーにもお勧めしたい一作。
北米でのXbox 360用タイトルとして本命視されているのがこの「Gears of War」。 EpicGamesが誇るゲームエンジン(ミドルウェア)「Unreal Engine3.0」を、EpicGames自らが活用して作り上げたタイトルとしても注目度が高い。 用いられているグラフィックステクノロジーはHDRレンダリング、法線マップ、デプスシャドウといったもので基本を抑えているだけなのだが、その圧倒的なディテール感で迫るビジュアルインパクトは、EpicGamesのデザイナ陣の洗練されたアートセンスに因るところが大きいと思う。法線マップを活用した、“見かけだけ多ポリゴン”のキャラクタ表現も、自社エンジンの特性を一番よく知っているだけに使い方が絶妙だ。
ゲームは、移動時の三人称視点と自分の頭部と肩が見える射撃時の1.5人称視点とがシームレスに推移する視点システムを採用。これがとてもうまくチューニングされており、敵からの攻撃が避けやすく、それでいて狙いも定めやすく、遊びやすい。一人称嫌いの日本人ゲーマーにもすんなり馴染めそうな作品だと思う。
■ まとめ~次世代ゲーム機グラフィックスの三種の神器? 次世代ゲーム機と呼ばれてきたPS3とXbox 360。それぞれのプラットフォームに対応したゲームタイトルのグラフィックスは各タイトルで多少のばらつきはあるものの、大体の傾向が見えてきてたように思う。 今回、筆者が感じたのは3点。 まず、第一にHDRレンダリング(ハイダイナミックレンジレンダリング)が、もはや珍しいものではなく、全く標準技術化しているということ。 高輝度部からのブルームのさせ方(光のあふれ出させ方)に、各タイトル毎のオリジナルセンスが感じられるが、PS3とXbox 360では使って当たり前のテクニックとなった感がある。 HDRレンダリングしたフレームを適正輝度に直して1,677万色色体系に収めるトーンマッピングについても、各社でオリジナリティがでている。ほとんどが平均輝度を中心に丸める線形処理だが、一部のタイトルでは非線形にしたり、技巧的なフィルタを使ったりして印象的なビジュアルにしているところもある。 細かいことだが、定式化されたメソッドと思われているHDRレンダリングにおいても、各社のオリジナリティが発揮されつつあるのだ。 2つ目は法線マップによるバンプマッピングの積極活用。 Xboxでは既に一般化しつつあったテクニックだが、PS3、Xbox 360ではビデオメモリが増えて、ピクセルシェーダの数が増え、なおかつGPUそのものが高速化されたこともあって、かなり積極的に使われる傾向にある。キャラクタの衣服のシワ、地面の凹凸、武器やメカのモールドディテールに至るまで様々な用途に活用されており、一部のタイトルでは人間の筋肉の隆起や顔のシワ表現にも応用されている。 ただし活用のされ方は大別して2通りあり、微細凹凸を付加的に与える目的で使っているケースと、多ポリゴンでデザインしたモデルのディテールを法線マップに落とし込んで低ポリゴン化する目的の使い方がある。この2パターンを適材適所で使うのが良いわけだが、全体として後者の方が、わざとらしくなく自然に見えるという手応えがある。 3つ目は影生成がまともに行なわれるようになったということ。 PCゲームと比較して家庭用ゲーム機向けゲームが最も水をあけられていた影生成において、やっと追いついてきたという印象だ。セルフシャドウ付きの影生成はもはや珍しくない。しかし実装した影生成技法の違いで影の出方自体は各タイトルで結構な差異はある。 用いられている影生成技法の主流はデプスシャドウ技法。ステンシルシャドウボリューム技法は少数派となった。デプスシャドウ技法については、いくつかの改良型メソッドが考案されてきているが、どれを採用しているかは、さらに各タイトル毎で異なっている。 影エッジに強いエリアシングがでたままの原始デプスシャドウ技法を実装しているタイトルもあれば、影輪郭付近を選択式にボカして散らす最新型のソフトシャドウ生成を実装しているタイトルもある。このあたりは、各ゲームスタジオごとに、いろいろと模索しているような感じを受ける。
「HDRレンダリング」、「法線マップ」、「影生成」……この3つの要素はPS3、Xbox 360のゲームグラフィックスではもはや最低条件となるような感じで、より上を目指すところは、この3つとは別に、特定の材質表現のためのスペシャルシェーダを起こして競合他社との差異を見せつける……というようなアプローチになっている。
(2006年9月25日) [Reported by トライゼット西川善司]
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