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会場:幕張メッセ
入場料:当日1,200円、前売1,000円 '98年5月に発表されたPC用3Dシューティングゲーム(FPS:一人称シューティング)「Unreal」で有名になった米Epic Gamesだが、この時から、いわゆる汎用ゲームエンジンを作成してこの上でゲームを動作させるというゲーム開発スタイルを実践していた。その後、「UnrealII」へとエンジンも進化していき、最新の「Unreal Engine 3.0」では、そのエンジンの汎用性をより拡大し、PCだけでなく、Xbox 360やプレイステーション 3といった次世代ゲーム機までを動作ターゲットとするまで進化を遂げている。
次世代ゲーム機のゲーム開発では、ユーザーの期待に比例して膨れあがる予算と、長期化する開発期間をどうやってリーズナブルにバランスしていけばいいのか、ということが一つのテーマになっているわけだが、これに対してEpic Gamesが用意した回答が「Unreal Engine 3.0」ということになるようだ。
Wilbur氏は'91年からゲームソフトビジネスの世界に入り、最初はそのキャリアをid softwareでスタートさせている。彼のid software時代では、全て7人以下のチーム編成で「Commander Keen」、「Wolfenstein 3D」、「DOOM」、「QUAKE」といったタイトルを完成させており、その全てで大ヒットを実現させている。特に歴史的なタイトルである「DOOM」では、パッケージ版で100万本以上、シェアウェア版ユーザーは全世界で数千万人のユーザーを獲得したモンスター作品となった。この後、Wilbur氏は'97年にEpic Gamesに入社。その後、「Unreal」、「Unreal Tournament」、「Unreal Championship」のプロジェクトに携わり、現在は「Unreal Tournament 2007」、「Geas of War」といったプロジェクトに参加し、今に至っている。
初代Unrealはチーム全体で18人、続く「Unreal Tournament」は21人、最新の「Gears of War」でも30人とのことで、「同サイズ規模のゲーム内容をもつ他社プロジェクトの半分以下」(Wilbur氏)であり、確かに少ない。
「Gears of War」は2006年末発売予定であり、まだセールスの結果は出ていないが、北米では年末商戦で最も期待されるXbox 360タイトルであり、成功は確実視されている。「コストを掛けないで大ヒットを生む」……これがEpic Gamesの信念ということなのだという。 「ゲームビジネスは、今やリスクの多いビジネスになっている」とWilbur氏はいう。PS2に代表される現行機までの大手ゲームスタジオのゲーム開発の予算は2億~7億円規模程度たっだのに対し、Xbox 360やPS3といった次世代機では9億から20億円規模になるとまで予測されている。一方でゲームソフトの値段は北米では49~59ドルに据え置かれ、2009年には35ドルに落ち込むのではないかとまで予測されている。つまり、予算は拡大していくが、ゲームソフトの値段は据え置きか下降の予測があり、ひいては、よりゲームビジネスのリスクが増加すると言うことだ。
そこで、仮定的に予算を1,200万ドル(14億円)として、卸売価格が39ドル(4,500円)で計算すると、最低30万本売れないと利益は出ない計算になる。
そして大ヒットといえる75万本以上のセールスを記録できたのは、全体のわずか4%。タイトル数にしてわずか23タイトルだけが大ヒットを記録できたということだ。それだけ、ゲームビジネスはハイリスクな商売なのだ。
ヒットする確率を上げることは不確定な要素なので、できる現実的な努力は何かといえばコストマネージメントということになる。Epic Gamesはゲームプロジェクトを2つの要素項目に分解してそれぞれに対してのコストマネージメントを実践するやり方が良いのではないかと提案する。
Epic Games社内では小規模精鋭のチームに留め、物量的な作業はローコストでハイクオリティな仕事をこなせるアウトソースに依頼することを採択したという。
1つ思われているのは外注にするとクオリティが下がるのではないかという誤解。「実際にはそんなことはなく、そのアウトソース先を吟味すれば内製で仕上げたのとほとんど変わらないものを得ることができる」とWilbur氏は語る。「Unreal Tournament 2007」ではビジュアル素材製作にオランダのSTREAMLINE STUDIOSを起用しており、そのクオリティは非常に高く、満足のいくものが上がってきているという事例を示した。
また、Epic Gamesでは中国にEpic Games Chinaという分社を設立。アウトソース・コンテンツ製作を専門として活動しており、Epic Gamesからの発注はもちろんのこと、UBI Softモントリオールからの依頼実績もあり、実際に「Splinter Cell」シリーズ、「Rainbow Six」シリーズ、「ゴーストリコン」シリーズなどで、実際のそのコンテンツが使われているという。
具体的なデータとしては、「1カ月当たりの1人あたりの人的コストがアメリカ、ヨーロッパ、日本の半分以下で済む」ことをWilbur氏は告げている。
ところが、「技術開発」というテーマは直接製品を製作するわけではないので、別枠で予算が必要になり、これはつまり開発コストがかかってくるわけで、リスクを増長させることにもなる。
それでは、「その最高レベルの技術をどうやって手に入れるか」という手段が重要視されることになる。
しかも、新規に技術開発を行なうには、その技術が実動できるまではコンテンツ製作を並行して進めておくことが難しく、これは開発期間を無駄に長くする結果を導く。また、技術開発に成功したとしても、そのエンジンが安定するまで、幾度となくエンジンのバージョンが変更され、それに伴ってコンテンツバージョンとの不適合が生じたりして、これは開発効率低下を下げることに繋がっていく。
これにも短所と長所はある。短所は、そのプロジェクトの仕様が、その外部技術を開発したところから外部に漏れる可能性があると言うこと。これは信用できるパートナーと組むことが必要不可欠ということの裏返しでもある。
また、「根幹エンジンが外部によって作られた」という事実を認めることに抵抗を覚え、これはプライドが許さない……といった発想を持つスタジオもあるという。「何でもインハウスでやりたがる日本の伝統的なゲーム開発現場においては特にその傾向が強いように思う」(Wilbur氏)。
さらに開発効率そのものの向上が見込める部分も長所だとWilbur氏は指摘する。汎用ゲームエンジンを提供してもらえれば、ゲーム処理で用いられる様々な基本要素(衝突判定、IK、経路探索、リソース管理、etc)がエンジンによって提供されるので、通常のゲーム要素処理についてはエンジン側のものを利用し、それ以外の、例えばそのゲームプロジェクト特有の専用技術が必要であれば、その技術だけの開発に乗り出すことが可能になる。何から何まで全部自分で作らなくて済む分、効率がよいということだ。
例えば、UE3の物理シミュレーション部は、AGEIAの「PhysX」をライセンスして活用したし、3Dキャラクタの表情アニメーションはOC3 Entertainmentの「FaceFX」を活用している。また、ゲーム中に挿入されるムービーシーンのコーデックにはRAD Game Toolsの「BINK VIDEO」を利用した。
■ 機会をみすみす逃してはならない
マイクロソフトのXbox 360は年内に世界で1,000万台出荷を予見しており、これは現時点でも達成される見込みが立っているという。また、2007年内では1,600万台、2008年内には2,000万台出荷の目処も立っているとされる。日本のゲーム開発者は日本で成功していないプラットフォームに対して目を向けない傾向があるが、これはもったいないことだ、とWilbur氏は強く訴える。
「昔と違い、今やゲームビジネスはグローバルビジネスなのだから」(Wilbur氏) よほど強いタイアップを得られているので無ければ、プレイステーション 3用、Xbox 360用という区別をせずに同一タイトルを両方に積極リリースすべきだし、その両方への展開にコストをなるべく掛けない方法を考えるべきだ……というのだ。「その最良の武器となるのがUnreal Engine 3.0なのです」(Wilbur氏)。
最後の最後に、Wilbur氏はUE3をアピールし、プレゼンテーションを締めくくった。Unreal Engine 3.0そのものの売り込みにメインテーマを当てたのではなく、エンジンビジネスでもっとも成功を収めたEpic Gmaesですらも、コンテンツ作成は外注を利用し、最も先進的な技術開発力をアピールしてきた彼らですらも、現代ゲーム開発で求められるいくつかの根幹技術は外から買ってきたことを事例に出したことには、聴講していた日本の開発者にもメッセージとして強く伝わったのではないかと思う。 □STREAMLINE STUDIOSのホームページ http://www.streamline-studios.com/ □OC3 ENTERTAINMENTのホームページ http://www.oc3ent.com/ □AGEIA「PhysX」のホームページ http://www.ageia.com/ (2006年9月24日) [Reported by トライゼット西川善司]
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