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「ライバルメーカーと競争している意識があまりない。なぜなら競争してもゲーム人口は増えない。我々が戦っているのがお客さんの無関心だからなんです。その無関心から僕らに興味を持って、Wiiに触ってくれて最終的に「Wiiっておもしろかったよ」と人に言ってくれることが起こるような循環マーケットができないと、ゲーム人口の拡大はできない」。プレイステーション 3やXbox 360とのいわゆる「次世代機戦争」に対し、岩田氏が応えたこのひと言。これが「Wii」の狙いであり、任天堂路線の据え置きハードに対する進化の答えなのだろう。
■ DSのヒットで世界的に受け入れられつつある任天堂の「ゲーム人口拡大」路線
この成功を受け、「性能至上主義のゲームが市場を切り開くし、これからもその路線を続けたい」と考えているとばかり思っていた欧米のゲーム業界も、この先は「コスト効率が悪くなるかもしれない」と考えるサードパーティも出てきたようで、性能追求路線と平行して、コスト意識と任天堂のアイデアに共感した路線を共存する動きが出てきていると岩田氏は言う。特にソフトに強烈なほどにコストをかけてきたことでも知られるElectronic Artsでも、「以前からさらに増して任天堂に対して好意的な発言が出てきている」と岩田氏はそれを裏付ける例を示した。 開発環境にもいろいろ手を講じてきている。「『Wii』の開発キットは20万程度で販売できるようにしよう」という考えは、過去の常識では一桁違う法外に安い値段だ。この理由には、「ちょっと試したいときにすぐ試せる。開発者の負担なく開発できるようにしたい」という任天堂のサードパーティに向けた強い意識がある。また、新しい要素技術、DSでいえば手書き認識や音声合成などだが、これもなるべく負担が小さくなるように、なるべく早く、幅広く公開する努力も続けていると言う。「以前は門外不出だった宮本氏たちが築き上げたノウハウも、どんどん出すようにしようと説得している」という岩田氏のコメントに、「メインのメンバーがライブラリを作っている」と宮本氏が証言していた。これはかなり驚くべき「開放」だろう。 ■ 「『Wiiチャンネル』はゲーム人口の拡大への1つのきっかけ」 「Wii Preview」でもメインに取り上げていた「Wiiチャンネル」。詳細な発表がなかった「ニュースチャンネル」に関しては、現在ニュースソースになりうる相手と相談中で、最終段階の詰めを行なっているという。テキストだけでなく、写真も掲載でき、ニュース発信地が地球儀の上でどこかわかるようになっているという機能がプレゼンでも紹介されていたが、これも「家族の中で毎日Wiiに触れてくれる人が1人でも増えてくれたら、将来的なゲームユーザーの拡大につながるのではないか」という狙いの1つだ。ただ、動画を多数のWiiに配信することは現状のインフラでは無理があるとし、現状のインフラでのバランスを最終決定する予定。 しかしながら、「ネットに接続しているWiiであれば、ニュースチャンネルのバージョンアップが可能。後からもっといい技術が出てきたり、インフラが変わってきたときには新しい提案ができるかも」と将来への展望を岩田氏が語ったように、この「Wiiチャンネル」はどんどん新しいアイデアが生かされていく可能性があふれる場所の1つになるだろう。「ゲーム業界の枠組にとらわれず、いろんな方々とお話をしていって、最終的に1人でも多くの方に触ってもらって、市場が拡大するようにしたい」というチャレンジの現われにすぎない。現状のチャンネル数に収めているのは、「ここまでにしようと決めないと、ずるずると発売が遅れてしまう」という、公約を守るための一区切りでしかない。 このチャンネルは、例えばiModeのような公式サイトと、いわゆる「勝手サイト」といったような区分けで言えば、「勝手サイト」は作れないという。ライセンス契約を結んだパートナーとガイドラインを設定しているという。それを超えるようなものは、インフラや規模を吟味して話し合って作っていくということで、サードパーティもチャンネルを作ることが可能なようだ。 また、今の任天堂の方針はすべてのエンタテインメントと有限の興味の時間を取り合う競争だが、「相手を叩いたら自分が大きくなると言うものではない。自分たちにしかない、飽きられる前に次を提案する1人でも興味を持っていただけるお客さんが増えることがすべて」と、あくまで、ゲーム人口の拡大への1つのきっかけであることを強調。断片的な情報だけ見れば、「任天堂は情報端末を狙っているのか?」という疑問を一蹴した。 ■ 「ゲーム機に触れていないユーザーへの普及には時間がかかる」 25,000円という価格設定に関して岩田氏は「大赤字ではないが、ものすごく儲かるかと言われれば、やはり新しいハードの発売時は、ソフトを計算に入れれば採算は取れるが、入れなければ厳しいのが現実」。この値段でかつ、任天堂自身がソフトメーカーであると言うことを踏まえた場合、初年度から収益に寄与できる値段付けなのだという。 これは「ハードは最初は赤字で出すのが当たり前だというのも変な議論ではある。そういうことを繰り返していく業界は果たして健全なのだろうかとも思う。『ハードが赤字であるかどうかよりも、あるべきペースで普及するのかどうか』ということが大事。無関心と戦うためにはプロモーションにものすごくコストがかかる。それを考えると、予算を多く取らなければならない」といったことを踏まえたうえでの価格なのだそうだ。 量産製造はすでに開始されており、実は発売を繰り上げることもできるそうだが、「数量が少なく迷惑をおかけしては問題だろう」ということで、「商戦期を逃さずしっかり出そう」と決定したのが12月2日という発売日。何台が並ぶかはまだ時期尚早ということで発言を控えた。これにもDSの成功時の経験が生かされているようだ。 「現在もご迷惑をおかけしているが、DSはまず今までのゲームユーザーが買っていただいた上に、さらに今までゲーム機を買っていなかったお客様が上乗せされている。だから季節外れの時期に毎週15万台出荷しても足りない。そういう状況が作り出されて広まるまでに時間がかかる。DSと同じように普及に時間がかかるかもしれない。(Wiiでは)前よりは短い時間でできるといいなという願望は持っている」と、立ち上げから人が人を呼ぶスパイラルへの移行には、DS同様の時間が必要と見方を示した。 ■ 「『ヘルスパック』は(Wiiがブレイクする)1つの可能性がある」
なかでも「『ヘルスパック』は1つの可能性があると思っている」とそのポテンシャルには期待している様子だった。岩田氏も「すごく楽しみにしているんですよ。ゲーム機と毎日体重を量ることが関係があるというのは、今までまったく別のことで。脳を鍛えることはゲームじゃなかった。犬を飼うことはゲームじゃなかったとかつては言われてきたが、今はDSが「それもゲームかもしれないね」と言ってもらえることができた。なので、宮本が体重を量ることをゲームにしてくれると信じています」と応援メッセージを送った。 ■ リンクが右利きになった理由 今日の映像や試遊台で明らかになったのは、従来左利きだったリンクが右利きになっていたこと。宮本氏によれば、これはWiiのリモコンで操作することにによる変更だという。ボタンで剣を振るバージョンや、左右どちらでも大丈夫なように作ったバージョンなどいくつか試作してみたそうだが、いろんな人に試してもらった結果、やはり右手で剣を振る人が多かったそうだ。「プレーヤーにより剣を振っている感じを体験してもらいたいということで「本当は左利きだけど」ということで、今の仕様に落ち着いたようだ。 ちなみにGC版は左利きだそうだ。また、左右が反転する「ミラーモード」もあり、これはまた違った楽しみがあるということで、「ぜひキューブ版も遊んでほしい」とアピールしていた。 ■ 「Mii」は世界中とやり取りできる Wiiリモコンにもメモリが装備されている。これに登録した「Mii」は、自分の分身として友達とやりとりしたり、インターネットで接続した相手と交換できるようになるという。DSの「ピクトチャット」と同じで、標準装備されているので、「Wii」を買えば、みんなが同時にスタートできるわけだ。「Mii」は1万人記録しても大丈夫なようになっているという。 ■ 「バーチャルコンソール」はちゃんと考えてある」 宮本氏に「バーチャルコンソール」について少しお話を伺ってみた。例えば、「ゲームをいっぱいダウンロードしてきてメモリがいっぱいになったらどうなるのか?」、「本体を別のものに買い換えることがあったら、そのときはダウンロードしてきたゲームに対する扱いはどうなるのか?」といったものだ。宮本氏は「それは自分の担当ではないが、そういうところはきちっとやっていますので、安心してください」とコメントしてくれた。 ■ ユーザーの体験会は11月に開催
ユーザーがWiiに触れられる体験会は、11月に行なわれることもこの会見で明らかにされた。3日にポートメッセ名古屋、12日にインテックス大阪、25、26日に幕張メッセで開催される予定だ。 (2006年9月14日) [Reported by 佐伯憲司]
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