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会場:昭和女子大学
講演のタイトルは、「マイクロソフトが提供するゲームプラットフォームの世界」。「XNA」、「Games for Windows」、「Live Anywhere」の3つをポイントとして、Xbox 360とWindows Vistaを含むWindowsでのゲーム開発環境と、今後のプラットフォーム展開について述べられた。
特に強調されたのが、クリエイター間のコミュニケーションが難しいという点。「ハードメーカーとソフトメーカーの間でのコミュニケーションはそれなりに取れてきたが、学生や、ゲームを作ることを趣味にしたいというアマチュアとのコミュニケーションが難しい。個々人の繋がりはあるが、体系だったものはない」とした。これに対する解決策として示されたのが、第1のポイントとなる開発環境「XNA」である。 XNAは3つのカテゴリにより成り立っているという。ツールやテクノロジーを提供する開発環境「Tools & Technology」に加え、マイクロソフトがサービスを提供する「XNA Solutions」、さらに同社と全ての開発者との間のコミュニティを活発にすることを目指した「XNA Ecosystem」が柱となっている。 次に、XNAで制作されたゲームのデモが行なわれた。最初に公開されたのは、DECのPDP-1で開発された「Spacewar!」を題材にしたもの。当時のゲームを再現したシンプルなビジュアルのものに続いて、ゲームのコードはそのままにXNAのコンポーネントを使ってリメイクしたものを動かした。 今度は、1からXNAで制作されたゲームを紹介。3D空間でボールを転がすというもので、プログラムにはC#を使用したもの。金属質のボールに周囲の様子が写り込んでいたり、ロボットが踊っていたりと、ビジュアル的には手が込んでいるように見えたが、かなり短期間で制作されたものだという。この2つのデモにより、開発環境の移行と新規開発の両面で容易さをアピールした。 デモに続いては、具体的な商品を紹介。商用ゲーム開発向けの「XNA Game Studio Professional」は簡単な紹介に留め、アマチュア向けの「XNA Game Studio Express」を詳しく説明した。これはWindows版が無料提供されるもので、Xbox 360版も年間99ドルを支払えば、市販のXbox 360で動作するゲームソフトを制作できるという。ただし日本ではまだ発売されておらず、価格も未定となっている。 「XNA Game Studio Express」では、ゲーム制作を容易にすることのほかに、クリエイター間のコミュニティを確立するという目的もあるという。この柱となるのが「Creator's Club」というもので、ゲームをやり取りして互いに評価しあったり、ディスカッションする場所を提供するという。
泉水氏は、これらのXNAでの取り組みについて、「Windowsをゲームプラットフォームとしてきちんと立ち上げ、Xbox 360とのシナジーを最大化し、さらに他の機器にゲーム実行環境を広げていくための最初のプロセス」とまとめた。
次の話題は、「Windows Vistaに向けたゲーム開発」と題し、Windows Vistaでゲーム環境がどう変化するかを解説。アドミニストレーター権限を持たないユーザーでログインしたままでゲームのインストールを可能にする仕組みや、Xbox 360と同様のペアレンタルコントロール機能、ゲームを1つのカテゴリにまとめ、ビジュアルアイコンを使用した「ゲームエクスプローラー」など、新たな機能を紹介した。 ハードウェアの面では、Xbox 360との統合を図っていくことを明らかにした。現在は有線接続によるXbox 360コントローラがWindows PCでも利用できるが、今後はワイヤレスコントローラやヘッドセット、ワイヤレスのステアリングホイールも接続可能になる。この橋渡しをするのが「ワイヤレスゲーミングレシーバ」というUSB機器で、これを利用してXbox 360のワイヤレス機器をPCに接続する。発売は2006年冬予定としている。また開発者向けには、XInput APIを提供することで、簡単にXbox 360の機器をWindows用ゲームに対応させられるとした。
さらにWindows Vistaでは、DirectX 10の優位性も強調。DirectX 9で描かれたグラフィックスと比較し、段違いのビジュアル表現が可能であることを示した。
最後の話題は、「Live Anywhere: Xbox Liveの世界をWindowsへ!!」というもの。Live Anywhere構想は、5月の「E3 2006」でビル・ゲイツ氏が自ら発表したことでも話題になったもので、現在はXboxで使われているXbox Liveのシステムを、Windowsや同社の製品を搭載した携帯端末などにも広げていくというもの。 Live Anywhere構想については、「1つのゲーマータグを使用し、あらゆるプラットフォームで共通のLiveサービスを利用する」という運用形態が語られたのみ。ただWindows向けの「Live Anywhere for Windows」の画面については、「Xbox 360とほぼ同じものが、Windows Vistaで実現できる。ゲームを実行中に表示するインゲームガイド(画面横から出るメニュー)、プレイリストやメッセージの表示なども統一したインターフェイスになる」とした。
講演の最後に泉水氏は、「Xbox 360やWindows、Xbox Live Arcadeなど、ゲームの楽しみ方が多様化している中で、それを1つのXbox Liveというサービスに繋いで、コミュニティを融合して拡大するとともに、ユーザーの皆様の楽しみをもっと広げていきたい」と今後の意気込みを述べた。
□CESAのホームページ http://www.cesa.or.jp/ □「CEDEC 2006」のページ http://cedec.cesa.or.jp/ □関連情報 【8月30日】CESA、ゲーム開発者を対象としたカンファレンス「CEDEC 2006」開催 和田洋一CESA会長基調講演「ゲーム産業は第2ステージへ」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060830/cedec.htm 【8月30日】CESA、「CESA DEVELOPERS CONFERENCE 2006」を開催 過去最多の1,700人強が参加する国内最大のゲームカンファレンス http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060830/cedec.htm (2006年9月1日) [Reported by 石田賀津男]
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