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会場:東京大学
馬場氏は冒頭、「ゲーム産業を個別に国として取り扱ったのはおそらく初めて。コンテンツ産業において、国際展開をどうするか、ブロードバンド時代において新興マーケットをどのように取り込んでいくかというのは横断的な課題。そんな中、ゲーム産業は他のコンテンツ産業と比べ輸出も好調で優等生的なコンテンツだった」としながらも、一方で憂慮すべき現状の問題点も指摘。「今のまま、各企業の努力に頼っていてもいいとは思えない。海外シェアは低下し、韓国系ネットワークゲームが力を付けてきた現在、国際的な大競争時代に突入する」と語り、今こそ日本という国単位で取り組むべきだと経緯を説明した。 さらには「ゲーム脳」といったゲームにつきまとっているネガティブなイメージ、次世代機が登場する中で開発体制をどうするのかなどの様々な問題を産業界と話し合うことで問題意識を共有。産官学でどうやっていけばいいのかということで、研究会を立ち上げることとなった。 経済産業省の小糸氏は、ゲーム産業の将来像として目標とするところは、輸出産業として国際競争力を高めると言う点と、社会から支持され、福祉や様々な側面で利用され市場規模を拡大させるという2点を掲げた。この目標に対しての戦略として、開発者の横の繋がりの強化、国際的なゲームコンテンツの賞の新設、クリエイターの発掘・教育などを挙げた。このほかにも、ネットワークゲーム関連のサービスを行なう会社との繋がりを密にし、RMTなどの新たな課題への対処していくことや、教育界や報道機関とのコミュニケーションを強化することでネガティブなイメージだけでなく、プラスの側面もアピールしていきたいという。 産業界を代表する形で出席した和田氏は、「産官学一帯となって取り組んでいこうという方針ができた、今回のレポートの意味は大きい。ゲームソフトは人気があるが、『ソフトウェアは物作りではない』といった意見や『エンターテインメントは遊びであって教育ではない』など無理解・偏見もあった。しかしこういったことに対して産業界が社会と対話してきたとは言い難い。官学ときちんと話をしてこなかった。今回、かみ合った意見交換ができ、レポートを出すことができたが、これが目的ではなく、これから (戦略を) 実行していく」と抱負を述べた。 記者陣からの質疑応答において、「社会とのコミュニケーションについてもっと重要視するべきではないのか」とする意見について、和田氏は「“ゲーム脳”は深刻で大きな誤解のひとつ。ゲームはインタラクティブメディアでいい面も悪い面もあり、シリアスゲームなど教育ツールとして取り込んでくる事も出てきている。ネットワーク社会やインタラクティブメディアとどのように向かい合っていくのか。そう言ったことに取り組んでいくかいかないかで、今後の国力を左右していくと考えている。重要なのは、こういった議論がなされるべきと言う点」とし、糾弾するだけで思考停止状態になることの危険性を指摘。小糸氏は「負の部分を隠蔽するのではなく、もう少しニュートラルな立場で、ゲームに関する研究調査を推進し、学会と連携し『正の効果』や不安要因について調査研究を行なっていく」とコメントした。 また、ビジネス戦略のひとつとして新しい賞の新設と共に検討されている、「国際コンテンツカーニバル (仮称)」については「具体的にどうするかについては検討中 (小糸氏)」としており、具体的には発表できるものはないとしている。和田氏は「産業側から言えば、E3が縮小傾向にある中、ゲーム産業をリードする観点から精神的求心力は東京が持つべき。世界に対してゲームの発信源になるべきで、それをどう実現するべきなのかを話している」とコメント。 他産業との横断的なフェスティバルの開催については、予算についても相当数増やすことも検討されており、集約することで情報の発進力を強化したい意向だという。また、こういったイベントが東京に集中しがちである点にも触れ、地方での開催も検討したいとしている。
今回発表された内容は比較的大きな話だったが、今後様々な場面でさらに具体的な話がされていくことだろう。経済産業省や国の機関、教育界がこれまで以上にゲーム業界について興味を示していることは事実で、そういった背景をもとに、どう変わっていくかに注目していきたいところだ。
□経済産業省のホームページ http://www.meti.go.jp/ □ニュースリリース http://www.meti.go.jp/press/20060824005/20060824005.html □「東京大学 大学院情報学環 馬場研究室」のページ http://chi.iii.u-tokyo.ac.jp/ (2006年8月29日) [Reported by 船津稔]
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