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★PS2ゲームレビュー★

笑いの重ね方が尋常ではない漫才アドベンチャー
「ラブ★コン ~パンチDEコント~」



 コミックや小説といった原作のゲーム化は、開発側の舵の取り方ひとつでデキが大きく左右される。原作の魅力を損なわない内容にするには? どの程度ゲーム性を取り入れるのか? 原作をどう料理するかという点で、ゲーム開発側のセンスが問われるところだ。この度、株式会社AQインタラクティブから発売された「ラブ★コン ~パンチDEコント~」からは、開発側の思い切りの良さと大胆な発想、「単なる原作物では終わらせない!」という強い気概が感じられる。

 原作は中原アヤ氏が別冊マーガレットで連載中の少女コミック「ラブ★コン」。コミックス累計で800万部を売り上げ、実写映画も公開中の大人気作品だ。無難にいくなら、原作の主人公小泉リサをヒロインに据えた乙女ゲームにするだろう。だが、今作は原作の醍醐味である関西弁の軽快なかけ合い、何度も繰り返し重ねる西の笑いという部分をどん欲なまでに強調。キャラクタの恋愛模様も含めながらコントもできるという贅沢なゲームに作り上げてしまったのだ。

ボケ、カス、とえげつない関西弁が飛び交うセリフは全編フルボイス ゲームを起動するとケイン尾杉様(原作内のゲームに登場する美形キャラ)が登場。問答無用で濃い


《 ストーリー 》
身長172cm、通称巨女の小泉リサと、156.2cmのちっこい男・大谷敦士は、“オール阪神・巨人”なんてコンビ名までつくデコボコ漫才コンビ。相性100%、趣味もピッタリな2人は、いつもケンカばかり。

高1の夏、それぞれに好きな人ができ、それぞれに失恋した2人。

そして、だんだん大谷の優しさに惹かれていくリサ。デカい女だって、恋をしたらフツーの女のコなのだ!

元カノやライバルが出現したり、想いがなかなか届かなかったりと、気の合う仲間に見守られながらもリサの恋は波瀾万丈。

軽快で絶妙なボケ&ツッコミを繰り広げるリサと大谷、2人の恋の行方は……。


【キャラクタ】
小泉リサ(CV.早水リサ) 大谷敦士(CV.櫻井孝宏)
本編の主人公。必要以上にデカイ身長と大谷との絶妙なかけ合いから、付いたあだなは“オール巨人” 背は低くとも、気合いと根性は誰にも負けない、バスケ部キャプテン



■ 掛け合い漫才システム「ノリボケ&ツッコミ」とは?

「プロローグ」と「エピローグ」には分岐が発生しない
 初回のプレイではプレーヤーは小泉リサを操作し、相方の大谷や仲間と会話をすることでゲームを進めていく。「ラブ★コン」は1~6のステージが用意されたステージ制。初めてのプレイでは、アドベンチャーゲームを遊ぼうとしてアクションゲームのような「ステージセレクト」画面が出るという、意外性抜群の入口には少し驚かされた。

 1つのステージは「プロローグ」、「パンチDEコント」、「エピローグ」の3つのパートに分かれている。「プロローグ」、「エピローグ」はいたってオーソドックスなアドベンチャーゲーム。テキストを読み進め、ストーリーを進めていく。

 シナリオの差分に影響するのが「パンチDEコント」パート。本作の会話は、まるで相方と掛け合いをしているかのようなリズム感を強く意識して作られている。「パンチDEコント」は相方のセリフに対し任意のボタンを押すことで「ツッコミ(チョイ待ち、なんでやねん、などのツッコミ)」または「ノリボケ(話を振る、話にノる、ボケる)」でリアクションし、会話を成立させていくというもの。タイミングを選ぶことで好きな「間」で会話を発展させ、「L★P(ラブポイント)」という得点を集めていくのが目的だ。

 特定の相方のセリフ中、画面下のMAゲージが減少していく。MAゲージは会話を返すタイミングを計るラインであり、赤が早め、青が適度、黄色が遅めのタイミングとなっている。○ボタンorアナログスティックの下で「ノリボケ」、×ボタンorアナログスティックの上で「ツッコミ」となっている。「ノリボケ」か「ツッコミ」をどの間で押すかによって、相方のフリに対応したセリフが飛び出す。

画面下のバーがMAゲージの青い時点、つまり適度なタイミングでの「ノリボケ」になる
こちらは適度なタイミングの「ツッコミ」


 プレーヤーの押したボタンの正否は、「L☆P」で判定される。「L☆P」がたまると画面右にある「キュンゲージ」が上昇、「キュンゲージ」が上がるとステージクリア後にストーリー分岐が起こる。

 的確なタイミングで「ツッコミ」か「ノリボケ」をすることで高い「L☆P」が獲得できる。明らかにボケを要求されているのに「ツッコミ」を入れてしまったり、「ツッコミ」をする場面で「ノリボケ」してしまうと得点が激減、またはマイナスされてしまう。ただし、「ツッコミ」や「ノリボケ」を間違えてしまっても、会話がちぐはぐになることやゲームオーバーになることはなく、「パンチDEコント」モードは最後まで進行する。

 実際にオートで会話が進行する「パンチDEコント」をやってみると、ジェットコースターのような会話の速度に圧倒された。声優陣の力量もあるだろうが関西弁のリズム感も心地よく、止まることのない漫才のようなアップテンポの会話を作りだせる。インタラクティブなメディアであるゲームだからこそ、「ラブ★コン」らしい会話を表現できたといえるだろう。

 そして、「パンチDEコント」を生き抜くには正確な理解力と決断力が必要なことがわかる。会話はオートで進行するため、相方のセリフを話している短い時間で「ツッコミ」か「ノリボケ」するかを判断。さらにボタンを押すタイミングまで考えなければいけない。数秒で2つの処理をしなければいけないので、高得点を狙うとなると相当シビアな入力が必要。そのスピード感と反射の必要性から、まるで音楽ゲームをプレイしているかのような錯覚にとらわれた。

一度体験したステージは、高得点を目指して何度でもやり直すことができる
 問題はやはり、「ツッコミ」と「ノリボケ」の使い分けだろう。相方のフリが中途半端な箇所もあり、「ツッコミ」か「ノリボケ」かの判断が付けづらい場面も少なくはなかった。高得点を狙うのであれば、難易度的には難しい部類のゲームといえるだろう。難易度調整はないが、救済措置もある。オプション画面の「うさぴょんガイド」を「通常」から「ガイド」に変更すれば、ジャストの対応ボタンとタイミングが表示される。ただし、「ガイド」にした場合は得点が著しく減少する。

 ステージが終了すると、そのステージの結果発表がある。もちろん、ここでも得点が低くともゲームオーバーにはならない。ステージで獲得した「L☆P」や、恋愛偏差値、お笑い偏差値の評価が表示される。恋愛偏差値はキュンゲージの増加量、お笑い偏差値は「L☆P」の総量で決まり、偏差値の数値によって追加シナリオやエンディング分岐が発生する。


■ 原作の会話部分を大幅増強したストーリー

 ストーリーは原作コミックスの1~7巻をトレースして、オリジナルのシナリオを追加したものとなっている。あらためて思うが、コンプレックスを抱えながらも恋愛に一生懸命になる小泉リサと大谷敦士のストーリーは切なく、面白い。

 コミックスでは1コマで終わるようなシーンも、その前後の会話やシーンが付け足されているので、内容の補完に役立つ展開となっている。逆に割愛されている箇所もあるが、物語において重要な場面はカットされていないので問題はないだろう。

名ゼリフ「召喚獣も全滅や!」の前には、ラスボスとの壮絶な戦闘が追加されている 原作では1コマだった人力車のシーンもコントパートが用意されている


 そして、本作のシナリオの特徴はお笑い要素が増大されている点だ。原作でも少女漫画にしては破格のギャグやかけ合いの多さだが、ゲーム内のお笑いのボリュームは度を超えて強烈で、クド過ぎ(?)ともいえるベタな笑いがひたすら盛り込まれている。

 具体的にいうと、会話の中でボケの応酬がなかなか終わらない点だ。プレーヤーがボタン操作で「ノリボケ」をやってもボケのカウンターパンチがくり返されるし、サブキャラクタが延々と同じネタによるボケを重ねまくるというシチュエーションが連続する。原作の持ち味に、シナリオライターの佐藤佐吉氏(テレビドラマ『オー! マイキー』の脚本などを担当)の笑いの感性がぶつかりあい、原作とは一風変わった笑いの世界が演出されているといえるだろう。

一度「ノリボケ」すると中々終わらない。そんな新喜劇な世界だ
 誤解の無いように言っておくと、スベっているということではない。あまりにもボケの積載量が多すぎるため、プレーヤーが押しつぶされて戸惑ってしまう可能性もあるということだ。

 お笑い要素に関して残念な点としては、キャラクタの立ち絵に動きが少ないということだろう。実際の漫才では、相方をどつくなど身振りやリアクションで笑いを取ることができる。しかし、今作の場合は立ち絵が固定でハリセンの絵が相手に「ぺしっ」と当たる表現がせいぜい。軽くよろけたり、お約束のツッコミのポーズくらいのアニメーションは入れてほしかった。

 下ネタや生々しいネタが多いのも本作の特徴といえる。会話の端々では男性キャラ、女性キャラに関係なく、下ネタがポンポンと飛び出すのは日常茶飯事。さらに、大がかりで幻想的な下ネタも準備されている。例えば、「またか?」と大谷が言うと、大空に花火が撃ち上がり、おっさんの股状の華が咲くというファンタジックなギャグという感じ。筆者も会話の端々で少々下品さを感じたのは事実だが、学生たちの日常会話がリアルに描けているという解釈もできるだろう。


■ 登場人物のグラフィックイメージは原作通り

 キャラクタのグラフィックスは立ち絵のパターンも多く、淡い色の塗り方も少女漫画らしい原作のカラーを損なっていない。ゲーム中は話に没頭していられるレベルといえるだろう。注目すべきは目まぐるしく変化する小泉リサの表情パターンだろう。およそゲームのヒロインとしてはありえないフナのような顔をよく見せるので、原作を知らない人はどうか驚かないでいただきたい。

ヒロインとしての一線を越えたリサの表情集。原作通りといえばそうなのだが……


 ゲーム中に登場する一枚絵のCGは28枚。一度見たCGは「キュン画ギャラリー」で確認することができる。CG閲覧中は背景のエフェクトやボイスを流すことも可能。シーンの回想モードも兼ねているという仕組みだ。

「キュン死に」しそうな名場面を鑑賞できる


 その他の登場人物に関しても、原作イメージの再現度は高い。特に魅惑のティーチャーのマイティはグラフィックスもボイスも想像以上にハマっていた。サブキャラクタのファンが主役になるようなシナリオも登場するので、原作+αの楽しみを見つけることができるだろう。

マイティやケイン尾杉様をゲームの中で見るというのは不思議な感覚を覚える


 サウンド関連は、やはり登場人物のボイス量の多さに驚かされる。そのボイスをすべて確認するとなると、相当のプレイ時間が必要となるだろう。あくまで筆者の意見だが、BGMやSEがシーンとマッチしていないという印象が否めない。盛り上げるべき箇所に適正なBGMがならないというのは、アドベンチャーゲームの演出としてマイナスになると思うのだが……。BGMはあくまで主役にならず、物語や声優の熱演に集中できるというメッセージなのかもしれない。


 今作は原作をトレースした内容のため、原作コミックを読んだことがなくても楽しめる。ただ、状況を説明するテキストが不足しているシーンはある。

 例えば、ゲーム中で夏祭りに大谷と待ち合わせをしたリサが突然「きしょい? 私きしょい?」と騒ぎ出す。原作を読んだものなら「ああ、浴衣を着て出てきたあのシーンね」と状況を把握できるだろう。だが、リサの視点で進んでいるゲーム画面では浴衣が表示されず、何を指して「きしょい」と言っているのかさっぱりわからない。状況に関することはノンボイスでかまわないので、説明するテキストが欲しかった。

 プレイし終えて確かに言えることは、「ラブ★コン ~パンチDEコント~」が原作コミックの人気に頼っただけのゲームではないということだ。「パンチDEコント」のゲームバランスは必ずしも取れているとはいえないが、中途半端にまとめられるよりは突出した部分があるほうが良いと思う。今作は、「会話に参加させる」というゲームならではの面白さを引き出しているアドベンチャーの異色作だと個人的に感じた。

 エンディングに関することなので詳細は書けないのだが、ある若手お笑い芸人コンビが登場する。この2人の笑いは関西系のコテコテの笑いとは質が異なるが、それでも「ラブ★コン」の世界観にフィットしている。お笑い芸人と「ラブ★コン」のコラボレーションコンテンツはこのゲームでしか体験できない。このコンテンツを見ることができただけで、元が取れた気分になれたのは筆者だけだろうか。

(C) 2001中原アヤ/集英社・別冊マーガレット (C) 2006『ラブ★コン』製作委員会 (C) AQ INTERACTIVE 2006

□AQインタラクティブのホームページ
http://www.aqi.co.jp/
□キャビアのホームページ
http://www.cavia.com/
□「ラブ★コン ~パンチDEコント~」のページ
http://www.aqi.co.jp/product/lovecom/

(2006年8月9日)

[Reported by 福田柵太郎]



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