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「SIMPLE 2000シリーズ」100タイトル突破記念インタビュー
「SIMPLEシリーズ」生みの親、岡島信幸氏インタビュー

インタビュー会場:D3パブリッシャー本社



D3パブリッシャー
ソフトウェア事業部 部長

岡島信幸氏
 ゲーム業界を見渡すと様々な人気タイトルがあり、ファンの声援に応え続ける形でシリーズ展開が行なわれ、世界観を広げていく作品がある。一方で、デジタル化される以前から人々に愛され続けてきたゲームがある。「将棋」や「囲碁」、「麻雀」、トランプゲームにすごろくなどなど。これらのゲームはテレビゲームが登場した黎明期からラインナップとしてならび、実は誰もが楽しめる最も王道のゲームシリーズといえる。

 この手軽なゲームを手軽にテレビゲームで遊べるよう低価格でラインナップを揃える「SIMPLEシリーズ」として企画したのが株式会社ディースリー・パブリッシャーだった。プレイステーション用ソフトとして「SIMPLE 1500シリーズVol.1 THE 麻雀」が発売され、'99年には50万枚を突破。その後、2年後の2001年には100万枚を突破し「PlayStation Awards」においてPLATINUM PRIZEを受賞している。すっかり定番化したわけだ。

 現在ではプレイステーション 2にプラットフォームを移し、「SIMPLE 2000シリーズ」として様々なタイトルが発売され続けている。当初はタイトル通り王道テーブルゲームを中心にシリーズが構成されていたが、徐々に「SIMPLE 2000 アルティメット」や「SIMPLE 2000/本格思考」などシリーズが細分化され、「SIMPLE 2000 シリーズ Vol.50 THE 大美人」などマニアックなタイトルもリリースされ始めた。

 今回のインタビューでは、「SIMPLEシリーズ」を立ち上げ、現在まで育て上げた同社常務取締役であり、ソフトウェア事業部 部長を務める岡島信幸氏に立ち上げ時からこれまでの経緯を伺った。さらには今後の展開、そしてちょっとしたアイディアを伺うことで、現在の「SIMPLEシリーズ」のもう一つの魅力である“アイディア満載の突き抜けたタイトル”が生み出される秘密にも迫れたらと思う。

スクリーンショット集
「SIMPLE 2000シリーズ」、「SIMPLE2000 アルティメットシリーズ」、「SIMPLE2000 本格思考シリーズ」のスクリーンショットを一挙掲載します!!


■ 1,500円という価格付けは「Best!」から

D3パブリッシャーの玄関をくぐると、多数のリリース作品が飾られ、壁には「PlayStation Awards」を受賞したタイトルの盾がならぶ
--Q:「SIMPLE 2000シリーズ」が100タイトルを突破したわけですが、最初に、「SIMPLEシリーズ」をスタートさせたきっかけについてお聞きしたいのですが。

岡島氏: '98年の10月22日が最初の発売だったんですけど、もちろん「SIMPLE 1500シリーズ」の時代でして、ハードはプレイステーションですね。初期ラインナップは「麻雀」、「将棋」、「五目並べ」、「リバーシ」の4タイトルで、この4タイトルが'98年10月22日に同時に発売しまして、翌月の11月20日ぐらいにVol.5~8までの4タイトルを発売しました。

 当時の国民的なゲーム機といえばプレイステーションでした。当時のプレイステーションの普及率は、ほぼMAX状態でして、ゲーム市場的にもすでに飽和している状態でした。そんな市場の中で、麻雀ソフトに関して言えば、プロの名を冠したタイトルの作品や女性キャラクタが出てきて薄着になったりなど、色々あったんです。でも、あれだけハードが普及して対応ソフトが発売されれば、お客様はどれを買えばいいのか迷うんですよね。

 それで「麻雀ソフトはやりたいんだけど、女の子が脱ぐ必要はないし、プロの名のついたものまでやる気はない」といったユーザーは必ずいると。そういった付加価値を付けて6,000円から7,000円もするのであれば、4人打ちの本格的な麻雀ができる安い製品のニーズが絶対あるだろうと。で、「ゲームの王道であるテーブルゲームを、当時あった『Best!』くらいの価格で発売したらどうか?」というところからシリーズの企画が始まりました。

--Q:じゃあ、価格付けは「Best!」をベースにされたんですね?

岡島氏: ええ、「Best!」の半分くらいがいいんじゃないかなということで考えました。当時はカルチャーパブリッシャーズというメーカーに我々はいまして、カルチャーパブリッシャーズのゲーム事業部が独立してできたのがD3パブリッシャーです。当時は前代未聞だったんですよね、1,500円のソフトって。でも内容というのは、味も素っ気もなくて「素材そのまま」といった感じにまとめました。

--Q:それまでにない分野を開拓すると言うことで、ある意味冒険ですよね。反対意見などはなかったのですか?

岡島氏: 当時ゲーム事業の部署に何名いたかなぁ……8名くらいいましたかね。賛成と反対に、ちょうど真っ二つに別れましたね。

 「ユーザー層が広がる中で、そういったニーズは絶対あるはずだ」という意見と、「『安かろう悪かろう』という印象があって、ウケないだろう」という意見に別れました。意見が半々に分かれたのですから、「それなら販売店さんの意見を聞いてみよう」ということで、当時の営業マンがお付き合いのあった販売各店にヒアリングしたんですよ。

 そうしたら8割方の店舗さんが「いいんじゃないの」と言ってくださったんです。もちろん「5,000円やら6,000円で発売していたソフトが売れなくなるんじゃないか」という意見もあったのですが、販売店さんは当時から店頭にお客様が来ないということを危惧していたので、買いやすいものがあると新規のお客様も開拓できるのではないかという考えもあって、賛同していただいたようですね。

 ゴージャスなものを買うお客様は今までも来ているお客様であって、それ以外のこれまでゲームをプレイしていない人が買う“+α”の利益があるだろうという考え方が、ほとんどだったようです。

--Q:その頃からもう、販売店側ではお客さんのゲーム離れを危惧するところがあったんですね。

岡島氏: そうですね。そういった部分では、ゲームメーカーよりも販売店さんの方が敏感なんでしょうね。店頭にどういったお客さんが来ているかが、わかりますからね。ユーザーに一番近いところである販売店さんのOKをもらったので、「じゃあ、自信を持ってやるか」というのが「SIMPLEシリーズ」をスタートさせたきっかけですね。

--Q:初期タイトルで売れたのはどれでしょうか?

岡島氏: もちろん1本目の「THE 麻雀」です。「THE 麻雀」は、101万本売れまして、ソニー・コンピュータエンタテインメントさんの「PlayStation Awards」でも表彰されました。50万本突破記念の「GOLD PRIZE」と、100万本突破の「PlayStation Awards」と、2度も表彰されちゃって (笑)。普通、1つのタイトルで2度表彰されることはないんですけど、「PlayStation Awards」では累積で何本売れたかというところで表彰されますので。

 この「THE 麻雀」は初回出荷は、約3万本なんですけど、残りはすべてバックオーダーなんですよね。足かけ1年で50万本のところで一度表彰していただいて、発売から2年後に100万本で表彰されて(笑)。そんなタイトルないですよね、2年かけてなんて。

--Q:そうですね。「THE 麻雀」が発売された後、他のテーブルゲームのタイトルも発売されていきますが、最終的にどのくらい売れているのでしょうか。やっぱり、人気のあって安定して売れるのは麻雀ですか?

岡島氏: やっぱり、「THE 麻雀」ですね。麻雀は、ユーザーを選びませんからね。コアユーザーの方が盛り上がって掲示板などに何かを書き込みしてくれるわけではないんですが、支持してくださる方が非常に多いということですね。ちなみに「SIMPLE 2000シリーズ」ではVol.1の「THE テーブルゲーム」が35万本ほどの出荷実績を残していて、一番の売れ筋ですね。

--Q:以前聞いた話で、お年を召されたユーザーさんが、ファミコンで毎日夜に1回だけ、一番最初に発売された任天堂さんの「麻雀」をプレイされるらしいんです。どんなに新しいゲームが発売されてもそのスタイルが変わらないらしいんです。そういった純粋に麻雀をやりたいというタイプのユーザーさんが、ターゲットということなのですね。

岡島氏: そうです。プレイステーション 2になって、ユーザーがライトなところよりもコアユーザー寄りになったと思うんですが、プレイステーションの頃は一家に1台ありましたし、スーパーファミコンの次はプレイステーションという感じでしたね。

 いろんな方が遊んでくださって、「囲碁」だったか「将棋」だったか忘れましたが、70歳くらいのお年寄りに「こういうのは頭の運動にいいから、もっと出してくれ」とお手紙をいただいたこともあります (笑)。

 あと、どうやら音楽CDとゲームのCD-ROMの区別がつかない方がいたらしくて、ユーザーサポートに奇妙な電話がかかってきたこともありました。「お宅のCDを買って、プレーヤーにかけても何も動かない。どうするんだ、これは?」と、よく聞いたらラジカセにかけられていたんです(笑)。

--Q:それはゲームをやろうとして買われたんですよね?

岡島氏: それは私にもわかりません(笑)。もっと凄いのはですね、「ケースからゲームCDを出してゲーム機にセットしてください」と言ったら、「わかりました。セットしました」と。「では電源ボタンを押してください」といったら「電源ボタンがない」とおっしゃるんですよ。またラジカセかなと思ったのですが電源がない? 「コントローラを取ってください」など、色々言ったのですが何も通じないんですよ。その方は、おそらくケースの中から1回出して、ケースにもう一回しまっただけみたいなんですよね(笑)。

--Q:どうして買おうと思ったかわからないですね(笑)。

岡島氏: まぁ、そういう電話がサポートに入ってくるぐらい、非常に多くの方に買っていただいたという訳ですね。

--Q:そういった初期ラインナップの選定というのは、やはり「たくさんの人にやってもらいたい」と言う基準で選ばれたのですか?

岡島氏: もともとテーブルゲームの王道をラインナップという形で始めまして、シリーズ開始当時は、まさかこんなにたくさん作っていくなんて夢にも思っていませんでした。テーブルゲームのラインナップと言うことで始めたはいいんですけども、非常によく売れましてユーザーさんから「次はこれを出してほしい」という意見がくるわけなんですよ。それで、「じゃあ、もっと続けてみよう」となったんです。

 Vol.10くらいまではラインナップを考えていたのですが、10タイトルぐらいまでやるともうテーブルゲームの王道的なネタがないんですよ。なので方向転換を図りまして、Vol.11以降は誰もが知っている遊びを幅広くラインナップしていこうということになりました。

 そんなわけで、パチンコやパチスロもありましたし、メジャースポーツとかですね、ビリヤードなんかラインナップに加えましたしね。ちょうどビリヤードブームと重なって、なんだかんだで「THE ビリヤード」は58万本くらいの売り上げを記録しました。こんな事、言わないと誰も知りませんよね。「SIMPLEシリーズ」って爆発的に売れている感じがあまりしないので。

 それまでライトユーザーの声を拾おうとしてしてのですが、ユーザーの要望に応えて作っていく内に、いつの間にかコアユーザーの方が「SIMPLEシリーズ」に注目してくださるようになってきました。


■ オーソドックスなテーブルゲームだけでなくコアなファンに向けたゲームも登場

SIMPLE2000シリーズの記念すべき第1作目、「Vol.1『THE テーブルゲーム』」
--Q:その実感は、いつ頃から感じられましたか?

岡島氏: 「THE 恋愛シミュレーション」あたりじゃないでしょうかね。いわゆる「ギャルゲー」ですね。ギャルゲーもありだろうと発売したんですが、これが意外と売れまして。あと「THE キックボクシング」あたりもコアユーザーにウケましたよね。

 ですから、我々はその頃からライトユーザーとコアユーザーの両方をフォローしなくちゃいけない形になりました。取材を受けると「そろそろネタがないでしょう?」とよく言われるのですが、今の今までネタが切れて困ったことって一度もないんですよね。ユーザーさんの要望は止めどなく出てきて、エスカレートする一方ですから。

--Q:基本的にはユーザーの意見を吸い上げて企画に反映させているという感じですか? 「今度はこのタイトルをぶつけてやろう!」というのは、やはりユーザーさんの要望に応えてですか?

岡島氏: そうですね、おっしゃる通りです。

 例えば、オリンピックのフィギュアスケートで日本人が金メダルを取りましたよね? するとみんな「フィギュアスケートのゲームがやりたい」と思うわけですよ。でも、その時にユーザーの声を拾っても成功するとは限りません。1年後に発売しても熱が冷めていることも考えられますから(笑)。

 なので、ユーザーさんの声を聞きつつも1年後を予測するというのが、我々が一番やらなくてはいけないことですね。それをずっとやってきて、3年先のものを作っちゃったりとか、ブームが1年保つかなと思ったものが保たなかったりとか、色々ありますけどね。

 ですからテーブルゲームの麻雀や将棋など、ある意味「普遍的なマーケット」と、とにかく変わったものをやりたいコアユーザーさんの求めるものを両立させるには、両方とも「THE」というタイトルはついてますが、頭を切り換えてやるしかないんです。一時期「それは別のカテゴリーに分けた方がいいだろう」という意見もありまして、「Ultimate」シリーズを立ち上げたりしていますが、それはそれで別にコアなファンに向けすぎて怖くなった時期もありましたね(笑)。

--Q:シリーズの中でも記憶に残っているタイトルはありますか?

岡島氏: 「SIMPLE 1500シリーズ」で言うと、たくさんになっちゃいますので……「SIMPLE 2000シリーズ」の最初の「THE テーブルゲーム」はプレイステーション 2への参入第1弾タイトルなだけに気を使いましたね。我々が低価格ソフトを始めてから、いろいろな会社さんが我々の実績を見て低価格ソフトを発売し始めて、最終的には980円なんて価格のも出たはずなんですけど。

--Q:価格的な話で言えば、中古ゲームがあるじゃないですか。それとの値段的な競合が出てきますよね? そのあたりについてはどうだったのでしょうか?

岡島氏: 中古ゲームですか? 中古ゲームとは競合するとは思いますが、中古ゲームの価格は変動するものなので、追いかけても仕方ないので……。

--Q:中古ゲームに勝つ自信はあったと?

岡島氏: 中古ゲームを絶対買わない方っていらっしゃいますし。一方では、中古でしか買わない方もいる。ですから、そこは仕方ないですね。当時、我々が「SIMPLE 1500シリーズ」を始めた頃は、中古ゲームの販売が合法であるか違法であるかの判断が微妙なときでしたから。中古ゲームは中古ゲームの市場がありますから。我々が気にしたのは、どちらかというと「中古市場に流れないように内容を工夫する」というところでしたね。

--Q:「SIMPLE」シリーズが「SIMPLE 1500シリーズ」から「SIMPLE 2000シリーズ」になったときには、値段的なことも含めて発想の転換などがあったのでしょうか?

岡島氏: プレイステーション 2でも1,500円という値段でできれば一番よかったのですが、製造コストも上がっていますし、制作費を考えるとなかなかできませんでしたね。「1,800円にしようか」など色々考えたんですけど……本当は3,000円くらいで売りたいと思ってたりするんですけどね(笑)。

--Q:じゃあ、2,000円は割と思い切った価格設定なんですね。

岡島氏: ええ。2,200円にしようか、2,500円にしようか? など意見がありましたけど。2,000円というのは、やむを得ず価格を上げたというところと、思い切って2,000円にしたという中間くらいの感じですね。

--Q:「SIMPLE 2000シリーズ」になって、企画面ではどうだったのでしょうか?

岡島氏: プレイステーション 2にプラットフォームを移してからの方が、コア寄りのゲームユーザーさんが多くなりまして……。私たちもそれに合わせるようにしていったところですね。そんな劇的な変化はないですね。ただ「SIMPLE 1500シリーズ」でヒットしたため、「SIMPLE 2000シリーズ」でも同じようなもので売れればと思ったものはたくさんありますね。

 我々が「SIMPLE 1500シリーズ」で対象としていたお客さんというのが、今では携帯コンテンツでやっている「SIMPLE 100シリーズ」の「麻雀」や「将棋」をやっていらっしゃいます。「釣り」など90以上のものが毎月楽しめるものです。対して、コアゲーマーの方が、今の「SIMPLE 2000シリーズ」を買っているように感じますね。

--Q:今後、タイトルを発売するとしたら、コアゲーマーをターゲットにしたものが中心となるわけですか? 「将棋」などのオーソドックスなゲームはもうあるわけですから。

岡島氏: そうとも限りませんが、我々は「将棋」というものを当時単体では発売しなかったわけなんですよ。テーブルゲームを1つにまとめて「THE テーブルゲーム」として発売しましたし、本格的な将棋をやりたい人のみに「本格思考シリーズ」というものを用意して提供しました。

--Q:ライトユーザーは携帯などのプラットフォームに流れ、コア層が据置型プラットフォームに残るというような市場の動向を、その頃にはもう把握していたと。

岡島氏: その時は、100%そうだと思ってはいませんでしたが、ゆくゆくはそうなると考えてはいました。なんだかんだで「THE 麻雀」で3年間売り続けてきたものですから、かなりおっとり刀でプレイステーション 2に参入したクチなんですけど。

 どうして参入時期が遅かったかというと、プレイステーション 2の市場を研究しなければいけませんでしたし、2年、3年後も通用するようなタイトルでなくては、シリーズの最初のタイトルに据えられないといった考えもありました。Vol.1が売れなくなったら、このシリーズのイメージ全体がよくないですよね。だからVol.1がずっとダントツで売れているものにするのが、我々の基本的な考え方にありました。

--Q:「SIMPLEシリーズ」を続けるに当たって、苦労した点はありますか?

岡島氏: 苦労ですか……苦労はですねぇ、日々これ苦労なんですけど (笑)。

--Q:ちなみに今、いくつのラインが走っているのですか?

岡島氏: 年間に30~35本くらい発売されますので。

--Q:月3本くらいですか。

岡島氏: ええ。なので、常時何かを作っていると思っていただいて構いません。例えば、毎月3本発売されるとして、開発期間が半年のものもあれば、1年や1年半など色々なのですが、どれも1年だとすれば、今出ているものが去年の今頃に企画として決定しているわけですよね。ですから来年も今のペースでいけば、いままさに2~3本が「これやるぞ」と制作が始まっていることになります。

--Q:ちなみに制作が始まったとしたら、最後まで作り上げるのですか?

岡島氏: いえ、途中でやむなく中止にするものもありますよ。

--Q:企画という観点から見て、印象深いものはありますか?

岡島氏: やっぱりテーブルゲームやパーティーゲームが非常に印象深いですね。Vol.1とVol.2でプレイステーション 2における「SIMPLE 2000シリーズ」の方向が決まるだけに、たくさんのゲームが遊べるという点……つまり、Vol.2の「THE パーティーゲーム」で言えば、ゲーム1つの単価が50円というところに非常にこだわりましたね。今の携帯電話アプリのダウンロードと同じような感覚ですよね、「1ゲームいくら」と言い切れるところが。市場に合致した値頃感を、ずっと考えてやってましたね。それを基本とした上で、違ったバリューに転化したときはどうするかといった考えで作っています。

--Q:基本的な思想としては「値頃感」であると。

岡島氏: そうですね。もちろん、5,800円や6,800円のソフトと同じものを提供していくには無理がありますが、だからこそ「SIMPLE 2000シリーズ」だから次も買ってみようと思っていただけるものというのにこだわっています。

'99年に50万枚突破を記念し、「SIMPLE 1500シリーズVol.1 THE 麻雀」が「PlayStation Awards」においてGOLD PRIZEを受賞 その2年後となる2001年にはさらに100万枚を突破し、「PlayStation Awards」においてPLATINUM PRIZEを受賞した 2000年にはPlayStation用タイトル「SIMPLE 1500シリーズVol.10 THE ビリヤード」がGOLD PRIZEを受賞



■ 「THE 大美人」登場の驚き。タイトル付けの妙味

シリーズ100タイトル突破ということで、インタビュー時間も100分を設定。お疲れ様でした
--Q:個人的にですが「THE 大美人」が出たときには、大変な驚きを覚えたんですよ。思いつかないじゃないかと。「THE 大美人」なんてタイトルは。このタイトルの製作スタートはどんな感じだったのでしょう?

岡島氏: ウチでの製作タイトルについては、外部パートナーさんが「こんなの考えてきたんだ、やってくれよ」みたいな感じで持ってきてくださるのと、こちら側からお願いするのと比率的には半々なんです。

 「THE 大美人」の開発はタムソフトさんなのですが、タムソフトさんと飲みながら話していたんです。最初は「“小さい”というのはどうだ!」ということろから始まったんです。

 主人公は一寸法師みたいなんですよ。それでキャラクタの家があって、そこに入り込んで影響を及ぼすと。住人が仕事に行っていないときに、主人公が好き放題やれる。その代わり、ネコに見つかると巨大なネコと戦わなくちゃいけないとか(笑)。ゴキブリが強敵だったり。そういうコンセプトで考えたんですけど、「これだ!」という決め手がなかったんです。

 それがある日、タムソフトのクリエイターさんが発想を逆転させて「女の子がデカイのはどうだ!」と。で、タイトルから入ったみたいですね「大魔神」から「大美人」みたいな(笑)。それで「ああ、それだ!!」と。

--Q:タイトルが思いついた瞬間にある程度決まったと。

岡島氏: もう決まりですね(笑)。

--Q:ユーザーさんの反応はどうだったのですか?

岡島氏: 非常によかったですよ「THE 大美人」は。タイトル名で反響があったのはですね「THE 大美人」とか「THE お姉チャンバラ」あたりですね。

--Q:タイトル名の企画会議とか、どのような感じなのですか? たくさんのタイトル名をアイディアで出すのですか?

岡島氏: 実は、何十とか出さないですね。結構思いつきでつけています。

--Q:「THE お姉チャンバラ」のタイトルをつけるときはどうだったんですか?

岡島氏: “女の人”がチャンバラをするので「姉ちゃん」と呼ばれてたんですよ。けど「姉ちゃん」だとわかりにくいので、最終的に「お」と「バラ」をつけてわかりやすく言うようにしたんです。

--Q:それが「THE お姉チャンプルゥ」になったのは?

岡島氏: それは2組の姉妹が混ざりあうので。お姉ちゃんがチャンバラして、しかも混ざるから「チャンプルでいいだろう」と(笑)。でも、あまりにもそのままで恥ずかしかったので、小さな「ゥ」をつけたんです。

--Q:「THE 大美人」などのルーツは「ラブ☆スマッシュ」ですよね。

岡島氏: そうです。テニスのスコアで言う“ゼロ”を意味する“ラブ”とスマッシュをかけたタイトルをつけたんです。「ラブ☆~」というのが非常にウケたので、じゃあ次は麻雀だから「『ラブ☆麻雀』でいいや」で決めました(笑)。その次も「ラブ☆アッパー」ですね。ボクシングじゃなくてアッパーだって。これもアッパーカットにかけてるんですけど。「異常な愛」っていう意味で「ラブアッパー」という言葉があるんですよね。

 おかしなタイトルがつき始めたのは「族車キング」あたりかもしれませんね。これも最初は「族車レース」や「カスタムカーレース」といった普通のタイトル名だったんですけど、今ひとつインパクトがないのでどうしたものかと思っていたんですよ。それで結果として「族車キング」に落ち着いたという感じですね。

 今見ると普通の名前に見えますけど、当時はおかしかったんですよ(笑)。族車って本当は早く走れないんですよ、パーツが落ちちゃうから。それなのに最速ってイメージをつけるのが「あり得ない!」って感じでよかったみたいでしたねぇ。

--Q:そういったのはやっぱり岡島さんが決める感じですか? それともタイトル付けの会議みたいなのがあるのですか?

岡島氏: いや、タイトルネーミング会議なんてことはやらんよね(笑)。

広報 大池氏: ないですねぇ。そろそろネーミングを決めようと言うときに、最初から上がっているものから「これしかない」といった感じで決まりますね。

--Q:別にインパクトを狙っているわけではないんですよね?

岡島氏: タイトルネームとして「ぴりっ!」とこないと、お客様に伝わらないのでそこだけを考えているだけなんですけどね。「THE」と付いているのでシリーズタイトルとして統一感がとれていて、それで逆に個別のタイトル部分で遊べるというのがあるかもしれませんけどね。社内では、私のつけた名前には文句を言わせない! ……言われますけどね (笑)。

--Q:各タイトル個別に見ていくと、特徴的で、話題になったタイトルも多いですね。ちょっと振り返ってみると、たとえば「THE スナイパー」。

岡島氏: 1つのコンセプトで作れるのはこれだけしかありませんね。単純に狙撃をするというだけですから。それをハードボイルドタッチに描こうとしただけでしたね。

--Q:ちょうど100タイトル目となる「THE 男たちの機銃砲座」はいかがですか?

岡島氏: これは機銃砲座で撃つだけですからね。本当のワンコンセプトだよね。主人公として、パイロットでもない、艦長でもない、機銃砲座手っていう(笑)。戦艦がどこに行くか決められないからね。しかも動く範囲の敵しか撃てないから、大局がどうなっていようが「やるしかない!」みたいな(笑)。男らしいゲームですね。上に見えるものを撃つしかない! これぞ男だよ。

--Q:「THE カメラ小僧」もワンコンセプトで描かれたタイトルですよね。

岡島氏: 「THE カメラ小僧」は覗いて撮るだけですからね(笑)。これ、「カメラマン」じゃなくって「カメラ小僧」だからね。凄いタイトルだよね。ストーリーも凄いんだよね。一般のなんの“カメラ小僧”気質もない主人公が友人からカメラをもらって、“カメラ小僧”に目覚めていくストーリーですからね。個人的には「漢のためのバイブル THE 友情アドベンチャー ~炎多留・魂~」が気に入ってますね。これも話題になって、プロモーション効果は絶大でしたね。

--Q:でも、我々報道側からはどうしてもインパクトだけに引きずられがちなところがありますね。

岡島氏: そうですね。最近、ゲームユーザー向けの媒体さんがそういうところをチョイスしている事もあって、コアユーザーさんにはそういったイメージがすり込まれたような所がありますね。でも、本当は「SIMPLEシリーズ」はそういった (コアゲーマー向けの) 側面もあれば、ライトユーザー向けの側面もあるんです。ですから、見る人の立ち位置によってどのようにも見えるものなんですよね。

Vol.16「THE スナイパー2」 Vol.38「THE 友情アドベンチャー~炎多留・魂~」 Vol.50「THE 大美人」 Vol.53「THE カメラ小僧」
Vol.61「THE お姉チャンバラ」 Vol.100「THE 男たちの機銃砲座」 アルティメット Vol.3「最速!族車キング」 アルティメット Vol.6「ラブ・アッパー!」



■ Xbox 360、プレイステーション 3時代におけるSIMPLEシリーズ

岡島氏の中では様々なアイディアが常に浮かんでいるようだ
--Q:Xbox360版の「THE 地球防衛軍」が予定されていますが、SIMPLEシリーズで出すのですか?

岡島氏: え、いえいえ。そんなことはできませんよ(笑)。

--Q:どういう事かというと、これからXbox 360やプレイステーション 3、Wiiといった次世代機の時代に向かって、今後はどのような展開を考えていらっしゃるのでしょうか?

岡島氏: ソフトウェアの価格を低価格に設定できるハードであれば、積極的にやっていきたいと思っています。

--Q:Xbox 360にしても、プレイステーション 3にしても、ソフトの開発費用が高騰するといった意見もあるじゃないですか。そういった中で、ソフトの価格を低価格に設定していらっしゃる「SIMPLEシリーズ」についてどういう方向性でやっていくつもりなのかを聞いてみたいと思いまして。

岡島氏: それぞれのハードが今後どのように普及していくのかが、現時点ではわからないので何ともいえませんね。低価格ソフトはハードが普及していて、コアユーザーとライトユーザーがある程度存在するからこそ、我々のビジネスが成り立っているのですから。コアユーザーしかいないところで低価格ソフトを発売しても意味がありませんからね。もし、ゲーム機の方向がそのようになるなら、「SIMPLEシリーズ」は携帯の世界で生きていくことになるかもしれませんね。

--Q:Wiiはいかがでしょうか?

岡島氏: コントローラーが特殊だと言う認識で捉えられるのは最初の内だけだと思います。このハードはもっと先の次元に本当の価値があるのだと思います。ただ、今の時点ではこのコントローラーを生かさない手はないですね。

--Q:ということは、「SIMPLEシリーズ」のコンセプトが通用するプラットフォームの市場形成がなされて、市場の要望があれば続けていきたいということですね。

岡島氏: もちろんです。「SIMPLEシリーズ」は今よりも定番アイテム化したタイトルと、今よりも突き抜けたコアなタイトルの両極分化で進んでいきたいと思います。


■ おまけ……「リバーシ vs 将棋」とかってどう? 仮想企画会議を公開

 インタビューの合間に様々なお話を伺っていた中で、「なにかゲーム化したいようなアイディアって、ありますか?」と聞いてみた。こちらとしてはどうしてもマスコミの悪いクセで、変わったアイディアが飛び出ることを期待して聞いてみたわけだが。すると、こんなアイディアが岡島氏側から飛び出した。

岡島氏: 総統になるゲームなんてどう? デ○ラー総統になるゲームとか。「あそこに攻めるぞ!」って命令したら、みんなどんどこどんどこ攻め込んでいくの。で、家臣の中に、総統の方針を聞いて「こいつ、おかしいんじゃないか?」って不審に思ったヤツは撃ち殺しちゃうわけ(笑)。

 (タイトル一覧を見ながら)「VS」シリーズって2タイトルしかないんだ。……「VS」シリーズ作らなきゃなぁ。「囲碁 VS 将棋」とかってどう? お互いのルールで戦うの。新しいヤツできないかなぁ(笑)。そうだ、「リバーシ VS 将棋」は? いけるよね。将棋は将棋のルールでリバーシの駒を取るわけ。リバーシはリバーシのルールで、挟めば将棋の駒を取れるわけ。

広報 大池氏: でも、それじゃ圧倒的にリバーシが有利ですよね。駒をどこにも置けるから。

岡島氏: でもさ、将棋の駒にどんどん取られていくわけだ。飛車とかグィーンって移動してきて。……ちょっと本当に対戦してみよ (笑)、誰か捕まえて。それぞれのルールで。ものすごく燃えるものになるかもしれないですよ。初めての対戦!!

-- あくまでも、雑談レベルでの企画ですので、発売を心待ちにはしないでいただきたい(笑)。

(C)D3 PUBLISHERS INC. All rights reserved.

□ディースリー・パブリッシャーのホームページ
http://www.d3p.co.jp/
□「SIMPLEシリーズ」のページ
http://www.d3p.co.jp/simple/simple.html

(2006年8月7日)

[Reported by 船津稔]



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