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★PSPゲームレビュー★

コトバ遊びだけではない。珠玉の学園コメディ!
「-どこでもいっしょ- レッツ学校!」



 5人のポケピ(ポケットピープル)と生活し、コトバを覚えさせていく「どこでもいっしょ」シリーズの最新作「-どこでもいっしょ- レッツ学校!(以下、レッツ学校!)」が発売となった。プレーヤーは「どこでも学校(校名は変更可能)」の先生役として赴任。生徒のポケピたち、トロ、リッキー、ピエール、ジュン、スズキ(ポケピたちの名前は変更可能)の入学から卒業までの1年間を共に過ごすことがゲームの内容だ。

 いきなり筆者の主観で感想を述べてしまうが、今作はシリーズの中でも一、二を争う秀作だと思う。その最大の魅力は、既存のシリーズのように1人のポケピとふれあうのではなく、一堂に会したポケピ5人と共同生活を楽しめる点にある。ポケピ同士で繰り広げられる授業という名の学園コント……ポケピたちの会話の間の取り方、細かなポケピのリアクション、そしてプレーヤーがコトバを教えることで発生するコトバ遊びのコミュニケーション。それらの歯車がぴったり噛み合い、極上の学園コメディとして成立しているのである。時に思い切り笑って、時にホロリとさせられる、どこでも学校の教員生活の魅力を紹介していきたいと思う。

■ テスト無し、生徒大さわぎの授業風景

 まず、4月の入学式を前に、5人のポケピの中から好きな1人を選ぶ。選んだポケピは名前を変更することができる。選んだポケピはクラス委員となり、そのポケピを中心に学園生活がスタートしていく。また、選んだポケピによってエンディングも異なってくるので、5人すべてのストーリーとエンディングを見るという目標も持てることだろう。

 1カ月は4日間で構成され、1日は3限の授業が用意されている。授業時間は幅があるが、筆者調べでは1時限平均10分というところ。プレーヤーが先生になるとはいえ、生徒の教科ごとのパラメータを育成するゲーム内容ではない。授業には科目が設定されており、科目に沿ったテーマについて授業を進めていく。

 科目はいろいろなことを話し合う「HR(ホームルーム)」、新しいコトバを覚える授業の「コトバ」、日本語や英語について勉強する「国語・文学・英語・外国語」、計算する力を身につける「算数」、世の中のしくみについて学ぶ「社会・地理・経済」、あるテーマについて討論する「討論会」などがある。

 教師であるプレーヤーの役割はポケピたちの賑やかな会話や発表、教科書の朗読を○ボタンで読み進めていくことがメイン。プレーヤーが介入できる場所は、あまり多くは無い。なでなでやデコピンも任意でできるわけではなく、選択肢が出た時にしか選ぶことはできない。頑張っているポケピたちをうんと褒めてやることができないのは、少々残念に感じた。

 そんな授業の中、質問に答えることや、国語の授業でコトバを教えることはプレーヤーが存分に活躍できるポイント。ポケピにあるコトバを教えると、ポケピから「それは飲みもの?」、「それは好き?」などの質問が帰ってくる。これに答えていくことで、コトバのカテゴリや意味を教えていく。教えたコトバはポケピたちが会話の中で使用する。文脈によって意味が通ったり通らなかったりと、意外性に富み変幻自在のトークが発生するのはシリーズ通しての魅力といえるだろう。

 質問に答えることや、コトバを教えるときは文字パレットを使用する。文字パレットはいわゆるソフトウェアキーボードで、PSPの方向キーで文字ボタンを移動させて1文字ずつ打っていく。ただ、方向キーによる入力のわずらわしさを解消しようと、工夫が凝らされている点が注目したいところだ。

 文字パレット上には文字ボタンが2つ存在している。それぞれ○ボタンに□ボタンに対応し、それぞれパレット上の右と左の領域をフォローしている。方向キーを動かすと2つの文字ボタンが同時に動いていく。文字ボタンが1つしか無いと、端から端まで文字ボタンを動かすには方向キーを長く押さなければならず時間がかかる。だが、文字ボタンが2つの場合は文字パレットの右半分を○の文字ボタンで、左半分を□ボタンの文字ボタンで入力でき、分担が可能になる。実際に入力してみればわかると思うが、慣れてくると入力の時間は相当ショートカットできる。変換候補も中々の充実ぶりで、文字入力のしやすさは十分に進化を遂げている。

 また、現実の学校と同様に文化祭や体育祭といった年中行事も予定されている。どのイベントも楽しいが、ぜひとも遊んでほしいのが体育祭のサッカー。ポケピがボールをキープしドリブルするのだが、もっさり走るポケピと高速で流れ去る背景のギャップには思わず爆笑してしまった。夏休みに登場するバスのカーナビ(980円)も意外な伏兵で、ポケピたちとの楽しい行事を盛り上げてくれる。

 年中行事の最後には、ポケピたちとの楽しい思い出と行事が終わったことの切なさを感じさせる優しいメッセージがゆっくりと流れる。明確な泣かせどころとわかっているのだが、自然と涙腺が緩んでしまう演出だ。

■ 放課後は学生らしく部活動

 3限目が終わると放課後となり、部活を行なうことになる。部活の内容はミニゲーム形式で、その種類も「しりとり部」、「コトバdeおいちょカブ部」、「早押し部」といった具合にコトバにまつわる部活内容が16種類そろっている。部活は内容も面白いが、絵的にもセンスが光る。グラウンドをマラソンしながら「ふぁいおー」と声を出し、しりとり特訓をするポケピたちの真面目な姿が何ともシュールで面白い。

 部活の種類は授業に登場することで増えていく。1つの部活に所属することはなく、その日の気分で遊びたい部活を選ぶことが可能。ただし、部活は1日に1度しか選択することができない。早く授業を進めたい人は、「部活をサボる」ことでパスできる。

【しりとり部】

 読んで字のごとく、しりとりの練習をする部活。しりとりの起点となるコトバをプレーヤーが入力すると、そのコトバに続けて生徒たちがしりとりをしていく。しりとりがつながらなくなるか(続くコトバを教えていない)、コトバを10個つなげると終了。コトバを10個つなげることに成功すると、★がひとつもらえる。対人戦ができるのはこの部活のみ。

【漢字部】

 「辿る」のように読み方が難しい漢字が表示されるので、選択肢の中から正しい読み方を選んでいく部活。出題された漢字の意味と使用例などがポケピたちの会話によって説明されるので、思いがけず教養が身に付く。

■ ネットで旬のニュース記事を取り込む

 個人の持つ情報量では、ポケピに教えることのできるコトバに限界がある。何より、プレーヤーの趣向性がダイレクトに反映され、特定のジャンルに偏ってしまいがちだ(そこが面白いところでもあるのだが……)。

 そこで、PSPのワイヤレス機能(インフラストラクチャーモード)を使った「ニュース授業」が活躍する。これはニュースサイトで配信されているRSSデータをメモリースティックにダウンロードし、見出し記事の中から単語を抽出して覚えさせることができる授業。「ニュース授業」のメリットはコトバ入力の苦労から解放されるというところが大きい。そして、ポケピたちに世間のトレンドを象徴するコトバを教えることで、飛び出すコトバの意外性と親近感は一気にアップするだろう。

 学校マップから「視聴覚室」を選び、「ニュース授業の更新」を選択。ネットワーク接続画面が表示され、利用するアクセスポイントを選ぶことで自動的に登録してあるニュース記事のダウンロードが開始される。デフォルトでは楽天の運営するインターネット総合ポータルサイト「インフォシーク」内の「Infoseek ニュース」の国際、スポーツ、コンピュータ、芸能、政治・社会、総合、ビジネスのカテゴリが用意されている。

 ダウンロードしたトピックスは「視聴覚室」の「授業の選択」を選ぶことで授業が開始される。試しに「スポーツ」カテゴリを選んでみると、見出し記事を読み込み「正しい記事はどれか?」という3択クイズが出題される。覚えさせることのできるコトバは自動的にチョイスされる。例えば、「竹山がハッスルで逆ギレ」という見出し記事なら「竹山」、「逆ギレ」という単語が抽出された。単語のチェックボックスをチェックすることでポケピたちに覚えさせたい単語だけを残すことができる。

 ニュース授業の新規作成を選ぶことで、RSSデータが配信されているURLを入力して、興味のあるサイトをニュース授業用のカテゴリを登録することができる。ここではわかりやすく、GAME WatchのRSSデータが配信されているURL(http://game.watch.impress.co.jp/sublink/game.rdf)を新規登録する。授業ではこんな見出し記事が黒板に表示された。

「NCJ、『リネージュクロスランカー:エピソード5』の最新情報を公開
新マップ「海賊島後半部」と追加された新クエストの内容を紹介」

 黒板が文字で埋まり、選べるコトバは実に10種類以上(笑)が提供された。今後はプレーヤーの手で「レッツ学校!」にGAME Watch記事が取り込まれることも考慮し、ライターである自分自身、見出しにも一層気を配る必要を感じさせられた。

 また、インフラストラクチャーモードでダウンロードサイトから号外授業をダウンロードできる。号外授業の内容は1限分のゲームコンテンツ、毎月第2・第4金曜日に新作の配信が予定されている。

■ アドホックモードで対人戦とゲームシェアリングが可能

 PSP本体のワイヤレスLAN機能(アドホックモード)を使うことによって、2台のPSPを接続すると、対人戦の「しりとり対戦」と「レッツ学校!」の体験版データを送信する「1日先生体験」の2つが遊べる。

 「しりとり対戦」も「1日先生体験」も、「レッツ学校!」の魅力を複数人で共有できるモードとなっている。だが、どちらも受信する側がPSP本体を立ち上げて待機していなければならない。「今から通信をはじめるから準備してね」と通信する相手とコミュニケートしながら準備したい。

<しりとり対戦>

 両チームの選手を選び、どちらかのチームのライフがゼロになるまでしりとりをする対戦ゲーム。2台のPSP本体とそれぞれに「レッツ学校!」のソフトが必要。まず、学校マップから「特別授業」から「しりとり対戦」を選ぶ。1人が「対戦相手ぼしゅう」、もう1人が「挑戦をうける」を選択。募集側が対戦にかける★の数を決め、挑戦を受ける側が対戦相手リストの中から対戦する相手を決めることでマッチングが成立する。

 「しりとり対戦」は代表ポケピ3人同士で戦う3on3。ポケピの戦闘能力に差はないが、ポケピによって着られるコスプレ(防具のようなもの)が異なる。

 ポケピと着るコスプレを選ぶと、「しりとり対戦」がスタート。まず、先攻のチームの選手がコトバを選ぶ。コトバが決まると相手のライフは減る。次は後攻のチームのターンとなり、相手チームが選んだコトバにしりとりでつないでいく。こうしてお互いのチームのライフを削りあっていき、先にライフがなくなったチームが負けとなる。

 勝負の決め手は「しりとりコンボ」と「コスプレ」。「しりとりコンボ」は1人が選んだコトバに同じチームの選手がコトバをしりとりでつなげ、最大3倍まで攻撃力をアップさせることができるもの。「しりとりコンボ」発動時は特殊な演出がカットインされる。どうみても攻撃とは関係なさそうなポージングとテロップでコトバをつなげていくポケピたちの姿は必見といえる。

 ただ、「しりとりコンボ」に使うコトバはオートで選出される。間違ってコトバの最後に「ん」がつくコトバを引いた場合は自爆となり味方チームのライフが減ってしまう。本編のイベントでもNPCから「しりとり対戦」を申し込まれることは多く、「ん」のつくコトバを授業で覚えさせるのはタブー。対戦が強化されたのはありがたいのだが、「うどん」など好きな言葉に制約がかかるのは残念に思う。

 「コスプレ」は「購買部」で購入可能で、授業や部活で集めた★と交換できる。コスプレを着させることでポケピのグラフィックが変化し、ライフの増加と特定のカテゴリのコトバに対しカウンターを発動するなどの特殊能力が備わる。例えば、「トリ」のコスプレならトロとジュンのみ着ることが可能で、チームのライフに+1される。「トリ」の特殊効果は「生きモノこうげきをはじき返す」こと。つまり、相手チームの「生きモノ」のコトバをはじき返し、相手チームのライフにダメージを与えることができるというわけだ。

 トロたちのコスプレの多彩なバリエーションやファイティングポーズ、ダメージを受けて吹っ飛ぶ姿を見ているだけでも十分楽しい「しりとり対戦」。だが、駆け引きの要素は相手のコスプレのカウンターに注意して、NGとなるコトバを選ぶくらいしかなく内容はやや単調といえる。ハンディキャップを設定することはできないので、コスプレの所有数に差があり過ぎる場合はコスプレ無しで戦うなどあらかじめ話し合いで条件を決めておくといい。

 実際にプレイしてみると、ターンの開始・終了時にも通信のタイムラグは無いに等しく、スムーズに短時間で対戦することができる。対戦終了後、同じルールと相手で連戦できる(マッチング画面に戻されない)という機能もあり、地味ながら対戦環境はきちんと整備されている。

<1日先生体験>

 「レッツ学校!」の一部を体験できる「1日先生体験」データを、別のPSPにプレゼントする。送信側は「レッツ学校!」のUMDディスクが必要だが、受信側はPSP本体のみ必要でUMDディスクは不要。

 送信側が学校マップの「特別授業」から「1日先生体験を送る」を選択して待機。その後、受信側がPSP本体のゲームメニューからゲームシェアリングを選びリクエストを送る。送信側がリクエストを認めることで、「1日先生体験」のデータの転送がスタートする。

 受信が終了してから○ボタンを押すと、「1日先生体験」がスタートする。臨時教師という形なので、プレーヤーの名前やポケピの名前変更はできない。授業内容は三つ。「国語」はポケピにコトバを覚えさせる授業。「社会」は日本地図から地域を選択し、名前を覚えさせる。本番さながらにポケピたちが各地のお祭りや特産品をレビューしてくれるのが微笑ましい。体育は部活の「漢字部」を体験する。10問の漢字問題が出てくるので、正しい読み方を選択肢から選び出すのが目的。

 体験版なので当然だが、「1日先生体験」の内容は本編のごく一部。だが、他人にゲームの面白さを伝える上で、これ以上効果のある方法は無いだろう。データの送受信は1分以内という短時間なので、ぜひ「レッツ学校!」のユーザーは周りの人にポケピたちとの授業風景をプレゼントしてほしい。


 今作にも「卒業式」というポケピとのお別れイベントがある。卒業式に向けて、次第に膨れ上がってくる「ポケピと別れたくない」という感情。「どこでもいっしょ」シリーズを何作も遊んでいるのだが、この感情にはどうにも耐性ができないのが不思議でならない。ちなみに卒業の日を迎えて二周目を始めたからといって、一生懸命教えたコトバの数々がリセットされるわけではない。教えたコトバとコスプレ、出現した部活と取得した★の数のデータは引き継がれるので安心してほしい。

 エンディングまでゲームオーバーもバットエンドも無く、歌がありダンスがあり、そして笑いと涙がある。そんなハッピーでピースフルなゲーム「-どこでもいっしょ- レッツ学校!」は、お気に入りポケピを変えるなどして何周でも付き合っていけるタイトルだと個人的に思う。コストパフォーマンスでいえば、期待値を大幅に超えたお買い得タイトルだ。

 ステキな学園生活に足りない要素があるとすれば、それはどこでも学校に「修学旅行」が存在しないことだろう。携帯機だからこそ、旅感覚が味わえる行事を増やすべきなのではなかろうか? 今後のダウンロード授業配信または拡張ディスクを出すなどして、ぜひ「修学旅行」を楽しめるようにしていただきたいものだ。

(C)2006 Sony Computer Entertainment Inc.

□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.playstation.jp/
□「どこでもいっしょ」シリーズのページ
http://www.dokodemoissyo.com/
□関連情報
【6月1日】SCEJ、PSP「-どこでもいっしょ- レッツ学校!」
発売間近! 新しい機能と要素を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060601/doko.htm

(2006年7月31日)

[Reported by 福田柵太郎]



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