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バンダイナムコゲームスを含む4法人、「ゲームの処方箋」シンポジウムを開催

7月14日 開催

会場:秋葉原UDXビル4F 「アキバ3Dシアター」

株式会社ナムコ社長の東純氏は「ビデオゲームにおける客観的で正確な視点を持つことが、ゲームメーカーの社会的使命」とプロジェクト発足の経緯を語った
 株式会社バンダイナムコゲームス、財団法人ニューテクノロジー振興財団、株式会社ナムコ、早稲田大学こどもメディア研究所の4法人は、ビデオゲームの効能を科学的に立証する「ゲームの処方箋プロジェクト」のシンポジウムを秋葉原UDXビルで開催した。

 「ゲームの処方箋」プロジェクトとは、2005年度に株式会社ナムコ50周年記念事業の一環として立ち上げられた。科学的かつ中立的な視点とアプローチによって、ビデオゲームの影響や特性などを評価し、最適な活用方法(≒処方)に関する知見を取得・活用する取り組みのこと。プロジェクトは人間工学や小児科学、認知科学分野の研究者が参画し、成果の多様化を図った。

 シンポジウムは二部構成で、第一部はプロジェクト参加者が研究テーマ別とその成果を発表した。


【テーマ1・心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査】

「ゲームのソムリエ」システムを作りたいと願望を話す河合氏
 早稲田大学大学院国際情報通信研究科助教授で、「ゲームの処方箋」プロジェクトのリーダーである河合隆史氏が研究成果の発表を行なった。河合氏の専門分野は立体映像やバーチャルリアリティといった先端メディアの応用・評価に関する研究に従事。人間科学の視点から、人に優しいデジタルコンテンツの発展・普及に取り組んでいる。

 河合氏は「私もゲームをやるのが好きなのですが、いざ遊んでみようとすると何をプレイしたら良いのかわからないことがあります。そんな時に自分の今の気分に最適のゲームを選んでくれるようなシステムがあったら良いと考えた」と話し、それがテーマの「心理的効果を中心としたゲームソフトの効能と調査」の着想となったとコメントした。

 テーマ「心理的効果を中心としたゲームソフトの効能の調査」の目的は、日常生活において気分の変化を促す、一種のサプリメント的な短時間のゲームとの付き合い方を探る。ゲームソフトの効能や使用上の注意などを表現することで「処方箋」としての可能性を携帯用ゲーム機のゲームをプラットフォームとして実験的に検討した。

【テーマ1の実験方法】

様々な情動変化を確認するため、多彩なジャンルを採用したという
 実験はPSPのゲームソフト「リッジレーサーズ」、「太鼓の達人」、「ナムコミュージアム(実験対象はディグダグ)」、「もじぴったん大辞典」、「ルミネス」を対象として、プレイ前後の気分の変化について生理・心理的な測定を行なった。

 生理指標では、被験者のゲームプレイ中の覚醒状態や情動変化の評価をするために、皮膚電位測定装置で被験者の皮膚電位を計測した。皮膚電位はインタラクティブアートまた、ストレス状態の変化をとらえるため、精神的ストレスに起因して活性化するタンパク質の唾液中α-アミラーゼ分泌を計測。

 皮膚電気活動とは、交感神経系の緊張や覚醒水準の高さを反映する精神性発汗(緊張したときに「手に汗を握る」現象)を皮膚電位計により測定。

 心理指標では、気分プロフィール検査(POMS)を選択した。POMSとは、現在の気分を表す65項目の質問に対して5件法で回答し、気分の6つの尺度(緊張・不安、抑うつ・落込み、怒り・敵意、活気、疲労、混乱)に反映される。

 被験者は20歳台の10例。実験はゲーム熟達前とゲーム熟達後の2度行なわれた。手順は以下の通り。

    (1)POMSを用いた気分プロフィール調査
    (2)唾液中アミラーゼの測定
    (3)ゲームプレイ (15分間)
    (4)唾液中アミラーゼの測定 (直後・3分後)
    (5)POMSを用いた気分調査
    (6)アンケートによる印象調査
【テーマ1の実験結果】

 河合氏はスライドで実験中の反応を以下のように報告した。

    ■「リッジレーサーズ」で走行中1位になった時点で大きな情動反応
    ■「ルミネス」初心者のプレイ時の皮膚電位変化は、顕著な情動反応が確認
    ■「ルミネス」上級者のプレイ時の皮膚電位変化は一定で、覚醒水準が一定に保持される傾向にあった。
 結果例として、「リッジレーサーズ」における習熟前後のアミラーゼ活性平均変化率、POMS標準化得点平均変化率が発表された。

 個人差はあるが、実験終了直後ではアミラーゼ活性値は上昇したが(精神的ストレスの発生)、終了3分後には減少した。また減少量は習熟後に顕著で、抑鬱・怒り・疲労は減少し、活気が上昇した。

 習熟後、ゲームスコアが非常に良好で、より集中してプレイできたという被験者Bにおいて、覚醒水準は習熟前に比べ、習熟後に高くなり、また、情動反応の出現頻度は習熟後に低下した。操作性が非常に悪いという意見が多く聞かれた「ディグダグ」において、抑鬱・怒り・疲労・混乱が上昇し、アミラーゼ活性値も上昇した。一方、習熟後に操作性の悪さに慣れ、ゲームに対し愛着を持ったという被験者においては、アミラーゼ活性値に上昇はみられなかった。

 今回の実験結果でみられた積極的な気分の変化を、河合氏から平易な言葉で説明していただけた。

    ●活気の上昇→元気が出る
    ●抑鬱感の減少→晴れ晴れした気分
    ●疲労の軽減→疲労回復
    ●ストレス値の減少→ストレス解消
    ●情動反応→ハラハラ・ドキドキ
    ●覚醒水準の上昇→意識ハッキリ
 ただし、各変化の度合いは、ゲームソフトの習熟度、プレイ内容などによって異なるとしている。また、下記のようにゲームの効能に影響を与える要因が挙げられた。

    ●習熟による変化
    ●プレイ内容による変化(例:レースの順位)
    ●愛着や嗜好(例:キャラクタやサウンド)
    ●各要因の相互作用(例:習熟後のプレイでのミス)
 同時に実験結果のポジティブな要因ばかりでなく、ゲームの副作用としてネガティブな気分の変化も発表した。

    ●緊張、抑鬱、怒り、疲労、混乱の上昇
    ●ストレス値の上昇
 まとめとして、河合氏は実験結果より以下の4点の考察を発表した。

    (1)TVゲームのプレイは、生理的・心理的な変化の影響源になりうる。
    (2)また、変化の方向性はゲームソフトやプレーヤーの嗜好、プレイ内容に影響される。
    (3)習熟することにより、気分の変化がより積極的になる。
    (4)ゲームに集中しているプレーヤーにおいて、より積極的な気分の変化がみられる。
 発表の最後に、河合氏はプロジェクトの今後の予定として、以下の項目を実現したいと述べた。

    ●サンプル数の増加や多用な年齢層での評価による、再現性・実用性の高い「処方箋」の作成
    ●効能のレビュー、ゲームのソムリエシステムなど
    ●特定の心理効果を有したゲームソフトの開発
    ●癒し効果などの、エビデンスベースドな効能の実装
    ●日常生活で有効に利用される、ゲームサプリメント

【テーマ2・ビデオゲームのインタラクションの評価手法の研究】

ゲーム開発のチューニングについて言及した渡邊氏
 続いての発表は、東京大学先端科学技術研究センター助教授の渡邊克巳氏が行なった。テーマ2はビデオゲームの認知科学的な評価に取り組む研究。渡邊氏の説明によると、ビデオゲームは日本を代表する産業であり、ゲーム開発者はゲームのバランス調整に試行錯誤を繰り返し、様々な傑作を世に送り出してきた。一方で、ゲームバランスやパラメータの調整は開発者個人の完成や技能に委ねられ、定量化されずにデータとして蓄積されてこなかったという問題が指摘されている。

 テーマ2の研究実験では、ビデオゲームのインタラクションの定量化の試みとして、「パックマン」のゲームスピード(フレームレート)を変化させ、プレーヤーと観察者の速度弁別(※弁別……物事の違いをはっきりと見分けること)と面白さの関連性についての検討を行なった。

【テーマ2の実験方法】

会場では「パックマン」の動画も放映された。筆者もフレームレートの数%の誤差で、体感速度の変化を感じた
 呈示刺激には、実験用にカスタマイズされたPC版「パックマン」を用いた。被験者は6例とし、実験の前にゲームのスコアが平均して15,000点以上得点できるようにトレーニングを実施。

 実験において、被験者をプレーヤーと観察者(ディスプレイから0.5m離れた場所で、プレーヤーのプレイ画面を観察)に分け、標準刺激と比較刺激を連続してのプレイを行なった。

 標準刺激として「パックマン」のデフォルトのフレームレートを適用し、比較刺激としてフレームレートを7通り(フレームレート85%、90、95、100、105、110、115)に変化させたものをランダムに呈示した。

 プレイ終了後(1ステージをクリアもしくは1回ミス)にプレーヤーに対し、1度目のプレイ(標準刺激)と比べ、2度目のプレイ(比較刺激)はゲームスピードに関して「遅い・変わらない・速い」、ゲームのおもしろさに関して「つまらない・変わらない・おもしろい」と3件法で質問した。記入が済み次第、プレーヤーと観察者が交代。各被験者は、各条件でプレーヤーと観察者を10回ずつ繰り返した。

【テーマ2の実験結果】

 ゲームスピード条件ごとのプレーヤー・観察者のスピード弁別において85~90%および、110~115%のフレームレート時にはプレーヤーと観察者ともスピード弁別は変わらないが、フレームレート95%の条件時に、プレーヤーは観察者に比べ、高精度なスピード弁別を行なっていることがわかった。加えて観察者は実際のゲームスピードより遅いと感じる傾向にあると考えられた。

 ゲームのおもしろさにおいて、フレームレート100%の条件時に「つまらない」という評価がもっとも低くなることがわかった。また、ゲームスピードが遅くなるほど「つまらない」と感じ、その傾向はプレーヤーの方が顕著に現われることがわかった。一方、ゲームスピードが速くなることによって、「おもしろい」と感じる評価が増えるが、プレーヤーによっては「つまらない」と感じる場合も増えている。

 また、フレームレート85%の条件でプレイ中、「スムーズに動かずにいらいらする」といった意見が多く聞かれたことから、コントローラの操作という入力に対するインタラクションが、プレーヤーとイメージとの間で「ずれ」を生じさせ、違和感を覚えていたのではないかと考えられる。

 フレームレート115%のプレイ時においては「プレイしていて気持ちが良い」、「プレイに余裕がなく、ひたすら逃げることに専念した」、「もっとじっくり考えながらプレイしたかった」という意見が聞かれた。ゲームスピードが速いと爽快だと感じるプレーヤーがいる一方で、プレイの内容を考える余裕がなく、高得点を狙うプレーヤーや、じっくり思考することを楽しんでいるプレーヤーにおいては、評価が分かれていたのではないかと考える。

 まとめとして、渡邊氏は下記の3点を考察とした。

    (1)プレーヤーは観察者に比べ、正確なスピード弁別を行なっていた。
    (2)ゲームスピードが遅くなることで「つまらない」という判断が、速くなることで「おもしろい」という判断がそれぞれ増加した。プレーヤーにおいては、速くなるほど「つまらない」と感じる判断も増加した。
    (3)「パックマン」のゲームスピード設定は、フレームレート100%の条件でプレーヤー・観察者とも「つまらない」という判断が最も少なかった。
 このまとめについて渡邊氏は「ゲームの楽しみ方に応じた最適化の多様性があり、その点「パックマン」は非常に適切なスピード調整という結果が出た。現行のゲームはグラフィックスのレベルなどに比重が置かれているが、バランス調整などの部分はどのくらい「作り込んでいる」のか? ゲームに最適なパラメータは、開発者の直感によらない選択が求められる。独りよがりのゲーム作りをしてはいけない」とコメントした。


【テーマ3・発達障害児を対象とした臨床現場での処方の仕方の検討】

宮尾氏は障害のケースにより、選ぶゲームソフトのジャンルが異なることを調査
 第一部の最後に、国立成育医療センターの宮尾益知氏が研究成果を発表した。軽度発達障害児とは知的に障害を伴わず、特定の能力に障害のある子どもを指す。特徴的な症状としては、物事を部分的に捉え、全体的に把握することが困難となる。特に人とのかかわりが不得手なため、コミュニケーション能力に問題がある。これらの症状の一方で、興味のあることには優れた能力を発揮する。

 近年、遊びを用いた発達障害児の支援への取り組みが検討されている。それに関連して、ビデオゲームを通じ軽度発達障害児の得意な部分を引き出し、ソーシャルスキルアップなど支援方法の可能性を探るのがテーマの目的。具体的には、発達障害児の好むビデオゲームの調査、ビデオゲームソフトによる差違の比較、発達障害児を惹きつける要素の分析、遊びを用いた支援方法を検討した。

【テーマ3の実験方法】

会場では、患児のプレイの様子の一部が紹介された
 調査環境は、映像呈示に21インチTVモニタを用い、視距離1.2mとし、被験者1人でプレイさせた。対象患児の症例と例数は以下の通り。

    ●高機能広汎性発達障害児(HFPDD)・アスベルガー症候群4例
     (症例・こだわりが強く、コミュニケーションに問題があり不器用さが伴う)
    ●注意欠陥・多動性障害(ADD/ADHD)6例
     (症例・注意散漫であり、物事を順序だてて成し遂げることができない)
    ●学習障害(LD)・デスレキシア4例
     (症例・読み、書き、話す、聞く、推測する、計算するなど学習能力の問題)
 調査手順は、主治医によるインフォームドコンセント(説明と同意)の後に、児童に37本のゲームソフトを自由に選択させ、プレイを求めた。ゲームソフトは一般的な評価を考慮し、全年齢対象のソフトを選定した。また、ゲームプレイの様子をビデオ記録し、プレイ後のアンケートおよびインタビュー調査を行なった。

【テーマ3の実験結果】

 37本のゲームソフトをジャンル別に9種類に分類し、症状別にプレイした回数を集計した。全体的にアクションを選択したが、症状別に選択したビデオゲームのジャンルに違いが見られた。それぞれ最初にプレイするゲームソフトは、日常生活において興味のあるスポーツや趣味と関連するものだった。

 HFPDDの患児はレース、アクションを選択し、比較的操作方法が容易であり、全体が把握できるようなゲームをプレイした。ADHDの患児は、アクション、スポーツ、シューティングを選択し、運動系や興奮をするもので展開が予測できないようなスリルを楽しむゲームをプレイする傾向が見られた。また、興味の伝導が多いため、1つのゲームに集中するというよりもジャンルが異なるゲームを制限時間内に多くプレイした。ディスレキシアは、アクション系を選択し、比較的操作が難しいものでも短時間で習得し、無言で集中しプレイしていた。

前面と後面の二層式のマルチレイヤーディスプレイによる識字学習システムの有効性が実証された
 ゲーム終了後の患児および保護者へのインタビュー調査結果は、全体に肯定的な意見が多く、良い影響を与えているとの回答を得られた。「家庭での、ビデオゲームのプレイ後に気分は変化しますか?」との質問には、回答者の82%が「変化する」と回答した。HFPDDは「楽しい、元気が出る」場合が多く、「集中力の向上」などの効果があった。ADHDは「楽しい、爽快感、落ち着く」場合が多く、感情を抑える場合などにプレイすることが多かった。ディスレキシアは、「爽快感、活気の向上、満足感」を得る場合が多く、繰り返しゲームをプレイすることで、ゲーム内で表示される文字(ひらがな、カタカナ、漢字)を自然に習得することがわかった。

 調査結果により、発達障害児においてビデオゲームを用いた遊びは、気分転換を図るための手段の1つであり、感情をコントロールするために活用できると考えられる。また、ゲームのルールを理解していくことで法則性を学習し、日常生活におけるルールを理解する手助けとなる可能性がある。さらに、ビデオゲームを通じて言葉や文字を楽しみながら自然に習得しており、教育現場においても学習支援として活用することが可能ではないかとした。

 また、宮尾氏は遊びの要素に着目した立体ディスプレイを用いた学習支援用ソフトの制作について発表を行なった。軽度発達障害児の中でも、読み書きの困難を示す発達性難読症を対象として、文字の学習方法として新たな方法を提案し、有効性を示唆する結果が出た。


 シンポジウムの第二部はプロジェクト参加者によるパネルディスカッションが行なわれた。実際には個人での発表が多く討論の時間は短く報告会という印象だったが、ビデオゲームに関する多方面からの考察が多く発表された。パネルディスカッションのモデレーターは早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授、同大学こどもメディア研究所所長の坂井滋和氏が執り行なった。

6人のパネリストから、ビデオゲームへの様々な研究・意見が述べられた

 はじめに、東京西徳州会病院の二瓶健次氏から発表が行なわれた。二瓶氏は子どもとおもちゃの関係について意見を述べた。二瓶氏は「ビデオゲームでは押す動作しか使わないので、一般的なおもちゃと比較して手の筋肉の一部しか使わない。手の筋肉を利用するということは脳にも刺激があるので、できるだけ手を使わせるようなゲーム作りを試みるのも面白いだろう。また、ビデオゲームのヘビーユーザーとビギナーの行動反応を調査すると、反応、注意力は圧倒的にヘビーユーザーが高い。ビデオゲームとうまくつきあうことで、子どもの様々な部分を発達させることができるだろう」とコメントした。

 続いて、日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)を設立し会長に就任した馬場章氏が研究成果を発表した。馬場氏はMMORPGに注目。オンラインゲームをシリアスゲーム(エンタテインメントの目的以外で創られたゲーム。ただし、馬場先生の考えるシリアスゲームはエンタテインメントを含みつつ、それ以上の効果を期待して創られたゲーム)と考え、オンラインゲームの教育目的を研究した。

 馬場氏はコーエーのMMORPGを「大航海時代Online」を用い、実際に香川県の専門学校の世界史で使い、実際の学校の授業の中でプレイをして教育的な効果が得られたと発表。「MMORPGをゲームリテラシー(造語。ゲームの良い側面、悪い側面を知った上で自分にとって適切な遊び方を知ること)の形成に役立て、有効な教育法と役に立つ遊び方のメソッドの確立、産業界の新ビジネスに貢献したい」とコメントした。

 ノンフィクション作家の山下柚実氏は、「現代社会は情報収集の大部分を視覚に依存しており、五感が喪失されている。ゲーム自体も視聴覚に立脚して展開されていて、匂いや触覚は有効に使われていないと考える。ゲームというものが、豊かな五感刺激を与え、五感の再生への可能性につながることを期待したい」と述べた。

 最後に経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課長の小糸正樹氏が行政の立場からゲームコンテンツに関する意見を述べた。小糸氏は「私たちはゲーム産業を日本のコンテンツ産業として認識し、産業政策の一環としてとらえる。これまで国は何もしてこなかったに等しいが、現在はゲーム産業に注目し、行政としてどう関わるべきかを検討している」とコメント。さらに「4月からゲーム産業戦略研究会を経済産業庁で立ち上げるなど、世界に誇るべき輸出コンテンツであるゲームのクオリティを維持する方法を考えている。ゲームが社会的な存在感を増すには、教育や福祉などエンタテインメント以外の分野ではゲームを開拓していくことが必要ではないだろうか。それにより、社会的存在感を獲得できるうえに新しいマーケットの創出につながるはずだ。今後5年間を視野にゲーム産業戦略を取りまとめている」と発表した。

 今回の研究成果を踏まえ、「ゲームの処方箋」プロジェクトの第二期研究では以下のテーマに取り組むという。

    ●「効能の再現性の高いゲームソフトを選定し、その「処方箋(例:このゲームは抑鬱感の軽減に効果的…など)」を作成し、ゲームのソムリエ的な効能評価の確立を目指す。
    ●早稲田大学こどもメディア研究所と株式会社バンダイナムコゲームスのコラボレーションにより、特定の心理効果と科学的なエビデンスを有したゲームソフトの共同開発を試み、早期の製品化を目指す。
    ●早稲田大学こどもメディア研究所と株式会社ナムコのコラボレーションにより、こども向け「遊育施設」に関して共同開発を行なう。
 残念ながら、製品化の具体的なスケジュールなどは公開されなかった。次回のシンポジウムでは、さらなる研究成果とプロジェクトで収集したデータを取り入れたゲームソフト開発の発表に期待したい。

□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□財団法人ニューテクノロジー振興財団のホームページ
http://www.robomedia.org/
□こどもメディア研究所のホームページ
http://www.waseda.jp/kikou/lab/lab_l5.html

(2006年7月18日)

[Reported by 福田柵太郎]



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