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★PCゲームレビュー★

「Half-Life 3」を視野に入れた新3部作シリーズ第1弾
新世代SourceエンジンをフルHD品質で堪能すべし

「Half-Life 2: Episode One」

  • ジャンル: アクションシューティング
  • 開発/発売元: Valve Software
  • 価格: 19.95ドル(Steamからのダウンロード購入)
  • 対応OS: Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日: 6月1日(発売中)



 PCゲーム界の看板タイトルのひとつとしていまだ君臨する「Half-Life 2」のリリースから1年半。この6月1日、直系の続編となる「Half-Life 2: Episode One」がリリースされた。三部作の第一作である本作は、グラフィックステクノロジー、演出技巧ともに磨きをかけて、謎多いエンディングを迎えた前作「Half-Life 2」のアフターストーリーを描く。

 今回筆者は新世代Sourceエンジンの表現力をフルに堪能すべく、フルスペックHD解像度(1,080p)でプレイした。これだけの高解像度でも全く見劣りしないテクスチャ解像度や3Dモデルのディテールはさすがである。5.1chサラウンドシステムと組み合わせれば、いわゆる次世代ゲーム機並みの世界を一足早く堪能できる。この品質をぜひ体験してほしいというわけで、今回ご紹介するスクリーンショットはすべて1,920×1,080ドットで撮影している。

 ちなみに筆者の環境は AthlonX2 4800+にGeforce 7900 GTXを中核とする構成で、モニターとしてフルスペックHD対応の37インチ液晶TVを使用した。このスペックでこの解像度、ほとんどのシーンで秒間60fpsのなめらかさで動作する。このエンジンの動作が軽快なところは、Steamを通じたオンライン配布でユーザフィードバックを集めながら改良を続けるSourceエンジンならではのクオリティといえよう。


■ 主人公ゴードン・フリーマンの視点で描かれる「Half-Life 2」以降のお話

「お前は多くのものを破壊してきたが、一度でも何かを作り出したことがあるのか?」ブリーン博士のゴードンに対する問いかけは鋭い
 発売から1年半以上経過したいまもPCゲームの代表的な作品として語られることの多い「Half-Life 2」(以後HL2)。この作品そのものに対しては、弊誌をはじめ多くのメディアで語られ、コンソールユーザーを巻き込んで数多くのゲーマーにプレイされているため、ここでは繰り返さない。まずは、本作「Half-Life 2: Episode One」の位置づけについて多少の解説をしておきたい。

 前作から1年半というリリースタイムの短さ、それにSteamでの19.95ドルという価格からいって、本作を初代「Half-Life」に対する「Opposing Force」や「Blue-Shift」のようなアドオンやサイドストーリー的な作品と見て重要視しないユーザも多い。しかし実際はそうではなく、本作は「Halfe-Life」シリーズのメインストーリーを描く直系の続編。プレイにも「Half-Life 2」本編は必要なく、ボリューム的には小さくまとまってはいるものの、単体での起動が可能だ。

 今回、Valveは、初代「HL」から「HL2」までの実に6年にも上る開発サイクルをかけるよりは、もっと短い開発サイクルで続編をリリースすることを選択した。つまり本作は、もともと「Halfe-Life 3」と位置づけられていた構想を、短編三部作という形に分割再構成したシリーズの第一作目にあたるものだ。

 本作の主人公はやはり我等がゴードン・フリーマン博士。ストーリー構成としては前作でラストシーンを迎えたまさにその瞬間からの続きとなっている。シティ17の「管理者」ブリーン博士の暴走を止めたゴードンとアリックス。今度は崩壊する要塞からの脱出劇だ。

 このように本作は、HL2の延長線上に位置する作品となっており、世界観やプレーヤーの置かれる状況などは、前作を一通り終えていないと理解が難しい。「グラヴィティガン」など本作ならではの道具の使い方も、初っ端から応用編のようなパズルやトラップが配置されているので、やはりある程度の経験がほしい。本作のプレイにあたってはまず前作をプレイすることを強くお勧めしたい。

前作の戦闘の結果おきた大爆発。現場に居合わせたアリックスはヴォーティガントたちの力でからくも救い出された

何も語らず、ただ無言でたちつくすG-Man。この男に対するヒントは何も与えられないまま、ゴードンは白昼夢から覚め、瓦礫の中から救出される


■ 技術的にはSourceエンジンとSteamを基盤に進化を続ける

 ゲームエンジンは「HL2」リリース後に改良を加えられてきたSouceエンジンを採用しており、内容的には昨年Steam上でリリースされた技術デモ「Lost Coast」で用いられていたテクノロジーの延長といった構成になっている。

 グラフィックス的には、プレイを開始してまず目につくHDR(ハイダイナミックレンジ)レンダリングのフルサポート。画面上の要素に対して現実に近い輝度の幅を持たせるこの表現技法は最近のゲームでは標準的な実装になりつつあるが、本作では「Lost-Coast」で実現された機能を踏襲している。

 明るい部分の光が溢れるブルーム効果や、人間の瞳孔が周囲の明るさに応じて開閉する作用と同じく、シーンの絶対的な明度にあわせてレンダリング時の明度が調整される露光制御など、「HL2」では擬似的に表現していたものを、本当のHDRレンダリングで実現している。当然これを前提としたレベルデザインも行なわれているわけで、ゲームの冒頭、ゴードンが瓦礫の中からDOG(アリックスのペットロボット)に救い出されるシーンからHDR光源を巧みに用いており、前作とは異なる映像の質感をプレイ開始直後から感じられるようになっている。

HDRを効果的に使っているシーンの一例。明るい空間の中にいるときと、暗い場所から同じ空間を見るときでは見かけの明るさがまったく違ってみえる

こちらもHDR効果の例。明るい場所から暗い場所へ急に視線を移すと暗くて何も見えない状態。しばらくたつと次第に目が慣れて見えるようになってくる

 他に演出上の効果を挙げている技術としてキャラクタの表情エンジンにも注目したい。本作ではエンジンの改良により従来よりも多様な表情を作れるようになったようだ。実際にプレイしてみると、本編を通じて主人公と行動を共にするアリックスが前作にも増して表情を使った感情表現を見せてくれることに気がつく。ゲームを中断するカットシーンは一切使用せず、常に主人公視点でゲームが展開するというシリーズの素晴らしい伝統を守りつつも、ゲーム世界を構成するキャラクタたちの「存在感」や「説得力」がさらに増している印象を受けた。

今回のアリックスは前作にも増して多くの表情が与えられ、自然な「演技」を見せてくれる。このあたりのこだわりはさすがというほかない

 またこれも「Lost Coast」で実験されていた機能となるが、本作でもゲームの各所で製作者がうんちくを語るコメンタリー機能が搭載されている。ゲーム開始時に「音声解説」チェックボックスをONにしておくと、マップの行く先々にフキダシ型のアイコンが配置されるようになり、これに対してUseキーを押すことで、それらのシーンに対してのコメントが製作者自らの肉声で再生されるという仕組みだ。

 本機能は「Lost Coast」に対する好評を受けて本作でも採用されたもの。ゲームのいろいろな機能やシーンの構成にこめられた製作者の意図や製作中の苦労話は興味深いものが多く、2度目以降のプレイではコメンタリー機能をONにしておくと新鮮な気持ちで楽しめて2度おいしいというわけだ。ゲーム製作話の好きな筆者としては大好きな機能である。

本作でみることのできるコメンタリーの例をいくつか紹介しよう。テクノロジー、マップの構成、ゲームのテンポに対する配慮など、多くの点で製作者が工夫を凝らしている点がよくわかって面白い。特にプレイテスト重視の姿勢が見えてくる点は好感が持てるところだ


■ ゲームプレイは全編を通してアリックスとの二人三脚で進行

アリックスは本作のあらゆる面で欠くことのできない存在として登場する。ピンチを彼女によって助けられるシーンもしばしば
 さて、ここからは実際のゲームプレイを紹介しよう。ゲーム冒頭は前作のラストシーンから続くものになっている。

 崩壊を始めた要塞のふもと、瓦礫の中から救い出されかろうじて生き延びた主人公ゴードン・フリーマン。彼を救出したのは前作ラストでも相棒として行動してくれたアリックス・ヴァンスだ。アリックスは前作で人気のあったキャラクタということで、本作では彼女が中心的な存在として描かれる。 前作では単独行動がメインで孤独な戦いをすることの多かったゴードンだが、今回は彼女と行動をともにしながらゲームを進めていくことになるのだ。

 基本的に戦闘時はサポート役に徹してくれるアリックスだが、今回はゴードンに与えられる火力が控えめなため、ゲームを進めていく上で非常にありがたい存在になっている。また、ストーリー上のカギとなる存在として、パズルやトラップを解き明かすためのヒントを与えてくれる存在として、ゴードンの相方としての役回りを、全編を通して使いまわしのない濃密な演技によって完璧にこなしている。

 前作では「City17」の中央に位置する要塞を目指してのゲーム進行だったが、今回は逆向きに、その要塞と「City17」からの脱出がもうひとつのテーマだ。要塞内はゲーム開始直後からグラビティガンを使ったプレイが中心……というかしばらくはグラヴィティガン以外の武器はない。それだけに通常の武器で応戦するアリックスとの二人三脚的な進行が印象的だ。

 要塞内を進んでいくゲーム序盤では、前作の終盤と同じく強化されたグラヴィティガン(有機物も吹き飛ばせる)が使用できるので、コンバイン兵との戦闘はアリックスを差し置いてゴードンの独壇場である。要塞内の敵はかなり多めに配置されているのだが、このグラヴィティガンのパワーで次々に吹き飛ばすことができるため、序盤における戦闘の難易度は低め。ここでの攻略上のポイントは行く先々のトラップやパズルだ。グラヴィティガンと、マップ上のギミックを利用しての頭脳プレイが続く。

 各ステージの攻略要素は、相棒のアリックスと協力して問題を解決していく形をとるものが多く設定されており、個人プレーが主だった前作よりも手の込んだ仕掛けが楽しめる。特にアリックスが優秀なスナイパーとしてプレーヤーを強力に援護するシーンは秀逸だ。こういった仕掛けが単にゲームを進行させるためだけでなく、キャラクタの性格や背景をを表現する手段としても功を奏しているあたりが心憎い。

 戦闘が激しくなってくるゲーム中盤からは、アリックスと息を合わせたプレイが特に重要になってくる。要所要所で彼女のサポートをうまく活用して、少ない弾薬、多い敵、という厳しいシーンを切り抜けていこう。

今回も頼りになるグラヴィティガン。序盤は強化版でちぎっては投げ、ちぎっては投げという爽快なプレイを楽しもう

序盤はグラヴィティガンを用いたパズルを解き明かしていくのがゲームプレイの中心となる。前作で学んだトリックを思い出しながら本作の雰囲気に慣れていこう


■ クオリティは高いもののボリューム不足。「Episode Two」の早期登場に期待

今回も登場するおなじみのゾンビたち。敵のバリエーションは前作とほぼ同じ内容になっている
新キャラクタのゾンビ・コンバイン兵「ゾンバイン」(アリックス命名)は手榴弾をもって突っ込んでくる。早めに片付けたいが体力がありなかなか死なないというクセのある敵に仕上がっている
 ゲームプレイ上は新しい試みを成功させている「Half-Life 2: Episode One」だが、登場する武器、および敵キャラクタが前作とほぼ同じであるため、新作でありながら目新しさに欠けるというところが残念なところではある。前作終了直後から幕を開ける連続したストーリーであり、世界観がまったく同じなのでいたしかたないところではあるが、新作としてのインパクトは薄れてしまっている点は否めず、やはりどこか「アドオン」的な雰囲気が払拭できないのはいたしかたないところである。

 「HL2」ファンとしては、前作で提示された数多くの謎が綺麗に解決されることを期待するところだが、今回はあまり多くの情報は提示されないというところも不満である。特に本作でも冒頭で登場する謎の男性「G-Man」の正体の解明は、「Episode Two」以降の続編に持ち越されそうだ。

 19.95ドルという価格設定、短編三部作の第1作目という位置づけ、これらのValveがとった戦略に対する評価は、本作に続く三部作の残りがすべてリリースされるころには結論が出ることだろう。ただ初代「HL」から「HL2」のように、続編をプレイするまで6年も待たなくてはならない状況が改善されたことや、リリースが頻繁になされるゆえに大きなタイムラグなく最新のテクノロジーがゲームに適用されることなど、本作の製品的な位置づけが「HL2」が抱えていた問題を改善するモノであることは確かだ。

 なにはともあれ、本作は「Half-Life 2」の正統な続編として高いクオリティを持ち、安心してオススメできる作品である。続く「Episode Two」は今年中のリリースが予定されているので、今のうちに本作をプレイしておけば楽しみが増えるというものだ。「Half-Life」シリーズのファンならばぜひともプレイしよう。

クライナー博士はレジスタンスの中心的人物になっているが、人望はあまり厚くないようだ 冒頭、要塞への再突入の手段は、DOGの思いついたとんでもない方法。詳しくは実際にプレイしてのお楽しみ

モスマン博士は別行動中。ここで見たことのないクリーチャーの影が写るのだが、その正体は? 本作ではローラーマインを用いたパズル的要素がよく登場する。頭脳プレイの雰囲気を楽しもう

これは非常に凝ったギミック。重量装置のようなものの暴走でコンバイン兵がごみのように吹っ飛ばされてしまう 徹底的に破壊された「シティ17」。ゴードン・フリーマンの戦いは、まだまだ続きそうだ

Copyright (C) 2006 Valve Corporation. All rights reserved. Valve, the Valve logo, Half-Life 2, the Half-Life 2 logo, the Lambda logo, Steam, the Steam logo, Source, and the Source logo are trademarks and/or registered trademarks of Valve Corporation.


【Half-Life 2: Episode One】
  • CPU:Pentium 4 1.2GHz以上(Pentium 4 2.4以上推奨)
  • HDD:不明
  • メモリ:256MB以上(512MB以上推奨)
  • ビデオカード:Direct X 9世代のビデオカード


□「Half-Life 2: Episode One」のページ
http://ep1.half-life2.com/

(2006年6月16日)

[Reported by KAF]



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