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3Dゲームファンのための“Wiiの秘密”講座
~ハイデフ未対応でシェーダ未搭載で勝ちを狙うWiiのアンチ・ハイスペック戦略

5月10日~12日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 Wiiは画期的だ。

 いいか、悪いかの判断は発売前なのでなんとも言えないが、とにかく画期的だ。

 あのコントローラが?

 いや。それはそうだが、任天堂の下したゲーム機というハードウェアの進化の方向性の舵の取り方の方が、だ。

 これまでの据え置き型ゲーム機(家庭用ゲーム機、コンソール機)の歴史において、機能面の強化は最大の命題であった。コスト等による限界はあるにしてもその範囲で高性能を実装することを最優先させてきた。コンソール機は最新コンピュータテクノロジーの見本市だった。ところが、Wiiはちょっと違う。

 本体コストを最低限に抑え、本体側の性能強化は必要範囲内に留めているのだ。Wiiのハードウェアスペックは2005年に発表されたものからアップデートがない。ちなみに2005年のE3で発表されたスペックは以下のようなものだ。

(1)IBM製のCPUとATI製のGPUを搭載
(2)直径12cm光ディスクドライブ
(3)512MBのフラッシュメモリを内蔵
(4)SDカードスロット搭載
(5)USB2.0×2系統
(6)無線LAN機能搭載

 今回のE3で試作段階の実機を手に取ってみる機会が得られたのでまずはここからチェックしていきたい。


■ Wiiはハイデフ未対応でシェーダーにも対応しない

 詳細はわからないが、現在までにコードネームはCPUがBroadway、GPUがHollywoordであることが明かとなっている。筆者の取材する範囲ではサードパーティにはゲームキューブのSDKがそのまま使えサードパーティによってはゲームキューブSDKでWiiタイトルを開発しているという情報が聞こえてくるので、ほぼバイナリレベルでの互換が取れているハードウェアということになっているようだ。

 ゲームキューブのCPU「Gekko」はIBM PowerPC750(G3)互換コアであった。WiiのCPU「Broadway」はその正統進化版であることが予想され、現時点でIBM設計で90nm SOI CMODプロセスになることが判明している。まぁ、時代的な流れを考えるとGHzオーダーで駆動されるPowerPC970(G5)互換コアとなっていると思われる。ぶっちゃけたことを言えば、CELLプロセッサのPPEやXbox 360のCPUであるPXの1コア分に近いアーキテクチャを取っていると思われる。つまり、PowerPC970互換+ゲーム向け拡張命令セットという構成だ。

 なお、現実的な価格で提供することを前提としているWiiの場合、マルチコアCPUを採用しているかは微妙だ。おそらくシングルだろうと考えられる。

 そして、グラフィックス。ゲームキューブのGPU「Flipper」はATI製のものであった。WiiのGPU「Hollywood」もATI設計のもので、90nm DRAM混載CMOSプロセスとなる。DRAM混在プロセスと言うことでFlipper同様にNEC製造になると思われるが、今世代では順当に進化するとなれば、そのEDRAM(ビデオメモリ)容量はゲームキューブの数倍には拡張されると思われる。

「スーパーマリオギャラクシー」のプレイ画面より。マリオの右頬や耳のハイライトの出方を見る限り、肌表現には擬似的な表面下散乱表現が適用されているように見て取れる。wiiのGPUにはシェーダーはないが簡単な異方性ライティングのようなものはサポートされると思われる
 この他の詳細はまだ公表されていないが、筆者の取材範囲では

(a)ハイデフ(ハイビジョン)には未対応
(b)プログラマブルシェーダなし

という情報を得ている。

 (a)について補足すると、ハイデフ未対応ではあるが480pのプログレッシブ出力には対応し、なおかつ、ほとんど全てのゲームソフトで16:9アスペクトの正式サポートがなされる。そう、ハイビジョンには対応しないが、ワイド画面全域を使ってのゲーム画面設計に配慮されるということだ。「ゼルダ」の画面を見る限りではかなりジャギーが多いのでアンチエイリアスの処方も特に強制はないという感じだ。

 時代性を考えると(b)については意外に思われるかもしれない。PC系のGPUの設計を流用はされず、Flipper同様の専用設計になり、Flipperとの完全互換がとられているといわれている。裏を返せばFlipperをベースにしてビデオメモリを増強、動作クロックを高速化(パイプライン増強化も?)したものになると思われる。プログラマブルシェーダは搭載されないが、法線マップベースの環境バンプマップなどはサポートされているという情報もあり、“固定機能として”、強化されたグラフィックス機能が実装されている可能性もある。


■ スロットインドライブで8cmのゲームキューブディスクをそのまま出し入れ可能

Wiiは縦置きにも横置きにも対応する
 前面に列ぶスイッチは上から電源スイッチ、リセットスイッチ、最下部にはディスクイジェクトボタンが配されている。右の縦スリットはディスク挿入口になる。

 Wiiはスロットインタイプのドライブを採用する。スロットインタイプというと8cmメディアの挿入に対応しているかどうかが心配される。ゲームキューブ用のゲームディスク(φ8cm DVDメディア)が利用できるという発表は既に行なわれているが、その場にいた任天堂関係者によれば、アタッチメント無しでこのドライブにゲームキューブのゲームディスクが挿入できると説明していた。

 8cmメディアのスロットイン挿入はドライブの設置方向によって制限を設けたりしているドライブメーカーもあるが、Wiiのドライブは子供の取り扱うゲーム機なので、そのあたりの対策は講じられていると思いたい。スロット内でメディアを挟み込む方向や方式によってはディスクに傷が付くことを心配するユーザーもいるが、そのあたりの詳細も今はわからない。

 本体左側の縦長の開閉可能な蓋は「開閉禁止です」と言われてしまったが、SDカードスロット等が隠されているのだと思われる。なお、最下部のグレーのスタンドはクレイドルというわけではなく、ただのスタンドだ。電気的な細工はなしでタダ本体を立てるための台座であり脱着が可能となっている。

Wiiの背面パネル
 背面に目を向けると左端にあるのが2基のUSB2.0ポートになる。背面に実装されている事から察するに、脱着を前提としない周辺機器の接続が想定されているようだ。その右隣には冷却ファンの存在も見て取れる。

 その右上段にある横長のコネクタは映像出力端子だ。コネクタ形状はゲームキューブの「ANALOG AV OUT」とも「DIGITAL AV OUT」とも異なり独自形状となっている。HDMI等のサポートについては「ノーコメント」とのことだった。

 その下にあるオレンジ色のコネクタはヌンチャクコントローラのポジションを獲得する赤外線センサーバーを接続するためのコネクタだ。

 最右端のコネクタは、電源コネクタになる。形状から察するに、外部に電源ユニットを出したデザインで、ACアダプタからのプラグを接続するスタイルになると思われる。つまりゲームキューブと似たような電源供給スタイルになるということだ。

Wiiの上面(縦置き時)側にある蓋を開いたところ
 本体上面も開閉可能になっていて、ここには、ゲームキューブ用のコントローラの接続端子が4基レイアウトされている。

 その奥に見える長方形のスロットは、ゲームキューブ用のメモリスロットだ。本体上面はまさにゲームキューブセクションという様相を呈している。


■ Wiiのコントローラにできて、PS3のコントローラでできないこと~それはポインティングだ!

赤外線バーセンサー。これがWiiのコントローラの要となる
 2006年5月10日、まさにE3会期中にWiiのコントローラにはSTマイクロエレクトロニクスの3軸加速度センサーが搭載されていることが明らかになった。

 コントローラに搭載されたこのセンサーにより、コントローラを動かしたときの方向や速度、加速度といった情報が得られる。この仕組みだけではコントローラの相対的な動きを検出できるが、コントローラが絶対的にどこを向いているかというポインティング情報を得るのはかなり難しい。

 そこで、助っ人として導入されたセンサーが棒状の赤外線バーセンサーだ。概念的には赤外線方式のモーションキャプチャにも使われている装置を一部切り出してきた……というようなイメージになる。

左手コントローラには3軸加速度センサーのみが搭載される。右手コントローラには赤外線トランスミッタが搭載されるのでポインティング動作が可能となる
 これにより、相対的なコントローラの動きや傾きや加速度、早さだけでなく、コントローラの画面に対する位置やコントローラの向いている絶対方向が取得可能になる。

 一方、PS3のコントローラは傾き、速度、加速度、回転といった情報を取得することができるが、そうした情報が得られない。ここに差異がある。ただし、Wiiのコントローラでは画面の大きさやプレーヤーの操作特性に対応するためのキャリブレーションが必要になる。これが少々面倒な点ではある。

 どんなゲームがプレイできるか or できないのか……ということに置き換えて考えてみると、画面上の標的に狙いを定めて撃つタイプのゲームはWiiの方でないと難しいということになる。ダンスゲームや簡単なジェスチャーゲーム、ソニーのプレスカンファレンスで例示された乗り物を操縦するようなタイプのゲームはPS3のコントローラでも可能だろう。

 微妙なのはテニスや野球などの道具を振るスポーツゲームやパンチや剣を振ると言った格闘などのアクションゲームだ。こうしたゲームでは道具や腕を振った際の正確な位置や軌道が必要になる。そうした情報を利用したゲームはやはりWiiの方でないと難しいが、PS3でも適当な予測処理を含めればかなり“それっぽい”雰囲気のところまでは持って行けそうな気もする。

 なお、Eye-ToyのようなCCD光学センサーとして組み合わすことができれば、PS3でも、Wiiと同等の処理は可能になる。こちらの場合はさらにキャリブレーションが面倒になるし、Eye-Toyそのものの映像伝送レイテンシーも問題になりそうだが。

 さて、気になるのは、この赤外線バーセンサーの設置位置。E3会場では、テレビの画面下に両面テープで接着していたが、実際にはテレビの真上でも真下に置くのでも構わないということであった。ちゃんとフラットテレビに置くことができるように細いので相性はいい。

デモ機ではこのようにテレビ画面の下辺に両面テープか何かで固定させていた ブラウン管への設置前提という雰囲気のEye-Toyはフラットテレビの上に置くことが難しかった。Wiiのバーセンサーはこのようにフラットテレビの上部に置くことが問題なく行なえる
FPSタイプのゲームをプレイするためには、このWiiコントローラのようなポインティング機能がないと苦しい ブース内に展示されていた試作品の光線銃型的なポインティングデバイス。FPSはこうしたコントローラで遊べれば、より臨場感が増しそうだ


 本体スペック的には、あまり大きな飛躍を感じられないWiiではあるが、スペックには囚われない何か面白い遊びが出てきそうだという期待感だけはひしひしと感じられる。もちろん、この期待感は、ニンテンドーDSの成功の経緯・任天堂のゲームへの考え方が、多分に後押ししているのは間違いないわけだが。

 あまりにも斬新すぎて、ユーザーが置いてきぼりとなってしまったバーチャルボーイの時と比較すれば、Wiiは従来のテレビゲームを拡張した感じの切り口であり、地に足は着いている。あの時の失敗が繰り返されるような気配は微塵も感じない。

 任天堂はWiiをPS3よりは大部早く登場させることをほのめかしているし、スペックから見れば価格も、確実にPS3やXbox 360よりも安価になるだろう。「なくても生活に困らないゲーム機に最も求められるのは価格である」ということが叫ばれつつあるが、Wiiはこの側面から見ても強力だ。

 いわゆる次世代ゲーム機戦争は最終局面に向かいつつあるが、三者三様の戦略を打ち出してきており、世界市場レベルにおいて、どこが最もユーザーを獲得するかの見通しは全く難しくなってきた。

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/

(2006年5月17日)

[Reported by トライゼット西川善司]



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