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E3 2006における株式会社バンダイナムコゲームズの出展タイトルの1つ、PSP「ACE COMBAT X Skies of Deception(ACE-X)」。4月に情報が初公開され、E3においては通信対戦プレイが可能な状態で出展された。
E3会場にて、プロデューサーの一柳氏、そしてディレクターの加藤氏にお話を伺うチャンスに恵まれた。初めて携帯ゲーム機へと世界を広げた「ACE」シリーズ。その出来栄えはいかに?
■ 携帯機ならではの「ACE COMBAT」
加藤 純粋に「ACE」のPSP版はファンの方々に望まれているだろうな、と思ったんです。PSPの液晶画面はきれいで緻密な表示ができて、処理能力もプレイステーション 2に負けず劣らず高いので、これが出てきたら「きっと『ACE』のPSP版も出るだろう」とファンの方も思われるだろうと。それで出さないのは折角期待していただいているファンの方々を裏切る事になるのかなと思ったんです。 一柳 プロジェクトとして、「ACE」のブランドをいろんな方面で、いろんな形で展開させていきたいと思っていて、その舞台の1つとして携帯ゲーム機も考えていました。携帯ゲーム機向けの「ACE」では、今までの据え置き型のハードには無かった何かができそうだと感じていたので、ぜひPSPで挑戦すべきだという判断をしました。 加藤 面白いチャレンジかなと思います。 ―― PSPというハードのどこが面白いと感じられました? 加藤 やはり通信機能をはじめとした、様々な本体の機能が面白いですね。それから、本体の表現力の高さも、制作側としては魅力ですね。何より、あれだけのパワーのものが、いつでも身につけられるというところがいいですね。 一柳 「ACE」はもともと、プレーヤーがゲームの世界に浸るために、美しいグラフィックスを有効活用しているゲームです。PSPは画面が大きく、グラフィックスの表現能力が非常に高いため、携帯ゲーム機であるにも関わらず、プレーヤーをゲームに「浸らせる」手法が有効です。その上で、携帯ゲーム機ならではの良さを生かせると考えました。 ―― PS2では、すでにハードを限界まで使いこなしているというイメージがあるのですが、それを携帯機に持ってくるのは、環境のギャップで苦労されているのではないでしょうか? 加藤 今日プレイされていかがですか? ―― アナログスティックとスライドパットの違い以外は、正直大きな差を感じることはなかったです。 加藤 スティックとパッドの稼動部分の違いだとか、ボタンの感覚の違いにはかなり気を使ったことは確かです。PSPで操作しやすいように、ボタン配置を何通りか変えてテストして、今の配置にたどり着きました。ただ、それだけで、全てのファンの方々に納得していただけるPSPでの「ACE」の操作系になっているかどうか、不安は完全には消えていません。何より私が作り手でなかったとしたら、手馴れた操作を勝手に変えられるのは気持ち悪いと思ったんです。そういうこともあって、製品版はボタン配置をほぼすべてカスタマイズできるようにするつもりです。 一柳 プレーヤーに、ゲームの世界に没入して遊んでもらうためには、「美しく大きな画面」以外にも様々な方法があると思います。基本的なゲームシステムやゲームの進め方、勝敗条件などにおいても、プレーヤーが「今ゲーム機でゲームをしている」ということを忘れてのめりこめるような工夫を盛り込む予定です。 ―― その工夫のあたりを聞かせていただけますか? 加藤 実はまだ細かいことはいえないところがあるのですが(笑)……。今までの据え置きハード用の「ACE」シリーズは、PSからPS2へとハードの進化に従って、おのずと求められてきた王道の進化を遂げてきたと思います。ただ、「ACE」というゲームが持っている「遊びの素養」はそれだけではないですし、「ACE」シリーズの色々な部分を気に入っていただいているファンの方がいると思っています。 ですから今回はPSPに合った遊びの進化をさせたかった。特に、プレーヤーが自分で決めて自分で展開を作る部分をもっと強調したかったんですね。今回の「Strategic AI System」は、「ACE COMBAT1~5」の持つ魅力に、それぞれの作品でスタッフがやり残したアイデアやPSPだからこそできるアイデアを加え、「プレーヤー自身が戦局全体を左右している感覚」を味わえるように仕立てたつもりです。 ―― プレーヤーの行動に対するリアクションは、「ACE」シリーズの重要なポイントかと思うのですが、今回の「Strategic AI System」ではどうなっていくんでしょうか? 加藤 具体的には今後の続報に期待してほしいんですが(笑)、プレーヤーがどういう風にミッションを展開してきたかによって、その後の展開が内容ごと全部変わって、クリア条件まで変わりますね。 ―― 「ACE2」とか「ACE3」の物とはまた違うものになるんですね? 一柳 あらかじめ分岐が用意されていて、「Aを選ぶ」、「Bを選ぶ」といったものではないです。もっと複雑な形ですね。「プレーヤーが何かをした結果、こんな反応が返ってきてうれしい」という単純なものではなく、「ACE-X」では、ゲーム中に起きる変化に対してプレーヤーが能動的にアプローチでき、そのプレーヤーの行動が反映された形で次の変化が生まれる、といったものになります。プレーヤーがゲームの世界に関与していると実感できる仕組みが盛り込んであります。 ―― 「ACE-X」では、プレーヤーがそれぞれもっと能動的にゲームを盛り上げていける、というイメージなんですね? 加藤 ポータブルゲーム機なので、プレーヤーと、ゲームの画面の距離が据え置きハードに比べて近いと思うんですよね。この手の中で展開されているものという身近な距離感だと思います。ですから、遊ぶ環境そのものが、より能動的にゲームに関与していきやすいと思います。 もう1つは、ポータブルゲームは時間を問わずに遊んでもらえるということがあります。ですから、ちょっとした小旅行の移動中に遊んだ分、帰ってきて遊んだ分、次の日の学校が終わった後に遊んだ分と、経験が小さく分割されていくと思うんです。それぞれの経験が楽しいのは当然として、それがプレーヤーの中できちんと1つにつながっていくと楽しさは大きく膨らみます。それを繋ぐための方法として、細かい感情の変化が連続して紡がれるものを、作り手から提供するという手法ではなく、プレーヤーが能動的に状況を判断していく方が、より強い繋がりを生めるのではないかと思います。 こちらが「ここで盛り上がってほしい」というところを作ってしまうと、「俺、電車降りなきゃ」とか、お母さんに「いつまでゲームやってるの!」とか、シャットダウンが入ると折角の盛り上がりが台無しじゃないですか。でも、都度プレーヤーが状況を判断して次の一手を決めるのであれば、中断が入ったとしても、再開したときに、もう一度その場の状況を把握直し、次の一手をそこから考えることで、ゲームへの没入感や気持ちの盛り上がりはつながっていくはすだと。 ―― 次が遊びたいのにすぐ遊べない、という状況はありそうですよね。そういった意味では非常に興味深いシステムですね。 加藤 いわゆる作り手から語りかけるストーリーはこれまでのシリーズに比べるとシンプルになってくるだろうと思います。ただし、その分、プレーヤーが自分でつむぎだした空想のストーリーは膨らんでいくと。そういう方向になるようにいろんな仕掛けをしています。ぜひ製品版をプレイしていただきたいですね。
■ 「これならACEだ」と思ってくれるようなものは必ず作る
加藤 基本的に、PS2のシリーズのファンの方が、「これならACEだ」と思ってくれるようなものは必ず作ります。そこを裏切って自分のエゴみたいな形にするのは、プロとしてどうかと思いますし。無線に関しては、今回は、量で勝負ではなくて、どちらかといえば、無線に対する集中度かなと。 一柳 PSPでの無線は、リアルで渋めの演出として生かされるでしょうね。「ACE」におけるゲーム中の無線通信の演出は様々な活用法ができる懐の広いものです。「AC04」、「ACE5」、「ACE-ZERO」でも、無線演出の活用の仕方は違いましたしね。今回は、意図的に多くを語らないことで、プレーヤーが想像して楽しむ余地が多分にあるものになると思います。 ―― ステージに登場する敵の数や、登場機体の数なども実現することが大変かと思うのですが? 加藤 そうですね。機体の数に関しては、「ACE-ZERO」に匹敵するとだけ言っておきます。 ―― 戦闘機のモデルに関しても、皆さん苦労されているんじゃないですか? 加藤 大変苦労しています。涙出てますね(笑)。 一柳 単にポリゴン数を減らすことで苦労しているのではなく、その上で従来の「ACE」と遜色の無い、戦闘機好きのユーザーの人たちが大満足のものにするために涙を流しています。例えば、トムキャットとホーネットの鼻面のカーブは違うわけじゃないですか。戦闘機の「人相」というものをどうやって表現すればいいのか、それをきちんとわかっている人が作ればいいものが出来上がります。うちのスタッフの腕前を信用してください、と強く言わせてもらいます(笑)。戦闘機に対する愛とこだわりが無いと、ユーザーの方はパッと見たときにあれ? ってなっちゃうんですよね。このあたりはウチのスタッフの腕の見せ所ですね。 加藤 涙の分だけよくなってます(笑)。
加藤 これはもう、アメリカのショーであることを意識しています。私は「ACE」のプロジェクトを離れた後、しばらく海外向け製品開発の仕事をしていたんです。その中で感じたのは、欧米の人たちは多人数プレイで上手に盛り上がってくれるということです。E3はアメリカのショーであることを意識してマルチプレーヤーの仕様に絞って出展しました。ただ、今回出展しているものは、マルチプレーヤーの仕様としても、全体の半分に満たないものですね。一番複雑で手間隙のかかるルールなどは、E3仕様では、入ってませんし。 それと、マルチプレーヤーの場合、慣れた人と初心者が戦うと、どうしても勝てないというジレンマみたいなものがあったり、1人の友達ととことん遊びたいとか、何人もの友達と次々と遊びたいとか、色々な状況があると思います。それを解消できるようにハンディキャップをつけたり、ある程度ラッキーで勝てるようにしたり、短時間で終わる設定、得意技で勝負できる設定など、設定の組み合わせだけでも何万とおりも可能になるようにしてあります。 ―― 現在、作業はどの程度進んでいますか? 加藤 今6合目ぐらいですかね。仕様の盛り込みも含めて。 ―― 最後に、期待されているファンの方々にメッセージをお願いします。 加藤 据え置きハードのあの迫力が、PSPのこの画面にも入っている、と思ってもらえるようなものを作ろうと。そしてそれが実現できると思っています。その高密度感を味わっていただきたいなと思います。一言で言えば、「開戦!超高密度エースバトル」です。 一柳 もちろん、今までのファンの方々に満足していただけた上で、単に携帯版に移植しただけではない、今作ならではの新要素が詰まったものになる予定ですので、ご期待ください。 ―― ありがとうございました。
※画面は開発中のものです
□バンダイナムコゲームスのホームページ (2006年5月17日) [Reported by 佐伯憲司]
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