【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】
Electronic Entertainment Expo 2006現地レポート

E3特別レポート“History of Video Games”
最先端と原点に触れることで再確認する“ゲームの魅力”

5月18日~20日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center

 最先端のゲームの出展に沸きあがる世界一のトレードショー「E3」。地上のWest HallとSouth Hallでは、任天堂、SCE、Microsoftを筆頭に、世界中のメーカーがゲームファンの熱を高め続ける。その一方、地下にあるKentia Hallでは、偉大な先人たちの作品がノスタルジーと共にオールドゲームファンを、そして若い新しい世代のゲームファンを魅了していた。それが本稿で紹介するコーナー“History of Video Games”である。E3が10周年を迎えた2004年に“The History of Videogames Museum”として開催されたイベントの流れを汲むもので、今年はKentia Hallの中央に設けられ'70年代、'80年代のアーケード筐体を集めたコーナーとなった。

 最先端のテクノロジーが華やかに会場を彩る中、それらの原点とも言えるタイトルを集めて楽しめるようにしておくあたり、素敵な心配りである。今となってはこれらオールドゲームのアーケード筐体もまた、E3でしか触れられないものだ。ここから何を感じたのか? 原点と最先端に触れることで何が見えるのか? それをお伝えしていこうと思う。

■ ズラリと並ぶ往年の名作! シンプルな中に現在のタイトルの姿が見え隠れする

目を疑うようなオールドゲームのアップライト筐体がズラリと並ぶHistory of Video Gamesのコーナー
 ズラリと立ち並ぶオールドゲームのアップライト筐体たち。そのほとんどは、現在では稼動状態で残っていることが不思議な筐体だ。男女を問わず、このエリアに来ると大人の顔から子供の顔に戻っていく。

 この“History of Video Games”のコーナーがある場所は、Kentia Hallと呼ばれる地下のフロアで、ゲームグッズやサードパーティ製のハードウェアブースが多く並んでいる区画だ。お目当ての出展が並ぶ地上のメインホールで、PS3やXbox 360、そして今年最も長大な列を作り続けたWiiに触れてきた来場者が、その最後に足を運んでくる。ほとんどの人にとってそういうエリアだ。そんな場所に“History of Video Games”はある。

 まずは立ち並ぶ筐体を眺めていく。筆者は若輩者なので、知識として存在を知っていてもプレイはしたことがないタイトルが多い。ATARIのASTEROIDSなどは、'79年製。筆者が生まれた年とほとんど変わらない。

 何か知っているタイトルはない物かと見ていくと目に入ったのは、任天堂の「ドンキーコング」だ。ゲームウォッチ世代やファミコン世代には馴染みのタイトルだが、アーケード筐体版となるとなかなか現物にはお目にかかれない。ましてや、ここはE3の会場であり、当然のごとく海外版である。それだけでも希少価値がある。筐体には今なお任天堂の看板キャラクタとして世界に名をはせるマリオの顔が描かれている。画面のドット絵では現在と遜色のない表情だが、イラストは大きく異なる。

 ゲーム内容は時代が時代だけにシンプル。1面では、ドンキーコングが投げてくるタルをジャンプでかわして最上階にいき、クレーンを操作してドンキーコングの足場を破壊する。見事ドンキーコングを倒すとレディを救出できる。この時代ではマリオが命を賭して救う女性が、ピーチ姫ではなかったこともまた興味深いところだ。だが、マリオが大切な人を救うために冒険するのは今も昔も変わらない。

ドンキーコングのアップライト筐体。アーケード版があったことを知っている人はいても、海外版のアップライト筐体でプレイ経験がある人はかなり少ないだろう。写真右のイラストにあるマリオらしき人物も今とは大きく異なる


 続いてはナムコ(現:ナムバンダイゲームス)の「マッピー」である。こちらは最近でもPSP「ナムコミュージアム Vol.2」などに収録されており、遊んだことがある人が多いだろう。いつまでも記憶に残る軽快なBGMの中、ネコのニャームコが盗んだ品物をネズミのポリスが集めるというトランポリンアクションが斬新なタイトルだ。

 故障しているのか、残念ながらBGMは鳴っていなかったものの、トランポリンをうまく利用してニャームコと空中で交錯しながらも逃げ回るのは面白い。逃げるルートを頭で組み立て、それが功を奏したときの喜びはパズル的だ。逆にルート選びに失敗してニャームコにはさまれてしまった時には、自然と悔しさ混じりの声が出る。

こちらはマッピー。耳に残るポップなBGMが聞けなかったのは残念だが、このアップライト筐体のかわいいデザインだけでも魅力がある。こんな食玩フィギュアが出たらコレクションしたいほどだ


 白黒の画面ながら、キラキラと光る画面に目がいった。「ASTEROIDS」だ。ASTEROIDSは、次々に現われる隕石や敵の攻撃をかわしつつ、弾を撃って破壊するゲームだ。画面のスクロールはなく、一画面内を縦横無尽に行き来する。自機のコントロールが独特で、二つのボタンで右旋回と左旋回をし、前進ボタンで進行方向に進む。他にはショットボタンのみだ。今で言う方向レバーのようなものがない。前進には慣性がつくため、前進ボタンを長く押し続けて速いスピードで動くと、止まれずに敵と衝突してしまう。このあたりがポイントだ。

 何もないところから次々と現れる敵機や隕石を破壊していく。慣性の強い自機をコントロールし、敵の攻撃をかわしていく。これと似たようなゲームを最近プレイしたことに気がついた。Xbox Live Arcadeでダウンロード配信されている「Geometry Wars Evolved」だ。

 「Geometry Wars Evolved」は、Xbox Live Arcadeで配信されているタイトル群でもダウンロード率が高く、高評価されているタイトルだ。筆者も「Geometry Wars Evolved」には一時期はまっていて、Xbox Liveならではの、ネットを通じて友人とスコアを競い合うという要素に熱中した。「ASTEROIDS」はその祖先である。現代のテクノロジーが加味されているとはいえ、基本的な要素は20年以上前に出来上がっていたのだ。

まだレバーという概念がない時代のタイトル「ASTEROIDS」。写真では伝わりきれていないのだが、白い色が非常にキラキラとした発色をしている。Xbox Live Arcadeで好評配信中という「Geometry Wars Evolved」の始祖と思われる


 「PLEIADES」をプレイ。このタイトルはインベーダーライクなシステムになっており、異星人が上から次々に降ってくる中、基地を守るところから始まる。面白いのはこの基地を発進していき、次々に敵の中心部へと迫っていけるところだ。インベーダーの発展系といえる。

 基地を懸命に守るも、異星人が基地に降りてきた。基地に置かれている設備を破壊したり、ショットで壊さないといけない邪魔なブロックを設置してくる。ショットを放ち続けるも筆者はあえなく基地防衛の面で撃沈。順番を待っていた男性と交代した。アメリカ人と思われる男性の腕前は見事で、基地を発進し、宇宙空間を抜けて、巨大なボスとの戦闘まで進んでいった。筆者がカメラを構えていたこともあってか、そんなことには気づかぬほどに熱中していたのかは定かではないが、ゲームオーバーになったときには、とても悔しがっていた。その後も何度か「PLEIADES」をプレイする彼を見かけた。彼はボスを撃破できただろうか?

インベーダー調でありながらステージとシチュエーションが展開していくという特徴を持つ「PLEIADES」。写真の男性は夢中になってプレイしていた


 SEGAのオールドゲーム「ペンゴ」を見つけ、プレイ。これは筆者は存在は知っていたが初めてプレイするタイトルだ。主人公のペンギン“ペンゴ”を操作して、ブロックを飛ばし敵キャラクタをはさむというアクションパズルゲームだ。敵の挙動が不規則で、ブロックを飛ばしてもなかなか挟み込むことができない。かわいらしい見た目と、ポップなBGMとは裏腹に歯ごたえのあるパズルである。

 何度かコンテニューして挑むも、ペンゴのコツを掴む事ができず断念。続いてはナムコの「ポールポジション」だ。ポールポジションは今となっては全て3Dグラフィックスになったレースジャンルのタイトル。背面視点でF1カーを操作し、スクロール式のコースを進んでいく。タイム制度になっており、一定時間内に区間を抜けなければならない。

 日本ではほとんど見られないアップライト筐体のレースゲーム。立った状態でハンドルを持ち、フットペダルを踏む。昔懐かしい形式のレースゲームに感慨を深めつつコースを走っていると、“NAMCO”と書かれた看板や、同社のディグダグの看板が目に入った。現在のバンダイナムコゲームスにとってレースゲームといえば、もちろん「リッジレーサー」シリーズなわけだが、「リッジレーサー」にもコース外の至るところに同社タイトルの看板など、目を引くオブジェクトが設けられている。このアイデア自体はこんな昔から使われてきているのかと驚いた。ゲームに歴史ありである。

SEGAのアクションパズルゲーム「ペンゴ」。コンシューマーにも移植されており、隠れたファンのかたも多いはず。筆者は人気などを知識として知っていたが、実際にプレイしてみると、かわいらしさとは裏腹な難しさを感じた。上手くプレイできると爽快感がありそうだ


現バンダイナムコゲームスのナムコ作品「ポールポジション」。現在は全て3Dグラフィックスに取って代わったレースジャンルである。リッジレーサーにも引き継がれているコース外の看板演出が興味深い


 本稿で紹介する最後は「ドンキーコングJR」。ドンキーコングとマリオの立場が入れ替わり、マリオの手からドンキーコングを救おうとするドンキーコングJrが主人公のアクションだ。長い歴史の中でもマリオが悪役を務めたレアなタイトルである。

 初代ドンキーコングに比べて、ステージが大幅にパワーアップ。ゴリラであるドンキーコングJrの特性を生かして、ツタを飛び移っていくという動物的なアクションをするステージからスタート。ツタを這ってくる敵を、フルーツを落として倒しつつ前進していく。一見、簡単に進めてしまいそうな作りをしているのだが、ジャンプで届く範囲を考えないと、水に落ちてしまい機数が減ってしまう。2面以降にはスーパーマリオにも登場しているようなジャンプ台も登場し、新しいギミック満載。このひとつひとつが後のスーパーマリオに繋がっていったのだと感じることができた。

現在でも新作が登場し続けているドンキーコング(の息子)が主役の「ドンキーコングJR」。ゴリラであるドンキーコングJrの特徴を生かしたアクロバティックなステージが特徴的。最大のトピックはなんといっても悪役のマリオ。ドンキーコングを檻に閉じ込め、ムチをふるって敵を送り込んでくる




■ 初老の男性と、大笑いする二人組みに見た、新旧問わず変わらない“ゲームの魅力”

「TEMPEST」を夢中でプレイしていた初老の男性。思い出深いタイトルなのだろう
 筆者も十二分に楽しんだ“History of Video Games”だが、最も印象に残ったのは同じようにオールドゲームを楽しんでいる人々だ。「TENPEST」という筐体の前を歩いていたとき、通りがかった初老の男性が足早に「TENPEST」に近寄っていった。たどり着くやいなや、ゲームを開始する。そのときの初老の男性の目は確かに輝いていたように思える。  「TENPEST」は形と難易度の異なるステージを最初に選択、自機は図形の周囲を移動でき、中心に向かってショットを放つ。中心から次々に放たれるビームを喰らうと自機を失ってしまう。筆者も挑戦してみたが、放たれるビームは数が多く、図形の周囲にたどり着くと、図形に沿って移動をはじめて、自機を破壊しにくる。スピーディーかつ的確に移動してビームごと図形の中心部を攻撃し続けるというエキサイティングなゲームだ。かなり難易度が高いように思えたのだが、初老の男性のプレイは鮮やかだった。

 「CHANPIONSHIP SPRINT」という、今で言うラジコンコントロールタイプのレースゲームもなかなかに面白い。コース全体を固定した角度で上空から見下ろし、ハンドルを操作して周回していくゲームだ。単純なものではあるが、かなり速い速度で走るカーはハンドルを切ると大きく曲がっていき、すぐに壁にぶつかってしまう。微妙なコントロールが求められる感覚もまたラジコン的だ。

 この「CHANPIONSHIP SPRINT」を男性二人組みが非常に楽しげにプレイしていたのが、とても印象深い。二人の実力は拮抗していたのか、最終ラップのゴール間際になると、絶叫し、勝ったほうはガッツポーズ、負けたほうもオーバーアクションで悔しがっていた。それが終われば二人とも大笑いである。そして続けざまにもう一度レースを開始する。二人組みはいつまでもテンションが高く「今はこれ以上に楽しいことなんてない」と言わんばかりに繰り返し繰り返し楽しんでいた。

「TENPEST」は、線だけで描かれたシューティング。自機は図形の周囲を回るように移動でき、中心部を攻撃する。操作もレバーではなくダイヤル式と特徴的 こちらは二人組みの男性が一喜一憂大騒ぎの白熱したレースを展開していた「CHANPIONSHIP SPRINT」




“History of Video Games”コーナーでは、8ビットサウンドを音源にしたライブも開催。懐かしいタイトルと懐かしい音源の魅力に来場者は酔いしれた
 “History of Video Games”に展示されていたゲームは、いずれも往年の名作ぞろい。ピーク時には、順番待ちの列ができるほどに人が集まっていた。タイトルがタイトルだけに若い人よりも、中高年の男性のほうが積極的に楽しんでいた。

 地上のホールでは、任天堂のWiiが大きな注目を集めて長大な行列を作るなか、地下でもまた、任天堂のドンキーコングをはじめ、名作たちが人の心を弾ませていた。最先端と往年の名作という違いこそあれど、プレイした人の笑顔にはなんら違いはない。

 E3 2006が見せた最先端。次世代機は揃ってネットワークを取り込み、次の次元へと突入していく。中でもPS3は旧世代のAV環境から、1ステップ上位の環境に適合するスペックでハードとタイトルを打っていくという、大変な転換期の最中だ。

 “History of Video Games”に触れて、ゲームは楽しむためのツールであり、楽しんだもの勝ちであることを痛感した。初老の男性が目を輝かせたように。二人組みの男性が騒ぎながら終始笑顔で熱中していたように。そんな当たり前の結論なのか! とお叱りの声を頂いてしまいそうだが、やはりそれがゲームの最重要ポイントだ。

 時代が変わっていくにつれて、ゲームも変わっていく。その最先端を見せるE3の中に“History of Video Games”があることは大切なことに感じられる。原点に触れることでどんなに時代やゲームが変わっても、変わらないものが大切であることを確認する場所なのかもしれない。そんなことを感じたE3の締めくくりだった。

・本稿中で紹介していない出展筐体

「10 Yeads Fight」 「ASTEROIDS DELUXE」 「Black Widow」


「EMPIRE STRIKERS BACK」 「GORF」 「JUNGLE HUNT」


「Lunar Lander」 「Moon Patrol」 「Ms'Pac-Man」


「R-TYPE」 「SCRAMBLE」 「STAR GATE」


「Tournament Cyber Ball 2072」 「TRON」 「Warlords」


「エレベーターアクション」 「ガントレット」 「ギャラクシアン」


筐体はギャラガだが、中身は「ゼビウス」 「ディグダグ」 「ドンキーコング3」


「ミサイルコマンド」


□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□バンダイナムコゲームスのホームページ
http://www.bandainamcogames.co.jp/
□関連情報
【5月10日】Electronic Entertainment Expo 2006 記事リンク集
http://watch.impress.co.jp/docs/20060510/e3link.htm

(2006年5月13日)

[Reported by 山村智美]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.