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会場:Los Angeles Convention Center
現時点では、Windows Vistaのゲームプラットフォームとしての機能は、Windows Vista自体の発売延期、Xbox 360との絡み、サードパーティーとの連携などの理由により、不透明な部分が多くわかりにくい。DirectX 10が搭載され、Xbox Live!と繋がることなどはよく知られている情報だが、それによりPCゲームシーンがどう変わるのかがいまひとつ見えてこない。本稿では、ゲームプラットフォームとしてのWindows Vistaのポテンシャルについて、「Vistaで何がどう変わるのか」を中心に、Windows Vistaのゲーム機能を順番に解説していきたい。
・ゲームエクスプローラ
機能としては、ビジュアル的にゲームを一覧でき、アイコンをクリックすると、発売元、開発元、発売日、ゲームのバージョン、最終プレイ日、ゲームジャンル、レーティングなどを確認することができる。こうした情報は、ゲームパブリッシャー側がその都度データを用意する必要はなく、ipodなどと同様に第三者機関からインターネットを通じて情報をダウンロードする形を取る。 ゲームエクスプローラは、ビギナー向け、保護者向けの機能がメインとなっているが、コアゲーマーにとってもメリットのある機能がいくつか搭載される。ひとつは、クライアントの自動アップデート機能。さしずめ、Windows UpdateのGame for Windows版といった感じの機能だ。 ただし、これは当然のことながら、ゲームパブリッシャー側の協力が必要不可欠で、たとえばValve Softwareのように独自で「Steam」のようなコンテンツ配信システムを備えているメーカーでは難しいかもしれない。コンシューマ市場では、Xbox Live!と自社ゲームポータルで一部サービスがかぶるなど、すでに現実問題となっている。これがWindows Vistaのゲームエクスプローラではどうなるのか。Microsoftのプラットフォーマーとして手腕が注目されるところである。 細かい部分では、セーブデータファイルに、セーブ直前の画面をキャプチャしたものがアイコンとして利用される。ゲームレベルでは、すでに採用例がいくつもあるが、Windows Vistaではこれをプラットフォームレベルで採用する。 ・レーティング機能 レーティング機能は、「ゲームエクスプローラ」の機能のひとつで、ユーザープロファイルごとに、親などの管理者がゲーム利用をコントロールすることができるというもの。機能としては、アクセスログレポートの提出、利用時間の設定、世界中のレーティングシステム、たとえば北米ならESRB、日本ならにCEROに準拠した利用制限を設定できる。 また、セクシャルな表現、バイオレンス表現、ドラッグ、アルコール、タバコ表現など特定の要素で細かくフィルタをかけることもできる。さらに、そうした回りくどいことはせずに、特定のゲームをダイレクトに規制対象にすることもできる。Windows Vistaの説明を行なってくれたChris Donahue氏は、「私も17歳の子供がいるが、まさに世界中の親が求めていた機能だ」と自画自賛だった。
・DirectX 10対応
今回はゲームが中心だけに、DirectX 10に関して特に新しい発表はなかった。具体的な内容については、GDCレポートを参照していただきたいが、端的にそのメリットをまとめると、シェーダーモデルが4.0に移行し、頂点演算にジオメトリシェーダーが導入される。これにより、たとえば、次世代ゲームのトレンドテクニックのひとつであるノーマルマップに、ジオメトリシェーダーを駆使して実際の凹凸を生み出すこともできるなど、いわば次世代の“次”のグラフィックス表現が可能になる。 ゲームに関連した部分では、唯一の発表といえるのが、Game for Windowsレポートで紹介した「Flight Simulator X」のDirectX 10モードの画像が公開されたことだろうか。ただ、DirectX 10対応ハードウェアはまだ世に存在しないため、残念ながらリアルタイム映像ではなく、FS10開発チームがソフトウェアエミュレーションによって作った画像だという。 「Flight Simulator X」のWindows Vista対応について補足しておくと、2006年秋のゲーム発売時点では、Windows Vistaは未発売のため、まずはWindows XP(Direct X9)対応として発売される。その後、Windows Vista発売後に、DirectX 10対応パッチを無償リリースする予定となっている。
・ユニバーサルコントローラ ユニバーサルコントローラのサポートは、主にXbox 360向けに提供されているゲームデバイスを、Windows VistaでUSB接続するだけで使えるようにするというもの。対応デバイスには、今回のE3で新しく発表されたワイヤレスホイールやヘッドセット、ビデオカメラなども含まれる。 現時点では、MicrosoftのXbox 360向け製品だけだが、汎用のAPIによってこれを実現しているため、将来的にはサードパーティーのゲームデバイスも含め、Xbox 360とPCでゲームデバイスの完全共用が実現される見込みだ。そして、このインターフェイスの共通化は、次の「Xbox Live!」サービスのサポートに直に繋がってくる。
Microsoftでは、Windows Vistaの発売に合わせ、Windowsフランチャイズに対して、Xbox Live!のサポートを開始する。提供ハードウェアは、Windows Vista/XPとWindows Mobileが動作するPC、PDA、携帯電話といったデバイスが対象となる。Microsoftプレスブリーフィングでビル・ゲイツ会長が発表した「Live Anywhere」構想の一端が、Xbox Live!対応ということになる。 これにより、現在Xbox Live!で提供されているコミュニティサービス(ゲーマータグ、フレンドリスト、ゲーマースコアなど)を、Windows上で利用することが可能になる。また、マッチングサービスについても、「Shadowrun」を皮切りに、Windows VistaとXbox 360の間で相互接続をサポートしていく。現在では、「Quake 4」、といったメジャータイトルでもPCとXboxとの相互接続は未サポートとなっている。Windows Vistaの登場以降、こういった状況が変わっていくものと見られる。 Xbox Live!対応でゲーマーにとって注目されるのは、クロスプラットフォーム対応以上に、Xbox Live!のゲーム用コミュニティツールとしての利用である。現在でもPCゲーマーが、オンラインゲームをプレイしながら、MSNメッセンジャーやIRCなどのコミュニティツールを使って友人とコミュニケーションを取ることはごく普通に行なわれている。ゲームユーザーが構築するコミュニティの枠は、単一のゲームのコミュニティでは狭すぎるためである。このため、常にゲームユーザーは、複数のコミュニティツールを使い分ける必要があるわけである。 しかし、Xbox Live!がこの環境を一気に変える可能性がある。もともとXbox向けに開発されたゲームユーザーのためのツールであり、ゲームとの親和性が高く、機能性も充実している。これがコミュニケーションツールが提供されるとすれば、一気にゲームユーザーに広まる可能性がある。 Microsoftとしてもまさにそれが狙いであり、MSNメッセンジャーの利用者、ゲームポータルの利用者、汎用コミュニティツールの利用者などを、一気にXbox Live!に引き込む考えだ。最終的には、Windowsの強みのひとつであるMSNメッセンジャーと、Xbox Live!の融合を計り、WindowsフランチャイズのデバイスをすべてXbox Live!で繋いでいくという壮大な構想だ。 オンライン時代のゲームビジネスにおいて、各ゲームメーカーは、フレンドリストをコアとするコミュニティツールの重要性に気づき始めている。日本のMMOビジネスで、オンラインゲームとセットでコミュニティポータルを提供するのはまさにそれが狙いだし、スクウェア・エニックスがオンライン事業で独走態勢にあるのは、自社コンテンツ間でフレンドリストを共用化した「プレイオンライン」の存在が大きい。ゲームビジネスにおいて、コミュニティに対する投資が飛躍的に重要になりつつある。
プラットフォームレベルでも、SCEはプレイステーション 3のオンラインサービスを、コミュニティサービス「Station」を世界展開するSony Online Entertainmentと共同開発する構想を明らかにした。Windows VistaのXbox Live!対応は、SCEの動きに対する、Microsoftが打てる最善の対抗策となる。世界のゲームコミュニティは、どこが押さえるのか。Windows Vistaのリリースおよび、WindowsフランチャイズへのXbox Live!サービスの提供は、次世代のゲームコミュニティサービスの動向を計る上で、重要な試金石となるだろう。
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□Microsoftのホームページ(英語) (2006年5月12日) [Reported by 中村聖司]
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