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モバイル&ゲームスタジオ 遠藤雅伸氏インタビュー(後編)
'80年代を代表するクリエイターがモバイルゲームに見る夢

4月5日収録

会場:モバイル&ゲームスタジオ本社


■ ゲームデザイン論「『ケシタイル』が僕の中では渾身の出来」

編: 現在「ゲームの神様」では、すでにいくつかのコンテンツの提供が始まっていますが、その中に遠藤さんらしさというのは出ているのでしょうか?

「ストイックではない」と否定した直後に、自分でストイックであることを証明して苦笑いする遠藤氏
「渾身の出来」という「ケシタイル」のゲームプレイ画面。4つのタイルを回して同色を繋げて消していくというシンプルなカジュアルゲームだ
遠藤氏: 「ゲームの神様」では、「ケシタイル」が僕の中では渾身の出来だと思います。まず、時間制限がなくて、追い立てられることがないのでゆっくりできるということ。それから難易度設定を工夫しました。ゲームをやりなれている人にはどうってことがないのですが、ゲームをやったことない人はまったくクリアできないという常識を打ち破るということですね。

編: 「ゲームの神様」に関しては遠藤さんは具体的にどこからどこまでをプロデュースしているのでしょうか。

遠藤氏: 最終的に出すゲームのクオリティチェックという感じですね。「魂」シリーズと、「神様」シリーズを主に見ています。

 「魂」シリーズは本格的なものを目指そうと考えていて、こちらの方は色んな人に加わってもらいたいと思っています。「神様」シリーズは笑えるようなものをやっていきたいなあと。それとは別に「ケシタイル」のようなワンオフでもって楽しめるようなものは、僕とかが作っているゲームのバランスとかだとか、調整やマネージメントやチューニングとかいう部分に気を使っていこうと。

 「ケシタイル」をやってもらうとわかるんですけれども特にゲーム下手な人が「どうやるの?」といってやっていて、「なるほどこうやるのか」と理解して1回ゲームオーバーになるんです。わかったところからもう1回やったときに、ものすごい連鎖で消えたりするんです。実は最初から仕込んであるのですが、そのときにその人は「もしかして私って天才?」と思うわけです。

 プレイしている人が初心者であるにもかかわらず、その人に自分が天才だと思わせるというのがライトユーザー向けゲームにおいてはものすごく大事なんです。逆に腕のある人がやった時には「なんだこのゲーム、チョロいじゃん」と思われたらダメなんです。その時に難易度の上がり方を徐々に上げていくのではなくて、うまい人だとガンガンガンガーンと上がっていくんです。下手な人だとチョロチョロ上がります。

編: そういったところは「ドルアーガの塔」や「ゼビウス」と同じですね。

遠藤氏: そうですね、まったく同じです。そういうところの考え方は当時とまったく変わっていません。それでコンティニューも簡単にできるようになっていて、「ドルアーガの塔」と同じで、自分が到達した面までの任意の面から始められるということで、最高面だけではなくてその前からも始めることが可能です。

 最高面を突破していくのも楽しいんですけど、改めて最初からどこまで行けるのかをトライするのも結構楽しかったりします。特にレベルが急激にジャンプするフィーチャーは、うまくなってくると何回それが出せるのかが面白くなってきます。

編: ビジネスモデルは?

遠藤氏: 315円の売り切り型です。1回料金を払ってダウンロードすれば気兼ねなく遊べます。機種変更するまで遊んで欲しいという感じですね。

編: そうなると多くのユーザーにダウンロードしてもらわないとビジネスにならない感じですね。マスに遊んでもらうためのマーケティングの工夫はありますか?

遠藤氏: 正直これからです。いま長い道のりを経てようやくオープンするところまでは来たぞと。ここからどうやって戦っていくのかはIMJモバイルと一緒に考えて行かなくてはいけない。面白いゲームを作る自信はものすごくあるんですけれども、売れるゲームを作る自信は全くないという(笑)。面白いゲームをどうやって売っていくかは、お前らの仕事だろう、と思っていますけれども。うまく売ってくれるところと組みたいですね。

編: 「魂」シリーズはどのようなコンテンツですか?

遠藤氏: 「麻雀魂」は本格的な思考ルーチンを搭載しています。次の「将棋魂」も思考ルーチンをきちんとしたものでやっていこうと。「神様」シリーズというのがトラディショナルなものでも、ストーリーモードのようなもので笑いながらできればいいやと。

編: 今後実装予定のコンテンツについてはどのような関わり方をなさっていくつもりですか?

遠藤氏: 実際に遊んでクオリティチェックみたいなことが多いですね。後はチューニングなどのマネジメントですね。「これじゃダメじゃん」とか「これじゃゲームになってねえよ」とか「ここはこういう風にしないと、面構成はこうしろ」とかですね。

 遊んでいて鬱陶しいとかウザいと思ったら即改訂という感じですね。「この距離はもう歩きたくない! 70%位の距離にして」とか。どうしても作る方は“やらせたい”んで、大掛かりなものを作りたがるんですけれども、遊ぶ方としてはそういうのは嫌なので、こういうデザインに変えてくれ、というようなことをやっています。

編: 私が勝手に長年抱いていた遠藤さんのイメージとしては、「“不条理の中の条理”を主張するストイックなゲームクリエイター」というものです。いま伺った話はある意味、正反対の方向ですよね?

遠藤氏: 全然ストイックにこだわっていないですよ(笑)。欠片もですね。自分で「ドルアーガの塔」のような作品は2度と作りたくないですね。

編: やはり反省があるのでしょうか?

遠藤氏: 反省というより飽きちゃうんです。

編: そういう意味では自分の中で何回もパラダイムシフトがあるわけでしょうか。

遠藤氏: そうですね、あまり同じ作品を作りたくないというのがあって、気に入った作品以外は連作しないですね。「ファミリーサーキット」が自分の中では一番気に入っていて、「ファミリーサーキット'91」、「ワールドサーキット」、「スーパーファミリーサーキット」と連作してきました。

 一番最初作った時に、「車のゲームって何で先頭に出ちゃった時に他の車を邪魔したら勝てるんだろう」って。後ろから来た車をレーダーで確認してウィーンと前を塞いでブレーキをガッと踏んで全部つぶしてリタイアさせちゃえば絶対勝てるじゃんというのに気がついて、それが嫌で嫌でしょうがなかった。当たるのが嫌で、当たらなくなると何が面白いかというと、自分自身の戦いでものすごいストイックになるなと。あーストイックですね、最後はそこに行っちゃうんですけどね(笑)。

 ストイックに切りつめて考えていくと1周20秒くらいのコースでも自分が何秒何々という1/100秒レベルまでだんだん体感できるようになってくる。その辺が凄く面白くて結果的に一番最後まで自分でプログラム書いていましたね。あれ以外は連作はないんじゃないかな。「ドルアーガの塔」はシリーズですけれども、まったく別のゲームですから。

編: そういう意味では今後もまったく違うゲームを作っていく。ただ、今後も初心者には優しく上級者には厳しくというのは変わらないと?

遠藤氏: そうですね。上級者には厳しくというよりも上級者には手応えのある、というところで。やっぱり基本がアーケード上がりのゲーム作家なので、時間に対する管理が一番重要だと思っています。その人が持っている可処分時間をできるだけ食いつぶさないようにしたいということです。同じ面白さを与えるんだったら時間が短ければ短いほど良い。それってアーケード的な考え方なんですが、できるだけ早い時間で満足していただくのがアーケードの真骨頂じゃないかなと。

 携帯アプリも似たところがあって、金額が安いおかげもあって買ってつまらなかったら2度と遊んでくれないとなるわけです。だから最初の部分から結構短い時間でもって面白いと言うことをわからせなきゃダメだというところで作り方が大変アーケード的な感じが僕はしていますね。そういうところではアーケードゲームを作っていたスピリットというのはその後もずっと残っている感じではいます。

編: モバイルゲーム市場は1,000億、2,000億円市場といわれていますけれども、遠藤さんはどのような展望を抱いているでしょうか。

遠藤氏: 将来的には20億くらいやりたいですよね。とりあえず5年で10億くらいは行けそうな気配はあります。今後IMJモバイルという会社自体が4月1日に合併したので、これからなんですよね。

 グループ全体としては、営業の部分と、コンテンツの部分。じゃあデジタルで作れるコンテンツって何よというところで、ゲームとはまた違った観点からのコンテンツも作ろうと努力をしていたりします。

編: それはエンターテイメントというくくりでもないのでしょうか。

遠藤氏: エンターテイメントです。今のところは。

編: それは「えいご漬け」のようなエデュテイメントも含むレベルなんでしょうか。

遠藤氏: もうちょっといっちゃったのもできるかもしれないですけれども、その辺は、今後自分の中で知り合う人だったりとか、アライアンスといった中から決まっていくんじゃないかなと思っています。

編: 年に何タイトルくらいプロデュースすることを考えていますか?

遠藤氏: 自分自身でタイトルを直にプロデュースしていくというのはもうやらないと思います。MGSになってからはそれより1段大きいところから仕事をしなくてはいけない。個々のゲームに細かく文句をつけているのは「ゲームの神様」くらいだな。もちろん「スタイルブック」みたいなものにも口出していますけど。

編: 今後遠藤さんは「ゲームの神様」等のブランドを通してゲーム市場に対してどういった提案をしていくつもりですか?

遠藤氏: 提案というと何ですけれども、プリミティブなもので長く遊べるもの、ゲームの本質ってものをちゃんと押さえていきたいなと。はっきりそれは「華麗なムービー」ではないと思うわけですし、ノリノリのサウンドでもなかったりするわけです。そうじゃない部分をきちんと押さえていければなあと思います。ただ、それは携帯に限らない。ひょっとするとPS3で凄いグラフィックスを使ってやっていることは7並べだったりというのもあるかもしれないですね。

編: 「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」といったコアゲーマーが支持するようなメインストリーム系のゲームに関してはもう興味がないということなのでしょうか。

遠藤氏: そんなことないですよ、やりたければやると思います。やっぱり僕はフラストレーション型の作家なんで、遊びたいものがなかったら作ると言うところに基本的にいるので、それがまた再びそこに戻ってくる場合はあるかもしれないですね。


■ 遠藤氏の視点から分析した現在のゲーム業界

編: ここ数年のゲーム市場に関しては、遠藤さんの中でどのような部分に注目していますか?

遠藤氏は人材について相当厳しい現状認識を持っている。溢れた人材の受け皿になる考えも持っているようだ
遠藤氏: 僕が一番注目しているのは人の流れです。ゲームを作っている人の流れに一番注目しています。現在、ゲームクリエイターといわれる人の中で、ゲームを作ることをあきらめようとしている、あるいはあきらめてしまった人は凄く多いと思うんです。一方、「俺はゲームを作らなければ死ぬ」というような人もいて、どちらが実力があるかというと概して前者だったりするわけですよね。

 今後、前者みたいな人たちにまた再びゲームを作れるようなシーンが出てくると思うんです。ただその時に技術的に遅れてしまったりすると復帰できないわけじゃないですか。だからそういう部分を含めてMGSみたいな会社がそういった方達がいつでも戻ってきてゲームを作れるような場でありたいと思っています。

 あとは、どんどんクリエイターの使い捨てみたいなことが起こってきています。新しいゲームを作るために人を呼んできて終わったら捨てちゃう。そうでないやり方というのも提案していきたい。

 どうも“雇われプロデューサー”的な作り方のゲームも非常に多くなっているような気がするんです。それが安易に数字をたたき出すためにパート2を作ったりとか、とにかく新しいゲームに対して冒険してみようという気持ちがなくなっていて、その中でゲームがどんどんつまらなくなって行っていると思うんですよね。

 もちろん制作費が安いところでもきちんと新しいゲームを提案していってそれをきちんとセールスに結びつけられるのが優秀なプロデューサーな訳で、なんかそういう骨のあるプロデューサーがいなくなっているのが残念だなと。

 だから現在、良いゲームを作っているディレクターの中で、そういう人たちがプロデュースまできちんと責任を持ってね、やっていけるようなディベロッパーなりというのも出てくると面白いなと思っています。そういうところでは桜井政博君とか良いもの作ってほしいと思うんですけれどもね。

編: 今年の1つのムーブメントとしては次世代機があります。ハードの世代が変わることについてどう思われますか。

遠藤氏: 見てて、一番なじむのはレボリューションかなと。Xbox 360には若干期待してたんですよ。過去形です(笑)。一番ダメなのはアダプターの大きさ、ケーブルの太さですね。あれが僕から見ていてもう“超萎え”ですね。

編: ただ、それはゲームの本質とは余り関係ない部分ですよね。

遠藤氏: だからといって欲しいか欲しくないかという話をした時に関係してくるじゃないですか。人ってやっぱりハードウェアに対して、性能うんぬん以前に、パッと見て欲しいか欲しくないかってのはありますよね。たとえばPSOneやPS2ってなんか小さくなって、以前のものを持っているにも関わらず「うわ、すげえちいせえ!」って思わず欲しくなるじゃないですか。

 Xbox 360にはそれがないんですね。ひょっとしたらPS3にもそれはないかもしれないという気がするんで、そうなるとレボリューションかなと。ちょっと変な外見で、コントローラも変だったりすると何となく欲しかったりするわけで。やっぱりモノという部分に人は執着すると思うんですよ。

 ただ、外的要因としてBlu-ray Discがどうなるかという動きにも注目したい。弊社の親親会社になるカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田社長が言うには「Blu-rayに切り替わるよ!」という話で、Blu-rayに切り替わるなら最も安価なBlu-ray再生デバイスとしてはPS3かなと。そうなるとPS2が売れたのと同じような現象になる可能性はあるよねと。もちろん、かもしれないということだけでそれが成功するというわけではないですけどね。

編: 各ハードウェアに色々な新しい機能が実装されますが、ゲームデザイナーとしてどの辺に一番注目しているでしょうか。

遠藤氏: やっぱりリアルな映像は気になりますよ。それを何に使うかなんですけれどもね。さっき冗談半分で話してたんですけれども、やっぱり最終的にリアルな映像はエロ要素ですよというのがある。

 たとえば、「FF XII」で発売される前の期待としては「アーシェのスカートはどうなっているのか?」というのがありましたよね。でも、実際にプレイをするとフランの尻がカッコいいなということで、ウチの会社で多いのは、フランをリーダーにしてフランが走っているのを常に後ろから見続けているのが一番良いよねといってまして(笑)。別にエロ要素で売っているわけではないんだけど、何となくそれはそれで楽しい。加味される要素としては、魂の揺さぶりをかける要素があって欲しいなと。

編: つまり、本能的な部分に直に訴えかけるような要素ですか。

遠藤氏: ええ。それはたとえばホラーだったりでも良いんです。3Dサウンドなどでのドーンと来る恐怖感で「すげえヤダよね」という感じでも。そんなところに訴えかけるようなものでも出てきてくれればと思いますね。

編: 最初にレボリューションが一番手堅いんじゃないかとおっしゃっていましたが、それはファミコンやメガドライブのゲームソフトがプレイできると言った、過去の資産がそのまま活かせるという所もあるのでしょうか。

遠藤氏: そういう部分もあります。後は大上段に構えていなくて、グラフィックスが必ずしも高解像度ではなかったりとか、ゲームとして作りやすいかなと。ゲームの文法やお約束を維持したまま既存の技術の延長線上で新しいゲームを開発できるだろうというところで、レボリューションが一番開発しやすいかなと僕は考えています。

 あとはコントローラなどの使い方ですね。ハードが出る前からゲーム作っていて、出た後の雰囲気の違いというのは結構ありますからね。たとえば、「スタイルブック」もDS発売前から色々やっていて、出てから「ピクトチャットってこんなんだったんだ」と。ピクトチャットが実際運営されてみると、凄く圧倒されるパワーがあるわけじゃないですか。

 「うーん、こうなると実際の文字入力をもっと書けるようにしないとダメだな」といった具合に、実際に出てから色々出てくると思うんですよね。今のところは現在の延長線上で何か新しい物が作れたらいいなと。もちろん予算の兼ね合いもありますが。

 後はレボリューションとDSの連携も凄く楽しみです。レボリューションにソフトウェアを供給してそこからDSにダウンロードするような形で、日々遊ぶ分にはDSを使っていて、サーバーのような形でレボリューションを使っていく。さらにWi-Fiでもってもっと大きなサーバーとやりとりをしていって外と繋がっているみたいな。誰しもが考えると思うんですけど、ネタを何でやるかという部分で全く違う見せ方ができるので、僕としては一番何を見せるかを考えて、じっくり手がけたいなと思っています。

 麻雀ゲームで「麻神」ってあったじゃないですか。凄い大げさなポリゴンで描かれたキャラクタが「ノーテン」とか言って、仰々しいやつ。あれはあれでアリだと思うんです。そういえばXbox 360にリアルな「テトリス」もありましたね。そういうテクノロジーの無駄遣いはローンチタイトルに限れば許されると思いますね。

編: 先月GDCに行った際に、「テトリスDS」が先行発売されていたので購入して遊んでみたんです。マルチプレイがとにかく楽しいんですが、それ以外にも我々30代のファミコン世代がゲームを作るとこういったものになるなと。旧作に対する深いオマージュというか、みんなが心地よい「原点回帰」のアプローチ。これは大事にしたい動きだと思いました。

遠藤氏: まず、「ゲームボーイミクロ」が出て「スーパーマリオブラザーズ」が売れましたというのは単なる懐古趣味だと思うんですよ。あれは全然どうでも良いことで(笑)、30代中間くらいのクリエーターが、「昔、俺らこういうの遊んで面白かったよね」というのをきちんと今の技術なりセンスなりで昇華していってゲーム性は変わらないよね、というところで打ち出してくれればそれはそれで面白いと思うんです。

 現在は携帯電話でそれをやっていますよね。メーカーは明らかにファミコンシリーズとかいって出したりしますけど、ファミコンが持っていたテイストを形を変えて出ているというのはいっぱいある。

 ファミコンって、その当時は圧倒的なマジョリティーだったわけじゃないですか。ゲームの中でファミコンやっていた人達は、みんな共通の体験として持っているわけで、凄く話しやすいわけです。「そうそうやったよ」、「1ドット落ちただけで死んじゃったよね」とか言うと、みんな「あのゲームだな」と思うわけです。そういう中で出てくる何かというのはあると思います。マスは取れないですけど、ビジネスにはなりますよね。

編: 遠藤さん自身はそういったところでビジネスを展開していこうというのはなさそうな感じですね。

遠藤氏: そうですね、人がやるというなら手伝ってあげるけれども、限られた時間なので自分としてはもっと新しい事をやりたいですね。


■ MGSの次期戦略「『花札の神様』は僕的には『ウィザードリー』のようなゲーム」

編: 今回は長期プランをお伺いしましたが、とりあえず今年の目標を教えてください。

1億ダウンロード、海外展開、ブリックスエリアへの展開。遠藤氏の野望は果てしない
遠藤氏: 2006年はナンバーポータビリティーに向けて「ゲームの神様」のサイトのゲームを本格的に充実させていくというところですね。

編: ナンバーポータビリティーはキャリアを変えても番号が変化しないサービスですよね。これがどうゲームと関わりがあるのでしょうか?

遠藤氏: 「ゲームの神様」はauを対象にしたサイトですが、ナンバーポータビリティーによって、ドコモやボーダフォンから相当数がauに流れるのではないかと現在モバイル界では予想されているんです。それは料金やサービスの問題もありますが、一番大きいのは「電話のデザイン」です。auは「INFOBAR」、「talby」、「PENCK」といったデザイン的に優れたものをいっぱい作っている。そしてauのユーザーが最も電話を買い換える頻度が高いというのもあったりするわけです。

 そういったところからauに流れてくるんじゃないかという予想から、機種変更の際に、一番最初に落とすゲームを提案したい。「ゲームの神様」のゲームをプレイしてもらって面白いよねって言ってくれれば、1年後くらいに機種変更しちゃうんでその時にまた同じゲームを入れてもらった上に容量も増えていますから、新たに他のウチのゲームを入れてもらう。

編: プリインストール戦略は考えていますか。

遠藤氏: それはもちろん考えていますよ。ただそれをやるのならば単純なものを作りたくないので、auの端末って変な機能がいっぱいついているんですよ。それを利用した、その機能がなくては遊べないようなものをやっぱり作りたいなと。

編: 具体的にはどのようなものでしょう?

遠藤氏: GPS機能とかですね。ただ、GPSに関しては、物理的に違う位置でプレイすると違う敵が出てくるとか、こういうのはつまんないじゃないですか。そんなものではないものを作りたいんですよ。それからバーコード。「バーコードバトラー」みたいな物は誰もが思いつくんですけど、いまさら“バトラー”じゃないだろ、と思うわけで(笑)。

編: そうなると今年はナンバーポータビリティーに備えての準備と言うことになるんでしょうか。

遠藤氏: そうですね。しっかりとその辺をやっていきます。後はBREWという言語を使っているんですけれども、この言語は北米、南米ではメインストリームになっていますので、そちらに対してどうやって移植していくかを今年中に何らかの成果を出していきたいですね。

編: すでにBREWで書いているのならばそのまま持って行けるのでは?

遠藤氏: いや、解像度などが違います。これをどうやっていくのかが今後の課題です。もっとも、今後MGSがどんな海外戦略を立てていくかもありますけれども。

編: 海外だとアメリカ以上に中国やインドが大きな市場ですね。

遠藤氏: そうです。中国とインドとロシアとブラジルをやらないと1億ダウンロード行かないですから、その4つは当然考えなくてはいけません。

編: そうなると自社だけでなく、海外の他社ともコラボレートしていくわけですよね。

遠藤氏: そうなります。チャンスがあればと言うことでIMJと協業しているんでそんな中でうまいことやっていければなと思っています。MGS単体で海外に持って行くのは難しいですから、そういう部分は餅は餅屋というところで任せたいので。

編: そういった海外展開は年内にも見えてきますか?

遠藤氏: ちょっとわからないですね。中国の携帯ゲームコンテンツは、アタリショックみたいに立ち上がったところで1回崩壊していて、現在再構築中ですから、それがどこまで復帰するのかなと言うところですね。

 ひょっとしたらまずはロシアかもしれません。ロシアで今iモードのサービスが始まってますが、iモードって何もないところだとわかりやすくて良いんです。日本と韓国以外のエリアの携帯電話というのは、基本的に番号と本体が別になっていて、ユーザーが電話を買ってきてICカードを入れ替えて使うわけですが、そうなると電話の性能と通信会社がサポートしているサービスが必ずしも一致しなくなってしまうわけです。

 たとえば、ものすごい高性能でゲームもバリバリ動く電話なのにキャリアがゲームをサポートしていないとか、宝の持ち腐れになるケースもある。その点iモードが使える端末であればメールやブラウザ、アプリといったサービスがもれなく供給されるわけです。サービス名とハードウェアが一致しているのは凄くわかりやすい部分ではありますね。

編: そうなると「ゲームの神様」をiアプリとしてサービスする予定もあるということでしょうか。

遠藤氏: iアプリにする可能性もあります。市場の動向を見てという形ですね。

編: 最後に、読者とファンに向けてのメッセージをお願いします。

遠藤氏: とりあえずauの端末持っているんなら「ケシタイル」やってみろよ!! という感じです(笑)。僕にはレベル80くらいに壁があるんですが、うまいやつはもっと行くだろうなと。そこには変わらないゲームに対する僕の考え方が入っています。同じように調整した「花札の神様」は、僕的には「ウィザードリー」のようなゲームです。こちらもお勧めです。

編: 花札なのに「ウィザードリー」ですか?

遠藤氏: 「花札の神様」は、負けなしで連勝していかないとゲームが進まないのですが、負けた瞬間に電源を落とすと負けなかったことにできるんです(笑)。まさに「ウィザードリー」的な、リセットを使ってクリアするか、リセットを1回も使わずにクリアするか、という自分の心の中の戦いなわけです。「花札の神様」は心の中の縛りを要求してくるソフトなのです!!

 はっきり言って対戦相手のAIはめちゃくちゃです。「神様」シリーズは完全にお笑いの世界のゲームなので、ネタを仕込んであります。最初の敵は「ウメマツサクラ」ちゃんと言うんですけど、赤タンがやけに揃うんです。最初から仕込んであるというのが前提で、本格的ではなくて、ゲームとして楽しみましょうと。最初から赤タン仕込んでいるやつをどう止めるかがゲームなんです。次が「暴れイノシシ」なんですけど、出てきた時点で何使うかがわかりますよね(笑)。

 このインタビューを読んでいるような僕のファンならばauの最新端末を持っていると思うんですけれども、残念ながら「ゲームの神様」は、機種対応が行き渡っていないので、対応端末を順次増やして、特に最新端末を優先的に対応していきたいと考えています。しばらくお待ちください。

編: ありがとうございました。

□モバイルゲームスタジオのホームページ
http://www.mgst.co.jp/

□関連情報
【4月11日】モバイル&ゲームスタジオ 遠藤雅伸氏インタビュー(前編)
'80年代を代表するクリエイターがモバイルゲームに見る夢
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060411/mgs_01.htm

(2006年4月12日)

[Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]



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