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★PCゲームレビュー★

ストリートギャングの“生活”が楽しめる
かつてないボリュームのクライムゲーム

Grand Theft Auto: San Andreas

  • ジャンル:アクション
  • 発売元:Rockstar Games
  • 価格:19.9ドル
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:2005年9月28日発売(Version 2)



  •  「Grand Theft Auto: San Andreas(グランドセフトオート サンアンドレアス)」は日本でも高い人気を誇る「グランドセフトオート(GTA)」シリーズの最新作である。北米ではPS2版は2004年の10月26日に、PC版は2005年6月6日に発売されているタイトルである。しかし、日本語版の発売の見込みは未だたっていない。

     その理由のひとつとして挙げられるのは、米国でも問題になった、過激な性描写を含むデータが“隠し”として収録されていたことである。初回で発売されたバージョンにはゲームデータとしてセックスシーンが入っており、通常のプレイでは見られないものの、Modによって容易に見ることができたのだ。

     今回プレイしたVersion 2は問題となったデータそのものを削除したバージョンである。こういった問題も関係しているかもしれないが、この作品が正式に日本で販売されない現状は本当に残念だ。現在、本作をプレイするには輸入版を入手するしかない。こうした状況にも負けず、日本の「GTA」ファン達は熱心な活動を行ない、攻略情報の交換やオリジナルModなどを制作している状況は、本当に心強い。

     国産のゲームではとうてい味わえない、欧米のクリエイターが描くどこか乾いた世界が好きという日本人は、筆者以外にも無数にいるだろう。GTAシリーズは過激なバイオレンス表現ばかりが話題を集めやすいが、GTAがトップを独走しているのは、単純にゲームとして人を惹きつける魅力を備えているからである。今回は「Grand Theft Auto: San Andreas」を通じて、改めてGTAシリーズの魅力を紹介したい。


    ■ ストリートギャングの一員として、リアルに再現された犯罪都市で戦い抜け

     「Grand Theft Auto:San Andreas」は、ロサンゼルスをモデルにした都市、Los Santosに主人公Carl “CJ” Johnsonが5年ぶりに戻ってきたところから物語が始まる。ギャングの抗争、ドラッグ、犯罪……それらの問題に倦み、街から離れていたCJは母親の死をきっかけに戻ることを決心したのだ。

    主人公Carl “CJ” Johnson彼がLos Santosに帰ってきた時、物語は動き始める
    CJの心強い仲間達。一癖もふた癖もある強烈なキャラクタの持ち主達だ
     街に降り立ったCJは突然数人の警官に取り囲まれる。警官達は一方的に彼に罪を宣告し、脅してくる。ブタ箱(刑務所)入りがイヤなら、自分たちの手足になれと言うのだ。仕方なく承諾するCJ。故郷に帰った彼を迎えたのは、抗争相手に縄張りを荒らされ、かつての勢いを失ってしまった仲間達だった。

     CJと兄弟達の母親もまた抗争が原因となって殺されたのだ。CJは仲間や兄弟と共に復讐を開始する。警察や他のギャング、さらにはマフィアなど様々な組織の思惑が交錯していく中、CJの行動はLos Santosだけにとどまらず、他の街にまで激しい戦いを巻き起こすことになる……。

     「Grand Theft Auto」とは、“車泥棒”のこと。GTAシリーズではプレーヤーは一貫して車の運転が得意なギャングスターとして活躍していく。シリーズ最大の出世作となった「Grand Theft Auto III」からは、広大な都市を3Dグラフィックスで再現し、そこにたくさんのイベントをちりばめストーリーを展開していくという作品となった。

     実際の都市をモデルにした特徴的なランドマーク、地域によって変わる車や通行人などリアルな感触を持った街の中で、主人公はある時は組織の手下として、時にはただのストレス発散のため、車で街を駆け抜け、渋滞を蹴散らし、銃を乱射する。通行人は逃げまどい、警官は主人公を捕らえようと追っかけてくる。

     「Grand Theft AutoIII」、「Grand Theft Auto:Vice City」という2作を経て登場した本作「Grand Theft Auto:San Andreas」は、より“生活感”にこだわり、プレーヤーはCJとして体力管理やファッションにこだわったり、恋人との恋愛ゲームを楽しむこともできるようになった。ストーリーを進めずに、「理想のライフスタイル」を追求することも可能になったのである。また、前作同様ピザ屋になったり、タクシーの運転手になったりと、サイドミッションもたくさん用意されている。

     「Vice City」では本編のストーリーが少し少なめで、主人公が街の顔役として多くの店を手に入れ、支配していくという要素を盛り込んでいたが、「San Andreas」はストーリー要素も、そしてやりこみ要素もたっぷり詰め込まれている。Los Santosだけでなく、サンフランシスコをモデルにしたSan Fierro、ラスベガスをモデルにしたLas Venturasという3つの大きな街があり、さらに小さな街や山岳地帯砂漠地帯もあってマップの広大さも他の作品の追随を許さない。まさに、シリーズの決定版と言える作品なのだ。

    黒人警官Tenpennyと彼の仲間達。CJを利用しようとしつこくつきまとってくる 車に近づき、リターンキーを押すだけで実行できる車強盗。街の車は全部CJのものだ Los Santosとその周辺の地図。今作では更に4倍以上の広大なフィールドが用意されている


    ■ イカしたキャラクタと交流を深めつつ、ダイエットにも挑戦!?

     本作で展開するストーリーは、殺人を含む重犯罪をメインテーマに扱っていながらも、独特のネジの飛んだ明るいノリを受け継いでいる。さらに今作は根底に兄弟達の絆があったりと、“熱い”部分も注目である。

    Cesarと妹のKendl。幸せになってもらいたいカップルだが、周囲の状況はきな臭いものになっていく
    肥満度が減り、スタミナが上昇するトレーニングマシン。ジムには他にも筋肉が増加するダンベルなどがある
    ほしかったピンクの腕時計を購入。今作では服装、髪型のバリエーションが非常に豊かだ。品揃えは店によって違うので、多くの店を回ってこだわりのファッションでキメたいところだ
     たとえば、CJの妹の彼氏となるCesarとのエピソードは個人的にもお気に入りだ。ストーリーを進めることで、彼が真剣に妹を愛し、そしてCJの力になりたいと思っていることが伝わってくる。しかし彼らはギャングの世界の住人である。妹とCesarも常に危険が身近にある。

     自分は強盗や殺人に明け暮れているにもかかわらず、Cesarには妹のためにもできれば平穏無事に過ごして欲しいと心配してしまうのが自分でも面白かった。ストーリーが進んで行くにつれて、キャラクタ達にどんな繋がりが生まれるのか楽しみだ。

     「GTA」シリーズならではのアクの強いキャラクタもたくさん登場する。ラッパー志望のOG Locはいつも熱に浮かされたように甲高い声で喋っているし、Ryderは怪しいたばこをふかしている。Catalinaは出会った時から常にケンカ腰で車の助手席でもがなりっぱなし、それが彼女の愛情表現だというのが非常に本作らしい。新しいキャラクタに出会うたびに驚かされ、そのイカれた雰囲気に圧倒される。次にどんなキャラクタと出会えるかワクワクしてしまう。

     ミッションも凝っている。バイクで列車を追いかけたり、敵ギャングの葬式に乱入したり、レースをしたり、他の家に押し入って盗みを働く事もある。ギャングの家を放火するようなハチャメチャなものから、こそ泥に入るようなやけにリアルな犯罪行為もあって、バリエーションは非常に豊かだ。

     ミッションはそれぞれ“ゲーム”としての完成度を上げていると感じた。前作までは例えば追跡ミッションでも敵が勝手に運転をミスして自爆してしまったりと大味な印象を受けたが、今作では敵は巧みに道を進み、さらに映画の1シーンの様なクラッシュシーンが入るなど、細かいところまで制御されているのがわかる。また暗殺ミッションではスニークゲーム的要素、ダンスイベントではいわゆる「音ゲー」要素も取り入れられていて、多様なゲーム性を取り込んでいる。

     本作はコンシューマゲームであることをスタッフが強く意識し、欧米のFPSに見られる楽しさ重視の大味さよりも、繊細な攻略を求めるゲーム性にシフトしている印象を受けた。このためか、少し今までのシリーズと比べて難易度が上がったようにも感じた。こまめにセーブして何度もミッションに取り組む気合いが必要だろう。

     「San Andreas」ではプレーヤーキャラクタの“成長要素”が取り入れられた。キャラクタは体型や筋肉、スタミナといったパラメーターがあり、武器にも習熟度が設定されている。武器は使うほどに命中率が増し、更に拳銃やマシンガンなどは熟練すると歩きながら撃てるようになったり、2丁拳銃で戦えるようになる。

     体型は食事をすると太る。食事をできる店はバーガーショップやピザ屋などファーストフード店が多い。バーガーショップでは巨大なハンバーガーの帽子、フライドチキンチェーンは店自体が巨大な鶏の姿をしていて、実に本作らしい大げさな雰囲気が楽しい。太るのはデメリットだけでなく、スタミナをつけるためのエネルギーになる。

     スタミナや筋肉はジムで鍛える。ダンベルやウエイトリフティング、さらにはランニングマシンに乗ることでキャラクタはパラメーターが上昇する。効果は非常に劇的で、数日ジムに通うだけで筋肉ムキムキになる。スタミナは太るステータスが下がる運動をすることで上昇する。

     序盤ではまだ武器屋が登場せず、ステータスも低いのでミッションを遂行することが難しい場合もある。ここで役に立つのがフィールドに隠されている“防弾チョッキ”である。戦闘ミッションではこれがあるのとないのでは大きく違う。散歩がてら街の様々な場所を見て回って出現ポイントをチェックしておくことをおすすめしたい。ただし、街を散策する場合は敵対するギャングの襲撃には注意が必要である。

    ちょっとネジの緩そうなしゃべり方をするOG Loc。そのラップは思わず耳をふさぎたくなるひどさである 責任感の強いSweetと他人の食べ物も取ってしまう意地汚いSmoke 銃を突きつけがなり立てたかと思うと、次の瞬間「愛してるわ」。一瞬も気が抜けないCatalina
    敵勢力に追われて、自転車で逃げる。敵は車に乗って容赦なく追いかけてくる バイクでギャングを追撃。からかいながら逃げる敵が超ムカツク 軍の倉庫に盗みにはいる。警備兵を打ち倒しながら大胆に進む
    敵対組織のマークを塗りつぶす。示威行為の1つだ 警察の特殊部隊を相手に大立ち回り。防弾チョッキは是非とも入手しておきたい 目障りな大物アーティストを暗殺するために、運転手とすり替わって機会を伺う
    主にCesarが持ってくるレースミッション。コースは何度も挑戦して覚えておきたい 馬券売り場に強盗に入る。鍵のかかった扉を爆弾で爆破! タンクローリーを強奪するミッションも。鈍重な車体をうまく運転しなくてはならない


    ■ 恋愛、自転車、縄張り争い……「San Andreas」ならではの追加要素

     「San Andreas」で追加された要素は、主人公の成長要素だけではない。GTAのGTAたるゆえんである強盗対象の乗り物も増えている。

     プレイを開始してすぐ体験するのが“自転車”である。「Vice City」ではバイクが追加され、その手軽さが話題になったが、今作で追加された自転車は更に気ままに細い路地に入っていけるため、Los Santosを散歩するのにぴったりだ。アクセルボタンを連打することで“立ちこぎ”になり、スピードがアップする。バイクや自動車のトップスピードにはかなわないが、自転車も結構早い。スキルも上がりやすく、おすすめの乗り物である。

    新登場の自転車。都市の散策に向いている
    デートシーン。過激なシーンばかりの本作でほっとする場面だ
     「恋愛」が楽しめるようになったのも本作の大きなセールスポイントだろう。ゲームを進めることでCJは何人かの女性と知り合うことになる。ミッションを終えることで自動的につきあうこともあれば、街で声をかける場合もある。つきあい始めた女性の家にはハートマークが表示され、ここに車で乗り付ければデート開始だ。彼女たちにはそれぞれ好みの店があり、そこに連れて行くことで恋愛度が上昇する。

     つきあいが深くなると、クラブに誘ってダンスを楽しむこともできる。ここでのダンスはリズムに合わせてボタンを押すいわゆる「音ゲー」のミニゲームをプレイできる。さらにデートが終わって彼女の家に帰ったときは「家でお茶でも飲まない?」と誘われる。承諾をすると家の中からやたら艶っぽい彼女の声が聞こえてくるのだが、本当にお茶を飲んでいるだけかどうか、詮索するのは無粋であろう。

     恋愛度が深まると彼女が所有している乗り物に乗れたり、服をプレゼントされたりという特典もある。しかし、何でもかんでも犯罪がらみの「GTA」で、“デートする”というごくありふれた日常生活ができるのが非常に新鮮である。夜に勝手に車に乗ってくる女の子と一緒に暗がりで停車し、車をガタガタ揺らした後、すっきりした感じで女の子が去ると同時に所持金が消えていた前作とは大きな違いといえる。

     もちろん「GTA」らしい要素も強化されている。今作ではミッションをクリアすると「リスペクト」というポイントを入手できる。このポイントを上げるとストリートの知名度が上がりより多くの徒党が組めるようになる。仲間を引き連れたら次にやることは敵対ギャング組織への襲撃である。敵の縄張りで銃を乱射し、ギャングどもを打ち倒す。すると敵もムキになって攻撃をしてくる。その敵を退けることでその一帯を自分の領土とすることができるのだ。敵もまたこちらの領域を奪おうと襲撃してくる。まさに“血みどろの抗争”が展開される。

     この他にも救急車やピザの配達オートバイ、タクシーなどに乗り込むことで開始できるサイドミッションや、売家を買って自分だけのアジトにできるなど前作からの要素もきちんと受け継いでいる。ストーリーを進めるとともに強大なキャラクタとして成長し、さらに街の覇権も握ることができる。

     ただし、序盤で体験できる抗争はストーリーが進むことでいったん休止状態になる。あるエピソードでCJはLos Santosから離れる羽目になってしまう。街の覇権を握るための戦いはしばらくお預けのようである。San Fierro、Las Venturasという2つの街を巡るストーリーがCJを待っている。どんなストーリー、どんなキレたキャラクタ、どんな激しい爆発シーンが待っているか、とても楽しみにさせてくれる。

    家の前に車を止めてデートに誘う。食事の他にダンスやドライブなどのメニューがある。新しい恋人を見つけ、気に入られるためには彼女の理想の体型に体を整える必要がある
    仲間を誘い自分たちの領土(緑色の部分)を拡大するために抗争に明け暮れる


    ■ ドライブゲームとしても他の作品の追随を許さない高い完成度を実現

     ストリートのイカれた雰囲気、アメリカの都市をそのまま再現したようなリアルな感触を持つグラフィックス、人情話まで絡むストーリー、爽快でダークなクライムシーン、本作の魅力を上げればきりがないが、やはり「ドライブゲーム」としての完成度が本作の魅力の根底を支えていると思う。

     自転車、バイク、スポーツカー、トラック、キャンピングカー……本作にはたくさんの乗り物が登場する。タクシーやキャンピングカーは鈍重だし、スポーツカーは速く、高級車は頑丈だ。乗り物によってきちんと感触が違うのは、スタッフがもっとも気を使っているところだからだろう。「San Andreas」ではさらに改造をすることで車をチューンできるようになった。自分だけのこだわりのスーパーカーを所有できるようになったのである。

     今作はマップも非常に広大だ。ミッションを受けるために長距離を移動することも多い。都市から山岳地帯を抜けて地方都市にたどり着いたり、大きな工場の横を通り過ぎたりすることで、ちょっとした旅行気分を楽しめる。バイクで車の間をすり抜けるのはスリル満点だし、乗用車で周りの風景を眺めながらの移動も楽しい。オフロードバイクやバギーで山道を突っ切るのは舗装された道路を走るのとは違った爽快感がある。

     レースミッションでの敵車とのバトルも迫力があるし、警察に追われているとき、焦る気持ちを抑えて地図を見て最短距離を割り出すのもいい。車外の風景は目まぐるしく変わっていき、豪雨や時間の変化がアクセントを加える。独特のリアリティーを持ったこの移動感覚は、スタッフ自身が乗り物に乗って移動することの楽しさを知っているからに違いない。

     銃を構えて敵対組織と渡り合うことも充分面白いが、本作は間違いなくドライブゲームの1つの進化の姿である。このドライブ感覚はゲームをあまりやらない人にも訴える魅力があると思う。

     今作のボリューム、そしてゲームの完成度はまさに圧倒されるものがある。筆者はまだその面白さの入り口に立っているにすぎない。これからもっともっとプレイをして、CJの行く末を見守っていきたいと思う。

    「San Andreas」のフィールドは、場所によって非常に多彩な表情を見せてくれる。ゲームの中で思う存分“ドライブ”が楽しめるのだ。現実ではできないような危険な運転をしてスリルを味わうことも可能だ

    (C)2005 Rockstar Games. All rights reserved.
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    【Grand Theft Auto: San Andreas】
    • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4以上推奨)
    • メモリ:256MB以上(384MB以上推奨)
    • HDD:インストール時:3.6GB以上の空き容量(4.6GB以上推奨)
    • ビデオカード:VRAM 64MB以上(128MB以上推奨)


    □Rockstar Gamesのホームページ
    http://www.rockstargames.com/
    □「Grand Theft Auto:San Andreas」のページ
    http://www.rockstargames.com/sanandreas/
    □関連情報
    【2004年6月8日】PCゲームレビュー「グランド・セフト・オート・バイスシティ」
    http://www.watch.impress.co.jp/Game/docs/20040608/gta.htm

    (2006年4月5日)

    [Reported by 勝田哲也]



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