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会場:San Jose McEnery Convention Center
谷波氏はこの作品を「カウンターストライク ネオ」として日本向けにカルチャライズを行なった。女性やロボットのような外見のキャラクタを取り入れ、オリジナルマップを追加し、インターフェイス部分も専用の特別のキーボードを使用する。この作品をプレイするためには専用の筐体を設置した「LEDZONE」というゲームセンターに行く必要がある。谷波氏は新しいゲームセンターの形として、ソフトのみならずシステム全体を構築していくことを目的としているのである。 谷波氏はこのシステムが成功する鍵は「楽しいゲームコンテンツを提供すること」そして、「より楽しい対戦相手を用意し続けること」にあると主張する。そして特に「楽しい対戦相手を見つけること」にフォーカスを当ててLEDZONEのシステムを構築した。「カウンターストライク ネオ」というコンテンツを選んだのは、世界中で受け入れられている「Counter Strike」をカスタマイズすることで最小限のリソースでLEDZONEにユーザーを誘導するためだという。 ここで谷波氏は日本の「ゲームセンター」の代表的な風景として対戦相手が向き合う格闘ゲームの対戦台を紹介した。「対戦相手の顔が見えないシステムは、知らない人と真剣勝負をするために構築されたものですが、この対戦はスリリングで、もし一方がずっとズルをして勝ち続けた場合、台を越えて歩み寄ってきてプレーヤー同士がケンカを始めます。“リアルパンチ”が交わされ、それを仲裁に入る店員も被害に遭う場合もあります。こうなった時店員は特別報酬を得ることもあります」と語ると、来場者からは“信じられない”といった空気の笑いが起こった。 この後対戦格闘というゲームジャンルはオンライン上でも行なわれるようになったが、負けそうになると対戦相手が電源を切ってしまったり、チャット機能をつけたら悪口ばかり言うプレーヤーが多く出現した。谷波氏は、匿名性のあるシステムではプレーヤーのモラルが低下しがちであることを指摘して、「ゲームセンターでの、お互いの顔が見えるシステムこそが好ましいと考えている」、と語り、さらに「三国志大戦」などの大型の筐体を使ったゲームセンターならではのコミュニケーションが現在も生まれ続けていることを紹介した。 次に谷波氏はゲームセンターの原型として“碁会所”を紹介、タイトルにはオンラインゲームでの用語を使用した。「ロビーサーバー」という題名で老人達が並んでいる待合室を、「マッチングシステム」として対戦を案内する受付の女性の姿を写し、「マッシブな対戦場の風景です」と、会場いっぱいで対戦を行なっている盛況な碁会場の風景を写し出す。谷波氏は「これは平日の風景です、日本ではこのように多くの人が日常的に対戦を楽しむ土台があります」と語った。LEDZONEはこれら日本のゲームセンター、碁会所のシステムの延長上にあるという。 そしてここから谷波氏は、LEDZONEのシステムを紹介した。「カウンターストライク ネオ」ではプレーヤーはICカードにより対戦成績などを引き継ぐことができるが、その情報はまた中央サーバーでも管理されている。谷波氏はまず最初の例として1人のプレーヤーのデータを示した。例となったプレーヤーは最初ほとんど敵対チームを倒すことができず、やられてばかりいた。その時はすぐやめて帰ってしまったのだが、練習を続ける内プレーヤーの腕が向上していき、チームメイトからも「Good Job」と声をかけられるようになる。使用金額は鰻登りになるが、ある日突然減ってしまう。プレーヤーの腕が上がりすぎて、周囲のプレーヤーとの実力が離れすぎてしまったのだ。 谷波氏はこういったデータを蓄積していくことによってプレーヤーには“人気者”とそうでない人がいることに気がついたという。その人がゲームに参加すると他のプレーヤーがやめてしまったり、逆に増えることもある。ゲームを盛り上げてくれる人は、必ずしもゲームの実力に関係しないこともある。谷波氏は様々なデータからユーザーを“好ましいプレイ”に誘導する方法を試みる。キーボードの1つを押すだけで任意の相手に「Good Job」と声をかけ、更にゲーム内でのクレジットを渡すことができるようにして、賞賛の気持ちをより大きく表現できるようにした。 さらに「レーティングシステム」を導入し、より盛り上がるプレーヤーを誘導する。例えば3人相手に1人で生き残るなど感染していても盛り上がるプレイの場合、プレーヤーの評価を高くする。jq<「カウンターストライク ネオ」のようなFPSでは単純に勝率だけを考えた場合、安全な場所で隠れ他のプレーヤーを狙撃する「キャンパー」と呼ばれるプレイが有利なのだが、本作の場合、一カ所で隠れ続けていると警告が表示され、続いてレーダー場に自分の位置が表示されてしまう。キャンプ行為は著しく不利になってしまうのである。 これからのシステムとしては、「あなたが次もプレイしたい人は誰ですか、プレイしたくない人は誰ですか」というアンケート機能の導入が考えられている。これにより、「自分のプレイが人に評価される」という意識をより強めていく。また、筐体にはプレーヤー情報を示すインジケータが用意されていて、初心者は外から見てもわかるようになっている。スタッフはそれを見て、初心者ならばマップの有利な場所をアドバイスしたりといった対応を取っている。 スタッフ自身もデータの評価の対象になる。そのスタッフが何人の初心者に対応したか、そしてその初心者はその後何回店を訪れたか、成績が表示されることで店員の意識はより仕事に集中し、丁寧な対応を心がけることになる。もちろん、スタッフ間の情報交換や教育も積極的に行なっていく。 谷波氏はユーザー間のコミュニティーにも注目する。コミュニティーはプレーヤー達のつながりが強くなっていくほど“堅く”なっていくが、一方親密になりすぎた場合、些細な結果で決裂して、結果として店に来なくなってしまう。そこでゲーム大会などでプレーヤー間の交流を促し、プレーヤーに同時に2~3のコミュニティーに参加できるように誘導する。友達がいるから人はLEDZONEに通う。1つのコミュニティーが壊れてしまっても、他につながりがある場合、プレーヤーは変わらずLEDZONEに足を運んでくれるかもしれない。 また、「カウンターストライク ネオ」の開発スタッフの職場環境もユニークなものとなっている。開発室はレットゾーンの店舗の1つの隣に位置している。開発スタッフが新しいマップをリリースした場合、プレーヤー達が気に入らなかった場合、大声で「この新しいマップダメだよ!」と叫ぶ。その声が、そのまま直にスタッフの耳に届くのである。この極めて近い距離感は、スタッフに気合いを入れてくれる。 谷波氏は最後に「ネットワークゲームにはバランスのとれたゲームと、楽しい対戦相手の存在が重要だ。我々は皆さんからいただいたデータを分析しながら遊んで楽しいゲームを作るために、ゲームの仕様を調整し、スタッフの動きを変えています」と語った。 今回少し残念だったのは、谷波氏の講演を聞いた来場者が少し少なかったことだ。これは、「Counter Strike」という“古い”タイトルを、日本人向けにカスタマイズするという講演のタイトルが、最先端を求める開発者の興味を惹かなかったためではないだろうか。しかし、実際の講演内容は、極めて実験的でユニークな運営側からユーザーへのアプローチであり、今後のゲーム制作に役立てられるアイデアであった。講演のタイトルのアピールに少し失敗したのではないかな、とも思った。 一方、人口密度が低く、多くの人々が集まる場合、かなりの距離を移動しなくては行けないアメリカの場合、日本のようなゲームセンター展開は難しいかもしれないと感じた。碁会所が日本と同じかそれ以上に発達している韓国を含めた東アジア圏ならば、谷内氏の得たデータ、そしてノウハウはより効率的に機能するのかもしれない。LEDZONEというシステムが、今後どのようなデータを蓄積し、そしてそれを活かしたどんなゲームを開発していくかが非常に楽しみである。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ http://www.gdconf.com/ □Game Developers Conference(日本語)のホームページ http://japan.gdconf.com/ □LEDZONEの公式サイト http://www.ledzone.com/ □「カウンターストライク ネオ」の公式サイト http://www.csneo.com/ □関連情報 【2005年12月5日】IGDA関西、LEDZONE京都にて特別セミナーを開催 「ユーザーコミュニティを巻き込んだ北米型ゲームの今」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050715/csneo.htm 【2005年7月15日】ナムコ、「カウンターストライク ネオ」のβテストを実施 LEDZONE蒲田店を皮切りに、順次、先行設置店舗にて運営開始 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050715/csneo.htm (2006年3月26日) [Reported by 勝田哲也]
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